碑文谷創の葬送基礎講座

碑文谷創の葬送基礎講座12 「布施は宗教行為の対価」か否か?  ―僧侶手配、派遣僧侶の問題をどう考えるべきか①

投稿日:2019年9月16日 更新日:

アマゾン「お坊さん便」へ全日本佛教会が理事長談話

2015(平成27)年12月24日、全日本佛教会は当時の理事長であった齋藤明聖氏の名前で「『Amazonお坊さん便 僧侶手配サービス』について」という理事長談話をプレスリリースした。
これは同年12月8日にアマゾンのマーケットプレイスに株式会社みんれび(現「よりそう」)が「お坊さん便」を出品、販売開始したことを受けてのものであった。

「(前略)私ども公益財団法人 全日本仏教会は、宗教行為としてあるお布施を営利企業が定額表示することに一貫して反対してきました。お布施は、サービスの対価ではありません。同様に、「戒名」「法名」も商品ではないのです。
申し上げるまでもなく、お布施は、慈悲の心をもって他人に財施などを施すことで「六波羅蜜(ろくはらみつ)」といわれる修行の一つです。なぜ修行なのかというと、見返りを求めない、そういう心を持たないものだからであります。そこに自利利他円満の功徳が成就されるのです。
今回の『Amazonのお坊さん便 僧侶手配サービス』の販売は、まさしく宗教行為をサービスとして商品にしているものであり、およそ諸外国の宗教事情をみても、このようなことを許している国はありません。そういう意味で、世界的な規模で事業を展開する『Amazon』の、宗教に対する姿勢に疑問と失望を禁じ得ません。(後略)」

「理事長談話」の正当さと奇妙さ

全仏がこのニュース性に危機感を抱いたのはわかるが、問題となる僧侶斡旋事業はすでに30年以上前からあり、これまで放置しておいて、なぜ今「理事長談話」なのか理解に苦しむ。
巨人アマゾンに出品されるようになったのが問題なのか。

「お布施は、サービスの対価ではありません。同様に、「戒名」「法名」も商品ではない」
というならば、当然にも戦後高度経済成長以降の特に都会(後で地方でも追随する寺院が出たが)の寺院のかなり多くが「布施をサービスの対価」としてきた過去・現在へのまず痛烈な自己批判がなければならない。
理事長談話は最初に自己批判がくるべきであった。

※理事長談話は齋藤師の名前で出された。斎藤師はよく知っているが、悪意でないことはもちろん時代を見る目にも確かなものがある。この談話はアマゾン向けであると同時に商業化にはしる寺院への警告という意味もあるように思う。その正当性は認めても談話のもつ意味を考えると欠陥があるといわざるを得ない。

「布施の商業化」はなぜ?

戦後に占領軍の政策で農地解放が行われ、寺院の資産の多くが奪われ、困窮化した。
その寺院が戦後高度経済成長を背景に、財政復興の切り札としたのが葬儀や法事の布施の高額化であり、高位とされた戒名・法名の高額販売ではなかったか?

もちろんこうした趨勢に抗した僧侶が多くいたことは知っている。
批判した彼らは、同僚である僧侶たちの「寺の財政を守る」という名目で行われた「葬儀・法事、戒名・法名の商品化」を「布施の本義にもとる」と批判したのである。

布施は理事長談話にあるように「見返りを求めない」行為である以上は任意であるべきで、定額であるべきではない。
これは正論である。

しかし「寺の財政を守る」僧侶がいうように、「寺は布施で護持されている」ので、檀信徒には寺を護持する責任がある以上、寺の財政的には主要な分野である葬儀・法事では、「布施」とはいえ、それなりの負担を求めたい」という気持ちもわからないではない。

特に日常的に寺を支えている檀信徒以外から葬儀・法事の依頼があった場合には、「それまでの檀信徒たちの護持活動を考慮すると高額になるのも仕方がない」という意見もわからないではない。
しかし「布施の商業化」という点では、「寺の財政を守る」という目的があったとしても同じである。

布施が「対価」になったのは?

「布施が高い」「戒名・法名が高い」という世評がそのまま正しいわけではない。

そもそも仏教を信仰しているわけでもなく、寺を護持する大切さも考えずに、「葬儀・法事を立派にやりたい」「(院号等が付いた)高位の戒名・法名がほしい」という見栄を飾りたい者たちが、「感謝して」という意識ではなく、あくまで儀礼執行、戒名(法名)の対価という感覚で、消費者意識を振りかざして「安く」入手したいという感覚のおかしさがある。

高度経済成長期の地方から都会へと人口大移動により新都市住民が巨大な宗教的浮動層を形成していることが大きな問題要因となっている。

今は建前優先で見ることが少なくなったが、1980~2000年頃の実用書には「お経料」「戒名(法名)料」という言葉が氾濫していた。

そのおかしさに対し、「そんなのは寺ではなくスーパーに行って買ってくれ」と思っていたら、なんとアマゾンで買えるようになった、というのが今回の話である。

布施が見えなくなった

そもそも布施は寺や僧侶の活動に共鳴して献ぜられるものであろう。

だが寺の活動、僧侶の活動がまったく見えず不透明な中で布施をあたかも要求されたように感じると「強制された」と思う。
寺が開かれておらず、葬儀・法事にきてもよくわからない経を読むだけ。

共鳴するものも、感謝するものもない、といわれても、言う方にも問題はあるが、言われる方にも問題はあると考えるべきだろう。

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碑文谷創(ひもんやはじめ)

碑文谷創(ひもんやはじめ)

葬送ジャーナリスト。評論(死、葬送、宗教)

1946年生まれ。東北出身(岩手・一関市、宮城・仙台市)。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社に勤務し、44歳で独立、葬送文化専門雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)。

葬祭ディレクター技能審査企画委員(1995~2016))、経産省「ライフエンディング・ステージ」研究会委員(2010~2011)、IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)顧問(1993~)等を歴任。

現在、死、葬送、宗教に関する評論・講演活動を展開。著書:『葬儀概論』(現在4訂)『死に方を忘れた日本人』『「お葬式」はなぜするの ?』、『Q&Aでわかる葬儀・お墓で困らない本』ほか多数。

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