【葬儀社さんなら知っておきたい】さまざまな弔いのかたち|葬制・墓制の種類や多様化する納骨方法を解説

葬制・墓制の種類

亡くなった方を弔い、供養する方法といえば何を思い浮かべるでしょうか?現在の日本では火葬後に納骨するのが一般的ですが、その昔は土葬をはじめ、さまざまな弔いの方法がおこなわれてきました。
また墓石以外に樹木葬や散骨・手元供養など、納骨の方法も多様化している昨今ですが、これらの葬送や供養はいつからおこなわれるようになったのでしょうか。

葬儀業界に身を置き、葬送という厳粛な儀式に携わる以上、こうした情報は把握しておきたいところです。
この記事では、さまざまな葬制や墓制について歴史を含めて解説します。さらに宇宙葬など新しい葬送の方法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

葬制の種類

葬制・墓制の種類

現代の日本では、亡くなった方のほとんどが火葬されますが、実は日本で火葬が一般化したのは近代になってからです。
また世界に目を移せば、多種多様な供養方法が存在します。
ここでは、さまざまな葬制の種類や歴史について解説いたします。

火葬

火葬炉

現在日本では葬送の方法として、火葬が一般的となっています。火葬の歴史としては、弥生時代の古墳に火葬がおこなわれた痕跡があり、かなり古くからあったものと考えられます。

「続日本紀」の記録によると、日本で最初に火葬されたのは700年(文武天皇4年)に元興寺開祖の道昭で、天皇では703年(大宝3年)に持統天皇が火葬されたと記述されています。
火葬の風習は平安時代以降、天皇や貴族などの上層階級から始まりましたが、費用がかかることや火葬場の煙の問題などから1873年(明治6年)火葬禁止令が出されました。
その後、土葬用墓地の不足や公衆衛生上の理由から、1875年(明治8年)火葬禁止令は廃止されました。

土葬

土葬

土葬はご遺体をそのまま土の中に埋める、あるいはに納めて埋葬する供養方法です。縄文時代には土葬がおこなわれていたとされ、古墳時代になると権力者のご遺体は棺に納められて埋葬されました。
宗教上の理由から、キリスト教やイスラム教などでは火葬が認められないこともあって、土葬は世界で今もおこなわれており、日本でも昭和初期までは多くの地域でおこなわれていました。

現代では東京都や大阪府、名古屋市などは条例により土葬を禁止している一方、京都府、奈良県、和歌山県、山梨県などの一部では土葬がおこなわれているようです。
2011年(平成23年)に発生した東日本大震災では、ご遺体の数が多く火葬場の能力が足りず土葬されました。このように、今後も土葬が必要な状況が起こることもあるかもしれません。

風葬(ふうそう)

風葬は、空葬(くうそう)、曝葬(ばくそう)とも呼ばれる供養方法で、ご遺体を埋葬せず屋外で自然に還すため、そのままの状態や棺に納められて特定の場所に安置されます。
弥生・古墳時代の洞窟遺跡や岩陰遺跡が残っており、洞窟や崖、山林に安置されることも多かったようです。

日本では沖縄や奄美地方で明治時代までおこなわれており、その後禁止されたものの、現代も一部の地域でおこなわれているようです。

洗骨葬(せんこつそう)

洗骨葬は土葬や風葬をおこなった後に、故人様のご遺骨を海水や酒・水などで洗い、あらためて埋葬する葬法です。
沖縄や奄美地方で戦前おこなわれていましたが、衛生面の問題もあり戦後は見かけることも少なくなりました。
ご遺骨をきれいにすることで初めて「死」が認められる、という考えにもとづくものとされます。

また現代でも、墓じまいをして別の場所に納骨する際に、取り出したご遺骨が汚れている場合は、きれいに洗い清めるケースが多いようです。

鳥葬(ちょうそう)

ハゲワシ

鳥葬は、郊外に設けられた鳥葬台にご遺体を運びそのまま安置するか、解体・断片化してハゲワシなどの肉食鳥類に食べさせて処理する葬制です。
1350年にムスタン王国(ネパール領の自治王国)が建立された数百年後に始まり、チベット仏教やインドのゾロアスター教が現代もおこなっています。
かつては日本でおこなわれたこともあるようですが、現代では違法行為となります。

一部の国で鳥葬が一般的になった理由はさまざまですが、チベット高地では木材が少なく寒冷であることから、火葬や土葬に適さない気候であるためと考えられます。
また、多くの命をいただいて生命を維持してきた人間が、最後にほかの生き物に身体を捧げて自然に還る、という考えにもとづいた弔い方という説もあるようです。

水葬

水葬はご遺体を海や川、湖などに葬る葬制で、日本では古墳時代の棺である舟形石棺(ふながたせっかん)が遺されており、水葬がおこなわれてきたと考えられます。
現代では、法律により違法行為とされていますが、例外として船員法で船舶の航行中に船内の人が亡くなったときは、船長の権限により水葬することが認められています。

また、インドではヒンドゥー教徒がおこなっているほか、アメリカでは過激派組
織の指導者が死亡した際に、埋葬地が聖地とならないように水葬としました。

両墓制(りょうぼせい)

両墓制とは、実際にご遺体を埋葬する「埋め墓(うめばか)」と、お墓参りなど供養の対象として墓石を建立する「詣墓(まいりばか)」を別々に設ける墓制習俗です。
一故人に対し二つの墓を作るという習俗の由来は定かではありませんが、公衆衛生の観点から、あるいは死穢(しえ:死の穢れ)を避けるために、生活圏から離れた場所に「埋め墓(うめばか)」を設けたなどの説があるようです。

天皇家の葬送形式

葬制・墓制の種類 淳和天皇陵
出典:yahooニュース

天皇家や皇族の場合はどのような葬送形式なのでしょうか。
yahooニュースに「【京都市】西京区 大原野小塩山にある『大原野西嶺上陵』は第53代「淳和天皇」が散骨を希望した御陵!」という記事が掲載されました。
京都 大覚寺の北西の山上に陵墓がありますが、奈良時代から平安時代前期の第52代天皇の嵯峨天皇の陵墓です。

嵯峨天皇の弟である第53代天皇の淳和天皇の陵墓は、京都の大原野にある「大原野西嶺上陵」で、歴代天皇で唯一散骨されました。
淳和天皇は平安時代、840年に崩御され散骨を望まれたことから、ご遺骨は小塩山の山頂にまかれたとされています。

淳和天皇は、陵墓を建立せずに散骨することで、民に負担をかけないようにとの思いがあったようです。
また魂が天に昇ったあと陵墓に鬼がついて、世の中に災いが起こらないようにという考えもあったとされています。

これまでの天皇のうち初めて火葬されたのは『続日本紀』によると、702年(大宝2年)に崩御された持統天皇とされます。
天皇、皇族の葬送形式は基本的に土葬でしたが、その後火葬が主流となったものの、1617年に崩御された後陽成(ごようぜい)天皇が火葬された後は天皇の火葬はおこなわれず、昭和天皇に至るまで土葬がされています。

皇族については昭和中期以降、火葬されることが多くなり2013年宮内庁は天皇、皇后についてもこれまでの土葬から火葬に変更すると発表しました。

現代日本における納骨の種類

大規模霊園

こちらでは、さまざまな納骨方法をご紹介します。
かつては墓石を建立し納骨するのが一般的でしたが、近年納骨方法も多様化しています。

墓石

墓石もこれまでは、各家ごとに先祖代々のお墓として建立されていましたが、核家族化などライフスタイルの変化が進み形も変化しています。

継承墓

墓石

先祖代々のお墓を受け継いで供養していくもので、古来から一般的なお墓です。
墓石の正面には「○○家の墓」と刻まれていることが多く、墓石の裏面や別に設置される「霊標」や「墓誌」といわれる石碑に、亡くなった人の戒名や没年月日などが彫刻されています。

個人墓・夫婦墓

個人墓は先祖代々ではなく、一人だけの遺骨を納めて供養するものです。
永代供養つきと永代供養がないものとがありますが、継承者がいない場合は、永代供養つきの個人墓を選ぶ方も多いようです。

夫婦墓は先祖代々のお墓に入らずに、夫婦二人のみを納骨します。
基本的に永代供養まで行うことが多く、子どもがいない夫婦や子どもに負担をかけたくないと考える人が選ぶようです。

両家墓

両家墓では、夫婦二人の実家のお墓を一つの墓地に建立し供養していきます。
近年の少子化で息子や娘が一人である、または姉妹のみで男兄弟がいないなどの理由から、両家墓を建立する人も増加傾向にあるようです。

一つの墓地区画に二塔のお墓を建立するためには、かなりの広さが必要となりますので、永代使用料も高額になりがちです。
しかし、1つの墓石に両家の名前を彫刻する両家墓であれば、一般的な墓地区画でも建立できます。

共同墓

合祀墓

共同墓は家族や親族などの血縁関係がない人と一緒に納骨するお墓で、おもに友人や知人などとともに入ることが多いようです。
共同墓地には、さまざまな形式がありますが、地域の人々と使用する共同墓地と、公営・民営霊園に設置される合祀型の共同墓地の2種類に大別されます。

前者は古くからある近隣住民が共同で運営してきた墓地で、地域によっては今でも活用されているようです。
一方、一つの納骨室に不特定多数のご遺骨を納める合葬墓合祀墓は、祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)がいなくても利用できるというメリットがありますが、基本的に納骨後に取り出すことは出来ません。

祭祀承継者(さいししょうけいしゃ):祭祀財産を承継、管理し年忌法要などをおこなう者
祭祀財産とは、系譜(家系図)、祭具(仏壇、ご位牌など)、墳墓(墓石、墓碑など)

樹木葬

葬制・墓制 樹木葬

樹木葬は、墓石の代わりに墓標となる桜やもみじなどの樹木や草花をシンボルツリーとして、周辺にご遺骨を埋葬するもので里山型と公園型があります。
日本初の樹木葬墓地は、1999年に岩手県一関市の祥雲寺が申請して許可された「樹木葬公園墓地」で、里山型です。

里山型

里山型は山間部にあり花を植えたり植樹をすることもありますが、自然の樹木をシンボルツリーとするのが一般的です。
粉砕したご遺骨を布袋などに入れて土中に直接埋葬するので、長い年月をかけてご遺骨が土に還る、自然葬の形が多くなっており環境に配慮した葬法といえます。
ただし、公衆衛生や周辺環境への配慮が必要となるため、自治体から承認された土地で行う必要があります。

公園型

公園型はガーデニング墓地とも呼ばれ、山間部ではなく霊園や寺院の中に樹木葬専用の墓地区画が設けられています。
多くはご遺骨を骨壺に入れ、土の中に設置された石製やコンクリート製の「カロート」といわれる場所に納めます。

埋蔵方法は合祀型と個別型があり、個別型の場合は「カロート」のふたに石製の銘板が用いられることが多く、名前や戒名、没年月日などが彫刻されます。
従来の墓石よりも開放的な雰囲気があります。

納骨堂

納骨堂は納骨専用の施設に、個人や夫婦、家族単位でご遺骨を納めて供養する方法です。
納骨のしかたにより種類があります。

ロッカー形式

ロッカー型納骨堂

小さなロッカーのように個別に区分けされ、扉がついた棚にご遺骨を納めます。
個別の壇には、骨壺のほかに遺影や花を供えられるところもあります。

自動搬送形式

自動搬送式納骨堂

ご遺骨が自動で運ばれてくるようになっており、その場でお参りができます。
「マンション型」ともいわれ、おもに都市部に多く天候に左右されずにお参りできるのが特徴です。

仏壇式

仏壇型納骨堂

個別の壇ごとに仏壇が設けられている納骨堂で、「霊廟(れいびょう)型」ともいわれます。
多くは壇の上段に仏壇があり、下段にご遺骨を納めるようになっており遺影や花、お菓子などをお供えすることも可能です。

位牌式

寺院の中に設けられていることが多く、仏像がまつられた祭壇にお位牌を安置するのが一般的です。
ご遺骨も同じ場所に納める形式と、別の場所に納骨する形式に分かれます。

堂内墓所

納骨堂の中に小さな墓石が設置されており、一般的なお墓と同じようにお参りができます。
天候にかかわらずお参りができ、お墓と同じように花や線香をお供えできる墓所もあるようです。

散骨

水葬

散骨はご遺骨をパウダー状(おおむね2㎜以下)になるまで砕き、海や山にまいて供養する方法です。
ただし、散骨を禁止している自治体も多いため、実施場所の選定は慎重におこなう必要があります。

海洋散骨

一般的にはクルーザーなどの船舶で海の沖合に出向き、読経などの儀式のあと粉砕したご遺骨を海にまきます。
海洋散骨は、ご遺族様が参加する方法と業者に任せる方法がありますが、いずれにしても個人で実施するのは困難なため、専門業者に依頼するのが一般的です。

山林散骨

山林散骨は山岳葬ともいわれ、粉砕したご遺骨を山にまいて供養します。
海洋散骨と同じく、遺族が参加する場合と業者に任せる方法がありますが、散骨できる場所は険しい山間部が多いため、専門業者に相談することをおすすめします。

永代供養墓

これまでの日本では、家のお墓を代々維持管理していくのが一般的でしたが、少子高齢化や核家族化などの影響で、家族の形が変化している近年では、祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)がいなくても利用できる永代供養墓の需要が高まっています。

本山納骨

専修寺納骨堂

本山納骨は、宗派の総本山寺院にご遺骨を納める供養方法で、永代にわたり供養してもらえます。
本山寺院は長い歴史と格式があるため、自分の居住地域から遠くても本山寺院に納骨する方もいるようです。
本山納骨の利用方法は寺院により異なり、ご遺骨の一部のみ納骨できる場合と、ご遺骨全てを納骨できる場合がありますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

手元供養

ミニ仏壇

手元供養はご遺骨の全部、または一部を自宅などに安置して供養する方法です。
小さな骨壺にご遺骨を納めて供養したり、ご遺骨をペンダントなどに入れてアクセサリーにしたりして身につける方法もあります。

新しい葬送形式

葬制・墓制の種類 堆肥葬
出典:日本経済新聞

近年ではこれまでとは違った、新しい葬送の方法もおこなわれています。
ここでは海外の事例も含めて、いくつかご紹介します。

宇宙葬

宇宙葬は、粉砕した遺骨を宇宙まで運んで散骨する方法です。
宇宙まで運ぶ方法により次のような種類があります。

バルーン葬

遺骨をバルーンに入れ空に向けて飛ばし、成層圏に届いたところで破裂して散骨されます。
海や山、その他指定の場所でおこなえます。

ロケット葬

カプセルなどに納めたご遺骨をロケットに搭載して打ち上げる方法で、地球の軌道に乗った後に大気圏で燃えつきます。

月旅行葬・宇宙旅行葬

ご遺骨をカプセルに入れロケットに搭載し、月や宇宙を旅行するように供養します。
月旅行葬では、月に届いた遺骨は散骨され、宇宙旅行葬は永久に宇宙を旅します。
生前から申し込みがあり人気ですが、費用が高額なので確認が必要です。

堆肥葬(有機還元葬)

堆肥葬はご遺体を自然に堆肥化させるもので、エンバーミング(遺体衛生保全)などはおこなわず、綿の布などで包みます。
一般の葬儀のように、ご遺族様が花などを手向けた後、堆肥化の専用施設に運ばれます。
ご遺体は有機素材のベッドに安置され、木材片や藁(わら)などで覆われたのち、30日前後で微生物による分解が進み、最終的に堆肥化されます。
堆肥は家族が引き取ったり、森林の育成のために寄付されたりするようです。

2022年アメリカ ニューヨーク州は、遺体の堆肥化を合法化して堆肥葬が認められ、アメリカでは6番目に遺体の堆肥化が認められた州となりました。
日本では法律の関係もあり実施されていませんが、現在おこなわれている火葬は二酸化炭素を排出することが問題とされていることから、将来は日本でもおこなわれる可能性は否定できないでしょう。

水火葬(アルカリ加水分解葬)

水火葬は、ご遺体をアルカリ加水分解により液状化して処理する方法です。
アメリカでは水火葬が認められており、1990年代からペットの遺体処理にも使われてきました。

アルカリ性の水溶液を製造し、専用の機械に満たしてご遺体を入れます。
分解されると液体と骨が残りますが、液体は下水処理場に送られ、ご遺骨は乾燥された後に粉砕されてご遺族様に引き取られます。
火葬や土葬のように環境への影響が少ないものの、現時点では費用が高額になる点が課題のようです。
日本ではおこなわれていませんが、アメリカでは合法化され水火葬は増加しています。

まとめ

この記事では、さまざまな葬制や墓制について、また納骨方法の種類や新しい葬送形式についても歴史を含めてご紹介しました。
歴史とともに葬制や墓制も変化していきますが、故人様やご先祖様を弔い供養する気持ちは忘れずにいたいものです。

葬制や墓制の知識があることで、業務にも新たな視点が生まれるのではないでしょうか。
本記事を業務にお役立ていただければ幸いです。

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