株式会社 ロマンティア ~メモワール~|冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

ロマンティア

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、
葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 ロマンティアの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 ロマンティアの概要

株式会社 ロマンティアは、岐阜県をおもな営業エリアとする冠婚葬祭事業者です。
昭和46年9月に岐阜県各務原市にて、貸衣装花嫁センターを創業し「各務原冠婚葬祭互助会」へ商号を変更しました。
昭和53年7月には、各務原市蘇原中央町に葬祭センターを開設し「中央互助会」を経て、平成11年2月に現在の社名に変更しています。

2024年7月現在、岐阜県内で「メモワール」名義で葬儀斎場を26施設「家族葬庵」名義で家族葬向けの葬儀斎場を7施設運営し、年間の葬儀施行件数は14,000件以上の実績となっています。

昭和56年から結婚式場「各務原平安殿」(のちにコッツウォルズに名称変更)の運営もおこなっていましたが、2024年6月末で閉館したようです。

【名称】株式会社 ロマンティア
【設立】昭和48年7月23日
【代表取締役】圡田 直樹
【所在地】岐阜県各務原市鵜沼三ツ池町1丁目30番地
【公式サイト】https://www.romantier.jp/
【事業内容】・葬祭互助会事業
      ・葬祭事業
      ・特殊自動車運送事業
      ・生花事業

出典:株式会社 ロマンティア 会社概要

葬儀社の決算公告とは

葬儀社の決算公告とは
決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは冠婚葬祭などの行事に備えるために毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。
互助会の会員になることで葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみおこなえる事業です。

互助会の仕組み
出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は、以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

ロマンティアの貸借対照表

決算期第46期第47期第48期第49期第50期第51期
会計年度2018年6月期2019年6月期2020年6月期2021年6月期2022年6月期2023年6月期
利益剰余金55億6千9百万円65億5千8百万円75億6千1百万円85億8千4百万円96億9千9百万円108億0千7百万円


流動資産44億5千6百万円51億2千4百万円63億4千2百万円73億3千5百万円84億0千5百万円94億7千6百万円
固定資産38億7千9百万円38億9千1百万円35億4千6百万円34億8千2百万円33億9千0百万円32億6千7百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計83億3千5百万円90億1千5百万円98億8千8百万円108億1千7百万円117億9千5百万円127億4千3百万円


流動負債23億2千3百万円21億5千6百万円19億8千5百万円19億7千3百万円18億9千5百万円17億6千0百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債4億1千3百万円2億7千1百万円3億1千2百万円2億3千0百万円1億7千1百万円1億4千6百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計27億3千6百万円24億2千7百万円22億9千7百万円22億0千3百万円20億6千6百万円19億0千6百万円



株主資本55億9千9百万円65億8千8百万円75億9千1百万円86億1千4百万円97億2千9百万円108億3千7百万円
資本金3千0百万円3千0百万円3千0百万円3千0百万円3千0百万円3千0百万円
 資本余剰金
資本準備金
その他資本余剰金
 利益剰余金55億6千9百万円65億5千8百万円75億6千1百万円85億8千4百万円96億9千9百万円108億0千7百万円
利益準備金7百万円7百万円7百万円8百万円7百万円7百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金55億6千2百万円65億5千1百万円75億5千4百万円85億7千6百万円96億9千2百万円108億0千0百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)9億8千8百万円9億9千2百万円10億0千6百万円10億2千5百万円11億1千9百万円11億1千1百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計55億9千9百万円65億8千8百万円75億9千1百万円86億1千4百万円97億2千9百万円108億3千7百万円
負債・純資産合計83億3千5百万円90億1千5百万円98億8千8百万円108億1千7百万円117億9千5百万円127億4千3百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

貸借対照表 図解

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

 ロマンティアの自己資本比率は85.04%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
ロマンティアの2023年6月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

108億3千7百万円 ÷ 127億4千3百万円= 85.04%

上記の式から同社の自己資本比率は85.04%(前年比2.56%増)となりました。

ロマンティアの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

貸借対照表 図解

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており「会社の所有する資産」を表します。

資産は下記の3つで構成されています。

流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など

ロマンティアの資産合計の推移は以下のようになっています。

ロマンティアの2023年6月期の資産合計は、127億4千3百万円(前年同期比8.04%増)となりました。
過去5年間にわたり、少しずつですが増加を続けています。
2023年6月期は、過去5年間で最高額となりました。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となる
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となるので、流動負債以外の負債は固定負債になる
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

ロマンティアの場合は以下のようになっています。

ロマンティアの2023年6月期の負債合計は、19億0千6百万円(前年同期比7.74%減)となっています。
過去5年間の状況を見てみると、少しずつではありますが、着実に減少してきています。

短期的な安全指標である流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、512.6%と安全レベルとされる200%を超えている状態です。

ロマンティアの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。

純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

貸借対照表 図解

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

ロマンティアの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。
一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

ロマンティアの2023年6月期の純資産合計は、108億3千7百万円(前年同期比11.40%増)となりました。
2018年から毎年増加し続けて、2023年には100億円を超えて過去5年間で最高額となっています。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税、そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

ロマンティアの2023年6月期の当期純利益は、11億1千1百万円(前年同期比0.71%減)となっています。
前年よりわずかに減少しましたが、2020年から2021年にかけて新型コロナの影響を受けた葬儀社も多いなか、2022年6月期まで少しずつでも利益を上げ続けている点は、注目に値するといえるでしょう。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。

内部留保はおそらく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

ロマンティアの場合は以下のように推移しております。

2023年6月期のロマンティアの利益剰余金は、108億0千7百万円(前年同期比11.42%増)となりました。
毎年利益を上げ続けているため、利益剰余金も順調に積み上げられています。
万一経営が悪化した場合にも、十分な資金が確保できている状況です。

株式会社 ロマンティアのまとめ

今回は株式会社 ロマンティアの決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
外部からは見えない企業の内部状況も、貸借対照表を分析することで、ある程度まで把握できるかと思います。

2020年から2021年にかけて新型コロナの影響を受け、業績が下がった葬儀社もあるようですが、ロマンティアは影響を最小限にとどめたとみられ、わずかながらも収益を上げ続けていました。

創業以来、時代の変化に合わせて、地域に根ざしたサービスの提供を続けてきた結果かも知れません。
さらに業績を伸ばしている可能性がある、株式会社 ロマンティアの次期決算公告に注目したいと思います。

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