相続に関わる専門家|不動産鑑定士ができること・できないことや費用体系一般公開

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葬儀社の皆様がご遺族様と関わる中で、「相続に関する不動産の評価」についての相談を受けることも少なくありません。不動産は多くの場合、相続財産の大部分を占めるため、その評価が相続全体の行方を左右することもあるためです。

今回は、相続業務における「不動産鑑定士」の役割について解説します。不動産鑑定士は不動産の適正な経済価値を客観的に評価する専門家で、その鑑定評価書は遺産分割協議や相続税申告の重要な根拠資料となります。

この記事では、葬儀業界で働く皆様へ向けて、不動産鑑定士の役割や業務範囲、依頼方法、費用体系などについて解説いたします。これらの知識を身につけることで、不動産評価に関するご遺族様からの相談に対応し、適切な専門家への橋渡しができるようになるでしょう。葬儀後も、ご遺族様に寄り添うサポートの一助となれば幸いです。

葬儀社なら知っておきたい相続に関わる専門家解説

(1)司法書士
(2)不動産鑑定士(本記事)
(3)税理士
(4)弁護士
(5)行政書士
(6)ファイナンシャルプランナー
(7)銀行

目次

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、国土交通省が管轄する国家資格を持つ不動産評価の専門家です。不動産の適正な経済価値を公平かつ客観的な第三者の視点で判定することを主な業務としています。全国で約8,000人程度と、ほかの専門家と比較すると少数であり、あまり馴染みがない方も多いかもしれません。

不動産鑑定士の主な業務は「不動産鑑定評価書」の作成です。この評価書は、不動産の価値を詳細に分析したもので、20〜40ページにも及ぶ公的な証明力を持つ文書です。評価にあたっては、不動産がある地域の分析や対象不動産の調査、周辺の取引事例との比較など、様々な角度から判断します。

毎年3月頃に新聞やテレビで報道される「地価公示」は、全国の不動産鑑定士が調査した結果に基づいています。「今年も日本で一番地価の高い場所は銀座4丁目だった」といったニュースでご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。この地価公示は、国土交通省が1月1日時点の地価として発表しているもので、不動産鑑定士の評価がもとになっているのです。

不動産鑑定士の評価は、金融機関が不動産担保融資を行う際の判断材料や、国や自治体が道路などを建設する際の用地買収価格の算定基準としても活用されます。また、不動産の賃料に関する紛争など、裁判においても重要な証拠として採用されることがあります。

不動産査定との違い
不動産査定とは、不動産会社が土地や建物などを売却する際の想定価格を算出することです。独自の査定方法やデータを用いることから不動産会社ごとに金額が異なるため、相続手続きなどの公平で第三者視点の評価には利用されないことが多いです。

相続業務で不動産鑑定士ができること

希望を抱くスーツの男性

前述したように不動産鑑定士の主な業務は、不動産の価値評価と、それをまとめた不動産鑑定評価書の作成です。

ここでは、相続業務にて不動産鑑定評価書が役立つ以下の場面を詳しく紹介します。

(1)遺産分割協議で適正な不動産評価を提供

家と遺産分割

遺産分割協議は、故人様の残された財産をご遺族様の間でどのように分けるか話し合うことです。多くの場合、相続財産の中で不動産が最も大きな価値を占めているため、不動産の評価が遺産分割全体に大きな影響を与えるのです。

例えば長男と次男が相続人で、自宅を長男が相続し、次男は相当額の現金を受け取ることにした場合、その自宅の適正な価値を知る必要があります。その際に、不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書があれば、自宅の価値を適正に知ることができ、公平な遺産分割が可能となるのです。

また、遺産分割協議においては、ご遺族様の間で感情的な対立が生じることも少なくありません。そのような状況において、不動産鑑定士による客観的な評価があれば、事実に基づいた建設的な話し合いの場を作る一助になるでしょう。

さらに、話し合いがまとまらず調停や裁判に発展してしまった場合でも、不動産鑑定評価書は公的な証拠資料として認められます。ただし、不動産鑑定士はあくまでも不動産の評価を行う専門家であり、遺産分割協議の進行や交渉の代行を行うことはできません。実際の協議はご遺族様自身、あるいは弁護士などの専門家に別途依頼を行い進めることになります。

(2)相続税申告で不動産評価を適正化

相続税申告書と家

相続税の申告において、不動産の評価は相続税額を大きく左右する要素です。相続税法では、相続財産の価額は「時価」によって評価するとされていますが、実務上は国税庁が定めた「財産評価基本通達」という計算ルールに基づいて評価されるのが一般的です。

土地の場合は「路線価」という基準による評価、建物の場合は「固定資産税評価額」に基づいて評価されることが多いです。

しかし、この画一的な評価方法では、特殊な事情がある不動産の価値が正確に計算できないケースがあるのです。例えば、土地に大きな高低差がある場合や形状が著しく不整形である場合は、国税庁の計算ルールによる評価額が、実際の市場価値(時価)よりも高くなってしまうことがあります。このような状況だと、ご遺族様は本来支払う必要のない相続税を余分に負担してしまう可能性があります。

ワンポイント
相続税は、相続する財産の価値が上がるほど税率も高くなります。そのため、財産の価値を下げることができれば相続税の節税につながります。

国税庁の計算ルールによる評価額が実際の時価と大きく異なる場合には、その評価方法によらない「特別な評価」が認められています。この「特別な評価」の根拠として、不動産鑑定士による評価が参照されるのです。

不動産鑑定士は、対象不動産の立地条件、形状、高低差、接道状況、法的制限など、様々な要素を詳細に調査・分析したうえで適正な時価を算出します。この評価結果を「不動産鑑定評価書」としてまとめ、相続税申告時に税務署に提出することで、評価額を適正化することができるのです。

特別な評価が認められ得る例

①土地の場合
崖地や三角形のような特殊形状の土地では、路線価による評価額(例:8,000万円)が実態より高くなりがちですが、不動産鑑定士の評価によって適正価格(例:6,000万円)へと引き下げることがあります。

②建物の場合
外観からは判断できない雨漏りや構造的問題がある老朽化建物では、固定資産税評価額が実態と乖離していることがあります。このようなケースでも不動産鑑定評価により価値の適正化が認められます。

ただし、不動産鑑定士は相続税申告書の作成自体を行うことはできません。あくまでも不動産の評価を行う専門家であり、実際の申告手続きは税理士などの税務の専門家が担当することになります。

税理士が相続手続きで担当する業務については、『相続に関わる専門家|税理士ができること・できないことや費用体系』で詳しく解説しています。

(3)相続不動産の売却価格を適正に判断

家の売却

相続で取得した不動産を売却する場合、「いくらで売り出すべきか」「提示された買取価格は適正なのか」という判断が必要になります。また、故人様の自宅や投資用不動産をそのまま相続せず、売却して現金化するというケースも少なくありません。このような場合に、不動産鑑定士による評価が役立ちます。

不動産の売却では、価格設定が高すぎれば買い手が見つからず、売却が長期化してしまいます。逆に低すぎると、本来得られるはずの金額よりも少ない金額で手放すことになり、ご遺族様にとって経済的な損失となってしまいます。

特に相続した不動産の売却では、ご遺族様自身がその不動産の価値を正確に把握していないことが多く、不動産業者から提示された価格が適正かどうか判断するのが難しい状況にあります。また、複数の業者から異なる査定額が提示された場合には、どの価格を信じればよいのか迷うこともあるでしょう。

例えば、築40年の古い一戸建てを相続したご遺族様が、不動産業者から「建物はほぼ価値がなく、土地のみの評価で2,000万円」と言われたとします。しかし、不動産鑑定士が評価すると、建物は古いながらも耐震性に問題がなく、内装のリフォームによって住宅としての価値を維持できる状態であり、土地と建物を合わせて2,800万円の価値があると判断されるケースがあります。

不動産鑑定士と不動産業者の比較

この差額800万円は無視できない金額であり、適正な評価を知ることで大きなメリットがあります。

また、遠方に住むご遺族様が故人様の不動産を売却する場合、現地の不動産市場の状況を把握するのは特に困難です。このような場合も、不動産鑑定士に評価してもらうことが可能です。

(4)生前の税金対策に活用できる資料提供

遺言書を書くシニア

相続税対策は、実は相続が発生してからでは遅い場合が多いものです。効果的な対策を行うためには、生前から贈与を行ったり、相続計画を立てることが重要です。特に不動産が相続財産の中心となる方にとって、現時点での不動産の適正価値を知ることは、相続税対策の第一歩となります。

具体的には、所有している複数の不動産のうち、どの物件を生前贈与すれば相続税の軽減に最も効果的かを判断する際や、収益物件を購入して資産組み替えを行う場合などに、不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書が役立ちます。

また、不動産の評価額は時間の経過とともに変動します。地価の上昇が著しいエリアでは、相続発生時に予想以上の評価額となり、想定外の相続税が発生することもあります。定期的に不動産鑑定士に評価を確認することで、そういったリスクを避けられるでしょう。

相続業務で不動産鑑定士ができないこと

悩むスーツの男女

不動産鑑定士はあくまで相続した不動産の評価や、不動産鑑定評価書の作成が業務なので、相続手続きの代行や、不動産売却の仲介などはおこなっていません。以下で詳しく解説します。

不動産鑑定士ができない業務対応できる専門家
(1)相続税申告書の作成税理士
(2)不動産の名義変更司法書士、弁護士
(3)不動産売買の仲介業務宅地建物取引業者(不動産会社)

なお、各専門家が相続業務で対応できる内容については、『相続に関わる専門家ガイド|葬儀社のアフターサービス充実に向けた基礎知識』でまとめて解説しています。

(1)相続税申告書の作成

相続税申告書と電卓

不動産鑑定士は相続財産のうち不動産部分について詳細な評価を行い、「不動産鑑定評価書」という形で提供することはできますが、相続税申告書を作成する業務は行うことができません。相続税申告書の作成は税理士の独占業務となっています。

不動産以外のほかの財産の評価、各種相続税を軽減する控除の適用、相続税額の計算など、相続税申告に関わる一連の手続きを行うことはできないのです。

葬儀業界で働く皆様がご遺族様にご相談を受けた際には、相続税の申告・納付が必要な場合は不動産鑑定士への依頼のみでは完結しないことをお伝えするとよいでしょう。ご遺族様の状況に合わせて、それぞれの専門家を紹介できるようにしておくと安心です。

(2)不動産の名義変更

お金と家2件

不動産鑑定士は不動産の価値評価のスペシャリストですが、相続によって取得した不動産の名義変更(相続登記)の手続きを行うことはできません。相続登記は一般的に司法書士の専門分野です。弁護士も相続登記の手続きを代行できますが、主に費用の観点から、相続登記のみを依頼する場合には司法書士が選ばれることが多いです。

不動産鑑定士は「不動産の専門家」というイメージを持たれていることが多く、不動産に関する手続きは一任できると思っている方もいらっしゃるため、ご遺族様と接する中で、不動産の名義変更についての質問があった場合には、相続登記は主に司法書士の専門分野であることをお伝えいただければと思います。

司法書士が相続手続きで担当する業務については、関連記事『相続に関わる専門家|司法書士ができること・できないことや費用体系』で詳しく解説しています。

(3)不動産売買の仲介業務

女性に相談するシニア夫婦

不動産鑑定士は、相続で取得した不動産の売買仲介業務を行うことはできません。相続不動産を売却する際の仲介は、宅地建物取引業者(不動産会社)の業務となります。

相続したものの、住む予定がない不動産や遠方にある不動産を売却したいというご遺族様は少なくありません。このような場合、不動産鑑定士は売却相場の目安となる評価額を提供することはできますが、実際に買主を探したり、売買契約の締結をサポートしたりする業務は行えません。

なお、不動産鑑定士が自ら宅地建物取引士の資格も取得し、不動産会社として開業するケースもあります。このような場合は、不動産の鑑定評価から売買仲介までをワンストップで対応することが可能です。

近年は、従来の業務範囲にとどまらず、複数の専門分野を組み合わせたサービス提供に取り組む事業者が増えています。不動産鑑定士としての専門性を活かしながら不動産売買の分野にも進出することで、競争の激しい不動産業界において独自の位置づけを確立しようとする動きもあるようです。

不動産鑑定士に相続業務を依頼する手順

家とステップ3

ここでは、不動産鑑定士に不動産の評価を依頼するときの手順例をご紹介します。

不動産鑑定士を探すところから、業務終了までは以下のような流れで進むことが多いです。

不動産評価を不動産鑑定士に依頼する流れ

(1)ご遺族様が不動産鑑定士を探す

不動産鑑定士を探す際に最も重要なのは「地域性」です。不動産の価格は地域の特性に大きく影響されるため、評価対象の不動産がある地域に精通した不動産鑑定士を選ぶことが重要です。地元の不動産事情に詳しい鑑定士であれば、より正確で信頼性の高い評価が期待できます。

不動産鑑定士の探し方

不動産鑑定士を探す具体的な方法としては、まず各都道府県の不動産鑑定士協会のウェブサイトを活用する方法があります。都道府県別に不動産鑑定士協会のサイトが掲載されているため、所在地域で活動する鑑定士を見つけられます。

また、Googleマップを使った検索も可能です。不動産の位置を検索した上で「不動産鑑定士」と入力して再検索すれば、その地域で開業している不動産鑑定士が表示されます。自社ウェブサイトを持たない鑑定士でもGoogleマップには登録していることが多いため、より多くの選択肢から探すことができます。

さらに、既に相続手続きで関わっている専門家からの紹介を受けられるケースもあります。特に税理士や弁護士は不動産鑑定士と業務上の関わりが深く、信頼できる鑑定士を紹介してもらえる可能性があります。相続税申告のために不動産評価が必要な場合は、税理士から鑑定士を紹介してもらうのが一般的です。

不動産鑑定士を選ぶ際は、相続案件の経験が豊富であることや、対象となる不動産の種類(住宅地、商業地、農地など)についての専門知識も重要な選定基準です。

(2)問い合わせと初回相談

メールと電話

不動産鑑定士を選んだら、次のステップは問い合わせと初回相談です。多くの不動産鑑定事務所では、電話やメール、問い合わせフォームなどから相談を受け付けています。

初回相談では、不動産鑑定士から以下のような内容について説明を受けることが一般的です。

  • 不動産鑑定評価の概要や流れ
  • 必要となる書類や資料
  • 鑑定評価にかかる期間
  • 鑑定評価料の目安
  • 鑑定評価書の活用方法

特に相続税申告のために評価が必要な場合は、申告期限(故人様の亡くなった日から10ヶ月以内)を考慮した上でのスケジュールについても確認しておきましょう。

多くの不動産鑑定士事務所では、オフィスでの対面相談も可能です。特に不動産の状況が複雑な場合や、詳細な説明を必要とする場合は、直接会って相談したいというご遺族様も多いでしょう。また、実際に事務所を訪問することで、その鑑定士の信頼性や対応の丁寧さなども判断材料となります。

初回相談を通じて、その不動産鑑定士が自分のケースに適しているかどうかを見極めることができます。担当者の説明がわかりやすいか、質問に対して的確に回答してくれるか、相続業務の経験が豊富そうかなど、様々な観点から判断しましょう。初回相談は無料で行っている事務所が多いため、複数の不動産鑑定士に相談してみることで、比較検討することも可能です。

(3)依頼内容の確定と契約締結

初回相談を経て不動産鑑定士への依頼を決めたら、依頼内容を具体的に確定し、正式な契約を締結します。

不動産鑑定士 正式な依頼への流れ

まずは評価の目的や対象となる不動産の範囲を明確にします。相続における評価目的としては、遺産分割協議のための評価なのか、相続税申告のための評価なのか、あるいは将来の売却を見据えた評価なのかなど、具体的に伝えることが重要です。また、土地のみの評価なのか、建物も含めた評価なのかといった評価対象の範囲も明確にしておく必要があります。

不動産鑑定士は、これらの情報をもとに「確認書」や「契約書」を作成します。この文書には、依頼者情報、対象不動産の詳細、評価の目的、鑑定評価料、納期などの重要事項が記載されています。契約内容に問題がなければ、確認書や契約書に署名・捺印をして正式な契約となります。契約後は、不動産鑑定士による本格的な評価作業が始まります。

(4)鑑定評価作業(価格等調査作業)

不動産鑑定

不動産鑑定士が行う鑑定評価作業は、大きく分けて、現地調査、資料収集・分析、評価額の算定という流れで進められます。

まず、現地調査では不動産鑑定士が実際に対象不動産を訪れ、詳細な状況確認を行います。土地であれば、形状、高低差、接道状況、周辺環境などを確認します。建物であれば、構造、設備の状態、老朽化の程度などを確認します。

次に、資料収集・分析の段階では、登記情報、公図、都市計画図、ハザードマップなどの公的資料や、近隣の取引事例、賃貸事例などの市場データを収集します。

(5)価格内示と不動産鑑定評価書の受け取り

鑑定評価作業が完了に近づくと、不動産鑑定士から評価の概要と鑑定評価額についての内示があります。この段階では、正式な評価書が完成する前に、算出された評価額と評価の概要についての説明が行われます。

鑑定作業から評価書作成までの流れ

価格内示は通常、電話やメールで行われることが多いですが、重要な案件や複雑な評価内容の場合は、対面で詳細な説明が行われることもあります。必要に応じて「価格内示書」という簡易的な文書が発行されることもあります。これは正式な評価書ではありませんが、評価額の目安として活用できるものです。

価格内示の内容に問題がなければ、正式な「不動産鑑定評価書」が発行されます。評価書は通常、正本1部と副本2部程度が提供されます。正本は原本として保管し、副本を税務署提出用や遺産分割協議用として使用することが一般的です。必要部数は事前に相談することで調整可能です。

評価書受け取りの際には、不動産鑑定士から評価書の内容について簡単な説明が行われることが一般的です。特に相続税申告や遺産分割協議に活用する際のポイントなども説明されるでしょう。そして最後に請求書を受け取り、報酬を支払います。

また、評価書受け取り後も、その活用方法についての質問や、税理士や弁護士など他の専門家からの問い合わせに対応しています。こうしたアフターフォローも「依頼の流れ」の一部としてホームページに記載している不動産鑑定事務所が多いです。

なお、鑑定評価作業の期間は、物件数や複雑さによって異なりますが、一般的には現地調査から評価書完成まで1か月前後かかります。急ぐ場合は事前に相談することで、スケジュールを調整できる場合もあります。ただし、あまりに短期間での評価は精度に影響する可能性もあるため、可能な限り余裕を持ったスケジュール設定が望ましいでしょう。

不動産鑑定士の費用相場

お金と電卓

基本的な費用相場

不動産鑑定評価の基本料金は、一般的に20万円~50万円程度が相場となっています。具体的には、以下のようなイメージです。

不動産の種類費用相場
都市部の標準的な住宅地(50坪以下の土地のみ)15万円~25万円程度
一戸建て住宅(土地・建物)20万円~40万円程度
マンション一戸建てよりやや高額

費用に影響を与える主な要因としては、まず評価額の大きさが挙げられます。評価額が高くなればなるほど、不動産鑑定の費用も高くなるのが一般的です。例えば、評価額1億円の物件であれば、60~70万円程度の料金になることもあります。

なお、多くの不動産鑑定事務所は、国土交通省が発表している「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」を指標として料金を設定しています。この基準では、評価対象の種類や評価額に応じた料金表が示されており、例えば評価額3,000万円の一戸建て住宅の場合、基準額は325,000円(税抜)とされています。

簡易鑑定との違い

不動産鑑定評価書以外にも、より簡易的な「調査報告書」(簡易鑑定)という選択肢もあります。こちらは不動産鑑定評価書よりも15〜20%程度安く依頼できますが、公的な証明力はないため、相続税申告や裁判での証拠資料としては使えない点に注意が必要です。

費用が割引・割増されるケース

不動産鑑定士 費用の増減

評価を依頼する不動産の内容や特徴によっては、前述した相場よりも割引・割増されるケースがあります。

費用が割引されるケース

  • 複数の不動産をまとめて依頼する場合
  • 過去に同じ不動産の評価を行ったことがある場合

故人様が複数の不動産を所有されていた場合、それらをまとめて一つの不動産鑑定士に依頼することで、1件あたりの費用が割安になることがあります。例えば、同じ地域内に複数の土地や建物がある場合などが該当します。

また、定期的に同じ不動産の評価が必要な場合は、初回の鑑定手数料がいくら、2回目以降はいくら、というように割引されることが一般的です。

費用が高くなるケース

  • 裁判所に提出するための鑑定評価
  • 緊急を要する評価(至急扱い)
  • 特殊な不動産(広大地、農地、工場、ホテルなど)
  • 借地権や賃料(家賃、地代)の鑑定評価
  • 過去時点の鑑定評価
  • 限定価格の評価(特定の売買条件下での評価)

裁判所に提出する評価書は特に厳密な調査と分析が求められるため割増になることが一般的です。また、相続税申告の期限が迫っているなど急ぎの場合は、特急料金が加算されることがあります。

まとめ

この記事では、不動産鑑定士が相続業務でできること・できないことや費用体系について解説してきました。

不動産鑑定士の基本的な業務は「不動産鑑定評価書の作成」です。この評価書は、公平かつ客観的な第三者視点から不動産の適正価値を明らかにするもので、相続手続きの以下のような場面で活用されることが多いです。

  • 不動産を含む相続で公平に遺産分割を進めたいとき
  • 相続税の計算で適切な不動産の評価を求めたいとき
  • 相続した不動産を売却する際に価格判断したいとき
  • 生前から税金対策を行いたいとき

一方で、相続税申告書の作成や不動産の名義変更手続きの代行、不動産売買の仲介業務など、不動産鑑定士が対応できない業務もあります。これらは税理士、弁護士、司法書士、宅地建物取引業者など、他の専門家の領域です。

葬儀業界で働く皆様が不動産鑑定士の役割を理解しておくことで、ご遺族様の相続における悩みに幅広く対応できるようになります。不動産の価値をめぐる相続人間の意見の相違や、相続した不動産の売却に不安を感じているご遺族様に対して、「不動産鑑定士という専門家に評価を依頼する方法があります」と提案できることは、葬儀後のご遺族様への手厚い支援につながるでしょう。

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