令和7年6月に改正された労働施策総合推進法が、令和8年10月1日に施行されました。これにより、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)への対策は、企業の規模や業種を問わず、すべての事業主に課された法律上の義務となりました。
この法改正は、葬儀業界にとっても、決して他人事ではありません。人材の採用が難しく、今いる従業員の定着に頭を悩ませている葬儀社も多いことから、カスハラが原因で、大切に育ててきた従業員が職場を去ることは、何としても避けたいところです。
その一方で、葬儀は大切な方を亡くした直後のご遺族様と向き合う仕事です。深い悲しみや戸惑いの中にあるご遺族様から、理不尽に感じるような言動があったとしても、すぐに「カスハラ」と決めつけてしまえば、葬儀社としての信頼を損ないかねません。
ご遺族様の心情に寄り添いつつ、従業員の就業環境を守るという難しい対応が求められます。
本記事では、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」(以下、厚労省マニュアル)などをもとに、葬儀業界でカスハラが起きやすい背景を整理します。そのうえで、「社内の備え」と、ご遺族様・取引先・業務の委託先といった「社外との向き合い方」の両面から、葬儀社が取るべき対応を解説します。

- カスハラ対策は「努力目標」から「法律上の義務」へ
- 改正労働施策総合推進法のポイント
- 法律上の「カスハラ」とは――3つの要素で判断する
- 数字で見るカスハラの現状
- 葬儀業界でカスハラが起きやすい背景
- ①悲しみの中での「急な・高額な・やり直しのきかない」契約
- ②葬儀業界で想定されるカスハラの場面
- ③人手不足の業界だからこそ影響が大きい
- 【社内編】葬儀社が講じなければならない10の措置
- ①方針をはっきり示し、全従業員に伝える
- ②判断の目安と対応の手順を決めておく
- ③④相談窓口を決め、担当者が対応できるようにする
- ⑤⑥⑦起きた後の対応|事実確認、被害者への配慮、再発防止
- ⑧特に悪質なケースへの方針と体制
- ⑨⑩プライバシーの保護と不利益な取扱いの禁止
- 研修は「パート・アルバイト・夜間要員」まで漏れなく
- 打合せや受電の「録音」は有効か? 導入時に考えたいこと
- さまざまな業種で広がる録音の取組
- 葬儀業で導入する場合に考えられる利点
- 導入前に考えておきたいこと
- 【社外編①】受電業務を外部に委託する場合のカスハラ対策
- 働き方改革で進む受電の外部委託
- 委託先のオペレーターは「自社の従業員」ではないが……
- 委託契約や運用で確認しておきたいこと
- 【社外編②】取引先との関係|葬儀社が「加害側」にならないために
- 取引先の従業員からカスハラを受けた場合
- 協力業者に対する自社の言動を見直す
- 【社外編③】ご遺族や地域の理解を得るために
- よくある質問
- おわりに~義務化を機に見直したい、葬儀社と働く人・ご遺族との関係~
カスハラ対策は「努力目標」から「法律上の義務」へ

出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」
改正労働施策総合推進法のポイント
今回の法改正により、事業主はカスハラについて「雇用管理上必要な措置」を講じることが義務付けられました。具体的に何をすべきかは、厚生労働省の「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下、カスハラ防止指針)に示されています。