葬儀単価の低下傾向が続く中、多くの葬儀社ではアフターサービスを充実させることで収益拡大を図る動きが広がっています。その有力な選択肢として注目を集めているのが「相続分野」のサポートです。
相続に関わる士業や専門家は、司法書士や税理士、弁護士や銀行など多岐にわたります。
中でも、司法書士や不動産鑑定士は、不動産を相続した方であれば相続税の支払いの有無に関係なく接点を持つ機会があるため、ご遺族様が触れることの多い士業といえるでしょう。相続税を支払う割合は全体の10%程度に過ぎないためです。
この記事では、相続手続きに携わる各分野の専門家の役割と特徴を詳しく解説します。ご遺族様に適切なアドバイスをする際の参考として、また将来的な専門家との提携を見据えるうえで必要な知識を提供できれば幸いです。

(1)司法書士

司法書士は、登記業務や供託業務を扱う法律系の国家資格を持つ専門家です。不動産や商業・法人の登記申請を主に担当する「登記の専門家」で、「街の法律家」とも呼ばれています。
土地建物の権利移転、会社設立手続き、供託業務のほか、認定を受ければ簡易裁判所での代理や成年後見人としての活動も行えます。
1. 相続分野での司法書士の対応業務
| 独占業務 (弁護士を除く) | ・不動産の相続登記手続き(名義変更) ・不動産の抵当権抹消登記手続き ・株式の名義書換手続き |
|---|---|
| 一般業務 | ・法定相続人や相続財産の調査 ・遺産分割協議書の作成 など |
司法書士の相続分野での対応業務としては、不動産の相続登記手続きがあります。相続登記とは、故人様名義の不動産を、相続人の名義に変更する登記手続きのことです。この相続登記を相続人の代わりに行える専門家は弁護士を除くと司法書士のみとなっています。一般的には弁護士よりも司法書士に依頼する方が費用がかからないため、登記手続きのみを依頼する場合は、司法書士に依頼するケースが多いです。
相続登記は2024年4月から義務化されたため、今後は一層司法書士に相談・依頼するご遺族様が増えると考えられるでしょう。なお、相続を原因とする株式の名義書換手続きも、弁護士を除くと司法書士の独占業務となっています。
次に、相続を原因とする抵当権抹消登記なども司法書士の独占業務となります。抵当権抹消登記とは、不動産に設定されていた住宅ローンなどの担保(抵当権)を、ローン完済後に法務局の登記簿から消去する手続きのことです。故人様がローンを完済していたにもかかわらず抵当権が残ったままだった場合や、団体信用生命保険(団信)によって被相続人の死亡時にローンが一括返済された場合でも、相続人はこの抵当権抹消登記の手続きを行う必要があります。
その他の対応業務としては、相続人調査・戸籍収集があります。また、故人様の生前には遺言書作成のサポートも行います。遺言執行者としての業務も可能です。
2. 司法書士の費用相場の目安
- 相続登記:基本料金10〜20万円+物件加算(1物件あたり3〜5万円)
- 初回相談:無料〜5,000円(多くの事務所は初回無料)
- 相続人調査・戸籍収集:約3〜10万円
- 遺言書作成サポート:約5〜15万円
3. 司法書士への相談が向いているご遺族様

司法書士は、「不動産の名義をどうすればいいのか分からない」と悩んでいるご遺族様に適しています。故人様名義の不動産があるが、どう手続きすればいいか分からないという方や、相続人が多く、誰が相続人になるのか調査してほしいという方にもおすすめです。
また、遺言書がなく、「法定相続分通りに分けるべきかどうか迷っている」という方も司法書士の知見が役立ちます。ただし、相続人同士で遺産分割についてもめており代わりに交渉を行ってほしいという場合は、弁護士への依頼が必要です。
さらに、「遠方に住んでいて何度も現地に行けないが不動産の名義変更が必要」という方や、「高齢のため手続きを自分で行うことに不安がある」という方にとっても、司法書士への依頼は大きな助けとなります。司法書士は依頼を受ければ、法務局での手続きを全て代理で行うことができるためです。

(2)不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の価格や賃料などを評価・鑑定する国家資格を持つ専門家です。不動産の経済価値を客観的に判断し、公正中立な立場から「不動産鑑定評価書」を作成する「不動産価格の専門家」として知られています。
具体的には、土地や建物の評価について詳しい知識と経験を持ち、適正な価格を出します。公共事業の土地取得、ローンの担保評価、不動産の調査・分析など、幅広い分野で業務を行っています。
1. 相続分野での不動産鑑定士の対応業務
相続分野における不動産鑑定士の主な業務は、相続不動産の適切な経済価値を算出することです。
相続人が複数いる場合、遺産を公平に分ける必要がありますが、不動産は金額の大きい財産であることが多く、正確な価値評価がなければ公平な分割は難しくなるでしょう。そこで、不動産鑑定士が市場の実態に基づいた不動産の客観的な評価を行うことで、相続人全員が納得できる遺産分割が実現します。
ただし、相続税申告の際には不動産の評価方法が異なることに注意が必要です。相続税申告では国税局が定める評価ルールに従って不動産の価値を算出します。この国税局の評価ルールによる価値は、不動産鑑定士が算出する実際の市場価値(経済価値)とは異なることが多いです。すなわち不動産鑑定士が算出する不動産の経済価値は、公平な遺産分割を行うために利用されることが多いのです。
よって、相続人が一人だけの場合は遺産分割の必要がなく、不動産鑑定士への依頼も原則として必要ありません。
2. 不動産鑑定士の費用相場の目安
- 戸建住宅の鑑定評価:約15〜25万円
- マンション(区分所有)の鑑定評価:約10〜20万円
- 土地のみの鑑定評価:約12〜20万円
- 収益物件(アパート・マンション等)の鑑定評価:約20〜40万円
- 事業用不動産(店舗・事務所等)の鑑定評価:約25〜50万円
- 初回相談料:無料〜5,000円
(多くの事務所では初回無料相談を実施している)
なお、複数の不動産を所有している場合は、物件数に応じて加算されることが一般的です。また、地域によっても費用相場に差があり、都市部では若干高めの傾向があります。
3. 不動産鑑定士への相談が向いているご遺族様

不動産鑑定士への相談が特に適しているのは、「相続財産の中に不動産があり、その価値を公平に評価してほしい」と考えているご遺族様です。相続人が複数おり、遺産分割協議を進める上で不動産の適正価格を知りたい場合に相談を受けることが多いでしょう。
また、「相続した不動産の売却を検討しているが、適正な売却価格が分からない」というご遺族様にも不動産鑑定士の評価は有用です。不動産会社の査定額に疑問を持ち、中立的な立場からの評価を求める場合にも適しています。
複数の相続人がいる場合や、相続財産の中に価値の高い不動産が含まれる場合には、不動産鑑定士への相談も選択肢の一つとしてご遺族様に案内することが、相続手続きをスムーズに進めるための支援となるでしょう。

(3)税理士

税理士は、税金に関する法律に詳しい「税の専門家」です。税金の申告や納付に必要な税務や会計業務を専門的に行う国家資格者で、税理士会に登録して初めて名乗ることができます。
1. 相続分野での税理士の対応業務
| 独占業務 | ・相続税申告書の作成 ・提出の代理 |
|---|---|
| 一般業務 | ・実際にかかる相続税額の試算 ・法定相続人や相続財産の調査 ・遺産分割協議書の作成 ・相続税対策の提案 など |
税理士の相続分野での対応業務としては、相続税申告の代理があります。相続税申告とは、被相続人が所有していた財産に対して課される相続税を計算し、申告・納付する手続きです。この相続税申告の代理は、税理士のみが行える独占業務です。
相続税申告自体は相続人本人でも行えますが、不動産や事業用資産、未上場株式などの評価が難しい財産の場合には税理士に依頼する方がほとんどです。具体的には、財務省が公表する「令和5事務年度国税庁実績評価書」によると、相続税申告書を提出した人の約86.3%が税理士に相続税申告を依頼していることがわかります。
ただし相続税申告・納付は原則、相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額を超えた場合にのみ行います。そのため相続税を支払う必要がないケースでは、税理士への依頼が必要ないことが多いです。なお、相続税を支払う必要があるのか、支払うとしたらどのくらいの金額になるのかについては、無料の初回相談で回答してくれる税理士事務所もあります。
また、相続税の節税対策や納税資金対策についての相談にも対応します。生前贈与を活用した相続税対策や、不動産の評価を下げる特例適用など、適切な節税方法の提案を受けることもできるでしょう。
2. 税理士の費用相場の目安
相続税申告の基本料金相場は、遺産総額の0.5〜1%程度です。例えば、遺産総額が1億円の場合、50万円〜100万円程度が目安となります。基本報酬に加えて、以下のような特定の事情がある場合には加算報酬が発生することがあります。
- 土地を相続する:1利用区分につき、約4万~5万円
- 非上場株式を相続する:1社につき、約10万~15万円
- 相続人が複数人いる:相続人1人追加ごとに、基本報酬の10%を加算
- 申告期限まで3カ月未満:報酬総額の20%~50%
- 書面添付制度を利用する:約4万~6万円
- 書類取得に手数料がかかる:取得にかかった手数料分
初回相談料は無料〜5,000円で、多くの税理士事務所では初回無料相談を実施しています。また、相続税申告が不要な相続手続き相談は約5〜10万円、財産目録・遺産分割協議書の作成は約10〜20万円が一般的な相場です。
3. 税理士への相談が向いているご遺族様

税理士への相談が特に適しているのは、「相続財産の中に不動産や預貯金など多様な資産があり、相続税申告の必要性や税額を知りたい」と考えているご遺族様です。特に、被相続人の財産が基礎控除額を超える可能性がある場合には、早めに税理士に相談するとよいでしょう。
また、「相続税の納税資金の準備に不安がある」というご遺族様にも税理士の助言は有用です。納税猶予制度の活用や、相続税対策など、ご遺族様の状況に合わせた提案をしてもらえます。
さらに、事業承継を伴う相続の場合も税理士への相談が適しています。事業用資産や非上場株式の評価は専門的な知識が必要です。各種の特例措置も活用できる可能性があります。
前述したように、相続税申告・納付が必要な方の多くが税理士に申告の代行を依頼しているといえます。なお、相続税申告が必要な割合は、国税庁の「相続税の申告実績の概要」によると全体の約9.9%です。

(4)弁護士

弁護士は、法律に関する専門的知識を持つ「法律の専門家」です。民事・刑事を問わずあらゆる法律問題に対応し、依頼者の権利を守るために活動する国家資格者です。
具体的には、法的トラブルの解決、裁判での代理人活動、法律相談、契約書の作成など幅広い業務を行っており、あらゆる裁判所での訴訟代理権を持ちます。
1. 相続分野での弁護士の対応業務
| 独占業務 | ・相続人間のトラブル解決 ・遺留分侵害額請求の代理 ・相続放棄、限定承認の手続き代理 |
|---|---|
| 一般業務 | ・法定相続人や相続財産の調査 ・遺産分割協議書の作成 など |
弁護士の相続分野での対応業務としては、相続人間のトラブル(いわゆる争族)の解決があります。遺産分割で相続人同士の意見が対立した場合、弁護士は依頼者の立場に立って交渉を行えます。これは弁護士のみが行える業務です。
また、遺言の有効性を巡る紛争や、遺留分侵害額請求(旧・遺留分減殺請求)に関する法的対応も弁護士の専門分野です。遺留分侵害額請求とは、遺言や生前贈与によって法定相続分の一定割合(遺留分)を下回る財産しか相続できない場合に、他の相続人等に対して金銭での支払いを求める手続きです。
さらに、相続放棄や限定承認の手続き代理も行います。故人様に多額の借金がある場合などには、相続放棄の手続きを速やかに行うことが重要で、弁護士はその手続きを代理できます。
2. 弁護士の費用相場の目安
弁護士の相続関連業務の費用相場は、業務内容や事案の複雑さによって大きく異なります。一般的な目安は以下のとおりです。
- 法律相談料:30分5,000円〜1万円程度
(初回無料相談を実施している事務所も多い) - 遺産分割協議の代理:着手金20万円〜50万円程度、報酬金は経済的利益(獲得した遺産額)の10〜16%程度
- 遺産分割調停・審判の代理:着手金30万円〜80万円程度、報酬金は経済的利益の10〜16%程度
- 遺留分侵害額請求:着手金30万円〜、報酬金は回収額の10〜16%程度
- 相続放棄の手続き代理:10万円〜20万円程度
- 訴訟代理(遺産確認訴訟など):着手金50万円〜、報酬金は経済的利益の10〜20%程度
3. 弁護士への相談が向いているご遺族様

弁護士への相談が特に適しているのは、「相続人間で遺産分割について意見が対立している」または「対立が予想される」ご遺族様です。相続人同士の話し合いがうまくいかない場合、法律の専門家である弁護士が間に入ることで解決の糸口が見つかることがあります。
また、「遺言書の内容に不満や疑問がある」というご遺族様にも弁護士の助言は有用です。遺言の有効性や解釈について疑問がある場合、法的観点からの分析や対応策を提案してもらえます。「遺留分を侵害されている可能性がある」と考えるご遺族様も、弁護士への相談が適しています。遺留分侵害額請求は法的手続きが複雑であり、弁護士の専門知識が必要です。
さらに、「被相続人に多額の借金があり、相続放棄を検討している」ご遺族様にも、早急に弁護士への相談をお勧めします。相続放棄は相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きを完了する必要があり、期限を過ぎると原則として放棄できなくなります。相続人間に対立の兆候が見られる場合や、複雑な家族関係がある場合には、早めに弁護士への相談をご遺族様に案内することが、将来的なトラブル防止のための支援となるでしょう。

(5)行政書士

行政書士は、官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成を主に担当する法律系の国家資格を持つ専門家です。「書類作成のプロフェッショナル」として位置づけられています。
官公署への許認可申請、契約書や遺言書の作成、各種証明書の取得代行など、様々な手続きに関する業務を行うほか、これらの手続きに関する相談にも応じています。
1. 相続分野での行政書士の対応業務
| 独占業務 | ・自動車の名義変更手続き |
|---|---|
| 一般業務 | ・法定相続人や相続財産の調査 ・遺産分割協議書の作成 ・遺言書作成のサポート など |
相続手続きに必要な遺産分割協議書や財産目録の作成、戸籍収集による相続人調査、役所への各種届出代行などが主な行政書士の業務です。
また、故人様から相続した車の名義変更手続きは行政書士の独占業務です。自動車の所有者が亡くなった場合、相続人への名義変更には運輸支局での手続きが必要となります。この申請書類の作成と代理申請は行政書士のみが行えます。
さらに、行政書士の相続分野での対応業務としては、生前の遺言書の作成サポートもあります。公正証書遺言の作成にあたっては、遺言者の意思を反映した遺言案を作成し、公証役場での手続きをサポートします。
2. 行政書士の費用相場の目安
- 法律相談料:30分3,000円〜5,000円程度
(初回無料相談を実施している事務所も多い) - 遺産分割協議書の作成:5万円〜15万円程度
- 相続人調査・戸籍収集:1通1,000円〜3,000円程度
- 自動車の相続手続き(名義変更):1台につき2万円〜4万円程度
(車検証や納税証明書の取得費用等は別途)
3. 行政書士への相談が向いているご遺族様

行政書士への相談が特に適しているのは、相続手続きに必要な各種証明書類の作成を希望されるご遺族様です。相続人同士の間に大きな争いがなく、必要書類の作成や手続きのアドバイスが主な目的である場合、行政書士へ依頼するケースが多いでしょう。
また、故人様の所有していた自動車の名義変更をされたいご遺族様も行政書士への相談が向いています。
他の専門家と比較して、行政書士への依頼は比較的シンプルな業務内容となることが多く、費用面でも抑えられる傾向があります。予算を考慮されているご遺族様にとっては、費用対効果の高い選択肢といえるでしょう。

(6)ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナー(FP)は、個人や家族の資産設計・資金計画を総合的に考え、適切なアドバイスを行う金融の専門家です。ライフプランに合わせた資産運用、住宅購入、教育資金、老後資金、保険の選択など、お金に関する様々な相談に応じています。
ファイナンシャルプランナーの資格には、国家資格である「ファイナンシャル・プランニング技能士」と、民間資格である「CFP」や「AFP」などがあります。これらの資格を取得した上で、銀行や保険会社、証券会社、独立系FP事務所などで活動しているケースが多いです。
1. 相続分野でのファイナンシャルプランナーの対応業務
ファイナンシャルプランナーの相続分野での対応業務としては、相続手続きの全体的なコーディネートがあります。相続が発生した後、遺族に対して相続手続きの流れを説明し、必要な手続きや書類についてアドバイスを行います。
ただし、ファイナンシャルプランナーは相続手続きの代行などを行うことはできません。そのため、相続税の申告が必要な場合は税理士を、不動産の名義変更には司法書士を、遺産分割で揉めている場合は弁護士を紹介するなど、状況に応じた適切な専門家への橋渡し役を担うことが多いです。
2. ファイナンシャルプランナーの費用相場の目安
- 初回相談料:無料〜1万円程度
(多くの独立系FPでは初回無料相談を実施している) - 相続相談・アドバイス:1時間あたり5,000円〜2万円程度
- 相続対策プラン作成:10万円〜30万円程度
(資産規模により変動) - 相続手続きのコーディネート:基本料10万円〜30万円程度、加えて相続財産の1%〜3%程度
なお、銀行や保険会社に所属するファイナンシャルプランナーの場合は、相談自体は無料であることが多いですが、その後の商品販売につながることを前提としているケースがあります。
3. ファイナンシャルプランナーへの相談が向いているご遺族様

ファイナンシャルプランナーへの相談が特に適しているのは、「相続後の資産運用や生活設計について相談したい」と考えているご遺族様です。相続によって取得した資産の有効活用や、今後の生活設計についてのアドバイスを受けられます。
また、「相続手続き全体の流れを把握し、適切な専門家に相談したい」と考えているご遺族様も適しているといえるでしょう。なお、相続税対策として、被相続人(故人)が生前に相続税シミュレーションや資産管理プランの相談を行うケースも多いようです。

(7)銀行

銀行は、預金・融資・為替といった基本的な金融サービスを提供する機関です。また、中には個人や法人の財産を預かり、委託者の意思に従って管理・運用する信託業務を行っているところもあります。
1. 相続分野での銀行の対応業務
| 業務内容 | ・故人様名義の預貯金口座の解約、名義変更手続き ・遺言信託や遺産整理業務 ・相続全般に関する相談 ・提携している専門家の紹介 など |
銀行の相続分野での対応業務は、主に故人様名義の預貯金口座の解約や名義変更手続きを中心としています。相続人は必要書類(遺産分割協議書、戸籍謄本など)を提出し、銀行での相続手続きを進めます。
また、遺言信託や遺産整理業務などの専門サービスも提供しています。生前の遺言書作成・保管から遺言執行までをサポートする遺言信託や、相続発生後の財産調査から各種名義変更手続きまでを一括して行う遺産整理業務が特徴的です。
銀行の相談窓口では相続全般に関する初期相談に応じており、必要に応じて提携している専門家(弁護士、税理士、司法書士など)を紹介することもあります。相続人は自分で専門家を探す手間を省けますが、銀行経由での依頼は直接専門家に依頼するよりも費用が高くなることが多い点に注意が必要です。
生前対策としての資産管理や相続対策のコンサルティングも行っており、家族信託や生前贈与など相続を見据えた提案も銀行の役割のひとつです。
2. 銀行の費用相場の目安
- 相続相談:無料
(多くの銀行では、顧客向けの初期相談を無料で実施している) - 遺言信託サービス:基本手数料10万円〜30万円程度、執行報酬は遺産額の1%〜3%程度
- 遺産整理業務:基本手数料20万円〜50万円程度、報酬は遺産額の1%〜3%程度
- 財産調査サービス:5万円〜20万円程度
(調査範囲により変動) - 相続手続き代行(預貯金のみ):1銀行につき1万円〜3万円程度
- 専門家紹介サービス:紹介自体は無料のことが多いが、専門家への報酬とは別に銀行への手数料が発生する場合がある。
なお、取引残高や取引期間によって優遇措置がある場合もあります。
3. 銀行への相談が向いているご遺族様

銀行への相談が特に適しているのは、「相続手続き全般についてワンストップでサポートを受けたい」と考えるご遺族様です。、また、一部の銀行では遺産整理業務として、財産調査から名義変更までの一連の手続きを一括して依頼することができます。
また、「相続手続きに関する知識がなく、どこに相談すべきかわからない」というご遺族様にとっても、普段から利用している銀行は敷居が低く相談しやすい窓口となります。必要に応じて専門家を紹介してもらうこともできるため、最初の相談先として適しています。
相続手続きに不安を感じているご遺族様や、故人様との取引が多かった銀行がある場合には、その銀行への相談も選択肢の一つとして案内できます。ただし、費用面では直接専門家に依頼するよりも高額になる可能性があることも併せて説明するようにしましょう。

まとめ
ここまで相続手続きにかかわる専門家について詳しく解説してきました。
相続の手続きにかかわる専門家は多岐にわたりますが、前述したように相続税の申告・納付が必要な人は全体の約10%程度に留まります。そのため、実際にご遺族様が触れることの多い専門家は、不動産の相続登記を代行できる司法書士や、遺産分割の際に不動産の価値を算定できる不動産鑑定士となるでしょう。
ご遺族様の状況に応じて、適切な専門家をご紹介できるよう、それぞれの専門家の役割と特徴を理解しておくことが、葬儀社としてのアフターサービスの充実につながります。また、必要に応じて複数の専門家との連携体制を構築しておくことで、ご遺族様の多様なニーズに応えることが可能となるのではないでしょうか。


