葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社 ライフランド(千葉)の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 ライフランド(千葉)の概要
昭和42年(1967年)12月創業のライフランドグループは福島県・茨城県・千葉県を中心に、互助会事業も含め葬祭事業を展開しています。
グループは「株式会社 ライフランド」「株式会社 ライフクリエイト」「株式会社 ライフランド(いわき)」の3社で構成されているようです。
「株式会社 ライフランド」は互助会事業と、葬儀付帯サービスの料理も内製化しているようで、千葉市若葉区に「京葉仕出しセンター」が設置されています。
「株式会社 ライフクリエイト」は、葬祭式場の運営のほか茨城県つくば市で、ゴルフ場「豊里ゴルフクラブ」も経営しています。
葬祭事業については「ライフケア」名義で式場運営を行っていますが、今回紹介するのはライフランドグループ企業「株式会社ライフランド」ライフランド事業本部の業績です。
ライフランドグループでは46ヵ所の葬祭式場を運営していますが、そのうち35式場が千葉県内にあります。
また茨城県内の5式場も「株式会社ライフランド」が運営していると思われ、ライフランドグループ内でも中心的な立場になると考えられます。
【名称】株式会社 ライフランド
【創立】1967年(昭和42年)12月
【代表取締役】大山 健一
【所在地】千葉県千葉市中央区祐光4-18-3
【資本金】1億5,500万円
【公式サイト】http://www.lifeland-group.jp/
【事業内容】・総合葬祭式場運営
・仕出しセンター運営
出典:株式会社 ライフランド 会社概要
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
ライフランド(千葉)の貸借対照表
決算期 | 第40期 | 第41期 | 第42期 | 第43期 | 第44期 | 第45期 | 第46期 |
会計年度 | 2017年12月期 | 2018年12月期 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
利益剰余金 | 116億1千5百万円 | 125億4千4百万円 | 133億2千0百万円 | 146億7千9百万円 | 156億4千9百万円 | 167億7千0百万円 | 179億3千3百万円 |
流動資産 | 64億4千8百万円 | 64億8千4百万円 | 64億8千8百万円 | 64億5千5百万円 | 71億2千4百万円 | 78億6千2百万円 | 86億2千1百万円 |
固定資産 | 307億4千6百万円 | 295億2千7百万円 | 279億7千8百万円 | 276億0千9百万円 | 268億0千0百万円 | 264億0千4百万円 | 260億2千2百万円 |
有形固定資産 | 231億1千2百万円 | 222億0千9百万円 | 206億1千0百万円 | - | - | - | - |
無形固定資産 | 6千4百万円 | 4千0百万円 | 3千8百万円 | - | - | - | - |
投資その他の資産 | 75億6千9百万円 | 72億7千8百万円 | 73億3千0百万円 | - | - | - | - |
繰延資産 | |||||||
資産合計 | 371億9千4百万円 | 360億1千1百万円 | 344億6千6百万円 | 340億6千4百万円 | 339億2千5百万円 | 342億6千6百万円 | 346億4千3百万円 |
流動負債 | 40億5千1百万円 | 33億9千9百万円 | 20億9千3百万円 | 11億1千1百万円 | 8億1千6百万円 | 8億6千0百万円 | 8億5千2百万円 |
役員賞与引当金 | |||||||
賞与引当金 | 1千5百万円 | 1千5百万円 | 1千4百万円 | 1千5百万円 | 2千1百万円 | 1千8百万円 | 1千8百万円 |
その他 | |||||||
固定負債 | 214億3千8百万円 | 199億7千8百万円 | 189億6千3百万円 | 181億8千4百万円 | 173億6千9百万円 | 165億4千6百万円 | 157億6千8百万円 |
退職給付引当金 | 3億2千1百万円 | 2億9千3百万円 | 2億7千2百万円 | 2億4千8百万円 | 2億3千9百万円 | 2億4千0百万円 | 2億4千9百万円 |
雑収入復活引当金 | |||||||
役員退職慰労引当金 | 3億7千2百万円 | 1億2千3百万円 | 1億5千6百万円 | 1億9千2百万円 | 1億9千9百万円 | 2億0千7百万円 | 2億1千5百万円 |
その他 | |||||||
負債の部計 | 254億8千9百万円 | 233億7千7百万円 | 210億5千6百万円 | 192億9千5百万円 | 181億8千5百万円 | 174億0千6百万円 | 166億2千1百万円 |
株主資本 | 117億0千5百万円 | 126億3千4百万円 | 134億1千0百万円 | 147億6千9百万円 | 157億3千9百万円 | 168億6千0百万円 | 180億2千3百万円 |
資本金 | 9千5百万円 | 9千5百万円 | 9千5百万円 | 9千5百万円 | 9千5百万円 | 9千5百万円 | 9千5百万円 |
資本余剰金 | |||||||
資本準備金 | |||||||
その他資本余剰金 | |||||||
利益剰余金 | 116億1千5百万円 | 125億4千4百万円 | 133億2千0百万円 | 146億7千9百万円 | 156億4千9百万円 | 167億7千0百万円 | 179億3千3百万円 |
利益準備金 | 2千4百万円 | 2千4百万円 | 2千4百万円 | 2千4百万円 | 2千4百万円 | 2千4百万円 | 2千4百万円 |
特別償却準備金 | |||||||
その他利益剰余金 | 115億9千1百万円 | 125億2千0百万円 | 132億9千6百万円 | 146億5千5百万円 | 156億2千6百万円 | 167億4千6百万円 | 179億0千9百万円 |
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
(うち当期純利益) | 14億6千6百万円 | 11億7千9百万円 | 10億2千6百万円 | 16億0千9百万円 | 13億3千1百万円 | 14億8千1百万円 | 15億2千2百万円 |
新株予約権 | |||||||
自己資本 | -5百万円 | -5百万円 | -5百万円 | -5百万円 | -5百万円 | -5百万円 | -5百万円 |
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
純資産の部計 | 117億1千0百万円 | 126億3千9百万円 | 134億1千5百万円 | 147億7千4百万円 | 157億4千4百万円 | 168億6千5百万円 | 180億2千8百万円 |
負債・純資産合計 | 371億9千4百万円 | 360億1千1百万円 | 344億6千6百万円 | 340億6千4百万円 | 339億2千5百万円 | 342億6千6百万円 | 346億4千3百万円 |
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。
ライフランド(千葉)の自己資本比率は52.04%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
ライフランド(千葉)の自己資本比率を求める式は下記のようになります。
180億2千8百万円÷346億4千3百万円×100=52.04%
ライフランド(千葉)の2023年12月期における自己資本比率は、52.04%となりました。
自己資本比率が30%を超えると安定企業といわれており、前年同期と比べても2.82%高く、ライフランド(千葉)の財務状況はかなり安定しているといえそうです。
ライフランド(千葉)の資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。
・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど
・繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など
ライフランド(千葉)の資産合計の推移は以下のようになっています。
ライフランド(千葉)の2023年12月期における資産合計は、346億4千3百万円(前年同期比1.10%増)となっています。
2017年から2021年まで毎年穏やかな減少が続いていましたが、2022年からは増加に転じています。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
・流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
・固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
ライフランド(千葉)の負債合計の推移は以下のようになっています。
ライフランド(千葉)の2023年12月期における負債合計は166億2千1百万円(前年同期比4.51%減)となっています。
過去7年間にわたって、ライフランド(千葉)の負債合計は減少を続けています。
また財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2023年12月期の時点で1011.85%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払い能力について不安は感じられません。
ライフランド(千葉)の純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
ライフランド(千葉)の純資産合計、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。
ライフランド(千葉)の2023年12月期における純資産合計は、180億2千8百万円(前年同期比6.90%増)となっています。
過去7年間にわたり、ライフランド(千葉)の純資産合計は増加を続けており、堅調に推移しているようです。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
ライフランド(千葉)における2023年12月期の当期純利益は、15億2千2百万円(前年同期比2.77%増)となっています。
新型コロナ発生前の2017年12月期と比べても増加しており、過去最高だった2020年12月期にも近い数値で、順調に回復しているようです。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。
ライフランド(千葉)の場合は以下のように推移しております。
ライフランド(千葉)の2023年6月期における利益剰余金は、179億3千3万円(前年同期比6.94%増)となっています。
過去7年間にわたってライフランド(千葉)の利益剰余金は順調に増加を続けており、少なくとも2017年12月期以降は利益を出し続けていることになります。
株式会社 ライフランド(千葉)のまとめ
今回は株式会社 ライフランド(千葉)の決算公告を参考に、現状分析を行いました。
貸借対照表から見る限り、ライフランド(千葉)の財務状況に不安な点は見受けられません。
2020年から2021年にかけて繰り返し発出された新型コロナ関連の行動規制により、葬儀業界も大きな影響を受けましたが、ライフランド(千葉)では影響を最小限に抑えていたようです。
2023年5月からは新型コロナも5類に移行し、葬儀業界の業績も回復傾向にあり、ライフランド(千葉)も順調に回復しています。
首都圏を中心とした都市部では少人数での家族葬が主流になりつつあり、高額で大規模な葬儀を想定した冠婚葬祭互助会を必要とする方は減少傾向にあるとされています。
一方、地域のつながりが強い郊外の農村部などでは、多くの方に参列いただく一般葬が一定以上のシェアを保っており、地域に密着した地元の冠婚葬祭互助会を頼りにしている方も多いようです。
とはいえ、地理的な優位性だけで互助会加入者数を維持できるわけではないため、同社では互助会員向けにさまざまなイベントを通して、関係性の強化に努めているようです。
エンディングノートや遺言書・成年後見人制度・家族信託といった「終活」や「相続」に関連した講習会だけでなく、手芸や書道・絵手紙・ヨガといったご年配の方でも楽しめる趣味の教室や、料理・ストレッチなどの日常生活に役立つ教室などのイベントを開催しています。
こうした地道な取り組みが、ライフランド(千葉)の経営状態が安定している理由の1つかもしれません。
葬研では、今後もライフランド(千葉)の決算公告に、引き続き注目していきたいと思います。