近年、少子高齢化が進んでいる日本では、労働人口が減少傾向にあるため、業種を問わず人材不足が懸念されています。
葬儀業を含むサービス業では特に深刻な状況で、今後ますます人材の確保が難しくなると予想されます。
こうした状況を打開するために、厚生労働省は高齢者の雇用機会確保に取り組んでおり、その実現に向けてさまざまな支援策を打ち出しています。
その一環として、厚生労働省が所管する「独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構(JEED)」が主導し、全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)に委託する形で、産業別高齢者雇用促進事業として『葬儀業における高齢者活用推進のためのガイドライン』が作成されました。
当ガイドラインは、高齢者雇用を検討されている葬儀社様にとって非常に有益な資料となっていますが、活用方法が分かりにくいと感じる方も多いようです。
そこで本記事では、葬儀社様が高齢者雇用に取り組むメリットや成功させるヒントなど、ガイドラインの重要なポイントを解説します。
後半では、他業種における高齢者雇用の事例もご紹介していますので、高齢者雇用を考えていらっしゃる葬儀社様はぜひ最後までご覧ください。
葬儀業界で高齢者雇用が必要な理由
近年の日本では有効求人倍率が高い状況、いわゆる売り手市場が続いており、さまざまな業種で人材確保が難航しているようです。
中でも葬儀業界は、葬送という厳粛な儀式を取り扱ううえ、365日24時間対応が求められる業種のため、長いあいだ人材不足に悩まされてきました。
さらに現代日本の社会状況を考慮すると、人材確保はさらに難しくなることが予想されます。
死亡者数の増加
日本は世界でもトップクラスの超高齢化国家となっており、現在の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳です。
団塊の世代が高齢になる2040年には年間死亡者がピークを迎え、約167万9千人に達すると予想されます。
死亡者数の増加にともない葬儀の施行数も増加すると予想されるため、いっそう繁忙期が長くなる可能性が高いと思われます。
下のグラフは、1990年以降の国内の死亡者数推移と今後の予測値です。
これまでと同じ人員数で、増加する葬儀に対応するとなると、当然ながら従業員の負担も拡大するため、離職によりさらに人員不足が加速するといった悪循環に陥ることにもなりかねません。
このような事態を避けるためにも、就業意欲のある高齢者の雇用は、有益な取り組みといえるでしょう。
少子高齢化の影響
葬儀業界は常に人材不足が課題とされてきましたが、今後はさらに厳しい状況になると予想されます。
下記のグラフは、2020年以降の生産年齢人口数推移と今後の予測です。
2010年をピークに総人口は減少し始めており、生産年齢人口といわれる、15歳から64歳の人口は今後もさらに減少していくとみられます。
葬儀業界の採用活動にもかなり影響があると思われますが、そこで着目したいのが高齢者の雇用です。
人口に占める65歳以上の割合は終戦直後は5%でしたが、現在は約28%で2060年には人口の40%を占めると予想されます。
定年退職をしたが、元気なうちはまだまだ働きたいと考える高齢者は多いと思われます。
また、葬儀業に従事する方の平均年齢も上昇傾向にありますが、定年後も継続して勤務できる仕組みの構築、もしくは定年制度の撤廃などで、少なくとも現状の人員配置を維持することは可能でしょう。
加えて、葬儀の施行に関する豊富な経験や知識をもった人的リソースの流出も最小限に抑えられますので、そのメリットははかり知れません。
高齢者雇用の課題となるリスキリング
リスキリング(Reskilling)は、英語で「学び直し」や「再訓練」を意味する言葉ですが、経済産業省では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
出典:経済産業省『リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―』
企業が主体となり、自社従業員の新たなスキル習得を促していくのが特徴であるリスキリングは、2022年の流行語大賞にノミネートされたこともあり、急速に認知が広がりました。
今後の葬儀業界で求められるスキル
これまでの葬儀業界における従業員教育では、伝統的な葬儀を施行するための技術習得に重きが置かれてきたようです。
しかしDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の機運が高まっていることを受けて、葬儀業界でもDX化への取り組みを開始する企業が増えつつあります。
こうした市場の動向に対応すべく、葬儀社向けの業務支援(施行管理・顧客管理)システムをはじめ、多種多様なツールがリリースされています。
中でも業務支援システムは、企業内での安全でスピーディーな情報共有や、事務作業の負担軽減に役立つ便利なツールですが、その恩恵を受けるためにはシステムを使いこなすだけのスキル習得が不可欠です。
また葬儀の施行や式場内の設備・装飾についても、オンライン葬儀やプロジェクションマッピング技術を活用した祭壇、デジタルサイネージなど新しい技術が次々に誕生しており、大きく様変わりしつつあります。
とはいえ、葬儀を無事に執り行えるようにご遺族様をサポートするという、事業の根幹部分に変わりはないため、葬儀業界での高齢化雇用で求められるのは、リスキリングよりもアップスキリングが中心となる可能性が高そうです。
葬儀社の高齢者雇用で求められるリスキリングへの取り組み
これまでの葬儀業界では、葬儀のスケジュールや顧客情報を共有する方法として、書類やホワイトボードを活用するところも多かったため、パソコンやタブレット端末の操作に苦手意識を持つベテラン従業員も少なくありませんでした。
そのため、現時点で高齢者雇用の対象となっている世代、あるいは近い将来に高齢者雇用の対象となる世代の従業員に、高いレベルでのデジタルスキル習得を求めるのは現実的ではないでしょう。
しかし将来的には、業務の効率化に向けたDX化と、それに伴う業務プロセスやワークフローの大幅な変更は不可欠になると予想されます。
デジタル機器の操作についても一定レベルの習熟が求められますので、会社側でも社内研修やOJTなど、リスキリングに向けた取り組みが必要となりますが、高齢者雇用の対象者については必要最小限に留めるといった選択も視野に入れておくべきかもしれません。
一方、今後20年~30年にわたって活躍が期待される30代以上のミドルシニア層については、70歳までの継続雇用を見越した早めの対策が重要です。
新しい技術についても後れを取ることが無いよう、適宜トレーニングの機会を設けるといった企業側の努力が、成功のカギとなる可能性も高そうです。
葬儀業界における高齢者雇用のメリット
葬儀業界における高齢者雇用には、葬儀社様側・高齢者側の双方にメリットがありますのでそれぞれ解説します。
葬儀社側のメリット3項目
高齢者を雇用する、葬儀社様側のメリットを3つご紹介します。
高齢者が持っている強みを、業務に活用して働いてもらえます。
1.地域住民とのコミュニケーション
葬儀社様は地域に根ざしているところが多く、地域住民の皆さんとの交流が業務においても重要になります。
高齢者の中には、自治会活動などを通じた住民同士のコミュニティに属している方も多いと思われます。
すでに地域でさまざまな活動をしている高齢者を雇用することで、地域住民との良好な関係性構築も期待できるため、業務に好影響を与える可能性もあるでしょう。
2.高い信頼感
大切な方を亡くされたばかりのご遺族様は、大きな悲しみと不安でいっぱいになると思われます。
精神的に不安定なご遺族様を支えることも、葬儀社スタッフの重要な業務の1つですが、こうした場面において、ベテランスタッフは安心感を与える存在といえるかもしれません。
特に、自身で葬儀の喪主を経験をしている方は、ご遺族様の気持ちを理解し、寄り添った対応ができるので、ご遺族様から信頼や感謝を得られることでしょう。
3.若年従業員と業務で協力
葬儀社様の若手従業員とともに業務をおこなうことで、お互いによい影響があります。
高齢者にとっては、若年従業員に自分の経験や知識を伝えることでやりがいを感じられ、高齢者が不得意な業務を、若年従業員が教示したり補足したりできます。
若年従業員にとって、同年代ばかりの職場ではなく年齢層が違う高齢者がいることで、職場の雰囲気も違ってくることもあるでしょう。
高齢者側のメリット3項目
葬儀社様に就業する、高齢者側のメリットを3つご紹介します。
高齢者ならではの特性を業務に活かし活躍できます。
1.経験を活かせる
近年葬儀の小規模化や簡素化が進んでいますが、一方で故人様らしさを表現できる葬儀の要望など、ご遺族様のニーズが多様化しています。
人生経験豊富な高齢者は、自分の家族や親族、あるいは知人の葬儀を経験していることも多いため、たとえ葬儀業界での勤務経験がない方であっても、さまざまな提案ができると思われます。
2.信頼感にもとづく対応
高齢化が進む現在では平均寿命も延びており、亡くなる方は高齢の方が多くなっています。
当然ながらご遺族様も高齢者が多く、同年代のスタッフが対応することで、ご遺族様からの信頼と安心を得られるでしょう。
一見すると、葬儀社様・ご遺族様にとってのメリットに感じるかもしれませんが、人から感謝され自己肯定感を高く持てることは、高齢者にとって大きな意味を持ちます。
自信を失いがちな高齢者にとって、周囲の人から信頼されることは大きな喜びとなり得ますし、職場を自分の居場所と感じることで、自身が生きている意味を見出せるかもしれません。
3.短日・短時間労働ができる
勤労意欲の高い高齢者の中には、体力面に不安を抱える方もいらっしゃるため、働く日数や時間の短縮を希望するケースが少なくありません。
葬儀業界では、常勤社員が休日を取得した日に人手不足を補うといった働き方であれば、日数や時間にかかわらず比較的自由に業務ができると考えられます。
葬儀業界の高齢者雇用を成功させる5項目
働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。
365日24時間対応が一般的な葬儀業界でも、休日制度の改革などを進める必要があります。
従業員の負担を減らし、休日を確保するためにも高齢者雇用は有用ですが、取り組みを成功させるためには一定の配慮が求められます。
1.高齢者の希望や能力を把握する
高齢者を雇用する際には、まず職種や休日について本人の希望をよく聞いたうえで、適格な業務を担当してもらうことが大切です。
また葬儀業における棺の運搬などの肉体的負担については、台を低くしたり補助具を利用したりし、将来的には動きを補助するロボットの導入も必要になるかもしれません。
2.高齢者の尊厳に配慮する
高齢者雇用を成功に導くためには、正社員と勤務形態が異なる高齢者スタッフに対しても可能な限り同等に扱うなど、思いやりを持った対応が必要となります。
欧米の高齢者が年齢を重ねるにつれて自信を失っていくのと対照的に、日本人は高齢になるほど自尊心が高まるという特徴があるようです。
業務に携わる以上、注意や指導が必要となる場面は必ず訪れますが、高齢者の自尊心を著しく傷つけることの無いよう、態度や言葉遣いに一定の配慮が求められます。
3.業務への評価をおこない意欲を高める
高齢従業員に最大のパフォーマンスを発揮してもらうためには、モチベーションを高めるための動機づけが必要となります。
短時間勤務の高齢従業員であっても、業務への評価をおこない、働きに対して賞与を支払うなど、やりがいを見いだせるような工夫が必要です。
4.コミュニケーションや情報共有を大切する
高齢従業員は短日・短時間勤務が多くなると予想されますが、担当業務を適正に遂行してもらうためには、必要に応じた情報共有が重要です。
常勤社員とのコミュニケーションを密にするよう心掛け、必要であれば全体のミーティングに参加してもらうなど、連絡事項を遺漏なく伝えるための取り組みも必要となります。
5.分業体制の構築
葬儀業界ではご遺族様からの信頼を得るため、一つの葬儀を一人の従業員が担当する、ワンオペレーションが望ましいとされています。
しかし高齢従業員が活躍できるように、また働き方改革関連法に対応し常勤社員に休日を取得してもらうためにも、分業体制の構築が必要です。
そのためには各従業員を的確に業務に配置し、マニュアルを作成して引き継ぎを徹底させることが重要です。
高齢者の活躍が期待できる業務
こちらでは葬儀業において、高齢者が活躍できる業務についてご紹介します。
葬儀業で長期間働いてきた場合と、異業種に携わってきた場合で活躍できる業務が異なります。
1.葬儀一式を担当
葬儀社業務における「ワンオペレーション」とは、一つの葬儀を一人の従業員が一貫して担当することを指す言葉で、高齢従業員の中でも比較的若い60歳台前半の方や、もともと正社員で再雇用された人材が担当するケースが多いようです。
これまで数多く葬儀を担当し、寺院とも良好な関係を築いているようなベテラン従業員が葬儀一式を担当することで、ご遺族様からの信頼も得やすくなるでしょう。
ご遺族様と強固な信頼関係が構築されれば、葬儀後の法要やお墓・仏壇についても相談される可能性が高まります。
2.事前相談
近年では葬儀社様が事前相談を受けることが多くなっています。
葬儀業にとって事前相談は重要な事業案件であり、担当する従業員は葬儀について深く理解している人物が適任と思われますので、葬儀に関する豊富な知識や、積み重ねた経験に裏打ちされた技術などをもつ高齢従業員は、うってつけの担当者といえるでしょう。
また葬儀業界での勤務経験がない人材であっても、これまでの人生経験から葬儀に対する顧客ニーズを把握することは可能ですし、相談者も同年代であることから、心情に寄り添った的確なアドバイスの提供は可能です。
3.若年従業員との業務
高齢従業員と若年従業員がともに業務をおこないながら、お互いが切磋琢磨してサポートし合うことで、業務に対する意欲も高まると考えられます。
高齢従業員が若年従業員に対し、自分の持っている知識や経験を伝え育成する技術・技能の伝承は、葬儀社様が企業競争力を維持・向上させるうえで非常に重要です。
こうした点を考慮すると、高齢者を継続雇用する仕組みづくりは、多くの葬儀社様にとって不可欠な取り組みといえるでしょう。
4.短日・短時間の周辺業務
葬儀社での勤務を希望する高齢者の中には、葬儀業界で働いてきた方だけではなく、異業種に身を置いていた方もいらっしゃるでしょう。
こういったケースでは、葬儀会館の清掃をおこなったり、葬儀の日時を知らせる看板の設置や撤去といった業務に携わることが多いようです。
これまでは、常勤社員が担当していたこれらの業務を高齢従業員がおこなうことで、常勤社員の負担が軽減されます。
また葬儀業の経験がない高齢者でも、自分の体調や家庭の都合に合わせて短日・短時間で働けます。
他業種における高齢者雇用事例
ここからは、葬儀業以外の他業種における高齢者雇用事例をご紹介します。
葬儀業の高齢者雇用にも、何かヒントになるかもしれません。
なお独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構ホームページの『高齢者雇用に関する事例集』では、さまざまな業種における高齢者雇用の具体事例が数多く紹介されています。
1.梶原電機 株式会社
~高齢社員の要望に合わせた個別勤務制度の導入~
梶原電機 株式会社様は、照明器具を中心に製造しており、銅やステンレス、アルミ、鉄などの材料を切断、溶接、塗装、組立加工をおこなう製造会社です。
おもに電機メーカー、電気工事業、住宅メーカーなどから受注し、近年はLEDや太陽光パネルなども製造販売して業務を拡大しています。
◆会社概要
【社名】梶原電機 株式会社
【設立】1965年(昭和40年)
【所在地】宮城県 仙台市
【従業員数】43名
*55歳以上の高年齢者率 23.3%
【定年年齢】60歳
【継続雇用制度】定年後は希望者全員を65歳まで再雇用
出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高年齢者の多様な働き方事例集
梶原電機 株式会社様の、年齢別従業員構成は次の表のとおりです。
44歳以下 | 45~54歳 | 55~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | 合計 |
25名 | 8名 | 6名 | 1名 | 2名 | 1名 | 43名 |
58.1% | 18.6% | 14.0% | 2.3% | 4.7% | 2.3% | 100.0% |
定年は60歳ですが、希望者全員を1年単位で契約を更新し、65歳まで嘱託として再雇用する制度を導入しています。
梶原電機 株式会社様では、製造工程に優れた技術と経験が必要で、資格が必要な作業や危険な作業もあり、また化学薬品を使用することもあるため職場環境は厳しいといえます。
そのため、求人しても若年者の応募がなく常に労働力不足が問題となっていて、高齢従業員が長く勤務することを求める状況となっています。
定年以降の高齢従業員は、年金を受給していることで低賃金でも勤務してもらえることや、これまでの経験や技術力があることなどから、会社にとっては貴重な労働力となっています。
60歳の定年以降、65歳までの継続雇用となっていますが、さらに継続を希望の場合は短日・短時間勤務や、仕事のあるときのみ働くスポット勤務を取り入れるなど、高齢者も働きやすい環境を整えています。
梶原電機 株式会社様の高齢者雇用の概要は次のとおりです。
【対象年齢】60歳~
【雇用形態】嘱託社員
【勤務時間】・短日勤務(週1~5日等)
・短時間勤務(1日2時間から7時間勤務等)
・スポット勤務(仕事があるときのみ会社の要請に応じ勤務)
(労働者の要望にできるだけ沿う勤務形態を採用)
【制度利用者数】4名
【賃金制度の内容】時間給制(1時間:800円~1,000円ほど)
【職務内容】(現在)
・組立工:2名(スポット勤務)
・営業:1名(週2日勤務 1日8時間労働)
・リサイクル:1名(週1日勤務 1日7時間労働)
今後の課題としては、高齢従業員にできるだけ長く働いてもらうために、まず健康でなくてはならないため健康教育を取り入れたり、これからも本人の要望に沿って働ける環境を整えることが重要だと考えられているようです。
出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高年齢者の多様な働き方事例集
2.大和自動車交通 株式会社
高年齢者の意欲とライフスタイルに配慮し雇用機会を提供—特別勤務乗務員制度—
大和自動車交通 株式会社様は、東京都内13営業所でハイヤー420台、タクシー544台を所有し営業しています。
タクシー業界はバブル崩壊後に利用者が減少し、新規参入も増えて企業間競争が激しくなっており、勤務にあたっては拘束時間や賃金が一定しないなどの理由から、人手不足が続いています。
業界の特性として中途採用者が多いこともあり、若年乗務員が少ない傾向です。
大和自動車交通 株式会社様の高齢者雇用制度は、75歳まで短縮勤務ができる「特別勤務乗務員制度」および65歳まで現役と同じフルタイムで勤務する「勤務延長制度」があります。
◆会社概要
【社名】大和自動車交通 株式会社
【設立】1939年(昭和14年 9月13日)
【所在地】東京都中央区銀座1-9-7
【代表者】新倉 尚文
【従業員数】2289名
*50歳以上の高年齢率 52.3%
【定年制度】60歳定年制
出典:大和自動車交通株式会社
大和自動車交通 株式会社様の年齢別従業員構成は、次のとおりです。
30歳未満 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~65歳 | 65歳以上 |
34名 | 235名 | 380名 | 1,009名 | 188名 | 0 |
「特別勤務乗務員制度」は1991年に導入されましたが、業界が人手不足であることから健康状態や勤務態度に問題がなければ、希望者全員が雇用されています。
また65歳まで現役と同じフルタイムで勤務する「勤務延長制度」から「特別勤務乗務員制度」に変更することもできます。
勤務形態はフルタイム勤務の場合、1か月の勤務時間は12出番(勤務)となっており、その3/4未満の勤務時間になるように、1か月に8出番(勤務)としています。
出番:2日間継続して16時間勤務を1出番とする(途中、休憩あり)
「特別勤務乗務員」であっても深夜勤務があるため、1年に2回健康診断をおこなっており、健康面に気をつけながらも最高75歳まで勤務できるのは、企業にとっても高齢者にとっても意義がある取り組みといえるでしょう。
大和自動車交通 株式会社様の「特別勤務乗務員制度」の概要は次のとおりです。
【対象者】 60歳定年退職者で、健康状態と勤務態度が良好な者
【雇用期間】 1年更新で最高 75 歳まで更新可能
【勤務形態】フルタイムの 3/4 未満の勤務時間とする。
1か月当りフルタイムが 12 出番に対し、8出番勤務
【勤務内容】タクシー乗務員及びハイヤー運転手
【給与】歩合給制
今後の課題としては、これからさらに人手不足となった場合に短日・短時間勤務である「特別勤務乗務員制度」が維持できるかという問題があります。
しかしながら、人手不足の業界で制度を利用して勤務を続けることは、企業と高齢者双方にメリットがあると考えられ、対応の検討が求められます。
出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高年齢者の多様な働き方事例集
高齢者雇用の各種助成金
高齢者を雇用するにあたって、利用できる各助成金についてまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。
「独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構(JEED)」のサイトから助成金の詳しい内容がご覧いただけます。
65歳超雇用推進助成金
助成金名 | 概 要 | 問い合わせ先 |
①65 歳超継続雇用促進コース | 65 歳以上への定年引上げ等の取組みを実施した事業主に対して助成するもの | 高齢・障害・求職者雇用支援機構 都道府県支部高齢・障害者業務課 https://www.jeed.go.jp/location/shibu/ |
②高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | 高年齢者の雇用推進を図るための雇用管理制度の整備(賃金・人事処遇制度、労働時間、健康管理制度等)にかかる措置を実施した事業主に対して助成する制度 | 高齢・障害・求職者雇用支援機構 都道府県支部高齢・障害者業務課 |
③高年齢者無期雇用転換コース | 50 歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して国の予算の範囲内で助成金を支給 | 高齢・障害・求職者雇用支援機構 都道府県支部高齢・障害者業務課 |
特定求職者雇用開発助成金
助成金名 | 概 要 | 問い合わせ先 |
①特定就職困難者コース | 高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成 | 最寄りの労働局、公共職業安定所(ハローワーク) |
②生涯現役コース | 雇入れ日の満年齢が 65 歳以上の離職者をハローワーク等の紹介により、一年以上継続して雇用することが確実な労働者(雇用保険の高年齢被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成 | 最寄りの労働局、公共職業安定所(ハローワーク) |
③就職氷河期世代安定雇用実現コース | いわゆる就職氷河期に正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず、正規雇用就くことが困難な方をハローワーク等の紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対して助成 | 最寄りの労働局、公共職業安定所(ハローワーク) |
まとめ
日本では少子高齢化が進み生産年齢人口数が減少し、さらに死亡者数も増加していくと予想される近年、常に人員不足である葬儀業界において高齢者雇用はたいへん有益な取り組みといえるでしょう。
高齢者雇用は葬儀業界だけではなく、他業種でも重要であり社会全体の活性化につながると考えられます。
企業側と高齢者側の双方にメリットがある高齢者雇用を、さまざまな方策を講じてこれからも推進していくことが大切です。
葬儀社様におかれましても、本記事を高齢者雇用を考える一助としていただければ幸いです。