相続に関わる専門家|司法書士ができること・できないことや費用体系一般公開

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葬儀後、ご遺族様が直面する大きな課題の一つが「相続手続き」です。慣れない書類や複雑な手続きが多いため、相続業務を取り扱う専門家に依頼したいと考える方も多いでしょう。

今回は、相続業務を取り扱う専門家のひとつである「司法書士」について解説します。司法書士は不動産の相続登記(名義変更手続き)や遺産分割協議書の作成など、相続手続きの多くを担当できる法律の専門家です。

本記事では葬儀業界で働く皆様に向けて、相続手続きにおいて司法書士がどのような役割を果たしているのか、具体的な業務内容を中心に紹介しますので、葬儀後のご遺族様支援に活かしていただければ幸いです。

葬儀社なら知っておきたい相続に関わる専門家解説

(1)司法書士(本記事)
(2)不動産鑑定士
(3)税理士
(4)弁護士
(5)行政書士
(6)ファイナンシャルプランナー
(7)銀行

目次

司法書士とは

司法書士

司法書士は、法務省が管轄する国家資格を持つ法律の専門家です。主に不動産の権利登記や会社設立時の商業登記など、法律に基づく各種登記手続きを行う専門家として知られています。司法書士の業務範囲は幅広く、不動産や会社に関する登記申請の代理だけでなく、相続に関する手続きも重要な業務の一つです。

相続が発生すると、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金の名義変更、遺産分割協議書の作成など、様々な手続きが必要になります。司法書士はこれらの手続きをご遺族様に代わって行うことができます。

一般的に、相続手続きには司法書士のほか、弁護士、税理士、行政書士なども関わることがありますが、それぞれ得意とする分野や法律で認められた業務範囲が異なります。司法書士は特に登記に関する手続きを中心に、戸籍調査や遺産分割協議書の作成などを行っています。

相続業務で司法書士ができること

相続手続きは、誰が相続人なのかを確定させることから始まり、財産の調査、分割方法の決定、各種名義変更手続きへと進みます。以下の6つが、相続手続きで司法書士が対応できる主な業務です。

司法書士の業務内容

それぞれの業務について、具体的に見ていきましょう。

(1)相続人の調査

家系図

相続が発生すると、まず必要となるのは「誰が相続人になるのか」を正確に把握することです。相続手続きを進めるためには、すべての法定相続人を確定させなければなりません。これは、相続財産の分配を決める遺産分割協議には、原則としてすべての法定相続人が参加する必要があるためです。

法定相続人とは?
民法によって定められた相続権を持つ人のことです。故人様の配偶者や子どもが該当します。

司法書士は、この相続人調査をご遺族様の代わりに行います。具体的には、故人様の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集し、法定相続人を特定します。戸籍の取得はご遺族様自身でも行えますが、複数の市区町村にまたがる場合や、何世代にもわたる戸籍を収集する場合は、かなりの時間と労力を要します。

相続人の調査の流れ

たとえば、法律の改正によって戸籍が新しく作られると、古い戸籍(除籍)に記載されていた情報が新しい戸籍に完全には引き継がれないことがあります。また、結婚した子どもは親の戸籍から出て新しい戸籍を作るため、現在の戸籍だけを見ても全ての相続人を把握することはできないことがあるのです。このため、出生から死亡までの連続した戸籍の流れを追うために司法書士へ依頼する方が多いです。

また、相続人調査の過程で「法定相続情報一覧図」という書類を作成することもできます。これは法務局が相続関係を証明する制度で、一度作成しておくと、銀行や不動産の名義変更など様々な相続手続きの際に、戸籍謄本一式を何度も提出する手間を省略できます。この手続きも司法書士が代行することで、ご遺族様の負担を大きく軽減できるのです。

相続人の調査にかかる費用は、通常2万円から4万円程度です。なお、家族構成が複雑な場合や、相続人が多い場合には費用が高くなることがあります。

(2)相続する財産の調査

土地 調査

ご遺族様が相続する、故人様の相続財産の調査も司法書士に依頼できます。

相続財産には、不動産、預貯金や株式・投資信託などの有価証券、生命保険、自動車などの資産と、借金やローンなどの負債があります。故人様が生前に家族に詳しく伝えていないことも多く、実際には想定以上の財産や負債が見つかることもあるのです。

司法書士は金融機関への照会を通じて預貯金口座の調査を行ったり、法務局での登記事項証明書の取得や固定資産税の納税通知書の確認を通じて不動産の所在や権利関係を確認したりします。また、証券会社や保険会社への照会も代行できます。

相続財産の調査に関しても、ご遺族様自身で行えますが、複数の金融機関に口座がある場合や、遠方の不動産がある場合などは、時間と労力がかかってしまいます。司法書士に依頼することで手間をかけずに、漏れのない財産把握ができるため、前述した相続人の調査と合わせて司法書士に依頼するご遺族様が多いです。

なお、司法書士に相続財産の調査を依頼する費用は、10万円から30万円程度が一般的です。ただし、財産が多岐にわたる場合や、複数の金融機関に分散している場合は、調査に時間がかかるため費用が高額になることもあります。

(3)遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書

相続人が複数人いる場合、故人様の財産をどのように分けるかを決めるのが「遺産分割協議」です。この話し合いの結果を書面にしたものが「遺産分割協議書」で、司法書士はこの遺産分割協議書の作成代行を行えます。

遺産分割協議書は単なるメモ書きではなく、法的効力を持つ文書で、特に不動産の相続登記を行う際には、遺産分割協議書が登記申請の添付書類として必要となります。この書類の作成が不適切だと、後日トラブルの原因になったり、登記申請が受理されなかったりする可能性があります。

ただし、注意すべき点として、司法書士は遺産分割の内容そのものを決めることはできません。つまり、「誰がどの財産をどれだけ相続するか」という分割方法は、あくまで相続人同士で話し合って決める必要があるのです。また、相続人間でトラブルが生じている場合、司法書士は特定の相続人の味方をして交渉することはできません。相続人間で対立しており、交渉の代理を依頼したい場合は弁護士への相談が適切です。

そのため、司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼するのは、すでに相続人同士で遺産分割の内容を決めており、かつご遺族様自身では遺産分割協議書の作成方法がわからなかったり、時間をかけられなかったりするケースが多いです。

遺産分割協議書の作成には1万円から5万円程度かかります。なお、相続財産の種類や相続人の人数によって内容が複雑になると、相場よりも高額になる場合もあります。

(4)不動産の相続登記

不動産登記

不動産の相続登記とは、故人様名義の土地や建物を、ご遺族様の名義に変更する手続きです。この相続登記は司法書士業務の中核をなすもので、その専門知識と経験が最も活かされる領域といえます。

相続登記は法務局でご遺族様自身が行うことは可能ですが、必要書類の収集や申請書の作成に時間と労力がかかります。例えば相続登記には以下のような書類が必要です。

  • 故人様の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 相続人全員の戸籍謄本や住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)

そのため特に、相続した不動産が複数ある場合や、共有名義で相続するなど登記が複雑になる場合は、司法書士に依頼するケースが多いようです。

また、2024年4月1日から相続登記が義務化されたという点もポイントです。これまでは相続登記をするかしないかは任意でしたが、法改正により、相続人は不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務となりました。この義務化は過去に相続した未登記の不動産も対象となるため、今後はますます相続登記を得意とする司法書士への依頼が増えると予想されます。

不動産の相続登記費用は5万円から15万円程度です。なお、この費用はあくまでも司法書士に支払う報酬の目安であり、別途戸籍謄本の取得手数料や、登録免許税などの実費がかかります。

(5)預貯金・有価証券の名義変更

銀行

故人様名義の預貯金や株式などの有価証券についても、ご遺族様への名義変更手続きが必要となります。これらの金融資産に関する相続手続きも、司法書士が代行できる業務の一つです。

預貯金の相続手続きでは、一般的に銀行や信用金庫などの金融機関に対して、故人様の死亡事実を証明する書類(死亡診断書や除籍謄本)、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本)、そして相続人全員の同意を証明する書類(遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書など)を提出する必要があります。

同様に、株式や投資信託などの有価証券についても、証券会社や投資信託の運用会社に対して、相続手続きを行う必要があります。これらの手続きは各金融機関によって必要書類や手続き方法が異なることがあり、複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれに対応する必要があるのです。

そのため、特に仕事をしているご遺族様にとっては、平日の営業時間内に複数の金融機関を訪問することが困難であり、一括して専門家に依頼する方が多いようです。

預貯金の解約・払戻手続きの依頼には通常、3万円から5万円程度の費用がかかります。ただし、銀行や証券会社ごとに手続きが必要なため、口座数が多いと費用も増えることが多いです。

(6)生前対策のサポート

遺言書を書くシニア

司法書士は相続が発生した後の手続きだけでなく、生前の相続対策についてもサポートを行っています。

中でも最も代表的なものが「遺言書の作成」です。遺言書は自分の財産をどのように分配するかを生前に決めておく重要な書類ですが、法律で定められた形式や記載方法を守らなければ無効になってしまいます。そのため、遺言書の作成を司法書士をはじめとする専門家に依頼する方もいます。

また、「家族信託」という仕組みも近年注目されています。これは認知症などで判断能力が低下した場合に、信頼できる家族に財産管理を託せる仕組みです。司法書士は家族信託の契約書作成や、信託財産に不動産が含まれる場合の登記手続きなどを取り扱っています。

さらに、判断能力が低下したときのために「任意後見契約」を結んでおくこともできます。これは将来、判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ自分で選んだ人に財産管理や身上監護を任せておく制度です。司法書士にはこの契約締結に必要な任意後見契約書の作成を依頼できます。

最後に生前対策のサポートにかかる費用についてです。
たとえば遺言書作成のサポートには、3万円から10万円程度かかります。
また、家族信託を司法書士に依頼した場合は、50〜100万円程度の費用が掛かります。ただし、費用は信託財産の金額により大きく異なります。
任意後見契約書の作成は5〜15万円程度が費用相場となっています。

相続業務で司法書士ができないこと

悩むスーツの男性

司法書士は相続手続きの多くに携わる専門家ですが、すべての相続業務を担当できるわけではありません。ここからは、司法書士業務の範囲外となる業務について解説します。ご遺族様に適切な専門家をご紹介できるよう、これらの区分を理解しておきましょう。

司法書士ができない業務対応できる専門家
(1)相続税申告の代行税理士
(2)相続トラブルの解決と交渉弁護士
(3)官公庁への許認可申請行政書士

なお、各専門家が相続業務で対応できる内容については、『相続に関わる専門家ガイド|葬儀社のアフターサービス充実に向けた基礎知識』でまとめて解説しています。

(1)相続税申告の代行

相続税申告

相続手続きにおいて、司法書士が行えない重要な業務の一つが相続税の申告に関する業務です。相続税は故人様の財産が一定額を超える場合に発生する税金で、相続税申告書の作成や税務相談は税理士の独占業務と定められています。

葬儀業界で働く皆様が遺族のサポートをする際には、故人様の財産が相続税の基礎控除額を超えそうな場合には、司法書士だけでなく税理士への相談も必要である点をご案内するとよいでしょう。また、相続税がかからない場合でも、故人様の確定申告(準確定申告)が必要なケースもあります。これも税理士の専門分野ですので、ご遺族様の状況に応じた適切な専門家を紹介できるようにしておくと安心です。

(2)相続トラブルの解決と交渉

相談する老人

相続が発生すると、ご遺族様の間で遺産の分け方をめぐって意見の相違が生じることがあります。このような相続トラブルの解決や、ご遺族様間の交渉については、基本的に司法書士が対応できない業務領域となります。これらの業務は弁護士の専門分野です。

例えば、故人様の不動産を長男だけが取得したいという場合、司法書士は遺産分割協議書の作成などのサポートはできますが、他のご遺族様を説得して長男の希望通りの分割にするための交渉はできません。

また、遺産分割について話し合いがまとまらず、家庭裁判所での調停や審判が必要になった場合も、司法書士は代理人として活動することはできません。家庭裁判所での「遺産分割調停」や「遺留分侵害額請求」などの手続きは、弁護士の専門分野です。

ただし、一部例外もあります。司法書士の中には「認定司法書士」(特定司法書士)という資格を持つ方もおり、訴訟額が140万円以下の遺留分侵害額請求などについては代理することが可能です。しかし、相続トラブルの多くはこの金額を超えることが多いため、実質的には弁護士に依頼するケースが一般的です。

葬儀業界で働く皆様が相続に関するご相談を受ける際には、ご遺族様の間に対立やトラブルの兆候がある場合、これらの解決は司法書士ではなく弁護士が得意としていることをお伝えできるとよいでしょう。

(3)官公庁への許認可申請

車の名義変更

相続手続きの中には、各種官公庁への許認可申請や届出が必要となるケースがあります。しかし、こうした官公庁への申請書類の作成や提出代行は、基本的に司法書士の業務範囲外となり、行政書士の専門分野となります。

例えば、故人様が所有していた自動車の名義変更は、運輸支局や軽自動車検査協会での手続きが必要です。この手続きに必要な申請書類の作成や提出は行政書士の独占業務であり、司法書士が代行することはできません。

このように、不動産登記や商業登記は司法書士、官公庁への許認可申請は行政書士というように、業務範囲が区分されています。ただし、実際には司法書士と行政書士の両方の資格を持っている専門家も少なくありません。このような専門家であれば、登記手続きと許認可申請の両方を依頼することも可能です。

そのため、葬儀業界で働く皆様は各専門家が対応している相続業務を把握していると、ご遺族様により正確なアドバイスができるでしょう。相続業務にかかわる専門家について幅広く知りたい方は、関連記事『相続に関わる専門家ガイド|葬儀社のアフターサービス充実に向けた基礎知識』をお読みください。

司法書士に相続業務を依頼する手順

相続登記の手順

ここでは、相続登記を依頼するときの手順例をご紹介します。相続登記は前述したように、複雑で手間がかかるため、多くのご遺族様が司法書士に依頼しています。

相続登記を依頼する司法書士を探すところから、業務終了までの流れは以下の通りです。

相続登記を司法書士に依頼する手順

(1)ご遺族様が司法書士を探す

司法書士の業務は多岐にわたるため、特に相続登記の実績が豊富な事務所を選ぶことが重要です。探し方としては、「ご遺族様がお住いの地域名 相続 司法書士」などのキーワードでインターネット検索するのが最も手軽な方法でしょう。ただし、現在はインターネットを通じて相続登記に必要な書類の取得や申請が可能なため、必ずしも近くの司法書士事務所に依頼する必要はありません。

そのため、「対面で打ち合わせを行いたいから近隣の事務所にする」や、「オンラインですべて済ませたいから地域よりも実績や知名度を優先する」など、ご遺族様の希望に合った司法書士事務所選びが重要になります。

(2)問い合わせと初回相談の予約

ご遺族様が依頼する司法書士を決めたら、次は事務所への問い合わせを行います。多くの司法書士事務所では電話やメール、ホームページの問い合わせフォームから連絡できます。初回相談の内容や必要な準備物、相談料の有無などを確認しましょう。事務所では初回相談を無料で実施しているところもあります。

【電話相談の一例】
①事務所ホームページの「相談予約フォーム」から予約
(氏名や相談希望日、相続手続きの相談をしたい旨を記入)
②司法書士から予約日時確定のメールを受信
③相談の参考資料があれば、返信メールに添付して送信
④予約日時に司法書士から電話があり、相談開始

(3)初回打ち合わせ・相談

初回の打ち合わせでは、司法書士から相続の全体像を把握するための質問や確認が行われます。この段階でご遺族様の手元に戸籍謄本や不動産の権利証などの資料がある場合は、持参するとスムーズに進められるでしょう。

ひと通りの打ち合わせが終わると司法書士から、今後必要となる手続きの流れや、費用の見積もりの説明があります。相談後すぐに依頼を決めても良いですし、持ち帰って検討することも可能です。

なお、複数の司法書士事務所から見積もりを取り、費用面だけでなく、対応の丁寧さや親身さなども含めて判断した方が良いとアドバイスできると、ご遺族様にとってより納得できる結果になるでしょう。

(4)正式依頼と業務着手

見積りに納得できたら、司法書士に正式依頼を行います。正式依頼時には、業務依頼書や登記申請用委任状などの書類に署名・押印が必要です。

また、司法書士は依頼者の本人確認が義務付けられているため、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の提示も求められます。

さらに、多くの事務所では、業務着手時に着手金(または実費預り金)の支払いを求められることが一般的です。

(5)相続人・財産調査と相続登記書類の作成

正式依頼を受けた司法書士は、ご遺族様から提供された情報をもとに調査を始めます。すでに相続人や相続財産が確定している場合でも、登記手続きに必要な書類を整えるため、司法書士によって再度確認作業が行われることがほとんどです。

調査後、司法書士は相続関係説明図や遺産分割協議書を作成します。

(6)書類への署名・押印

司法書士が作成した遺産分割協議書や登記申請用委任状には、すべての相続人による署名と実印の押印が必要です。相続人が遠方に住んでいる場合でも、司法書士が各相続人に書類を郵送し、署名・押印後に返送してもらいます。

(7)費用の支払い

相続登記書類への署名・押印が完了したら、次は費用の残金支払いに進みます。費用には、司法書士報酬の残金のほか、戸籍謄本等の取得にかかった実費や不動産の登録免許税などすべてを含みます。

初回依頼時に支払った着手金や預り金がある場合は、その金額を差し引いた残金を支払います。支払い方法は、司法書士事務所の指定口座への振込みか、書類提出時に現金で支払うなど、事務所の規定に従います。

(8)相続登記の申請と書類の受け渡し

すべての書類が揃い、費用の支払いが完了したら、司法書士は管轄の法務局に相続登記の申請を行います。登記が完了すると、新たな不動産の所有者となるご遺族様宛てに「登記識別情報通知」(権利証に相当するもの)が発行され、司法書士が代理で受け取ります。また、登記が完了したことを証明する「全部事項証明書」(登記簿謄本)も取得します。

これらの書類と相続関係書類一式を依頼者であるご遺族様に納品して業務は完了です。

司法書士の費用体系

お金と電卓

最後に、司法書士に相続手続きを依頼する際の費用をまとめて紹介します。費用は大きく分けて「実費」と「報酬」の2種類があります。

業務にかかる「実費」

実費とは、手続きを進める上で必ず必要となる公的な費用や、書類取得のための費用のことです。

実費の代表的なものには、まず戸籍謄本や除籍謄本などの取得費用があります。これらは相続人を特定するために必要な書類で、1通あたり450円〜750円程度の費用がかかります。故人様の出生から死亡までの戸籍類を収集するため、複数の市区町村から多数の戸籍を取り寄せることになり、総額で数千円〜1万円程度になることが一般的です。

また、相続登記を行う際には登録免許税が必要となります。これは国に納める税金で、不動産の固定資産税評価額の0.4%となっています。相続する不動産の数や価値によって金額は大きく変わりますが、この費用は司法書士に依頼しても自分で手続きをしても同じ金額がかかります。

司法書士の業務に対する「報酬」

司法書士に相続手続きを依頼する際の費用のうち、「報酬」は司法書士の業務に対する対価です。この報酬額は法律で一律に定められているわけではなく、各司法書士事務所が自由に設定できます。ただし、司法書士は依頼者に対してあらかじめ報酬額の算定方法や基準を示すことが義務付けられているため、ほとんどの事務所では報酬規程表を定めています。

相続手続きに関する司法書士報酬の一般的な相場としては、以下が目安です。ただし、これはあくまで相場であり、地域や事務所によって異なります。

  • 相談料:初回無料または5,000円程度
  • 相続人調査:2〜4万円程度
  • 遺産分割協議書作成:1〜5万円程度
  • 相続登記:5〜15万円程度
  • 預貯金の解約・払戻手続き:3〜5万円程度
  • 遺言書作成サポート:3〜10万円程度
  • 相続手続きを一括でサポートするプラン:30万円程度〜

まとめ

この記事では、司法書士が行う相続業務について解説してきました。相続人調査、相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記、預貯金・有価証券の名義変更、さらには生前対策まで、司法書士は幅広い相続関連業務に携わっています。

一方で、相続税の申告、相続トラブルの解決、官公庁への許認可申請など、司法書士が対応できない業務もあります。これらは税理士、弁護士、行政書士など、他の専門家の領域となります。

葬儀業界で働く皆様がこうした相続手続きにかかわる司法書士の知識を持ち、必要に応じて紹介できることは、ご遺族様へのケアの延長として大きな意味を持ちます。葬儀だけでなく、ご遺族様のその後の生活再建まで含めたアフターサポートの充実につながるでしょう。

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