遺族の”再出発”に葬儀社は何ができるか|グリーフケアから読み解く故人との向き合い方葬研会員限定

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大切な人を亡くしたご遺族は、深い悲しみのなかから、いつしか日常へと戻り、再び前を向いて歩み始めます。
この「再出発」の過程に、葬儀事業者はどこまで関わることができるのでしょうか。

故人との向き合い方には、大きく分けて二つの方向性があります。ひとつは、亡き人の冥福を静かに願いながら生前の姿を想い、偲ぶという姿勢です。もうひとつは、亡き人とのつながりを保ち、どのような形であれ対話を続けたいと望む姿勢です。
一見すると対極にあるこの二つは、しかし「悲しみからの回復」という同じ地点を目指している点で、深いところでつながっています。

そこで本記事では、死生観の多様さを起点に、二つの向き合い方がグリーフケアという共通のゴールを分かち合っている点について整理します。
そのうえで、遺族の再出発に寄り添う存在として、葬儀事業者に何ができるのかについて考察いたします。

なお、この問いは決して遠い将来の話ではありません。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、国内の年間死亡数は今後も増え続け、2040年頃には約168万人でピークを迎えると見込まれています。1989年(平成元年)の約79万人と比べれば、実に2倍を超える水準です。

多死社会
出典:厚生労働省 統計白書『死亡数の推移』を元に作成

多くの人が大切な人を見送る「多死社会」を迎えるいま、遺族の悲しみにどう寄り添うかは、葬儀業界にとって避けて通れないテーマとなりつつあります。

目次
    1. 1. 死生観は十人十色|故人との向き合い方に生まれる「二つの方向性」
      1. 国・地域・宗教が育む死生観の差異
      2. それでも大別できる「偲ぶ」と「対話する」という二つの気持ちの向き先
    2. 2.「偲ぶ」という選択|記憶を辿り、悲嘆を癒す日本の供養文化
      1. 時間をかけて気持ちを整理するという回復のかたち
      2. 法要・墓参りなど、日本の伝統的供養が果たしてきた役割
      3. 映画『星の旅人たち』にみる、遺灰とともに歩む再出発の旅
    3. 3.「対話する」という選択|つながりを保ち、故人を支えに生きる
      1. 生成AI・デステックが可能にする故人との"対話"
      2. AIで再現された亡き妻との「再会」|今を生きるための対話
      3. 中国で故人再現サービスが普及する社会的背景|儒教と一人っ子政策
    4. 4. 二つの道が行き着く先は同じ「再出発」というグリーフケアの共通項
      1. グリーフ(悲嘆)のプロセスとは何か
      2. 「偲ぶ」も「対話する」も、悲しみからの回復の一歩であるという視座
    5. 5. 効果の感じ方は人それぞれ|正解のない選択にどう寄り添うか
      1. どちらが正しいのではなく、本人が回復を実感できる方法を
      2. センシティブな領域ゆえに求められる配慮と一定のルール
    6. 6.映画・動画で深める遺族理解|死別を描いた作品が教えてくれること
    7. 7. 葬儀社は「再出発の伴走者」になれるか
      1. 送る場から、遺族の回復を支える起点へ
      2. 多様化するニーズに、業界はどう備えるべきか
    8. おわりに~ご遺族の再出発に寄り添う伴走者となるために~

1. 死生観は十人十色|故人との向き合い方に生まれる「二つの方向性」

故人と向き合う二つの道

国・地域・宗教が育む死生観の差異

死生観は、その人が置かれた環境と切り離せません。仏教の影響が色濃い地域と、キリスト教やイスラム教を基盤とする地域とでは、死後の世界の捉え方も、故人を弔う作法もまったく異なります。
四季の移ろいのなかで無常を感じ取ってきた日本と、一神教のもとで死と復活を語り継いできた文化圏とでは、死に向き合う心の構えそのものに違いが生まれます。

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