株式会社 三重平安閣 ~ 斎奉閣 ~|冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

決算公告 三重平安閣 アイキャッチ

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 三重平安閣の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 三重平安閣の概要

株式会社 三重平安閣は、三重県で冠婚葬祭互助会事業をおこなっています。
1958年に「三重県冠婚出産互助会」として始まり、翌年に「株式会社 美裳園」が設立されました。
その後「株式会社 三重新生活互助会」を経て、1979年に現在の社名に変更されています。

2024年7月現在、三重県内で結婚式場2か所と「斎奉閣」名義で葬儀施設を18か所「和ごごろ」名義で家族葬向け葬儀施設を4か所運営しています。
また介護事業もおこなっており、リハビリ型デイサービス施設「レッツ俱楽部」が5か所あり、高齢者の自立した生活をサポートする、半日型のデイサービス施設です。
ほかにも、ペット事業や生活支援事業など、多岐にわたる事業に取り組んでいます。

三重平安閣は、全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)より葬儀品質認定制度である「全互協葬儀品質認定」を付与されました。
これは葬儀施行サービスの品質が、一定の基準以上であると認定されるものです。

【名称】株式会社 三重平安閣
【代表取締役】松嶌 康博
【創業】1958年(昭和33年)11月
【所在地】三重県四日市市元町8-5
【公式サイト】https://www.mie-heiankaku.co.jp/
【事業内容】
・互助会、結婚式場・葬祭式場の運営
・結婚サポート事業
・介護ならびに介護予防事業
・生活支援サービス
・貸衣裳、写真撮影
・墓地墓石の販売、霊園管理
・冷凍食品販売
・通信販売(オンラインショップ)
・セルフホワイトニング
・ペット事業
      

出典:株式会社 三重平安閣 会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告は、その会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。
以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。
互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみおこなえる事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は、割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を、次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき、互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は、以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

三重平安閣の貸借対照表

決算期第45期第46期第47期第48期第49期第50期第60期
会計年度2017年12月期2018年12月期2019年12月期2020年12月期2021年12月期2022年12月期2023年12月期
利益剰余金42億5千1百万円42億6千7百万円43億3千8百万円41億8千1百万円40億9千5百万円39億6千3百万円37億9千7百万円


流動資産89億0千9百万円85億4千5百万円80億3千9百万円83億4千6百万円80億5千0百万円78億2千7百万円49億3千8百万円
固定資産103億8千0百万円100億2千8百万円97億5千7百万円95億1千6百万円91億1千2百万円84億3千0百万円109億4千8百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産2千9百万円3千1百万円3千3百万円4千1百万円34百万円61百万円0百万円
資産合計193億1千9百万円186億0千4百万円178億2千9百万円179億0千3百万円171億9千6百万円163億1千7百万円158億8千6百万円


流動負債143億4千0百万円25億9千2百万円23億8千8百万円26億7千0百万円22億0千3百万円17億6千8百万円17億7千8百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
特定取引前受金122億4千6百万円
固定負債5億0千2百万円113億9千0百万円110億5千6百万円109億0千0百万円106億4千9百万円103億1千9百万円100億2千5百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
引当金等1億6千1百万円3億1千4百万円億千7百万円1億1千2百万円2億1千0百万円2億2千7百万円2億3千3百万円
負債の部計150億0千3百万円142億9千6百万円134億5千1百万円136億8千2百万円130億6千1百万円123億1千4百万円120億3千7百万円



株主資本42億9千1百万円43億0千7百万円43億7千8百万円42億2千1百万円41億3千5百万円40億0千3百万円38億3千7百万円
資本金8千0百万円8千0百万円8千0百万円8千0百万円8千0百万円8千0百万円8千0百万円
 資本余剰金1千2百万円1千2百万円1千2百万円1千2百万円1千2百万円1千2百万円1千2百万円
資本準備金
その他資本余剰金
 利益剰余金42億5千1百万円42億6千7百万円43億3千8百万円41億8千1百万円40億9千5百万円39億6千3百万円37億9千7百万円
利益準備金5千0百万円6千7百万円8千4百万円1億0千0百万円1億1千4百万円1億2千7百万円1億4千4百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金42億0千2百万円42億0千1百万円42億5千4百万円40億8千0百万円39億8千1百万円38億3千6百万円36億5千3百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)2億1千2百万円1億8千4百万円2億3千8百万円1千1百万円4千9百万円3百万円2百万円
自己株式-5千2百万円-5千2百万円-5千2百万円-5千2百万円-5千2百万円-5千2百万円-5千2百万円
自己資本
評価・換算差額等2千4百万円1千2百万円
その他有価証券評価差額金
純資産の部計43億1千6百万円43億0千7百万円43億7千8百万円42億2千1百万円41億3千5百万円40億0千3百万円38億4千9百万円
負債・純資産合計193億1千9百万円186億0千4百万円178億2千9百万円179億0千3百万円171億9千6百万円163億1千7百万円158億8千6百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は、純資産の部です。
総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。
自己資本比率が10%を下回っている場合は、経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多いので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は、最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は、最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

三重平安閣の自己資本比率は24.23%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。

三重平安閣の、2023年12月期の自己資本比率を求める式は、下記のようになります。

38億4千9百万円 ÷ 158億8千6百万円=24.23 % 

上記の式から同社の自己資本比率は、24.23%(前年比0.3%減)となりました。

三重平安閣の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つで構成されています。

流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや、1年を超えて現金もしくは費用となる資産で、有形固定資産や無形固定資産がある
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や、社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに、資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など

三重平安閣の資産合計の推移は、以下のようになっています。

三重平安閣の2023年12月期の資産合計は、158億8千6百万円(前年同期比2.64%減)となりました。
2020年12月期のみ、前年よりわずかに増加しましたが、2017年から少しずつ減少しています。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となる
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となるので、流動負債以外の負債は固定負債になる
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

三重平安閣の場合は、以下のようになっています。

三重平安閣の2023年12月期の負債合計は、120億3千7百万円(前年同期比2.25%減)となっています。
過去6年間の状況を見てみると、2020年のみ前年より増加しましたが、毎年少しずつ減少しています。

資産合計が減少するのと同じように、負債合計も減少していることから、毎年少しづつ負債の返済に充てていたのかもしれません。

財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2023年3月期の時点で277.7%(安全ラインは100%以上)となっており、支払い能力についての不安は感じられません。

三重平安閣の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの、右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から、負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することで、その会社の純資産を確認できます。

三重平安閣の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から、負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ、財務健全性が高いと考えます。

一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

三重平安閣の2023年12月期の純資産合計は、38億4千9百万円(前年同期比3.85%減)となりました。
2019年のみ前年より増加しましたが、その後は年々わずかに減少しつづけ、2023年12月期は、前年より1億5千万円以上の減少となっています。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税、そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると、当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか、判断できる指標になります。

三重平安閣の2023年12月期の当期純利益は、2百万円(前年同期比39.93%減)となっています。
2020年12月期から新型コロナの影響を受けたとみられ、一気に減少しましたが、2021年には少し回復しています。
しかし、2022年・2023年と連続して減少しました。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは、簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずに、コツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保とも言います。

内部留保は、おそらく聞き馴染みのある単語だと思います。
利益剰余金は、貸借対照表で言うところの、純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

三重平安閣の場合は、以下のように推移しております。

2023年12月期の三重平安閣の利益剰余金は、37億9千7百万円(前年同期比4.20%減)となりました。
2019年12月期の43億3千8百万円をピークに、年々わずかずつ減少していますが、コロナの影響を受けたとみられる2020年からも、大幅な減少はなく推移しています。

株式会社 三重平安閣のまとめ

今回は、株式会社 三重平安閣の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。

2020年から2021年にかけて、新型コロナの影響を受けて収益が下がった葬儀社も多いようですが、三重平安閣も例外ではなかったようです。
しかし影響は最小限にとどめられたようで、コロナ禍前より大きく減少はしましたが、収益を上げていました。

地域コミュニティを大切にする経営理念のもと、創業以来65年にわたり地域の「ライフサイクルサポーター」として、社会の発展に貢献しています。
三重平安閣の、2024年12月期の決算公告にも注目したいと思います。

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