那覇直葬センターによる景品表示法違反まとめ|消費者庁公表資料をもとに問題点を解説

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消費者庁では、株式会社那覇直葬センターのチラシならびに公式ホームページにおいて、景品表示法違反(同法第5条第2号:有利誤認)に該当する表示があったとして、2024年(令和6年)5月30日に措置命令を発出しました。

実のところ、葬儀業界における景品表示法違反は今回が初めてではなく、過去には大手葬儀ポータルサイト運営事業者に対して1億円を超える課徴金納付命令が発出された事例も存在します。
しかし今回は、地方の直葬専門葬儀社が措置命令の対象となったことから、葬儀業界全体に大きな影響を及ぼすと考えられます。

そこで本記事では、消費者庁が公表した資料にもとづき、那覇直葬センターによる景品表示法違反について解説いたします。
記事後半では、現在の葬儀業界が抱える問題や、直葬(火葬式)の在り方についてもまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

那覇直葬センターによる景品表示法違反の概要

景品表示法 (1)

今回の措置命令について消費者庁では、株式会社那覇直葬センターが「直葬プラン」または「火葬プラン」の名称で提供している葬儀サービスについて、景品表示法違反(有利誤認)が認められたため、同法第7条第1項の規定にもとづいて措置命令を発出したとしています。

違反行為者の概要

名称株式会社那覇直葬センター(法人番号7360001030755)
所在地那覇市曙一丁目14番4号
代表者代表取締役 宮里 勇輝
設立年月2022年(令和4年)7月
資本金300万円(2024年5月現在)

那覇直葬センターの問題点

問題点

今回、景品表示法上の有利誤認に該当すると判断されたのは、那覇直葬センターが配布した新聞折込チラシ(2023年3月4日・18日、2023年5月20日・27日、2023年6月10日・24日)、ならびに同社公式ホームページに掲載された「直葬プラン」「火葬プラン」に関する表示内容です。
消費者庁が公表した資料では、以下の表示内容について、一般消費者の誤解を招く可能性があるとしています。

■表示内容

  • 仏具がある部屋に安置された棺の写真、合掌する複数の人物の写真及び供花がある部屋に安置された棺の写真
  • 「直葬」 
  • 「火葬プラン 77,000円(税込)」
  • 「ご希望のお時間をお伝えいただければ、ご家族、ご友人が故人様と一緒にお過ごしいただける個別面会室をご用意いたしました、いつでもご相談ください 。」 
  • 「無駄を省き 費用を大幅にカット! 77,000円(税込)」 
  • 「 必 要なサービスのみを厳選!」 
  • 「低価格3つの理由」、「最低限必要な物品を厳選 適正価格に見直し!」、「 稼働時間を 見直し、コストを削減!」及び「直葬専用の施設を完備 ニーズに合わせたご葬儀」 
  • 仏具がある部屋に安置された棺の写真並びに人物の写真と共に、「こんなに安いの~!?」及び「お部屋も上等だねぇ!」
  • 「最後のお別れを、ゆっくりお過ごしください。」 
  • 「シンプルなお葬式といっても自宅や病院から火葬場に直行するというわけではありません。故人様とのお別れのお時間を当施設でお過ごしいただけます。」 
  • 「充実した施設内で、ゆっくりとご対面 お別れしていただけます」
出典:消費者庁『株式会社那覇直葬センターに対する景品表示法に基づく措置命令について』

ここからは、新聞折込チラシ・公式ホームページ上に掲載された上記の表示内容をもとに、問題となっている点について詳しく解説します。

新聞折込チラシ

那覇直葬センターチラシ1
那覇直葬センターチラシ2

出典:消費者庁『株式会社那覇直葬センターに対する景品表示法に基づく措置命令について』

新聞折込チラシ(上記画像参照)には、「直葬」「火葬プラン 77,000円(税込)」といった文言とともに、仏具がある個室に棺が安置された写真や、数名の方が棺に向かって手を合わせている写真、棺が安置された個室に供花や面会用の椅子などが配置された写真などが掲載されています。
一見すると、個室で遺体と面会する場合(供花・仏具含む)でも、提示価格の77,000円以外に費用は掛からないという印象を受けます。

しかし実際には、面会の際に個室を利用する場合は追加料金が発生し、さらに供花・仏具についても別料金となっていました。
こうした点が、不当な表示と判断されたようです。

公式ホームページ上の表示

那覇直葬センターHP

出典:消費者庁『株式会社那覇直葬センターに対する景品表示法に基づく措置命令について』

那覇直葬センターの公式ホームページには「直葬プラン 70,000円(税別)77,000円(税込)」の表示とともに、通常価格 180,000円(税込198,000円)と記載されています。
しかし実際には、通常価格でのサービスの提供実績は無く、架空の数字情報でしたので、明らかな不当表示といえるでしょう。

有利誤認とは?

景品表示法における有利誤認とは、消費者が商品やサービスを購入する際に、それが他の同種のものよりも有利であると誤認してしまうような表示を行うことを指します。
これを簡単に言うと、「実際にはそんなにお得ではないのに、見せかけでお得に見えるようにすること」です。

具体的にどのような場合に有利誤認が生じるか、いくつかの例を挙げて説明します。

1. 虚偽の価格比較
例えば、あるお店が「通常価格10,000円のところ、今なら5,000円!」と表示しているとします。
実際には、その商品が常に5,000円で販売されている場合、これは消費者に対して誤った有利感を与えるため、有利誤認に該当します。

2. 誤解を招く割引表示
「今だけ30%オフ!」と大々的に宣伝しているものの、実際にはその価格が通常価格であり、割引されていない場合も有利誤認になります。

3. 誤解を招く品質表示
例えば、「この洗剤は他社製品よりも3倍長持ちする!」と表示しているが、実際にはそのようなデータや証拠がない場合、消費者に誤った有利感を与えるため、有利誤認となります。

有利誤認は、消費者が商品やサービスの購入を決定する際に、正しい情報を基に判断できなくなるため、公正な取引を妨げる原因となります。
誤った情報を参考に判断を下した場合、消費者にとって不利益になるのはもちろん、業界全体の信頼性を毀損する可能性もあります。

なお不当表示は、故意におこなったケースだけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、景品表示法違反と判断されれば規制の対象となるため注意が必要です。

参照:消費者庁『有利誤認とは』

那覇直葬センターに対する措置命令の内容

今回の那覇直葬センターによる景品表示法違反に対して、消費者庁から発出された措置命令の内容は以下の通りです。

  • 本件役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知すること。
  • 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  • 今後、同様の表示を行わないこと。

出典:消費者庁『株式会社那覇直葬センターに対する景品表示法に基づく措置命令について』

那覇直葬センターでは上記の措置命令に従い、すでに公式ホームページに以下の謝罪文を掲載しています。

お詫びとおしらせ

弊社は、日刊新聞紙の折り込みチラシ及び弊社Webサイトの表示について、一般消費者の誤認を排除するため、以下のとおり周知いたします。

弊社は、令和4年7月20日に設立、令和5年1月21日にグランドオープンし、近年、葬儀スタイルが大きく変わりつつあるなか、少しでも負担の少ない葬儀(お別れ)を目指して、「直葬プラン」又は「火葬プラン」という葬儀サービス(以下「本件役務」といいます。)の提供を開始いたしました。

この度、弊社は、本件役務の提供に際して、令和5年3月4日、同月18日、同年5月20日、同月27日、同年6月10日及び同月24日の計6回に渡り配布した日刊新聞紙に折り込んだ弊社作成のチラシにおいて、仏具や供花がある部屋に安置された棺の写真および合掌する複数の人物の写真と共に、「直葬」、「火葬プラン 77,000円(税込)」等と表示することにより、個室で遺体と面会する場合(個室に仏具や供花を置く場合を含みます。)であっても77,000円以外に追加料金が発生しないかのような表示となっておりました。しかし、実際には、個室でご遺体とご面会したり、当該個室に仏具や供花を置く場合には、それぞれ追加料金が発生するものでした。

また、弊社は、本件役務の提供に際して、弊社Webサイトにおいて令和5年4月25日から同年5月11日までの17日間、「火葬プラン 77,000円(税込)」及び「通常価格 180,000円(税込198,000円)」と表示することにより、通常提供している価格が「通常価格」であり、実際の提供価格が当該「通常価格」に比して安いかのような表示となっておりました。しかし、実際には、当該「通常価格」でのサービスの提供実績はありませんでした。

以上のとおり、本件役務の取引条件について実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり、景品表示法に違反するものでした。

本件により、お客様および関係者の皆様には多大なるご迷惑およびご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げますと共に、今後このようなことが起きないよう再発防止に取り組み、お客様からの信頼回復に努めてまいりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

令和6年5月30日

出典:那覇直葬センター「お詫びとお知らせ」

今回の措置命令が葬儀業界に与える影響

景品表示法 (2)

今回の消費者庁による措置命令は、景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)にもとづいて発出されました。
景品表示法は、消費者の利益保護を目的として「景品類の制限及び禁止(同法第4条)」「不当な表示の禁止(同法第5条)」について規制しています。

那覇直葬センターのケースでは、上記のうち「不当な表示の禁止」に該当する行為があったとして、景品表示法違反事実を周知し、再発防止策を講じるよう命じられました。
とはいえ現在の葬儀業界では、類似の表示をおこなっているケースも散見されるため、那覇直葬センターに限った話として捉えるのではなく、業界全体の問題として考える必要があります。

葬儀業界における過去の景品表示法違反事例との違い

冒頭でお伝えした通り、葬儀業界における景品表示法違反は、過去にも発生しています。
とはいえ、過去の事例で対象とされたのは、小さなお葬式(ユニクエスト)よりそうお葬式(よりそう)」「イオンのお葬式(イオンライフ)といった、全国展開している大手葬儀ポータルサイトであり、那覇直葬センターとは業態が大きく異なります。
また上記の事例では「追加料金一切不要」「全てセットの定額」「この金額で葬儀ができます」などの文言を明記して、追加費用が掛からないと謳っていたにもかかわらず、実際には状況によって追加費用が発生する点が、特に問題視されていました。

しかし那覇直葬センターの新聞折込チラシ・公式ホームページのいずれについても、追加料金不要などの文言は記載されていません。
個室利用料や仏具・供花が、有料オプションになる旨が記載されていないことで、結果的に「あたかも追加料金が発生しないように表示している」と判断されています。

こうした点を考慮すると、今後は地方の中小葬儀社様でも調査対象となる可能性が高く、自社の情報を発信する際には、媒体を問わず細心の注意を払う必要があります。

葬儀業界で景品表示法違反が繰り返される背景

値下がり

葬儀業界で景品表示法違反が繰り返される理由の1つが、業界内における競争の激化です。
超高齢化による多死社会を迎えた日本では、葬儀業界への新規参入が相次ぎ、過当競争状態に陥っているといわれています。
特に通夜式や葬儀・告別式といった葬送儀礼をおこなわない「直葬」については、伝統的な葬儀の施行ノウハウが必要ないことから、異業種からの参入も珍しくありません。

直葬は非常に簡素な葬儀形式となるため、サービス内容による差別化は、なかなか難しいのが実情です。
そのため差別化を図る方法として「低価格」が重視されやすいことから、同一商圏における同業他社との価格競争が激化する傾向にあります。

とはいえ、直葬であっても棺や骨壷といった消耗品費や、ご遺体搬送にかかる人件費は最低限必要となりますので、経費削減にも限界があります。
プランに含まれるサービスを削ることで見かけ上の価格を低く設定し、低価格を前面に打ち出して集客をおこなうケースが後を絶たない背景には、こうした事情があるようです。

極端な低価格表示のリスク

地域別最低賃金

出典:厚生労働省:地域別最低賃金の全国一覧

那覇直葬センターでは、直葬プランを77,000円(税込)に価格設定しており、ホームページに「県内最安値に挑戦中」と掲示しています。
しかし自宅安置ではオプションの「中送り:20,000円」が必要になるほか、式場安置での面会も1時間当たり10,000円ほどのオプション扱いとなっているため、実際に葬儀費用総額を10万円以下に抑えるのは、なかなか難しいでしょう。

上のグラフは、首都圏と沖縄県の最低賃金を比較したものですが、東京都と沖縄県では約20%の開きがあります。
東京都を中心とした首都圏でも、10万円以下の直葬プランを提示している葬儀社が散見されますが、人件費を考えると、無理を重ねた価格設定であることがお分かりいただけるかと思います。
こうした状況下で収益を確保するために、景品表示法に抵触するような集客手段を選ばざるを得ないケースが、今後も発生するかもしれません。

しかし地域に密着して、葬儀という厳粛な儀式を取り扱う葬儀社様の場合、悪評が立てば事業の継続自体が非常に難しくなる可能性が高いでしょう。
また景品表示法違反と判断された場合、高額な課徴金納付命令が発出されることもありますし、状況によっては特定適格消費者団体による「集団的被害回復訴訟」が提起される可能性もあります。

極端な低価格を設定しなくても、工夫次第で効果的な集客は可能ですので、上記のようなリスクを回避するためにも、積極的な情報収集をおすすめします。

おわりに

本記事では、消費者庁による那覇直葬センターへの措置命令事案を取り上げて、景品表示法や有利誤認について解説いたしました。
具体的にどういった表示内容が景品表示法に抵触するのか、ならびに違反と判断された場合のリスクについても、ザックリとご理解いただけたかと存じます。

葬儀業界に限ったことではありませんが、消費者保護に対する世論の高まりを受け、事業者に向けられる視線は、今後ますます厳しくなることが予想されます。
トラブルを回避するためには、事業者自身が景品表示法や特定商取引法・消費者契約法などの「消費者保護法」に関する知識を身に付け、適切に対処する必要があります。
とはいえ、葬儀社様だけで対応するのが難しい場合もありますので、まずは信頼できる相談先を見つけることをおすすめします。

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