葬儀関連事業を展開する事業者の種類まとめ|農協/JA葬祭について詳しく解説

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葬儀・葬祭を取り扱う事業者と聞くと、いわゆる「葬儀屋さん」をイメージするかもしれませんが、実はさまざまな業種の事業者が関わっています。
主な事業者を挙げるだけでも、以下の8種類が存在します。

近年の葬儀業界は、葬儀の施行を取り扱う事業者だけで構成されているわけではありません。
上記のうち「葬儀ポータル」や「葬儀アフィリエイト」は、実際に葬儀を執り行うことはありませんが、集客の面で葬儀業界に大きな影響を与えています。
こういった事情から、葬儀業界全体の構造も複雑化しているため、以前に比べ分かりづらくなっています。

そこで葬研では、葬儀事業者を構成する事業者8種類について、それぞれ詳しく解説することにいたしました。
本記事では、農業協同組合(農協)が提供する葬祭サービス『JA葬祭』を取り上げて、事業の仕組みや歴史、メリット・デメリットについて紹介しています。

ぜひ最後までご覧ください。

目次

農協/JA葬祭とは?

出典:全国のJA葬祭のご案内 | 全国のJA葬祭のご案内
出典:全国のJA葬祭のご案内 | 全国のJA葬祭のご案内

『JA葬祭』とは、日本全国に拠点を持つ農業協同組合(JA)が提供する葬儀サービスです。
本来は組合員向けのサービスであるものの、一定の条件を満たせば組合員以外も利用可能です。

JA葬祭では農協のネットワークを中心に顧客を獲得しています。
また、多くのJA葬祭では各地域にホールを所有していることが多く、葬祭事業だけでなく地域住民のための様々なイベントも開催しているようです。

農協の存在意義

農協に所属する農家の交流

「農協」とは協同組合の一種で、中小規模の農産物生産者や消費者が相互扶助の観点から組織する団体を指します。
農業者の経済的社会的地位の向上や農業生産力の増進、国民経済の発展に寄与することを目的とし、農業協同組合法に基づいて設立されています。

組織の特徴を活かし、地域社会に根ざした葬儀の実施を行っています。

参照:農林水産省 農協とは(設立方法も含む)

葬儀施行数におけるJA葬祭の占める割合

国内で葬儀・葬祭事業を営む事業者のうち、互助会や農協(JA)・生協といった会員団体の加入者数は、以下のグラフのように推移しています。

葬儀施行数におけるJA葬祭の占める割合グラフ

上記人数のうち65歳以上の高齢者が占める割合は、農協(JA)が69.51%(7,274,754名)と、高い水準となっています。

出典:2021 年度 全国生協組合員意識調査報告書
出典:農林水産省 農業労働力に関する統計

またJA葬祭は葬儀業界において、冠婚葬祭互助会や葬儀専門業者に次ぐ高い葬儀施行の割合を誇ります。
全日本葬祭業協同組合連合会の調査によると、葬儀業界における事業形態別の葬儀施行割合は以下の通りです。

出典:経済産業大臣認可 全日本葬祭業協同組合連合会 2017年4月28日 葬儀業界の現状
出典:経済産業大臣認可 全日本葬祭業協同組合連合会 2017年4月28日 葬儀業界の現状

JA葬祭は葬儀業界において冠婚葬祭互助会や葬儀専門業者に次いで15%と、高い葬儀施行割合を誇っています。

JA葬祭の主な特徴

JA葬祭の主な特徴は、以下の通りです。

  • 地域に根差している
  • 24時間体制・年中無休の徹底した組合員サポート
  • 幅広い葬儀形態に対応
  • 宗旨や宗派不問
  • 事前相談やアフターサポートの充実
  • 会員割引や入会特典がある
  • 農協の金融関連サービスと連動できる

詳しく解説いたします。

地域に根差している

出典:お近くのJA葬祭窓口 | 全国のJA葬祭のご案内
出典:お近くのJA葬祭窓口 | 全国のJA葬祭のご案内

JA葬祭最大の特徴は、全国の農協が地域ごとに展開し、組合員向けの葬儀サービスを提供していることです。
地域の特性を理解しているため、地域ごとの葬儀の流れや、しきたりにも適切に対応しているようです。
地域の農産物やサービスを通じて組合員と長い時間を共有してきたJAだからこそ、地域住民の信頼を得ているのでしょう。

また、JA葬祭は地域に密着した葬祭会場や窓口を提供しており、農業者の身近な存在として葬祭事業を通して寄与しています。
JA葬祭は地域との強い結びつき、地域ごとのニーズに寄り添った葬儀を運営している様子がみてとれます。

24時間体制・年中無休の徹底した組合員サポート

24時間体制・年中無休のJA葬祭コールセンターのイメージ画像

JA葬祭では、各都道府県の事業所で24時間体制・年中無休にて組合員へのサポートを徹底している点も特徴的です。
各都道府県のJA葬祭窓口では、葬儀や供養に関するご相談を常時受け付けており、深夜や早朝など緊急時にいつでも電話での連絡ができます。

葬儀は事前に準備も可能ですが、ある日突然起こり得るものです。
JA葬祭の徹底したサポートにより、組合員の方々は、電話で24時間・年中無休のサポートが受けられる安心感が得られます。

幅広い葬儀形態に対応

JA葬祭の葬儀イメージ

JA葬祭では、一般的な葬儀形態だけでなく、最新の葬儀形態にも対応する柔軟性があります。

例えば、JA葬祭の1つであるJA東京中央セレモニーセンター様では、一般葬や家族葬、直葬、1日葬に加えて、ペット参加OKの葬儀や儀式前焼香、リモート葬も提供しています。

また、JA葬祭では基本的な葬儀形態を選択した後に、さまざまなオプションを加えることで、故人の遺志やご遺族の要望に沿った葬儀の実施が可能です。
個々のニーズや時代の変化に合わせた多様な葬儀スタイルを提供することで、幅広い選択肢の中から自分やご家族に最適な葬儀を実現できるよう工夫されています。

宗旨や宗派不問

JA葬祭では宗旨や宗派を問わず、少人数から多人数まで、仏式、神式、キリスト教などあらゆる葬儀にも対応可能です。
JAでは全国に多くの会員を抱えている背景から、多様な葬儀ニーズに応えられるよう、幅広い宗教や信条を尊重していることがうかがえます。

事前相談やアフターサポートの充実

アフターフォローと事前相談のイメージ

JA葬祭では、経験豊富なスタッフによる事前相談や、アフターサポートも充実させています。
葬儀を迎える前の事前相談では、お客様の希望や要望を丁寧にヒアリングし、最適なプランを提案してくれます。

また、葬儀が終わった後もアフターケアや手続きなどのご遺族向けサポートも一貫して対応可能です。
利用者にとっては、相談からアフターフォローまでJA葬祭1か所ですすめられ、依頼先を変更せずに一貫対応してくれるため、利便性の高いサービスといえるでしょう。

会員割引や入会特典がある

出典:JAやすらぎ会員の入会案内 | 葬儀専用ホール JAやすらぎセンター
出典:JAやすらぎ会員の入会案内 | 葬儀専用ホール JAやすらぎセンター

JA葬祭では、JAの組合員になることで割引や特典を受けられる点も特徴の1つです。
組合員になることで、葬儀費用の割引や優待サービスを受けることができます。

また、各JA葬祭の中には独自の会員制度を設けているケースもあるようで、制度を設けているJA葬祭の会員サービスに入会することで利用できる特典やサービスもあります。
各JA葬祭の会員サービスでは独自の会員割引に加えて、カルチャー教室やセミナー、イベントなどを通じて、会員のより良い暮らしをサポートしているようです。

農協の金融関連サービスと連動できる

JAバンクの通帳とカードのイメージ画像

JA葬祭の一部では、農協の金融関連サービス(JAバンク等)と葬祭事業が連動している地域があります。
例えば、JAバンク香川の葬祭定期貯金「やすらぎ」JA沖縄の「やすらぎ会定期貯金・定期積み立て」では、一定額の葬儀費用を積み立てることで、割引などの特典を受けられます。

金融サービスと葬儀事業サービスの連動により、葬儀費用の事前準備や抑制を喚起することで、JA葬祭は独自の会員制度への登録を促しているようです。

農協/JA葬祭の成り立ち

JAならではの相互扶助のイメージ

JA葬祭は、大正時代からの歴史を持つ農協の、組合員向けサービスの一環として生まれました。
当時、JAは産業組合と呼ばれており、相互扶助の精神のもと葬具の共同利用(貸出)を行っており、その状態が昭和40年代まで続いていました。

その後、葬儀の施行を葬祭業者に委託する形が一般化するものの、JAは組合員のニーズに応えるため、葬儀のお手伝いも含めたサービス提供に舵を切ったそうです。
現在の形になるまでには、JA同士の合併も行われてきましたが、相互扶助の精神は変わらないまま、根幹となる歴史や精神は受け継がれ、現在でも地域に根差した葬儀サービスを提供しています。

JA葬祭は長い歴史を持ちながらも、時代の変化に柔軟に対応し続けていることがわかります。

農協/JA葬祭の問題点

地域に根差した葬祭サービスを提供するJA葬祭ですが「非農業従事者が多いこと」と「地域によってサービス内容が異なること」の問題を抱えています。
次章では、上記2つの問題点について、詳しく解説いたします。

非農業従事者の組合員が多い

出典:農協の組合員数 1047万人 0.2%減-2019(令和元)年度|ニュース|農政|JAcom 農業協同組合新聞
出典:農協の組合員数 1047万人 0.2%減-2019(令和元)年度|ニュース|農政|JAcom 農業協同組合新聞

本来、JAに加入する方々向けに発足したJA葬祭ですが、現在では農業に従事していない非農業従事者の組合員が多く存在しています。

出典:農業協同組合新聞『農協の組合員数 1047万人 0.2%減-2019(令和元)年度』
出典:農業協同組合新聞『農協の組合員数 1047万人 0.2%減-2019(令和元)年度』

農林水産省の発表によると、2015年~2019年における農協組合員数は、ほぼ横ばい、または微減といった状態が続いているようです。

農業協同組合法(農協法)により、農協のサービスや施設利用は原則として組合員のみが対象ですが、一部例外として員外利用が認められています。
員外利用は組合員の20%までとされていますが、員外利用の制限は厳密に守られていないという実情があるようです。
特に都市部ではJA葬祭の施行件数が著しく増加し、非組合員の利用が全体の20%を超えているのではないか、という見解も確認できました。

一方で専門葬儀社はJA葬祭と異なり、税制上に優遇措置もありません。
農協の特典や優遇措置を受けながら、農業に関わらない人々が准組合員としてJA葬祭を利用した葬儀を執り行うことは、葬儀業界内での公正な競争環境を損なう要因となっているようです。

地域によってサービス内容が異なる

サービス内容が異なるため困っているJA組合員の夫婦

更に挙げられる問題点として、JA葬祭が地域ごとに異なるサービス内容を展開しているという点です。
JA組合員向けの葬儀プランは地域ごとに独自に用意されており、物品やサービスの提供内容や価格にばらつきがあります。

例えば、葬儀料金は全国一律ではなく、地域によって異なります。
利用者は、あらかじめ葬儀を執り行う地域のJA葬祭のホームページなどを確認し、価格やプランの詳細を確認しなけれなばなりません。

以上の点から、組合員価格での利用メリットが地域によって異なるばかりか、プランの適正性も判断しにくくなっているのが現状です。

JA葬祭の今後の展望

JA葬祭の今後の分かれ道のイメージ画像

JA葬祭は全国に拡大し、地域に密着した葬祭事業を展開しています。
営業経費の抑制や組織的な取り組みの強化により、価格設定で有利な競争力を持っています。
また、JA葬祭各事業所では、担当者に葬祭ディレクターの取得を推奨しており、資格を持ったスタッフが活躍しているようです。

JA葬祭が抱える問題点から考えると、組合員の資格確認や葬儀サービスの組合員優先利用を明確にするなど、JA葬祭側も徹底した対応を行う必要があるのではないでしょうか。

また、有利な競争力を持っているからこそ、より公平かつ透明性のあるサービス提供を目指すべきでしょう。
JA葬祭の地域間サービスの統一化や適正価格の設定などが、業界内外からより強く求められる点でもあるといえます。

まとめ

JAの事務所イメージ

今回は、葬儀関連事業を展開する事業者の中でも、『農協/JA葬祭』に焦点を当てて解説いたしました。

JA葬祭は農協組合員を中心に葬儀サービスを提供する、地域密着型の葬祭事業者です。
24時間体制のサポートや宗派不問の対応など、幅広いニーズに応えられる一方、実態は非農業従事者の組合員が多いほか、地域によってサービス内容が異なるなどの問題点が存在します。

合併等で順調に事業を拡大しながら、葬祭ディレクターの育成などに取り組んでいるため、今後も組織的な強化やサービスの拡充を進めていくことでしょう。
JA葬祭がより良いサービス展開を今後も継続していくためにも、組合員が資格を満たしているかのチェックや競争力の公平化など、問題点の早期解決や打開策に取り組んでもらいたいところです。

葬研では、今後も葬儀社様向けに幅広く情報を発信してまいりますので、ぜひ参考にしていただければと存じます。

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