新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、互助会大手のライフランドグループは堅調に成長を続けているようです。
そこで今回は、ライフランドグループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
ライフランドグループの概要
ライフランドグループは、昭和42年.(1967年)12月に創業され、千葉県、茨城県、福島県を中心に互助会事業を含め葬祭事業を展開しています。
互助会事業では、会員に暮らしに役立つ内容のライフケアイベントを無料で開催。
会員特典として、さまざまな施設の割引や優待が受けられます。
また千葉、茨城、福島各県下で46か所の総合葬祭式場を運営中です。
【名称】ライフランドグループ 株式会社ライフランド
【代表取締役】大山 健一
【所在地】〒260-8588 千葉県千葉市中央区祐光4-18-3
【資本金】1億5,500万円
【公式HP】http://www.lifeland-group.jp/
ライフランドグループの構成
ライフランドグループは、「株式会社 ライフランド」と「株式会社 ライフクリエイト」「株式会社 ライフランド(いわき市)」で構成されています。
「株式会社 ライフランド」は互助会事業のほかに、葬儀付帯サービスである料理の仕出しセンターも千葉県で運営。
「株式会社 ライフクリエイト」は葬祭式場を運営し、茨城県つくば市で「豊里ゴルフクラブ」の運営もしています。
ライフランドグループの沿革
- 1967年12月
千葉県新生活互助会設立(現 (株)ライフランド) - 1968年 1月
(株)へいあん設立 - 1972年10月
(株)ライフランド(いわき市)設立 - 1976年 1月
(株)ライフクリエイト設立 - 1979年 1月
前払式特定取引業許可(互第3103号)を取得 - 1979年10月
(株)千葉通商設立 - 1981年10月
CI導入 社名を「(株)ライフランド」に商号変更 - 1993年1月
「中期(5カ年)経営計画」を策定・開始 - 1997年12月
創立30周年を迎え、シンボルマーク変更 - 2000年 4月
電子決裁システム 導入 - 2001年 1月
(株)へいあん・(株)千葉通商を(株)ライフランドに合併 - 2002年 3月
創立35周年を迎え、本社を新社屋へ移転 - 2008年 8月
プライバシーマークを財団法人日本情報処理開発協会より(株)ライフランド・(株)ライフクリエイト・(株)ライフランド(いわき市)が取得 - 2010年 5月
総合葬祭式場 新ブランド「ライフケア メモリイプレイス」誕生 - 2010年12月
総合葬祭式場「ライフケア メモリイパーク柏」誕生 - 2022年12月
総合葬祭式場46カ所・仕出しセンター2カ所・ゴルフ場1カ所を展開中
ライフランドグループの葬祭式場
ライフランドグループの葬祭式場は、千葉県に35か所、茨城県に5か所、福島県に6か所、合計46か所あります。
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営をおこなっているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。
なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
ライフランドグループの決算公告からみる利益や業績
ここからは、ライフランドグループの貸借対照表について詳しく分析します。
各項目を確認することで、ライフランドグループのおおまかな財政状況が把握可能です。
ライフランドグループの貸借対照表
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。
ライフランドグループの自己資本比率は48.81%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
190億2千8百万円÷389億8千0百万円×100=48.81%
ライフランドグループの2022年12月期における自己資本比率は、48.81%(前年同期比2.78%増)となっています。
ライフランドグループの資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つで構成されています。
流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど産で有形固定資産や無形固定資産がある。
繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など
ライフランドグループの資産合計の推移は以下のようになっています。
ライフランドグループの2022年12月期における資産合計は、389億8千0百万円(前年同期比は0.53%増)となっています。
2017年以降、緩やかな減少傾向にありましたが、2022年12月期には少し増加しています。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
ライフランドグループの負債合計の推移は以下のようになっています。
ライフランドグループの20220年12月期における負債合計は、199億4千3百万円(前年同期4.64%減)となっています。
ライフランドグループの貸借対照表を確認すると、資産合計は緩やかな減少の状態で推移していますが、負債合計も年を追うごとに減少しています
これはライフランドグループの資産において、他人資本である負債の占める割合が下がっていることを示しており、財務の健全性が向上しているようです。
また2017年12月期には186.0%だった流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2022年12月期の時点では1,000%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払いに不安は感じられません。
ライフランドグループの純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
ライフランドグループの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。
ライフランドグループの純資産合計は6期連続の増加となっており、2022年12月期では190億2千8百万円(前年同期比6.60%増)となっています。
負債合計と純資産合計から割り出される負債比率(負債合計÷純資産合計×100)は104.8%です。
この水準であれば、比較的経営が安定しているとされます。負債が純資産を若干上回っていますが、これくらいであれば、無理なく返済ができる状況です。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
ライフランドグループの当期純利益の推移は以下の通りです。
ライフランドグループにおける2022年12月期の当期純利益は14億8千1百万円(前年同期比11.3%増)となっています。
ライフランドグループの当期純利益は、新型コロナウイルスの影響で2021年12月期に減少したと思われますが、2022年には再び増加に転じています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。
ライフランドグループの利益剰余金の推移は以下の通りです。
ライフランドグループの2022年12月期における利益剰余金は、189億1千3百万円(前年同期比6.64%増)となっています。
ライフランドグループの利益剰余金は、過去6年間において順調に増加を続けており、財務上健全な状況といえそうです。
ライフランドグループのまとめ
ライフランドグループ 株式会社ライフランドの決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
貸借対照表を分析した限りでは、ライフランドグループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、ライフランドグループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
ライフランドグループでは、一部の葬祭式場で仏壇仏具のショールームを併設し、葬儀後のサポートにも力を入れています。
また、2023年7月には千葉県のライフケア柏会堂に、故人を個室にて預かる「ご安置施設」を新設するなど、今後も事業拡大が予想されます。