葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社 ライフランド(福島)の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 ライフランド(福島)の概要
「株式会社 ライフランド(福島)」は福島県内で葬祭サービス事業を運営する冠婚葬祭互助会事業者です。
「株式会社 ライフランド(福島)」は1972年10月に「千葉県新生活互助会」のグループ会社として設立されました。
グループ会社の「千葉県新生活互助会」は1967年12月に設立されたのち、1981年10月に現在の社名である「株式会社 ライフランド」に商号変更しており、千葉県で総合葬祭事業のほか、仕出し事業も運営しています。
そのほか「株式会社 ライフクリエイト」を設立して茨城県でゴルフ場事業を運営しています。
「株式会社 ライフランド(福島)」は、福島県いわき市内に葬祭ホール6カ所を「ライフケア」名義で展開しています。
- ライフケア好間会堂 (福島県いわき市好間町下好間字一町坪17)
- ライフケア平会堂 (福島県いわき市平谷川瀬字吉野作71-2)
- ライフケアいわき会堂(福島県いわき市内郷高坂町四方木田140)
- ライフケア湯本会堂 (福島県いわき市常盤湯本町栄田74-5)
- ライフケア小名浜会堂(福島県いわき市小名浜字蛭川南91-1)
- ライフケア勿来会堂 (福島県いわき市勿来四沢江代田15)
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
ライフランド(福島)の貸借対照表
決算期 | 第46期 | 第47期 | 第48期 | 第49期 | 第50期 | 第51期 | 第52期 | |
会計年度 | 2017年12月期 | 2018年12月期 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | |
利益剰余金 | 18億8千5百万円 | 19億0千1百万円 | 20億2千4百万円 | 20億7千3百万円 | 20億8千6百万円 | 21億4千3百万円 | 21億7千9百万円 | |
資 産 の 部 | 流動資産 | 18億7千4百万円 | 15億5千0百万円 | 17億0千2百万円 | 16億3千2百万円 | 17億3千0百万円 | 30億0千0百万円 | 29億0千7百万円 |
固定資産 | 37億9千0百万円 | 35億6千4百万円 | 34億3千3百万円 | 32億9千3百万円 | 31億1千9百万円 | 17億1千4百万円 | 16億6千5百万円 | |
有形固定資産 | ||||||||
無形固定資産 | ||||||||
投資その他の資産 | ||||||||
繰延資産 | ||||||||
資産合計 | 56億6千4百万円 | 51億1千4百万円 | 51億3千5百万円 | 49億2千5百万円 | 48億4千9百万円 | 47億1千3百万円 | 45億7千2百万円 | |
負 債 の 部 | 流動負債 | 4億2千3百万円 | 2億4千2百万円 | 3億2千6百万円 | 2億1千4百万円 | 2億6千8百万円 | 2億2千6百万円 | 2億1千3百万円 |
役員賞与引当金 | ||||||||
賞与引当金 | 5百万円 | 5百万円 | 3百万円 | 4百万円 | 9百万円 | 7百万円 | 6百万円 | |
その他 | ||||||||
固定負債 | 33億2千1百万円 | 29億3千6百万円 | 27億5千2百万円 | 26億0千4百万円 | 24億6千1百万円 | 23億1千1百万円 | 21億4千7百万円 | |
退職給付引当金 | 5千3百万円 | 5千2百万円 | 4千3百万円 | 4千0百万円 | 4千2百万円 | 4千6百万円 | 3千7百万円 | |
雑収入復活引当金 | ||||||||
役員退職慰労引当金 | 1億7千6百万円 | 6千9百万円 | 8千5百万円 | 9千0百万円 | 9千3百万円 | 9千7百万円 | 10千1百万円 | |
その他 | 2百万円 | 6百万円 | ||||||
負債の部計 | 37億4千4百万円 | 31億7千8百万円 | 30億7千8百万円 | 28億1千8百万円 | 27億2千9百万円 | 25億3千7百万円 | 23億5千9百万円 | |
純 資 産 の 部 | 株主資本 | 19億2千0百万円 | 19億3千5百万円 | 20億5千8百万円 | 21億0千7百万円 | 21億2千0百万円 | 21億7千7百万円 | 22億1千3百万円 |
資本金 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | |
資本余剰金 | 1千4百万円 | 1千4百万円 | 1千4百万円 | 1千4百万円 | 1千4百万円 | 1千4百万円 | 1千4百万円 | |
資本準備金 | ||||||||
その他資本余剰金 | ||||||||
利益剰余金 | 18億8千5百万円 | 19億0千1百万円 | 20億2千4百万円 | 20億7千3百万円 | 20億8千6百万円 | 21億4千3百万円 | 21億7千9百万円 | |
利益準備金 | ||||||||
特別償却準備金 | ||||||||
その他利益剰余金 | 18億8千5百万円 | 21億4千3百万円 | 21億7千9百万円 | |||||
評価・換算差額等 | ||||||||
その他有価証券評価差額金 | ||||||||
(うち当期純利益) | 4億1千7百万円 | 2億1千6百万円 | 3億2千3百万円 | 2億4千9百万円 | 2億1千4百万円 | 2億5千6百万円 | 2億3千6百万円 | |
新株予約権 | ||||||||
自己資本 | ||||||||
評価・換算差額等 | ||||||||
その他有価証券評価差額金 | ||||||||
純資産の部計 | 19億1千9百万円 | 19億3千5百万円 | 20億5千8百万円 | 21億0千7百万円 | 21億2千0百万円 | 21億7千7百万円 | 22億1千3百万円 | |
負債・純資産合計 | 56億6千4百万円 | 51億1千3百万円 | 51億3千6百万円 | 49億2千5百万円 | 48億4千9百万円 | 47億1千3百万円 | 45億7千2百万円 |
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。
ライフランド(福島)の自己資本比率は48.40%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
ライフランド(福島)の自己資本比率を求める式は下記のようになります。
22億1千3百万円÷45億7千2百万円×100=48.40
ライフランド(福島)の2023年12月期における自己資本比率は、48.40%(前年同期比2.21%増)となっています。
ライフランド(福島)の資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。
・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど
・繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など
ライフランド(福島)の資産合計の推移は以下のようになっています。
ライフランド(福島)の2023年12月期における資産合計は、45億7千2百万円(前年同期比2.99%減)と1億4千1百万円減少しています。
過去4年間にわたってライフランド(福島)の資産合計は、緩やかに減少を続けているようです。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
・流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
・固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
ライフランド(福島)の負債合計の推移は以下のようになっています。
ライフランド(福島)の2023年12月期における負債合計は23億5千9百万円(前年同期比7.02%減)となっています。
過去4年間にわたり、ライフランド(福島)では資産合計・負債合計ともに減少を続けていますが、自己資本比率は向上しています。
財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2023年12月期の時点で1367.14%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払い能力について不安は感じられません。
ライフランド(福島)の純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
ライフランド(福島)の純資産合計、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。
ライフランド(福島)の2023年12月期における純資産合計は、22億1千3百万円(前年同期比1.65%増)となっています。
2020年から繰り返し発出された新型コロナ関連の行動規制により、収益悪化の影響から債務超過に陥る葬儀社様も多いようですが、ライフランド(福島)の純資産合計の推移をみる限り、あまり大きな影響は感じられません。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
ライフランド(福島)の2023年12月期における当期純利益は、2億3千6百万円(前年同期比7.81%減)となっています。
新型コロナ発生後の2020年12月期から減少を続けていた当期純利益も、2022年12月期では回復の様子が伺えます。2023年12月期にはやや低下しているものの、ほぼ2020年の水準で推移しています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。
ライフランド(福島)の場合は以下のように推移しております。
ライフランド(福島)の2023年12月期における利益剰余金は、21億7千9百万円(前年同期比1.68%増)となりました。
2017年以降、ライフランド(福島)の利益剰余金は堅調に推移しています。
企業における利益剰余金は突発的な損失に備えるものでもありますので、ライフランド(福島)の利益剰余金は、新型コロナを含めた種々の財務的な脅威への対応に大きく貢献しているといえるでしょう。
株式会社 ライフランド(福島)のまとめ
今回は株式会社 ライフランド(福島)の決算公告を参考に、現状分析を行いました。
新型コロナの影響はライフランド(福島)にも及んだようですが、被害を最小限にとどめ、堅実に利益を回復しているようです。
新型コロナ関連の規制が緩和され始めた2024年8月現在では、葬儀業界も徐々に回復傾向にあるといわれています。
今後のライフランド(福島)の決算公告にも引き続き注目していきたいと思います。