相続に関わる専門家|ファイナンシャルプランナーができること・できないことや価格・費用体系一般公開

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相続は多くのご遺族様にとって初めての経験であり、その手続きの複雑さに戸惑われることが少なくありません。こうした状況で相談相手となるのが「ファイナンシャルプランナー(FP)」です。

FPは相続税の試算から資産活用まで、お金に関する総合的なアドバイスを提供する専門家です。単なる税金対策だけでなく、ご遺族様一人ひとりの生活設計や将来の希望を考慮した提案ができることが大きな特徴になります。また、複雑な相続手続きの全体像を示し、ご遺族様が取るべき行動の道筋をつけてくれる案内役としての役割も担っています。

この記事では葬儀業界で働く皆様に向けて、相続手続きにおいてFPがどのような役割を果たしているのか、「できること」と「できないこと」をメインに解説します。こういった知識を持つことで、ご遺族様の不安を軽減し、新たな人生のスタートを支えることができるでしょう。

葬儀社なら知っておきたい相続に関わる専門家解説

(1)司法書士
(2)不動産鑑定士
(3)税理
(4)弁護士
(5)行政書士
(6)ファイナンシャルプランナー(本記事)
(7)銀行

目次

ファイナンシャルプランナー(FP)とは

FP

ファイナンシャルプランナー(以下、FP)とは、お金に関する幅広い知識を持った「お金の専門家」です。保険や資産運用はもちろん、住宅ローン、教育資金、老後の年金計画まで、私たちの生活に関わるあらゆる金銭面の相談に乗ってくれます。

FPの大きな特徴は、特定の金融商品を売ることが目的ではなく、相談者の人生設計に合わせた総合的なアドバイスを提供することです。例えば、「老後資金を確保するために月々いくら貯蓄すべきか」「住宅ローンと子どもの教育費を両立させるにはどうすればいいか」など、具体的な資金計画を立ててくれます。

FPの資格には「3級FP技能士」「2級FP技能士」「1級FP技能士」といった国家資格や、より高度な知識を証明する国際資格「CFP®」などがあります。また、相続など特定分野に強いFPは「相続診断士」「相続対策専門士」などの専門資格を併せ持っていることもあります。

FPはあくまでアドバイザーであり、実際の法的手続きや税務申告などは行えませんが、お金に関する悩みの「最初の相談窓口」として頼りになる存在です。

相続業務でFPができること

OKサイン

FPは相続において、税金面のアドバイスにとどまらず、ご遺族様の状況や家族関係に配慮した総合的な提案ができる専門家です。生前対策から相続発生後の手続き案内、相続後の資産活用まで長期にわたったサポートを行っています。

相続業務の中で主に以下の5つが、FPが対応できる業務です。

FPができること

FPが行うそれぞれの業務について、詳しく見ていきましょう。

(1)生前の相続税シミュレーション

女性に相談するシニア夫婦

FPが相続業務でできることのひとつが、故人様がご存命の時に行う相続税シミュレーションです。これは、将来発生する可能性のある相続税の金額を事前に見積もる作業です。

具体的にはまず、現在の資産状況を棚卸しすることから始まります。預貯金、不動産、有価証券、生命保険、事業用資産など、あらゆる財産を洗い出し、その評価額を概算します。次に基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、相続税の課税対象となる財産を算出します。そして、相続税の税率を適用して、概算の相続税額を導き出します。

この作業は自分でやろうとすると非常に手間がかかるため、FPなどの専門家に依頼する方も多いです。相続税は「思っていたより高額だった」というケースも少なくないため、生前に相続税シミュレーションを行うことで、将来ご遺族様が負担する税金の見通しが立ち、必要に応じて対策を講じる時間的な余裕ができます。

相続税のシミュレーションは税理士にも依頼できますが、FPには概算の結果に基づいた生涯の資金計画や、保険活用などの総合的な対策を提案を行えるという強みがあります。

(2)生前の節税対策の提案

相談するシニア夫婦

相続税シミュレーションで将来の税負担が見えてきたら、次は具体的な節税対策を考えます。FPは、お客様の資産状況や家族構成に合わせた効果的な節税方法を提案します。

最もポピュラーな対策の一つが「生前贈与」です。毎年110万円までの贈与は非課税となるため、生前に計画的に資産を移転することで、相続財産を減らすことができます。また「教育資金の一括贈与」や「結婚・子育て資金の一括贈与」など、特定の目的に使う資金なら、より大きな非課税枠を活用できる制度もあります。FPはこれらの制度を活用した長期的な贈与計画を立てるサポートをしてくれます。

生命保険の活用も効果的な対策の一つです。相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、資産状況によっては生命保険への加入が税負担軽減につながります。FPは保険商品に精通しているため、節税効果と保障内容のバランスを考えた最適な保険提案が可能です。

ポイントは、節税だけを目的とするのではなく、ご本人の老後の生活資金確保とのバランスを考えた対策を立てる点でしょう。FPは税金面だけでなく、お客様のライフプランも考慮した総合的な提案をしてくれるため、ご本人の将来の生活不安を感じることなく適切な節税対策を進められます。

(3)遺産分割プランの策定

遺産分割

相続で最も避けたいのが、財産分割をめぐるご遺族様同士のトラブルです。普段は良好な関係の家族でも、相続という大きなお金が絡む場面では意見の相違が生じやすくなります。FPは、こうした家族間の争いを未然に防ぐための遺産分割プランの策定をサポートします。

FPは生前対策としての遺産分割プランはもちろん、相続が発生した後の分割協議においても中立的な立場からアドバイスを行います。故人様の財産をどのように分けるのが公平かつ効率的かを検討し、ご遺族様それぞれの生活状況や希望に合わせた提案をします。

FPの強みは、単に財産を均等に分けるだけでなく、ご遺族様一人ひとりの生活設計や将来の生活を踏まえた提案ができる点です。故人様の想いを大切にしながら、ご遺族様全員が納得できるプランを一緒に考えていきます。

なお、実際にご遺族様の間でトラブルが発生した場合は、一方の代理人として交渉を行うことなどができません。あくまで中立的な立場からの助言が基本となります。対立が深刻化した場合は、弁護士など法的な権限を持つ専門家への橋渡し役を担うことになります。

(4)相続手続きの流れと必要書類の案内

相続登記の手順

相続が発生すると、ご遺族様はさまざまな手続きに追われることになります。銀行口座、不動産、有価証券、保険金、自動車など、資産の種類ごとに異なる手続きが必要で、初めて経験する方には非常に複雑に感じられるものです。FP(ファイナンシャルプランナー)は、こうした手続きの全体像を分かりやすく説明し、必要な書類や提出先、期限などを案内することができます。

例えば、預貯金の名義変更一つとっても、金融機関ごとに必要書類や手続き方法が異なります。基本的には「死亡証明書」「戸籍謄本」「印鑑証明書」「遺産分割協議書」などが必要ですが、FPはご遺族様の状況に合わせて、どの書類をどこで取得すればよいのかを具体的にアドバイスします。

また、相続税の申告が必要な場合は、申告期限(故人様がお亡くなりになった日の翌日から10ヶ月以内)までのスケジュールを立て、計画的に手続きを進められるようサポートします。

FPは実際の手続き代行はできませんが、「今、何をすべきか」「次に何を準備すべきか」という道筋を示し、ご遺族様の負担を軽減するための助言を提供します。特に複数の金融機関や不動産がある場合は、手続きの優先順位や効率的な進め方についてのアドバイスが大きな助けになるでしょう。

相続手続きは一度に全てを理解するのは難しいものです。分からないことがあれば、その都度FPに確認しながら進められるよう、継続的なサポート体制を整えているFPも少なくありません。一つひとつの手続きを着実に進めていくためのガイド役という認識が正確でしょう。

(5)相続後の資産活用支援

お金とステップ

相続手続きが一段落すると、次に考えるべきは「相続した資産をどう活用していくか」という問題です。故人様から引き継いだ資産を有効に活用し、ご遺族様の新たな人生設計に役立てるためのサポートもFPの重要な役割です。

例えば、相続した現金や預貯金をどのように運用するか、相続した不動産を売却するか賃貸に出すか、あるいは自分で利用するかなど、さまざまな選択肢の中から最適な方法を選ぶ必要があります。FPはご遺族様の年齢、家族構成、収入状況、将来の希望などを踏まえて、新たなライフプランに沿った資産活用を提案します。

特に配偶者が相続したケースでは、「二次相続」への備えも重要です。相続した配偶者がさらに子どもたちに資産を引き継ぐ際に、再び相続税が発生する可能性があります。こうした将来の相続も見据えた長期的な資産管理のアドバイスも、FPの得意とするところです。

相続によって家計状況が大きく変わった場合は、保険の見直しが必要になります。例えば、故人様が世帯主で生命保険に加入していた場合、その保障がなくなることで家計の安全性が低下する可能性があります。逆に、相続によって資産が増えた場合は、これまでの保険が過剰になっていることもあるでしょう。FPは変化した家計状況に合わせた、適切な保険プランの提案も行います。

相続業務でFPができないこと

悩むスーツの男性

FPの役割はあくまで「相談」と「アドバイス」が中心であり、具体的な手続きの代行や専門性の高い業務は別の専門家の領域となります。
以下に、FPが取り扱えない相続業務を紹介します。

FPができない業務対応できる専門家
(1)法的書類の作成と手続きの代行弁護士、司法書士
(2)相続税申告の代行税理士
(3)専門的な財産評価業務不動産鑑定士、税理士
(4)相続トラブルの解決と交渉弁護士

なお、各専門家が相続業務で対応できる内容については、『相続に関わる専門家ガイド|葬儀社のアフターサービス充実に向けた基礎知識』でまとめて解説しています。

(1)法的書類の作成と手続きの代行

行政書士

FPは相続に関する幅広い知識を持ち、さまざまなアドバイスを提供できますが、法的な書類の作成や手続きの代行はできません。

例えば、遺産分割協議書は相続財産をどのように分けるかを記した重要な法的文書ですが、この文書の作成はFPの業務範囲外となります。FPは内容について助言することはできますが、実際に法的効力を持つ文書を作成するのは弁護士や司法書士の仕事なのです。

また、不動産の名義変更登記申請や、各種相続手続きの代行もFPはできません。相続に関する金融機関や役所での手続きは、原則としてご遺族様自身で行うか、司法書士などの有資格者に依頼する必要があります。

遺言書の作成についても同様です。FPは遺言の内容や資産の分け方についてアドバイスはできますが、法的に有効な遺言書の作成支援は行えません。

(2)相続税申告の代行

相続税申告書と電卓

相続税申告をご遺族様に代わって行うことは、税理士法によって税理士の独占業務と定められています。そのため、FPは相続税がどの程度発生するかの試算や、どのような控除が適用できるかなどの一般的な情報提供は可能ですが、正式な申告書類の作成や税務署への提出を代行することはできないのです。

具体的には、申告書への記入方法の助言や必要書類の説明はできても、実際に申告書に記入して税務署に提出する行為はFPの業務範囲外となります。

FPはあくまで情報提供や支援までが業務範囲です。相続税申告を全て任せたい場合は、税理士に依頼することが適任です。葬儀社の皆様がご遺族様と接する際には、「相続税申告に関してはFPによる情報提供と税理士による実務対応の違い」を説明できると、ご遺族様の適切な専門家選びの助けになるでしょう。

(3)専門的な財産評価業務

土地 調査

FPは専門的な財産評価業務を行うことができません。

特に不動産の評価は複雑で、国税庁が定める方式で財産評価を行うためには専門的な知識が不可欠です。FPは一般的な目安を示すことはできますが、税務署に提出する正式な評価額の算定は不動産鑑定士や税理士の専門領域となっています。

また、事業用資産や非上場株式、骨董品や美術品、宝飾品などの評価もそれぞれ専門的な知識が必要です。FPはこれらの資産についておおよその価値を推測することはできても、正確な評価額を算定することはできないため注意してください。

個別資産の専門的評価は各分野の専門家に委ねる必要があります。葬儀社の皆様がご遺族様からご相談を受ける際には、「財産の専門的評価は各分野の専門家に依頼する必要がある」ということを伝えていただくとよいでしょう。

(4)相続トラブルの解決と交渉

相続争い

前述したように、FPは相続人同士の遺産分割をめぐるトラブルの解決や交渉を代行することはできません。

FPは中立的な立場から、遺産分割の方法や相続税の負担など、財産面でのアドバイスを提供することは可能です。しかし、一方の相続人の代理人となって他の相続人と交渉したり、法的な紛争解決に向けた代理行為を行ったりすることはできません。これらは弁護士と一部司法書士の独占業務であり、FPが行えば非弁行為として法律違反になってしまいます。

例えば、ご遺族様の間で遺産分割の話し合いがまとまらず対立が深まった場合、調停や審判といった、裁判所で行う法的手続きが必要になることもあります。こうした手続きの代理は弁護士しか行えません。また、遺留分侵害額請求(法律で保障された最低限の遺産取り分の請求)のような専門的な法的請求も、弁護士の業務です。

相続トラブルは一度こじれると解決に時間とコストがかかり、何より家族関係に深い傷を残すことになります。FPは予防策としてのアドバイスは得意としていますが、すでに発生したトラブルの解決には限界があることをご理解いただければと思います。

FPに相続業務を依頼する手順

階段を上るスーツの男性

FPへの相続相談は、専門家を探すところから相談完了までいくつかのステップがあります。ここでは、FPに相続業務を依頼する際の基本的な流れを解説します。

葬儀社の皆様がご遺族様にご案内する際の参考にしていただければ幸いです。

FPに依頼する手順

(1)ご遺族様がFPを探す

相続手続きや資産運用に関する相談をFPに行いたい場合はまず、信頼できるFPを見つけることから始まります。

FPを探す方法はいくつかあります。まず、日本FP協会の公式サイトにある「FP検索」を利用する方法です。相続に関する相談をしたい場合は相談したい分野の欄で「相続」を指定するとよいでしょう。

FP検索
出典:相談できるファイナンシャル・プランナーを探す|日本FP協会

次に、FP相談サービスを利用する方法です。専門の相談窓口では、相続に詳しいFPを紹介してもらえます。全国に数千名のFPが登録する大手のFP相談サービスがいくつか存在しています。このようなサービスの多くは無料で相談ができ、相談満足度も高いため、初めての方でも安心して利用できます。

地元の金融機関や保険会社に相談するという方法もあります。ただし、こうした場合は特定の金融商品の販売につながる可能性もあるため、中立的なアドバイスを求める場合は独立系のFPを選ぶとよいでしょう。

相続に強いFPを見分けるポイントとしては、FP資格の種類や等級に注目することが大切です。「CFP®」や「1級FP技能士」といった上位資格を持っているFPは、より専門的な知識を持っています。さらに「相続診断士」「相続対策専門士」などの相続専門の資格を併せ持っていれば、より相続に詳しいと言えるでしょう。

(2)初回相談の予約

メールと電話

FPが見つかったら、次は初回相談の予約と必要書類の準備です。FPとの相談は対面だけでなく、最近ではオンラインやLINEを使った相談も増えているので、自分に合った方法を選びましょう。特に相続直後で時間が取りにくい場合や、自宅から離れた場所に住むご遺族様もいる場合は、オンライン相談が便利です。

予約の際には、相談の目的を簡潔に伝えておくと良いでしょう。「故人様の相続手続きについて相談したい」「相続財産の分け方について迷っている」など、大まかな内容でも構いません。具体的な相談内容が決まっていなくても、「相続が発生したが何から始めればよいか分からない」という段階で相談することも可能です。

例えば、FP相談サービスで予約する場合の流れは以下のようになります。
① 相談内容や個人情報をフォームで入力
② 入力した内容で、LINEか電話を通して予約
③ 初回相談の日程調整を行う

(3)初回相談時の流れと確認事項

依頼を決めるシニア夫婦

初回相談はまず、FPが故人様の情報や相続人構成、財産の概要などを質問することから始まります。次に、ご遺族様の具体的な悩みや疑問について話し合います。「相続税はいくらかかるのか」「預金の解約方法は」「不動産をどう分割すべきか」など、どんな疑問でも構いません。FPはこれらに対して一般的な知識や手続きの流れを説明します。

その後、FPは聞き取った情報をもとに、相続手続きの全体像と今後の進め方を提案します。相続税が発生しそうな場合は、申告期限を考慮したスケジュール案も示してくれるでしょう。

初回相談でご遺族様の方から確認しておくべき事項としては、以下の項目が挙げられます。

  • FPの業務範囲(どこまでサポートできるか)
  • 必要な場合、他の専門家(税理士、弁護士など)を紹介してもらえるか
  • 継続相談の料金体系(無料か有料か、費用はいくらか)
  • 相談内容の秘密保持について

特に重要なのが費用面でしょう。初回無料でも、2回目以降は有料というケースもあります。料金が発生する場合は、その金額や支払い方法について事前に確認しておくことをおすすめします。

(4)継続的なサポート

電話をする男性

相続の手続きは初回の相談だけで完結することはまれで、通常は数か月から場合によっては1年以上の期間を要します。葬儀社の皆様がご遺族様とお話しする際には、継続的なサポートになることが多い点をお伝えできるとよいでしょう。

初回相談後、FPとの関係は多くの場合、次のような段階に進みます。まず、初回相談で立てた大まかな計画に基づき、必要書類の収集や財産の詳細な把握を進めていきます。ご遺族様が自分で行う作業も多いですが、分からないことがあればその都度FPに質問できる体制があると安心です。

次に、相続財産が把握できた段階で、より具体的な遺産分割案や相続税対策の提案を受けることができます。この際、ご遺族様同士で話し合いが必要になることも多く、FPは中立的な立場から円滑な話し合いをサポートします。

さらに、実際の手続きを進める段階では、銀行や不動産登記、保険金請求など各種手続きのタイミングや方法について、FPから具体的なアドバイスを受けられます。FP自身は書類作成や手続きの代行はできませんが、「次に何をすべきか」という道筋を示してくれることは、ご遺族様にとって大きな支えになります。

(5)相続手続き完了と今後の資産活用相談

青空と矢印

一連の相続手続きが終わると、相続資産を活用した新たな人生設計を相談する段階に入ります。

まず、相続によって新たに取得した資産をどのように管理・活用していくかという相談でしょう。例えば、相続した不動産を自分で使用するか、賃貸に出すか、あるいは売却して運用資金に回すかなど、様々な選択肢の中から最適な方法を検討します。FPは「安全性を重視する」「収益性を追求する」など、ご遺族様の希望に合わせた運用プランを提案します。

また、相続財産を受け取ったことで今後のライフプランに変化が生じる場合もあります。老後の生活設計の見直しや、教育資金、住宅購入などの将来計画の再検討が必要になることもあるでしょう。そういった場合には、新たな状況に合わせたライフプラン設計のサポートも行います。

さらに、相続をきっかけに自分自身の相続対策を考え始めるご遺族様も少なくありません。故人様の相続で経験した苦労を次の世代に繰り返させないよう、早めの対策を検討する場合もあります。

葬儀社の皆様に関しましては、「相続後の人生に向けたお金の相談もFPにて行えますよ」と一言添えていただくことで、ご遺族様の将来に向けた安心感を高めることができるでしょう。

FPの費用体系

費用

無料相談と有料相談の違い

FP相談には大きく分けて「無料相談」と「有料相談」の2種類があります。

無料相談は主に金融機関や保険会社に所属するFP、もしくはFP相談サービスで提供されています。無料相談では基本的に相談料がかからず、何度でも相談できるケースが多いのが特徴です。

無料相談を行っている窓口では多くの場合、相談者が保険を契約すると保険会社から販売手数料が支払われます。その収入があるため、本来人件費がかかる相談業務を無料で提供できるのです。

「無料だから保険を強く勧められるのでは?」という不安を持たれる方もいらっしゃいますが、良質な無料相談サービスでは顧客満足度を重視しているようです。例えばあるFP相談サービスでは、「保険を勧められるかと思ったが一切なかった」という口コミも多く見られます。これは契約だけでなく、良い評判による集客も重視しているためでしょう。

一方、独立系FPによる有料相談は、特定の金融商品に縛られない中立的な立場からのアドバイスが期待できます。有料相談では、相談者から直接料金をいただく形となるため、相談者の利益を最優先に考えたアドバイスが受けられる可能性がより高いでしょう。

FPへの相談は「約1万円/時間」が一般的な相場

有料のFP相談を選ぶ場合、料金体系としては「時間制」「回数制」「プラン制」などがあり、一般的な相場は以下のようになっています。

時間制の場合、1時間あたり5,000円〜15,000円程度が相場です。相続のような複雑な相談では、1回の相談時間が長くなることもあるため、総額に注意が必要です。日本FP協会の調査でも、1時間あたり5,000円〜10,000円程度が一般的な料金とされています。

FP費用
出典:相談料の目安(有料相談)|東京FP協会

回数制では、初回相談と2回目以降で料金が異なるケースもあります。例えば、初回10,000円、2回目以降7,000円といった設定です。相続のような長期的なサポートが必要なケースでは、回数パックのような割引プランがあるかどうかも確認するとよいでしょう。

プラン制では、「基本相談プラン」「相続対策プラン」など、内容によって料金が設定されており、相続に特化したプランだと30,000円〜50,000円程度が一般的です。このプランには、複数回の相談や資料作成などが含まれていることが多いです。

また、成功報酬型の料金体系を採用しているFPもいます。これは、相続税の節税額や資産運用の成果に応じて報酬が決まる仕組みです。しかし、相続相談においてはこの形態はあまり一般的ではなく、定額制やプラン制が主流となっています。

葬儀社の皆様がご遺族様にFP相談をご案内する際には、「費用対効果」についても触れておくとよいでしょう。有料であっても、適切なアドバイスにより大きな節税効果が得られたり、相続手続きの負担が軽減されたりする場合があります。また、複数のFPに相談して比較検討することも、納得のいくサービスを受けるためには有効です。

まとめ|FPはご遺族様の生活設計から資産運用まで寄り添う専門家

この記事では、FPが相続業務でできることとできないこと、そして費用体系について解説してきました。

FPは相続において、相続税のシミュレーション、生前の節税対策の提案、遺産分割プランの策定、相続手続きの流れの案内、相続後の資産活用支援など、幅広い業務を担当できます。特に、単なる税金対策だけでなく、ご遺族様一人ひとりの将来を見据えた総合的なアドバイスを提供できることがFPの強みです。

一方で、FPには法的な制限もあります。法的書類の作成と手続きの代行、相続税申告の代行、専門的な財産評価業務、相続トラブルの解決と交渉などは、弁護士や税理士といった他の専門家の領域となります。FPはこれらの専門家への橋渡し役として機能することが多いでしょう。

FPへの相談は無料と有料の両方があり、無料相談は保険会社からの手数料で運営されていることが多く、有料相談では時間制や相談内容によるプラン制などが一般的です。それぞれの特徴を理解し、ご遺族様のニーズに合わせた選択をサポートすることが大切です。

葬儀業界の皆様がこうしたFPの業務内容を理解しておくことで、ご遺族様に対してより適切な専門家をご紹介できるようになります。相続は人生の大きな転機であり、適切なアドバイスによって将来の安心につながります。葬儀後のケアとして、信頼できるFPへの橋渡しができることは、ご遺族様にとって大きな支えとなるでしょう。

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