葬儀関連事業を展開する事業者の種類まとめ|冠婚葬祭互助会について詳しく解説

冠婚葬祭互助会

葬儀・葬祭を取り扱う事業者と聞くと、いわゆる「葬儀屋さん」をイメージするかもしれませんが、実はさまざまな業種の事業者が関わっています。
主なものをあげるだけでも、以下の8種類が存在します。

近年の葬儀業界は、葬儀の施行を取り扱う事業者だけで構成されているわけではありません。
上記のうち「葬儀ポータル」や「葬儀アフィリエイト」は、実際に葬儀を執り行うことはありませんが、集客の面で葬儀業界に大きな影響を与えています。

こういった事情から、葬儀業界全体の構造も複雑化しているため、以前に比べ分かりづらくなっています。
そこで葬研では、葬儀事業者を構成する事業者8種類について、それぞれ詳しく解説いたします。
本記事では『冠婚葬祭互助会』を取り上げて、事業の仕組みや歴史、メリット・デメリットについて紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

冠婚葬祭互助会とは?

全互協

冠婚葬祭互助会とは、会員相互が支援し合い、冠婚葬祭に関する費用や手続きの負担を軽減するための組織です。
冠婚葬祭互助会の業界団体である「全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)」には、日本全国に存在する冠婚葬祭互助会の98%にあたる205社が加盟しています。

冠婚葬祭互助会の仕組み

積立金

冠婚葬祭互助会の会員は定期的に会費を支払い、その積立金を使って、結婚式や葬儀などのライフイベントに対する経済的な支援を受けることができます。
また結婚式や葬儀などの際には、会員割引価格でサービスを受けられるのが一般的です。

冠婚葬祭互助会における積立金は、正式名称を「前受金(まえうけきん)」といいます。
あくまでも将来的に受け取るサービスの費用を、分割して前払いする形式ですので、金融機関などの積立預金のように利息が付くことはありません。
このような取引形態は「前払式特定取引(まえばらいしきとくていとりひき)」と呼ばれ、割賦販売法の規制対象となっています。

冠婚葬祭互助会事業は、消費者の財産を一時的に預かる事業形態となるため、消費者保護の観点から、経済産業省の認可事業となっています。
認可を受けるためには、財務基盤などについて厳しい条件をクリアする必要があるうえ、積立金の1/2を指定の方法で供託して、保全する義務を果たさなければなりません。
供託先についても、以下のような信頼性が担保される団体に限定されています。

  • 法務局への供託
  • 経済産業大臣の指定受託機関(保証会社)との供託委託契約の締結
  • 銀行や信託会社などの金融機関との供託委託契約の締結

また経営健全性を確認すべく、経済産業省による定期的な立ち入り検査がおこなわれるほか、消費者からの苦情などが多い場合は無通告での立ち入り検査が実施されます。
立ち入り検査の内容も時流の変化に合ったものになるよう、毎年のように検査基本方針及び検査基本計画が策定されているようです。

参照:経済産業省『令和5年度前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会、友の会)に対する検査基本方針及び検査基本計画』

冠婚葬祭互助会の歴史

沿革

冠婚葬祭互助会の歴史は、戦後間もなく物資が不足していた時代まで遡ります。
近隣住民がお金を出し合って花嫁衣装などの晴れ着を1着購入し、各家庭で結婚式があった際に利用するという、非常に相互扶助(そうごふじょ)的な意味合いの強い取り組みでした。

冠婚葬祭互助会を日本で初めて事業化したのは、現在の「株式会社 横須賀冠婚葬祭互助会」を運営する西村グループの創業者 西村熊彦氏といわれています。
その後、高度成長期の波に乗った日本では、冠婚葬祭に関する式典も大規模なものが主流となったため、冠婚葬祭互助会も各地で次々と誕生しました。

昭和47年(1972年)に割賦販売法が改正されて以降、冠婚葬祭互助会事業は経済産業大臣の許可が必要な事業となっています。
冠婚葬祭互助会全体における前受金は、2021年をピークに減少に転じているものの、その総額は2兆4,678億円と莫大です。

互助会前受金等の推移-min
出典:互助会保障株式会社 データで知る互助会

冠婚葬祭互助会の目的

冠婚葬祭互助会事業における本来の目的は、会員相互の支援を通じて生活の安定を図り、コスト削減や手続きの簡素化を実現することです。
冠婚葬祭互助会では、会員から集めた前受金の一部を利用して、結婚式場や葬儀式場の建設や衣装を購入するなどしてサービスを提供しています。

大規模な冠婚葬祭の式典が主流だった時代は、その費用に対する経済的な負担が非常に大きかったことから、前もって少しずつ積み立てて将来的な出費に備えるという形式は、消費者にとっても有益なものとして捉えられていました。
しかし近年では葬儀の規模も縮小傾向にあり、かつてほど費用負担も大きくなくなりつつあることから、2014年をピークに加入者も減少に転じています。

互助会の加入者数-min
出典:互助会保障株式会社 データで知る互助会

冠婚葬祭互助会のメリット・デメリット

メリットデメリット

冠婚葬祭互助会は50年以上にわたって継続している事業形態ですが、利用者にとって良い部分だけではありません。
メリット・デメリットの双方を知ったうえで、自身にとって有益かどうかを判断する必要があります。

メリット

冠婚葬祭互助会のメリットとしては、将来的に予想される出費を計画的に準備できる点でしょう。

近年では、いわゆる「家族葬」といった少人数で故人様を見送る葬送形式が主流になりつつあるものの、通夜式・葬儀・告別式をおこなった場合の費用は100万円前後といわれています。
一度に拠出する金額としては経済的な負担が大きいため、その一部だけでも事前に用意しておける冠婚葬祭互助会の積立システムには、一定のメリットが認められます。

また冠婚葬祭互助会の多くは、長年にわたって事業を継続していることから、冠婚葬祭式典に関する知識や経験が豊富なケースが少なくありません。
大規模な葬儀式場を所有している冠婚葬祭互助会も多いため、「できるだけ多くの方に故人様を見送ってほしい」「豪華な式場で手厚く葬りたい」といった希望にも対応可能です。
こういった対応力の高さも、冠婚葬祭互助会のメリットといえるかもしれません。

デメリット

冠婚葬祭互助会に加入するうえで注意しておきたいのは、毎月少しずつ積み立てた金額だけで、葬儀費用の全てをまかなえないという点です。
一定の会員割引は受けられるものの、積立金でまかなえる部分は葬儀に必要不可欠な物品(祭壇・仏具・棺・骨壷など)だけというケースが多いので、追加費用が必要となります。

また冠婚葬祭互助会から退会する際に、積み立てた前受金の全額が戻って来ない点もデメリットといえるでしょう。
冠婚葬祭互助会ごとに金額は異なるものの、基本的には前受金の合計額から解約手数料を引いた金額が解約返戻金(かいやくへんれいきん)となります。

冠婚葬祭互助会の中には、解約手数料を高率に設定しているところもあり、過去には裁判に発展したケースもあります。
冠婚葬祭互助会への加入を検討する際は、こういったデメリットがあることも念頭に置いたうえでの判断が必要です。

まとめ

今回は「冠婚葬祭互助会」の特徴や歴史、メリットデメリットについて、分かりやすく解説しました。
現在の葬儀業界における「冠婚葬祭互助会」の立ち位置についても、ご理解いただけたかと思います。

冠婚葬祭互助会は、日本国内で施行される葬儀の約4割を占めるといわれています。
しかし葬儀の小規模化・簡素化が進む中で、ビジネスモデルとして苦境に立たされているようで、互助会以外の事業に参入するケースも散見されます。
すでに家族葬専門の子会社を設立して、互助会とは別ルートでの集客をおこなっているケースも散見されるため、今後の動向についても注視していきたいところです。

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