葬儀社向けDXサービス4選|導入事例を参考に業務効率化や人材育成などのメリットを解説

葬儀DX

ここ数年、DXという言葉をよく耳にするようになりました。「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術を活用した業務プロセスを改善するほか、製品やサービス、ビジネスモデルなどを変革していくことです。
それは、新たな成長や競争力を高めていくことにもつながります。

ご遺族様に寄り添い、滞りなく故人様をお送りすることを大切にして業務に取り組む葬儀業界は、DX化と無縁の業界と考える方も多いかもしれません。
しかし、業務の効率化や人材不足のフォローなど、葬儀業界が抱える問題と向き合うためには、DX化が必要になっていくと考えられます。

本記事では、大手葬儀社様のDX導入事例を紹介するとともに、サービスを導入するメリット・デメリットや、具体的な有効性について解説します。

目次

葬儀社様のDX導入事例

葬儀DX

コロナ禍という環境の変化の後押しもあり、大手の葬儀社様は、積極的にDX化を図っているようです。
ここでは、実際にDX化に取り組んでいる葬儀社様の事例を見ていきましょう。

さがみ典礼様

積極的に葬儀のDX化を図っている企業が、さがみ典礼様を運営するアルファクラブ武蔵野株式会社です。
葬儀施設では、家族葬を中心とした小規模葬儀を専門に行う葬斎施設「ソライエ上尾原市」で受付・見学・体験の対応の無人化を実現しました。さらに無人化した店舗として「ソライエ武蔵藤沢」などを次々にオープンしています。

ソライエ
出典:PR TIMES『【さがみ典礼】葬斎施設の受付・見学・体験が無人化に』

お客様がインターフォンを押すと、遠隔地にいるスタッフにより葬斎施設が解錠、施設内の照明・空調などの稼働を開始します。
お客様は、現地スタッフがいなくても施設内に入り、自由に式場やお清め室などの施設を見学できます。
見学後には、担当スタッフとリモートで相談することが可能です。

葬儀DX
出典:PR TIMES:「さがみ典礼」が安心・安全な品質を保証する『葬儀 DX』を導入

2023年4月には、「葬儀DX」として葬儀施行業務にもDX化を取り入れました。
ご遺体の情報や出棺日時などがインプットされた基幹システム「ZEBRA」とともにスタッフの目視でご遺体の管理を行います。
ご遺体の取り違えなどのミスやトラブルを防止するだけではなく、スタッフの労力の軽減にも役立つシステムとなっているようです。

そのほか、アルファクラブ武蔵野様は、インターネット葬儀システム「アルファLIVE」NFT デジタルギフトの採用、2023年に入ってからはメタバースでの供養サービス「ネット霊園 風の霊」に着手するなど、積極的にデジタルツールを採用しています。

家族葬のいとしえ様×LDT様

株式会社東京セレモニー様が運営する葬儀会館「家族葬のいとしえ 上末吉」は、LDT株式会社プロデュ―スにより、「スマート葬儀」などのDXノウハウやデジタル技術を活用した「新時代型スマート葬儀システム」を導入しました。

いとしえ
出典:PR TIMES『葬儀業界の革命!ライフエンディングテクノロジーズ株式会社がプロデュースした、コロナ禍にも安心の「新時代型スマート葬儀会館」がオープン。』

スマート葬儀会館ではソニーの窓を採用し、IoT機器を活用した効率的な顧客対応が可能です。葬儀担当者を常駐することなく、別店舗の葬儀担当者とスムーズに話ができ、効率的な相談が可能なシステムになっています。

いとしえ

葬儀施設に関しても、DX技術やデジタル映像システム、IoT技術を導入することで、祭壇の飾りつけ費用など、葬儀に必要なコストを大幅に削減しました。
それに伴う人件費の削減も可能となり、安価なお葬式を提供できるシステムを構築しています。

顧客情報管理や葬儀後の手続き、お墓・仏壇の手配など全てデジタル管理ができるため、スムーズかつ簡単で安価、見落としによる連絡漏れなどもない効率的な運営を実現したようです。

家族葬のファミーユ様×ClipLine様

人材育成にDX化を導入したのが家族葬のファミーユを運営する株式会社きずなホールディングス様です。
ファミーユでは、大切なご家族を悔いなくお見送りする「家族のための家族葬」を重要視しています。付加価値の高い顧客サービスの提供を目指すための人材育成に向けて、動画マネジメントシステムClipLineを導入をしました。

ファミーユ
ファミーユ
出典:PR TIMES『家族葬のファミーユ 葬儀ディレクター育成にClipLineを導入』

ClipLineは、30秒から1分程度の短尺動画で、本部から店舗への業務指示、店舗から本部への業務報告、マネージャーと店舗スタッフのコミュニケーション、店舗ノウハウの水平展開、スタッフの新人教育・スキルアップなどが可能です。
売上増、人件費削減、離職率削減などの効果を生み出す可能性があります。

きずなグループは全国で年間1万件以上の葬儀を施行していますが、地域により異なる慣習やしきたりがあるため、その現場から得られる知識や情報の共有は、これまであまり積極的には行われていなかったようです。
しかしClipLineを利用することで、好事例や成功体験を収集し、楽しみながら学び合うことで、事業も人も大きく成長することを目指しているようです。

葬儀社様にDX化が必要な理由

葬儀のDX化は、さまざまな問題を解決に導く可能性を秘めています。

葬儀業界 売上件数の推移
出典:「特定サービス産業動態統計調査」対個人サービス業「葬儀業」(経済産業省)をもとにグラフを作成

たとえば、経費削減です。
葬儀規模の縮小化、簡素化により、葬儀単価が下がっていることを実感している葬儀社様は少なくないでしょう。
今後もその傾向は続くものと考えられます。

そんな中で、サービスの質を下げずに売上を確保していくためには、経費の削減を検討することも必要となりそうです。
DX化は、葬儀施行にかかる経費を削減していくとともに、デジタルを利用した新たなサービスを生み出すことにもつながる可能性を秘めています。

また、慢性的な人材不足に悩む葬儀社様は多いようです。
DX化による事務作業や受注・接客業務、葬儀施行作業の軽減など、従業員の負担軽減につながります。これまでよりも少人数での対応が可能になるため、人件費の削減の可能性もあります。

葬儀DX導入のメリット・デメリット

メリット

葬儀DXの導入には、大きなメリットがある一方で、デメリットも存在します。
ここで、メリットとデメリットについてまとめました。

メリット

  • 従業員の業務負担が軽減できる
  • 合理的な人材育成が可能になる
  • 少人数で対応ができることが増える
  • 経費の節減につながる
  • 顧客管理の合理化
  • 新たなサービスを生み出す可能性

業務の軽減は、従業員の負担を減らすだけでなく、ご遺族様の対応に集中することで、より手厚いサポートができるようになります。
また、見積書や請求書、領収書の自動化は、事務作業の軽減だけでなく、人的ミスを防ぐことにもつながります。

デメリット

  • 初期費用がかかる場合がある
  • DXに関する知識が必要
  • セキュリティの強化

DX化により、業務の負担が大きく軽減されることは明らかです。しかし、デジタルツールを使い慣れていない場合は、少し抵抗があるかもしれません。
その場合、葬儀社様のサポートに力を入れている企業のサービスを選ぶことを検討すべきでしょう。

またDX化を始める際は、新たにパソコンやタブレットの端末の購入のほか、サービスによっては導入の設備投資が必要となることがあります。
導入時には一定の費用が発生するものの、長い目でみれば経費の節減につながる可能性が高くなります。

葬儀社向けDXサービス

ここでは、葬儀社様向けのDXサービスを提供している企業様を4社紹介します。

アスカクラウド|株式会社アスカネット様

アスカネット
出典:株式会社アスカネット

アスカネット様は、遺影写真作成サービスで国内トップシェアを誇る企業です。
遺影に限らず、葬儀社様向けに「葬テック」として、 「収益確保」「業務効率」「人材不足」などのさまざまな問題を解決するサービスを提案しています。

アスカクラウド

アスカクラウドは、ご遺族様のご自宅など外出先でも、パソコンやiPadなどの端末から遺影のほか、各種加工注文などをすることができます。
その機能のひとつである遺影写真お預かりサービス遺影バンクBIZは、遺影用の写真をエンドユーザーの情報とともにクラウドサーバーに預けることができるサービスです。

「遺影バンクBIZ Photo assist」とともに利用することで、自動で一覧を表示して証書の発行や登録をすることができますので、遺影撮影会など、集客のためのイベントの際にも役立つでしょう。

会社概要・〒731-0138 広島県広島市安佐南区祇園3-28-14
・設立 1995年7月6日
事業内容・フューネラル事業
・フォトブック事業
・空中ディスプレイ事業
公式サイトhttps://www.asukanet.co.jp/index.html

IKIRU|株式会社ビアンフェ.

IKIRU
出典:AIナレーションシステム「IKIRU」ホームページ

株式会社ビアンフェ.様が開発、株式会社ジャパン唐和様が販売しているのが、AIナレーションシステムIKIRUです。
ご遺族様のヒアリングにより必要な7項目を入力することで、IKIRUから3パターンのナレーション文章が提案されます。その中からナレーション文章を選択し、人の力で仕上げます。

原稿の70%はAIによって作成されますので、30%を人が仕上げることで、原稿作成時間を大幅に短縮しつつも、思いのこもったナレーション文章の作成が可能です。

会社名株式会社ビアンフェ.
会社概要・〒700-0941 岡山県岡山市北区青江1-16-6アビタシオンあおえ西棟106号
・設立 2008年5月2日
事業内容・文章系AI構築プロデュース
・システム(受託)開発
・教育・研修事業
・経営コンサルティング
・司会業務請負(冠婚葬祭、各種イベント)
・葬祭プロデュース(無宗教葬、音楽葬)
公式サイトhttps://www.ai-ikiru.jp/

RURA|タイムリープ株式会社様

タイムリープ
出典:タイムリープ株式会社

RURAは無人の店舗にモニターを設置することで、モニター越しに離れた場所から接客できるシステムです。店舗の無人化を実現し、人手不足を解消します。

対話だけでなく、遠隔地にいるスタッフでも来客に気づき、お客様に声をかけることが可能です。
また、店舗のセルフ端末の遠隔操作もできるため、端末操作にお困りのお客様のサポートもできます。

会社概要・東京都千代田区岩本町1-9-1 アイアンビルヂング3F
・設立 2019年6月3日
公式サイトhttps://timeleap-rura.com/

葬儀社業務支援・顧客管理システム 

葬儀社様にとって最も重要な任務は、ご遺族様が葬儀を滞りなく営めるように、適切なサポートを提供することでしょう。
しかし、故人様のご供養は葬儀後も長きにわたって続くものですので、葬儀社様が担う業務も葬儀の施行だけではありません。
ご葬儀の事前相談や生前予約から、葬儀後の忌日法要や年忌法要まで幅広く携わることも多いため、葬儀社様にとって顧客管理は非常に重要です。

そのため現在では、葬儀の施行業務支援と顧客管理を包括的にサポートするシステムが、多くの企業からリリースされています。
すべての葬儀社業務支援・顧客・葬祭施行管理システムを紹介するのは難しいため、ここでは、代表的なサービスのひとつである「スマート葬儀」を紹介します。

なお葬儀社業務支援・顧客・葬祭施行管理システムについては、以下記事で多数紹介しておりますので、導入を検討されている葬儀社様はご参照ください。

スマート葬儀|LDT株式会社様

スマート葬儀
出典:LDT株式会社

スマート葬儀は、葬儀オペレーションに必要なシステムをトータルで担う「クラウド型葬祭管理システム」です。
顧客管理や見積書・請求書の発行や入金確認などの請求管理、スケジュール管理、訃報案内、供花や供物などのEC機能のほか、売上分析など多方面にわたり、葬儀社様の業務全般のサポートをするサービスです。

基本機能だけでも葬儀社業務のほとんどを網羅していますが、オプションで電子FAX機能が用意されているほか、以下のような他社システムとのAPI連携も可能となります。

  • freee(会計システム)
  • kintone(CRMシステム:顧客情報管理)
  • カイクラ(CTIシステム:電話やFAXとコンピューターの統合システム)

またスマート葬儀は、IT導入補助金2023対象ツールに認定されており、導入コストが抑えられるのも魅力の1つといえるでしょう。

会社概要・〒105-0004 東京都港区新橋5丁目23-10片山ビル6階
・設立 2019年9月20日
事業内容・AgeTech(エイジテック)プラットフォーム事業
・AgeTech(エイジテック)関連のソフトウェア開発
・提供事業・AgeTech(エイジテック)関連のコンサルティング事業
公式サイトhttps://smartsougi.jp/

まとめ

本記事では、葬儀社様のDX化に向けたサービスを紹介しました。
「DX化」と言われると、ハードルの高さを感じる方や、「葬儀」という人の手を大切にする業務にデジタルを持ち込むことに抵抗がある方もいるかもしれません。
しかし適切な取り入れ方をすれば、業務の効率化や経費の削減につながります。

業務に余裕が生まれれば、人にしかできないご遺族様のサポートにより力を入れることが可能ですし、新たなサービスを生み出すことも考えられます。
DX化の目的は単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用して新たな価値を生み出すことです。
そういった意味では、業務負担の軽減を、より顧客満足度の高いサービスの実現につなげることこそ、葬儀社様がDX化に取り組む意義といえるかもしれません。

本記事が、葬儀社様にとって、必要な「DX化」について考えてみるきっかけになると幸いです。

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