株式会社 よりそう~よりそうお葬式~┃葬儀ポータルの業績・利益をまとめて分析

よりそう決算公告

葬儀ポータルサイト運営企業の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀ポータルサイト運営企業の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 よりそうの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 よりそうの概要

葬儀ポータルサイト「よりそうお葬式」を運営する「株式会社 よりそう」は、2009年3月に代表取締役社長CEOである芦沢 雅治氏が立ち上げたレビューサイト「みんれび」から始まりました。
2009年6月には葬儀関連情報サイト「葬儀レビ」を開設し、葬儀業界への一歩を踏み出します。

2013年8月に開設した「シンプルなお葬式(現:よりそうお葬式)」の提供を皮切りに、ライフエンディング領域で幅広く事業を展開している状況です。

よりそうの事業展開

よりそうでは、中核事業である葬儀ポータルサイト「よりそうのお葬式」を軸に、幅広く葬祭関連サービスを提供しています。
2022年11月現在、同社が展開している事業は以下の通りです。

*葬儀社比較サイト「くらべる葬儀」は、2022年8月31日にサービス休止となっています。

これまでの資金調達

よりそうでは、事業拡大に向けた大規模な資金調達を複数回実施してきました。
これまでの資金調達の推移をまとめたものが、以下の表になります。

資金調達の経緯-min

調達額は回を重ねるごとに増加しており、2022年1月には35億円の調達に成功しています。

資金調達の詳細については「葬儀ポータル よりそう┃現状と今後の展開について」のページで詳細に解説していますので、合わせてご覧ください。

葬儀社の決算公告とは

決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

よりそうの貸借対照表 

貸借対照表-min

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

よりそうの自己資本比率は64.26%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
18億9千7百万円÷29億5千2百万円×100=64.26

よりそうの2022年2月期における自己資本比率は、64.26%(前年同期比1.01%増)となっており、前年同期の26.83%から大幅に改善しています。
前述したように、よりそうでは2022年1月に35億円の資金を調達していることから、財務状態が大幅に改善されたと考えられます。

よりそうの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

よりそうの資産合計の推移は以下のようになっています。

資産合計-min

よりそうの2022年2月期における資産合計は29億5千3百万円(前年同期比283.94%)となっています。
貸借対照表を確認すると、前年同期にくらべ流動資産だけが20億円近く増加している状況です。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

よりそうの負債合計の推移は以下のようになっています。

負債合計-min

よりそうの2022年2月期における負債合計は10億5千5百万円(前年同期比138.82%)となっています。
貸借対照表を確認すると、流動負債の短期借入金や未払金、固定負債の長期借入金が増加傾向にあることが、負債合計の増加につながっているようです。

とはいえ、財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2022年1月期の時点で367.94%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払い能力については問題ないようです。

よりそうの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
よりそうの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

純資産合計-min

よりそうの2022年2月期における純資産合計は、18億9千7百万円(前年同期比679.93%)となっています。
貸借対照表を確認すると、資本剰余金が前年同期にくらべ30億円近く増加していますが、これは新たな資金調達の成功によるものの可能性が高そうです。

前年同期の純資産合計は2億7千9百万円まで減少していましたが、今期の大幅な増加により債務超過は回避されたようです。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

当期純利益-min

よりそうの2022年2月期では13億0千8百万円の当期純損失が発生しています。

2020年以降に繰り返し発出された新型コロナ関連の行動制限により、葬儀業界も大きな影響を受けました。
よりそうの当期純損失発生は3年連続となっていますが、過去3年間コロナ禍の中であった点を考慮すると、やむを得ない状況といえるかもしれません。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

よりそうの場合は以下のように推移しております。

利益剰余金-min

よりそうの2022年2月期における利益剰余金は、-40億2千4百万円となっており、マイナス部分が前年同期より13億8百万円増加していました。
利益剰余金は営業利益が発生すれば増加し、営業損失が発生した場合は減少しますので、当期については13億8百万円の営業損失が発生したと考えられます。

株式会社 よりそうのまとめ

今回は株式会社 よりそうの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
新型コロナの影響により、2020年以降の日本経済は大きなダメージを受けましたが、よりそうも例外ではなかったようです。

しかし2022年に入って以降、新型コロナ関連の行動制限が緩和されたこともあり、葬儀業界も回復基調にあるといわれています。
さらに2022年3月より放映が開始された「よりそうお葬式」のTVCMが、追い風になる可能性もあるでしょう。
こういった事情を考慮すると、2023年2月期ではよりそうの業績も改善されているかもしれません。

今後も引き続き、よりそうの動向を注視していきたいと思います。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。より詳しい情報を知りたい方はお気軽にお問合せ下さい。

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