株式会社防長互助センター～防府典礼会館～┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

2022年8月14日

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社防長互助センターの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

株式会社防長互助センター（防府典礼会館）の概要

典礼会館名義で葬儀事業を営む愛グループは、1972年6月に設立された「下関市冠婚葬祭互助会」からスタートしました。
その後、積極的なM&Aにより営業エリアを拡大し、現在では以下の12社で構成されるグループ企業となっており、決算公告は各社で別々に出されています。

■愛グループ

上記グループ会社のうち、株式会社メイプルシティ（イタリアンレストラン事業）と、株式会社トレーダー愛（料理や生花など冠婚葬祭事業の付帯業務に関わる仕入・製造及び商品開発）は、直接的に冠婚葬祭事業を行っていないようです。

愛グループの組織図は公開されていないため、グループ各社の営業エリアは明確ではありません。
そのため「防長互助センター」の明確な営業範囲は不明ですが、「防長互助センター」が運営していると想定される葬祭ホールは「防府典礼会館」1か所のようです。

参照：Baseconnect 「株式会社防長互助センター」

「株式会社防長互助センター」がM&Aにより愛グループの傘下に入ったのは1998年で、すでに20年以上が経過しています。
にもかかわらず「株式会社防長互助センター」が、愛グループの創業地である山口県内で旧称のまま存続しているのには、何らかの事情があるのかもしれません。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

官報に掲載
日刊新聞紙に掲載
電子公告（会社のウェブサイトに掲載）

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか？

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

防長互助センター（防府典礼会館）の貸借対照表　

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50％以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10％を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産（建物や土地や機械など）を多く抱えている業種（製造業や鉄道会社）は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産（ソフトウェアや”のれん”など）を多く抱えている業種（IT企業や卸売業）は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん：その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右（運用状況と調達状況）の合計額は必ず一致します。
「資産」＝「負債」＋「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート（Balance Sheet）またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

防長互助センター（防府典礼会館）の自己資本比率は31.33％

自己資本比率は「自己資本比率（％）＝純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
防長互助センターの自己資本比率を求める式は下記のようになります。

1億3千0百万円÷4億1千5百万円×100＝31.33
防長互助センターの2023年1月期における自己資本比率は、31.33％（前年同期比1.76％増）となっています。

防長互助センター（防府典礼会館）の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例）・有形固定資産:建物、土地、車など
　　・無形固定資産:ソフトウェアなど

・繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内（数年など）に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

防長互助センターの資産合計の推移は以下のようになっています。

防長互助センターの2023年1月期における資産合計は4億1千5百万円（前年同期比0.48％減）となっています。
防長互助センターの資産合計は、過去6年間にわたって緩やかに減少していますが、大きな変動はみられません。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

・流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

・固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

防長互助センターの負債合計の推移は以下のようになっています。

防長互助センターの2023年1月期における負債合計は2億8千5百万円（前年同期比2.73％減）となっています。

防長互助センターの貸借対照表の推移を確認すると、2018年1月期では負債の全てが流動負債という状況でした。
しかし2019年1月期の時点で、流動負債の大部分が固定負債に変化している点に気が付きます。

これは短期借入から長期借入への変更、もしくは借り換えを行った場合に起きることの多い現象です。
長期借入は短期借入にくらべ審査が厳しく、融資を受けられるのは継続的に利益を出す見込みのある企業に限定されるのが一般的です。

愛グループ傘下のグループ会社の多くで、同時期に流動負債部分の減少と固定負債部分の増加がみられるため、愛グループとして資金調達を実施した可能性もありそうです。

1年以内に支払期日を迎える流動負債が大幅に減少した結果、2023年1月期の流動比率（流動資産÷流動負債×100）は1810.00％と、安全圏とされる100％を大きく上回っており、少なくとも短期的な支払いに関する心配は無い状況といえるでしょう。

防長互助センター（防府典礼会館）の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

防長互助センターの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債（借金）を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

防長互助センターの2023年1月期における純資産合計は、1億3千0百万円（前年同期比5.69％増）となっています。
愛グループ全体でみれば決して大きな金額ではありませんが、防長互助センターの資産合計は過去6年間にわたって順調に増加しており、企業運営の堅実さがうかがえます。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

防長互助センターにおける2023年1月期の当期純利益は7百万円（前年同期比16.67％増）となっています。
新型コロナの影響から、収益状況を大幅に悪化させる葬儀社も多い中、1拠点のみを運営していると想定される防長互助センターが、一度も当期純損失を出していない点は高く評価されるべきでしょう。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保（利益剰余金）が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

防長互助センターの場合は以下のように推移しております。

防長互助センターの2023年1月期における利益剰余金は、1億1千0百万円（前年同期比106.80％増）となっています。
防長互助センターの利益剰余金額は、少なくとも2018年1月期から増加を続けており、2022年1月期には1億円を突破しています。

防長互助センター（防府典礼会館）のまとめ

今回は株式会社防長互助センターの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
決算公告で公開される情報は限られているため、企業内部の状況を子細にわたって明らかにはできませんが、ある程度まで把握可能であることがお判りいただけたかと思います。

2020年から2022年にかけて、葬儀業界は新型コロナの影響により大きな打撃を受けましたが、防長互助センターの決算公告からはあまり影響を感じられませんでした。
少しずつですが堅実に利益を積み上げており、財務状況にも不安な点は見当たりませんでした。今後も防長互助センターの決算公告に注目していきたいと思います。