在来仏教13宗56派とは？｜御本尊様やお題目など臨済宗東福寺派の特徴について解説

2023年5月4日

信仰心の希薄化が取り沙汰される現在の日本ですが、国内で営まれる葬儀の8割前後が仏式で執り行われているようです。
しかし菩提寺を持たない家庭も増えていることから、葬儀を依頼できる僧侶がいないという方も多く、自分の家の宗派を把握していないケースも少なくありません。

一般の方が、仏教を含む宗教に対して親しみを覚えない要因の1つとして、自身の家が代々信仰してきた宗教に関する知識の不足もあるのではないでしょうか。
近年では核家族化などの影響から、親世代と子供・孫世代が離れて暮らしているケースも多く、信仰に関する経験や知識が継承されにくくなっているようです。

葬儀業界では葬儀施行単価の下落が深刻な状況となっていますが、宗教儀式に対する関心の低下も葬儀の簡素化が進む原因の1つと考えられます。
葬儀のもつ意義を一般の方に理解してもらうためにも、仏教離れの流れに歯止めをかける必要があるでしょう。

日本には古くから受け継がれてきた在来仏教が13宗56派あり、各宗派を信仰する方が仏教徒の多くを占めているようです。
本記事では、在来仏教宗派のうち臨済宗東福寺派について、わかりやすく紹介します。
葬儀社様の業務に活かせる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

臨済宗東福寺派の概要

臨済宗東福寺派（りんざいしゅうとうふくじは）は、一般には「禅宗」と称される臨済宗の十五派のうち、「東福寺」を本山とする一派です。
鎌倉時代中期に活躍した僧、円爾（えんに）が宋に渡り臨済宗を修めて帰国したのちに東福寺を開山して、臨済宗の流布に尽力したことから始まる宗派といわれています。

円爾が修めた臨済宗は、日本で広く知られている臨済宗の高僧・栄西（えいさい）が広めた臨済宗とは派が異なっていると伝えられています。
現在東福寺派と称される円爾が広めた臨済宗は、中国臨済宗の中では「楊岐派（ようぎは）」と呼ばれており、栄西が広めた臨済宗は「黄龍派（おうりゅうは）」と呼ばれてます。

臨済宗東福寺派のご本尊様

ご本尊とは、信仰の対象として寺院や仏壇などで祀られる、仏・菩薩像のことをいいます。
寺院創立の由来や、信仰によってご本尊がことなるうえ、各宗派によってそれぞれ一定のご本尊があるといわれています。

臨済宗東福寺派の大本山である「東福寺」では、「釈迦如来（しゃかにょらい）」がご本尊として祀られています。

「釈迦如来」とは、仏教の開祖として広く知られている存在です。
釈迦はインドの一部族である釈迦族で王族として生まれながら、29歳で出家して苦行を経たのち、悟りを開くに至りました。
この悟りを布教し、広まっていったことが仏教としての始まりとされています。

臨済宗東福寺派の開祖

臨済宗東福寺派の開祖は「聖一国師円爾（しょういちこくしえんに）」です。
円爾は鎌倉時代中期に活躍した僧で、駿河（するが＝今の静岡県）に生まれ幼少期は天台の教えを学んでいたようですが、18歳で得度してから臨済宗の教えを学んだといわれます。

嘉禎元年（1235年）、34歳で宋に渡航した円爾は、その6年の滞在期間で径山万寿寺の無準師範（ぶじゅんしはん）より臨済宗の教えを受けています。

1241年の帰朝後は、筑前（ちくぜん＝今の福岡県）の地で承天寺（じょうてんじ）や崇福寺（そうふくじ）を開山することになります。
その後に鎌倉時代前期の公卿（くぎょう＝今の時代における政府高官）であった九条道家（くじょうみちいえ）に招かれ上洛し、大本山となる東福寺を開山することになりました。

円爾は東福寺において臨済宗の流布に尽力していますが、その教えは禅だけではなく、真言や天台もまじえてのものだったといわれます。
このため、臨済宗以外の宗派でも活躍しており、東大寺大勧進職に就くなど信望を得ていたとみられています。

東大寺：奈良県奈良市にある華厳宗の大本山

大勧進職：東大寺の再建や管理維持における責任者の役職

晩年は故郷の駿河に戻り、臨済の教えを布教していたようです。

また、宋から持ち帰った茶の実を故郷の地に植えさせて、栽培を広めたことが「静岡茶」の始まりであると伝えられています。
このことから円爾は「静岡茶の祖」と呼ばれており、静岡市では円爾の生誕日である11月1日を「静岡市お茶の日」として定めて、毎年記念事業を実施しています。

臨済宗東福寺派で主に使用される経典

臨済宗東福寺派として、宗派特定の経典はないようです。
宗教の臨済宗としては幾つかの経典を読んでいるので紹介します。

「般若心経（はんにゃしんぎょう）」
「観音経（かんのんきょう）」
「大悲咒（だいひじゅ）」
「開経偈（かいきょうげ）」

この中で一般的に名を知られている経典は「般若心経」です。

臨済宗東福寺派の代表的な寺院

臨済宗東福寺派の寺院は、大本山である東福寺（とうふくじ）のほか、全国に366寺が存在するようです。

参照：宗教年鑑（令和2年版）

大本山東福寺

正式には慧日山東福寺（えにちさんとうふくじ）といい、京都の東南端に位置する寺院です。
鎌倉時代前期の公卿であった九条道家の発願により創建され、開山に円爾を迎えたことで臨済宗の寺院として存在することになりました。
その完成まで実に19年の年月を費やしたと伝えられます。

開山当時は天台・真言・禅の三宗兼学の寺院として建設が進められていました。
しかし、その歴史の中で起こった何回かの火災焼失・再建を経る中で、最終的には禅寺として復興がされたようです。

室町幕府・足利義満の時代には「京都五山」に定められて、第四位に格付けされて以降栄えることになりました。
「京都五山」とは、高い寺格をもつ臨済宗の寺院を称する呼び方です。

別格寺院：南禅寺
第一位　：天龍寺
第二位　：相国寺
第三位　：建仁寺
第四位　：東福寺
第五位　：万寿寺

現在では紅葉の名所として広く知られており、秋の見ごろには特別拝観が催されています。

臨済宗東福寺派の特徴

臨済宗は、悟りを得るために座禅をする宗派といわれています。
臨済宗の座禅は、師匠と弟子が対面に座して「問答（禅問答）」をします。
問いに対して、答えを頭だけで考えるのではなく、座禅を組むことによって身体全体で答えに至ることを目指すとされます。

この臨済宗の座禅は「看話禅（かんなぜん）」と呼ばれます。
対して曹洞宗の座禅は「黙照禅（もくしょうぜん）」と呼ばれています。

臨済宗東福寺派のお題目

臨済宗の読経で唱えられるお題目は「南無釈迦牟尼仏（なむしゃかむにぶつ）」という言葉です。
この「南無釈迦牟尼仏」とは、「釈迦如来に帰依します」という意味になります。
砕けた表現をすると、「お釈迦様を信じます」または「お釈迦様についていきます」ということになるでしょう。

臨済宗東福寺派における年間行事

ここでは、大本山の東福寺にて執り行われる行事を紹介します。

1月1～3日：修正会
2月初午：懺法会
3月14～16日：涅槃会
春分の日：彼岸会
4月8日：降誕会
4月18日：佛鑑忌
5月初旬：新緑遊行
8月16日：精霊送り
秋分の日：彼岸会
10月5日：初祖忌
10月17日：開山忌
11月～12月初旬：看楓特別公開
12月8日：成道会
12月31日：除夜

出典：東福寺ホームページ

臨済宗東福寺派の葬儀について

現在の世の中において「葬儀」とは、現世に残された人が天上に旅立つ故人を送り出すための儀式、といういわれ方をします。

臨済宗では「座禅することによって悟りを得る」ことが重要視されています。
臨済宗の葬儀は、故人が仏の弟子になり、修行をおこない、自らの仏性に目覚めるための儀式という意味を持ちます。

臨済宗の持つ葬儀の意味や意義とは別に、故人との永久の別れは、残された人たちにとっておとずれた悲しみが大きく、その心に空いた穴は簡単に埋まるものではありません。
そのため、残された人たちが悲しみを受け入れ、その悲しみを乗り越えるために必要な儀式として「葬儀」の存在は大きな意味を持つことでしょう。

臨済宗東福寺派の葬儀を執り行うにあたって

葬儀を執り行うに際して、まずは菩提寺に連絡をして、葬儀の日取りを決めなければなりません。
また現代では、同時に葬儀社へ連絡をして葬儀施行を依頼することも必要とされています。

ここでは、臨済宗の一般的な葬儀の流れを紹介します。

枕経

現代では菩提寺に連絡をすると、僧侶がはじめのお経（枕経＝まくらきょう）をあげに故人様のもとを訪れます。
故人様の枕元であげるお経なので、枕経といいます。

枕経が終わったら、僧侶から葬儀の日取りの打ち合わせと、故人様の戒名を授けるためにお人柄の聞き取りがおこなわれます。

枕経には、葬儀を依頼する葬儀社も立ち会うことが多いので、事前に葬儀社にも枕経の日時を連絡するとよいでしょう。
地域の風習や菩提寺の都合などで、枕経と通夜をあわせておこなうこともあるようです。

臨済宗の葬儀の概略

臨済宗の葬儀ではおおまかに、「授戒（じゅかい）」・「引導（いんどう）」・「念誦（ねんじゅ）」という3つの儀式が執り行われます。

授戒（授戒）

葬儀における「授戒」とは、故人が仏門に入り、仏の弟子となるための「戒（戒律）」を授ける儀式をいいます。
戒名はこの儀式で授けることになります。

引導（引導）

葬儀における「引導」とは、故人が悟りを開けるように僧侶が説いて導く儀式をいいます。
臨済宗の葬儀では、僧侶が柩の前で法語（ほうご）や偈頌（げじゅ）を唱え、「喝（かつ）」などと大声を放つ、独特の儀式がおこなわれます。

この「引導」は、一般にも使われている「引導を渡す」という言い回しの語源でもあります。

念誦（ねんじゅ）

葬儀における「念誦」とは、故人が無事あの世（浄土）へ旅立つことができるよう、僧侶が経典を唱える儀式をいいます。

臨済宗の葬儀の流れ

ここでは臨済宗の葬儀の流れの一例を紹介します。

導師入場：導師（僧侶）が入場します。
剃髪：導師が故人の髪をカミソリで剃ります。現代の葬儀では、髪を剃るまねで済ませることが多くなってきています。
懺悔文（ざんげもん）：故人の生前中、これまでの行いを懺悔します。故人の成仏を祈ります。
三帰戒文（さんきかいもん）：「仏に帰依し奉る」と唱えることで、故人が仏の教えによってお釈迦様に帰依することを誓います。
三聚浄戒（さんじゅじょうかい）・十重禁戒（じゅうじゅうきんかい）：祓い清めた水を棺に注ぎます。これを「酒水灌頂（しゃすいかんじょう）」と呼び、この儀式を行うことで故人が浄化されます。これにより故人は仏様の弟子となり、仏門に入ることになります。
血脈授与（けちみゃくじゅよ）：故人が僧侶から血脈を授かります。血脈は故人霊前に供えます。
入龕諷経（にゅうがんふぎん）：本来は納棺の際におこなわれる儀式ですが、現代の葬儀では前もって納棺されている場合がほとんどですので、葬儀の場では納棺のためのお経が唱えられます。
龕前念誦（がんぜんねんじゅ）：納棺に引き続き、棺を閉じる際に棺を閉じるためのお経が唱えられます。
起龕諷経（きがんふぎん）：出棺の際に、出棺のためのお経が唱えられます。
山頭念誦（さんとうねんじゅ）：故人の成仏を願い、導くためのお経が唱えられます。この儀式では、妙鉢（みょうばち）と呼ばれる金属製のシンバルのような形をした仏具や太鼓などを打ち鳴らします。
引導法語：導師が法語を唱えることで故人を浄土へと送ります。法語の後半では、導師が「喝！」と叫びます。この「喝！」は、故人をこの世に対する未練から解放して、浄土への旅立ちが安らかなものになるようにという意味があります。
焼香：導師がお経を唱えている間、故人に血縁が近い親族から順に焼香をおこないます。焼香が終了すると導師が回向文を唱え、妙鉢や太鼓が打ち鳴らされます。
告別式：本来、葬儀とは親族や近親者が故人を浄土へ送るための儀式でありました。また、告別式は故人とゆかりのある人たちが故人との別れをするための儀式であり、葬儀とは区別していました。現代の葬儀においては、葬儀と告別式に明確な区別をもうけてはおらず、両方を合わせて「葬儀」と呼んでいたり、「葬儀・告別式」と呼んだりしています。
出棺：棺が霊柩車に乗せられ、葬儀場から出棺して火葬場へ向かいます。