葬儀業界では、少人数での「家族葬」需要の高まりを受け、各社ともさまざまなかたちで対応を進めていますが、大手企業によるセカンドブランド・サブブランド立ち上げもその1つです。
広域で事業を展開する大手冠婚葬祭互助会や、多店舗化を推進する上場葬儀社による、低価格な葬儀ブランド展開の動きは、各地の葬儀社様にも大きな影響を与えると考えられます。
業界最大手企業であっても、家族葬専用ホールを新設するなど、消費者ニーズに応えるために小規模葬儀への対応を進めるのは理解できます。
しかし、すでに広く認知されているメインブランドとは別に、新たにセカンドブランドを立ち上げるのはなぜでしょう。
本記事では、このあたりの事情について詳しく解説するとともに、葬儀業界におけるセカンドブランド展開事例を紹介します。
地域密着型の葬儀社様が、対抗手段を検討するうえで参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
セカンドブランド・サブブランドとは?
セカンドブランドは、既存顧客と異なるターゲット層へのアプローチなどを目的として立ち上げられるブランドで、その価格帯はメインブランドよりも低めに設定されるのが一般的です。
マーケティングの世界では「セカンドライン」や「サブブランド」と呼ばれることも多いですが、ブランディング用語の「サブブランド戦略」との混同を避けるため、本記事では「セカンドブランド」と表記しています。
こうした手法はアパレル業界のハイブランドなどで多く取り入れられており、「MIU MIU(PRADA)」や「Versus Versace(VERSACE)」などが代表的です。
小売業界などにおけるセカンドブランド展開は、メインブランドの認知拡大や若年層の取り込みといった意図でおこなわれることが多いですが、葬儀業界においては少し目的が異なるようです。
葬儀業界におけるセカンドブランド戦略の選択肢
せっかく立ち上げたセカンドブランドを成功に導くためには、商品やサービスの魅力を消費者に認知してもらうためのブランド・マネジメントが不可欠となります。
ブランディング戦略にはいくつかのタイプがありますが、葬儀業界におけるセカンドブランド立ち上げでは「サブブランド戦略」や「マルチブランド戦略」を採用する企業が多いようです。
サブブランド戦略
サブブランド戦略は、社名やメインブランドといったマスターブランドの知名度を最大限に活用することで、市場への浸透を早期に進められるのが特徴です。
メインブランド・セカンドブランドがともに成功した場合、市場におけるマスターブランドの優位性が確立されるというメリットがあります。
しかし、すでに一定の知名度を獲得している企業が、これまでとは異なるコンセプトで新たにセカンドブランドを立ち上げる場合、メインブランドのイメージを毀損(きそん)するリスクが伴います。
これは、価格帯が異なるセカンドブランドとメインブランドでは、品質面における差異が生じることによるものです。
また同じマスターブランドを共有するため、メインブランド・サブブランドのいずれかでトラブルが発生した場合、双方に悪影響が及ぶ可能性もあります。
マルチブランド戦略
マルチブランド戦略では、社名やメインブランドといったマスターブランドを前面に押し出すことはせず、別ブランドとして事業を展開します。
そのため、セカンドブランドの動向が、メインブランドに与える影響を最小限に抑えられるというメリットがあります。
とはいえ、知名度がゼロの状態からスタートすることとなるため、サブブランド戦略にくらべて、消費者に認知されるまで時間がかかる可能性があります。
市場への浸透がうまく進まなければ、事業の継続は難しくなりますので、一定のコストをかけてでもプロモーション活動に注力せざるを得ないでしょう。
こうした事情から、マルチブランド戦略を選択した場合、社内の金銭的・人的リソースが分散するというデメリットもある点は、念頭に置いておく必要があります。
葬儀業界大手がセカンドブランドを展開する理由
前章ではセカンドブランドを立ち上げる際にブランディング戦略について解説してきましたが、いずれにしても一定のリスクがある点はご理解いただけたかと存じます。
こうしたリスクを負ってでも、大手冠婚葬祭互助会や上場葬儀社がセカンドブランド立ち上げに取り組む理由には、どういったものがあるのでしょう。
小規模葬儀への消費者ニーズ拡大
近年の日本における「家族葬」需要の高まりを受け、大手冠婚葬祭互助会や上場葬儀社などでも、小規模な家族葬専用ホールを積極的に出店してきました。
しかし一定の知名度を獲得している大手企業だからこそ高価格路線のイメージが強く、低価格葬儀を求める顧客層への訴求は、なかなか進みづらい状況のようです。
こうした問題を解消するために、メインブランドとは異なるコンセプトで提供される葬儀ブランドとして、セカンドブランドを新たに立ち上げる必要があったと考えられます。
直葬(火葬式)の一般化
これまでの葬儀業界において、葬送のための宗教儀式を省略した「直葬(火葬式)」は、身寄りのない生活保護受給者が亡くなった場合や、行旅死亡人(こうりょしぼうにん)を葬る「福祉葬」に用いられるケースが大半を占め、一般向けの葬儀サービスとして提供されることは稀(まれ)でした。
しかし葬儀ポータルサイトの台頭により、近年では一般向けの葬儀サービスとして浸透しつつあります。
さらに、少子高齢化や核家族化の進行も、直葬需要の拡大に拍車をかけているようです。
すでに超高齢化社会を迎えた日本では、単身高齢者世帯も増加傾向にありますが、その中には頼れる親族がいない、あるいは身寄りがないという方もいらっしゃいます。
また収入が国民年金のみという高齢者の中には、生活保護を受給している方も少なくないようです。
こういった事情を抱えた方が亡くなった場合、自治体が費用を負担する「福祉葬」で弔われる可能性が高くなります。
葬儀費用が公費で賄われる「福祉葬」は、葬儀内容も最低限となるのが一般的ですので、将来的には直葬が占める割合も、今以上に高くなることが予想されます。
これまでの葬儀業界では、通夜式と葬儀・告別式を2日間にわたって営むのが基本的な流れとなっていました。
そのため葬祭各社の葬儀プランも、この前提条件にもとづいて構築されてきましたが、直葬(火葬式)が一般向けに提供され始めたことで、対応を余儀なくされています。
直葬の一般化は、「高額な葬儀費用をあらかじめ用意しておく」というコンセプトで運営されてきた冠婚葬祭互助会にとって、事業の根幹を揺るがしかねない大問題といえるでしょう。
現状の会員システムを維持しながら、低価格で簡素な直葬に対応するのは非常に困難なことから、メインブランドと切り離すかたちで、セカンドブランドを立ち上げる判断にいたったと考えられます。
家族葬専門葬儀社の台頭
専門葬儀社としては、上場企業であるティアやきずなホールディングス(ファミーユ)も着実に店舗数を増やしていますが、小規模葬儀を専門に取り扱う「家族葬のらくおう(ライフアンドデザイン西日本 株式会社)」や金宝堂グループ(小さな森の家・家族葬の仙和・トワーズなど)も、ここ数年で一気に店舗数を増やしています。
またユニクエストのFC事業である「小さなお葬式」名義の葬儀会館も、全国展開を進めているようです。
今後は大手互助会や上場葬儀社も、こうした新興勢力ともしのぎを削っていかなくてはならない点も、セカンドブランド展開のきっかけになっていると考えられます。
セカンドブランドで利用する葬儀式場
大手互助会や上場葬儀社がセカンドブランド事業を展開する場合、葬祭サービスを提供する場所が必要となります。
基本的には、運営元葬儀社が所有する葬儀式場を共有するケースと、新たに設置した専用式場や公営斎場のみのパターンのどちらかを選ぶのが一般的です。
運営会社の葬儀式場を共有するケース
運営会社の葬儀式場を共有する場合、すでに設備の整った格式高い式場が数多く設置されていますので、新たに葬儀式場を設置する必要はありません。
またメインブランドの人員を流動的に運用すれば、人材の新規採用も最小限で済みます。そのため、セカンドブランドを立ち上げ次第、すぐに葬祭サービスの提供をスタートさせられるという利点があります。
しかし豪華な式場を利用する以上、あまりにも質素な葬儀内容ではアンバランスになってしまうため、極端な低価格路線は取りにくくなる可能性があります。
また、当然ながらメインブランドの既存顧客が優先されるため、セカンドブランドの利用者が希望する日時や式場を確保しにくくなることもあるでしょう。
専用式場や公営斎場のみを利用するケース
専用葬儀式場を中心に事業を展開する場合、メインブランドと切り離したかたちで運営されるため、既存顧客への配慮も最小限で済みます。
一般消費者にとっては別の葬儀ブランドとして認識される可能性が高いため、低価格な葬儀を前面に打ち出しての集客も可能でしょう。
とはいえ、独自に式場の新設を進めなければならず、人材の新規採用も必要となるため、事業をスピーディーに広域で展開するのは難しくなります。
M&Aを利用する方法も
豊富な資金を持つ大手互助会や上場葬儀社だからこそ可能なセカンドブランドの展開手法にM&Aがあります。
東海地方を中心に葬祭事業を展開する上場葬儀社のティアによる、東海典礼・八光殿の買収は記憶に新しいところですが、こうした情報を一般消費者が認識することは稀です。
地元で一定の認知度を持つ東海典礼・八光殿の両社については、ティアブランドに屋号を変更することなく、M&A後も従来通りの屋号で事業を継続するようです。
そのため地域住民の多くは、両社がティアの傘下企業であることにすら気づかない可能性もあります。
実際のところ、葬儀業界におけるM&Aは珍しいことではなく、地方の中小互助会の会員を引き受けるかたちで吸収合併しながら、事業を拡大してきた大手互助会も複数存在します。
岐阜県を中心に事業を展開する「レクスト岐阜」「レクストワン」はアルファクラブグループ傘下に入っています。
一部の葬儀式場は「小さなお葬式」名義に変更されているものの、両社の葬祭ブランド「子安葬儀」「ルネス」を残したままの葬儀式場も少なくありません。
両社では、互助会員向けのサービスとは別に、低価格な葬儀プランも提供しています。
また2019年にセレマの傘下に入った「いまそう会館」も、独自の葬儀プランを提供しています。
「いまそう会館」の葬儀式場看板には、セレマの葬祭ブランドである「あんしん祭典」が併記されていますが、そのすべてがセレマのホームページに掲載されていないため、何らかの運用ルールが存在するのかもしれません。
セカンドブランドの価格設定
下のグラフは大手互助会や上場葬儀社が展開するセカンドブランドにおいて、最も低価格な葬儀プランを一覧にしたものですが、いずれも「直葬(火葬式)」プランとなっています。
各社の表示価格にはバラツキがありますが、10万円以下のプランでは基本的に追加料金の発生が想定されるため、最終的な請求額は15万円~20万円ほどになると考えられます。
上記のグラフを確認すると、企業ごとに異なる運営方針をとっているのが、非常によく分かります。
葬儀内容をギリギリまで絞って低価格を打ち出すパターンと、直葬であってもしっかりとお別れができるよう内容を充実させつつも費用を抑えるパターンに分かれているようです。
セカンドブランドを展開する互助会・葬儀社
セカンドブランドを立ち上げるにあたっては、現時点における自社メインブランドの特徴や、企業としての立ち位置・方向性などを見極めながら、慎重に進める必要があります。
そのため、葬儀業界におけるセカンドブランド展開でも、各社の運営手法はそれぞれ異なります。
アルファクラブグループ
アルファクラブグループは、数多くのグループ企業で構成されていますが、中心となる企業には、グループブランドである「アルファクラブ」の名が冠せられています。
また、葬儀ポータルサイト「小さなお葬式」を運営しているユニクエストは、グループの中核企業であるアルファクラブ武蔵野の子会社です。
アルファクラブグループでは、複数のセカンドブランドを展開していますが、地域や運営企業、役割ごとに使い分けられているようです。
葬儀ブランド名 | 営業エリア | 運営企業 |
ファミラル | 福島県・茨城県・山形県・岩手県 | アルファクラブ株式会社(福島) アルファクラブ東北 株式会社 |
ソライエ | 埼玉県 | アルファクラブ武蔵野 株式会社 |
家族葬のタクセル | 栃木県・茨城県・埼玉県・静岡県・愛知県 | アルファクラブ武蔵野株式会社 アルファクラブ株式会社(栃木) アルファクラブ静岡 株式会社 |
上記のうち「ファミラル」と「ソライエ」については、事業ブランドである「さがみ典礼」が提供するサービスであることをアピールしています。
一方「家族葬のタクセル」は、アルファクラブグループとの関連を、表立って強調することなく運営されているようです。
冠婚葬祭互助会とは別ルートの集客
上記のセカンドブランドのうち「ファミラル」および「家族葬のタクセル」では、冠婚葬祭互助会とは別に独自の無料会員制度を導入しています。
また葬儀プランも、それぞれ異なる内容と価格設定で運用されており、冠婚葬祭互助会員向けのサービスとは、完全に切り離されているようです。
一方「ソライエ」では、WEB申し込み限定の「さがみ典礼の葬儀プラン」を提供していますが、これは運営企業であるアルファクラブ武蔵野が、互助会員向けサービスとは別に用意している、WEB限定の「埼玉さがみ典礼」と共通です。
それぞれ「無料会員制度」「WEB申し込み」と手法は異なるものの、これまで集客の要(かなめ)であった冠婚葬祭互助会とは別ルートでの集客に目を向けている印象です。
セカンドブランドが果たす役割
「ソライエ」を運営するアルファクラブ武蔵野では、「メタバース霊園『風の霊』」の開発や、同社基幹システム「Zebra」を基点にした病院、自治体、火葬場との連携など、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に力を入れており、2023年12月には葬祭業界で初となる「DX 認定事業者」に認定されました
こうした施策の一環として、セカンドブランドである「ソライエ」では、IoT技術を活用した無人化対応システムが導入されました。
このシステムにより、開錠から照明・空調まで遠隔で管理できるため、式場が無人であっても、ご安置中の面会や式場見学への対応が可能となっています。
「ソライエ」は、上記のような革新的な取り組みを、全社での本格導入前に実証試験するという役割も果たしている可能性がありそうです。
■追加情報(2024年4月3日追記)
「家族葬のソライエ」は、18店舗目の開業(2024年3月20日)に合わせて、屋号を「さがみ典礼の家族葬」に変更すると発表しました。
イメージ戦略
アルファクラブグループの葬儀部門「さがみ典礼」では、イメージキャラクターとして加藤 茶さんを起用しており、TVCMにも加藤茶さんが登場します。
しかし「家族葬のタクセル」では、TVCMにタレントの森川侑美さんを起用しています。
森川侑美さんは、アルファクラブ武蔵野の子会社であるユニクエスト傘下の「ライフアンドデザイン・グループ」が運営する「家族葬のらくおう・セレモニーハウス」のTVCMにも起用されており、関西圏を中心に活躍されているようです。
また「ファミラル」では、地域ごとにホームページが用意されていますが、茨城県以外のページにも森川侑美さんが起用されています。
こうした状況を考慮すると、低価格な家族葬ブランドを、メインブランドである「さがみ典礼」と切り離すために、異なるイメージ戦略がとられている印象です。
ベルコ
ベルコに関連する家族葬向けの葬儀ブランドとしては「家族葬専用式場はないろ」と「家族のお葬式」があります。
ただし運営企業については、それぞれ「株式会社 はないろ」「株式会社 家族のお葬式」となっており、ベルコとの直接的な関わりを明記してはいません。
とはいえ、家族葬専門式場はないろのホームページでは、ベルコ互助会を案内していますし、家族のお葬式ホームページには「ベルコと提携した立派なお見送りをお約束します。」の記載があるため、ベルコのもつ信頼性やネームバリューを活用して事業を展開しているのは明らかでしょう。
上記のような点を考慮すると、マルチブランド戦略とサブブランド戦略の中間的な手法で、セカンドブランドを展開している印象です。
マスターブランドの知名度を利用しつつ、リスクを最小限に抑えた、理想的な手法といえるかもしれません。
家族葬専門式場はないろ
家族葬専門式場はないろ(以下はないろ)では、同名の葬儀式場を北海道や山口県・福岡県、および近畿地方で複数展開しています。
また近畿地方に所在するベルコ(シティホール・ユアホールなど)・セレマ(あんしん祭典・いまそう会館など)系列の葬儀会館でも、葬祭サービスを提供しています。
はないろで利用可能な式場は、以下の183施設となっています。
- 北海道:2施設(はないろ)
- 大阪府:39施設(はないろ・ベルコ・セレマ)
- 兵庫県:38施設(はないろ・ベルコ)
- 奈良県:16施設(はないろ・ベルコ)
- 京都府:51施設(セレマ)
- 滋賀県:35施設(セレマ)
- 山口県:1か所(はないろ)
- 福岡県:1か所(はないろ)
なお「はないろ」名義の式場は、ベルコの葬儀場一覧にも掲載されているため、相互に利用可能となっているようです。
一方セレマのホームページに「はないろ」の記載はありませんが、2019年に傘下入りした「いまそう会館」が、低価格な小規模葬儀に対応しているため、あえてセカンドブランドを新設する必要はないのかもしれません。
はないろは、家族葬向けの葬儀ブランドではあるものの、極端な低価格路線をとることはなく、最も低価格な「火葬式」でも187,000円(税込:資料請求+生前予約割引後価格)となっています。
ただし、火葬式でも「背伸びせず、きちんとしたお別れをお手伝いします」と記されている通り、ゆっくりとお別れの時間が持てるほか、出棺用花束もプランに含まれています。
はないろで利用可能なプランは、以下の4種類です。
*いずれも資料請求+生前予約割引後価格
家族のお葬式
家族のお葬式では自社式場を所有せず、全国のベルコ施設(シティホール・ユアホールなど)および「家族葬専門式場はないろ」を利用して、葬祭サービスを提供しています。
家族のお葬式を運営する「株式会社 家族のお葬式」の代表を務めているのは、かつてベルコサービスの代表取締役に就任した経歴を持つ樵田 剛臣氏です。
家族のお葬式で利用できる葬儀式場は、以下の231施設です。
- 北海道:64施設
- 秋田県:9施設
- 宮城県:11施設
- 愛知県:2施設
- 三重県:7施設
- 奈良県:16施設
- 大阪府:30施設
- 兵庫県:37施設
- 香川県:6施設
- 山口県:14施設
- 福岡県:35施設
家族のお葬式では、極端な低価格を前面に押し出して集客するのではなく、充実した式場設備と高品質なサービスを適正価格で提供している点をアピールしています。
そのため、最も低価格な「火葬プラン」でも193,500円(税込:資料請求+生前予約割引後価格)となっていますが、枕飾りや仏衣・出棺用花束・後飾り祭壇なども含まれた充実した内容となっています。
家族のお葬式では、以下の3プランが用意されています。
*いずれも資料請求+生前予約割引後価格
また家族のお葬式では、湯灌やエンバーミングなどもオプションサービスとして追加可能で、海洋散骨にも対応しています。
【社名】株式会社 家族のお葬式
【設立】平成24年(2012年)9月6日
【所在地】兵庫県西宮市平松町4番4号
【代表者】樵田 剛臣
札幌市民直葬センター
近年では、直葬(火葬式)をメインに取り扱う直葬センターが、全国各地に次々と開設されていますが、札幌市民直葬センターもその1つです。
札幌市民直葬センターの運営企業情報は、公式ホームページにも記載されていませんが、その所在地がベルコの婚礼事業「ベルクラシック札幌フローラ」跡地にあたるため、ベルコ関連施設の可能性が高そうです。
札幌市民直葬センターで用意されているのは、以下の2プランです。
- 直葬プラン:129,800円(税込)
- 火葬式プラン:195,800円(税込)
*いずれも資料請求割引後価格
実のところ、各地の冠婚葬祭互助会事業者が直接、あるいは子会社を通して間接的に直葬センターの運営に関わっているケースは、想像以上に多くみられます。
ある意味では、直葬センターもセカンドブランドの一種といえるでしょう。
ごじょいる
自由なお葬式は、大山駅前(東京都板橋区)と町屋(東京都荒川区)の2店舗を展開する家族葬向け葬儀ブランドです。
価格を重視される方向けに低価格な葬儀プランを提供しつつ、形式に縛られず自由度の高いオーダーメイド葬儀「自由葬」にも対応しているのが特徴的です。
運営会社は「ファミそう株式会社」となっていますが、ごじょいるが運営するキッズフォトスタジオ「 Choco 竹ノ塚店」と、同社の本社所在地が同一であることから、ごじょいるのグループ会社と考えられます。
自由なお葬式では、以下の4プランが用意されています。
*すべて会員価格
自由なお葬式では、安置料が無料となっているほか、祭壇も数種類から選べるようです。直葬 紅葉プランは搬送費用も含まれていませんが、安置料が無料なので、搬送費用を追加しても少ない金額負担になると思われます。
なお、ごじょいるの代表は、セレマの代表取締役である齋藤 秀市氏が兼務しています。
帝都典礼
「家族葬の小さな家」を運営する帝都典礼は70年以上の歴史を持ち、社葬・団体葬においては日本有数の実績を誇る企業です。
そんな帝都典礼でも、消費者ニーズに対応すべく家族葬を取り扱っていますが、極端な低価格葬儀の提供はイメージダウンにつながる可能性もあるため、なかなか難しいでしょう。
こうした事情から、家族葬専門のセカンドブランド「家族葬の小さな家」を立ち上げるに至ったと考えられます。
そのため、コーポレートブランドである帝都典礼の名称をあえてアピールしないマルチブランド戦略をとっているようです。
帝都典礼では東京都・千葉県・神奈川県に自社式場を所有していますが、「家族葬の小さな家」事業は、千葉県北部の佐倉市・四街道市を中心に展開されています。
既存の葬祭ホールを利用せず、専用の「京成臼井駅前ホール」「四街道ホール」および公営の「さくら斎場」で葬祭サービスを提供しています。
「家族葬の小さな家」で、もっとも低価格な直葬プラン「お別れプラン」は、198,000円(税込・会員価格)で提供されていますが、施設利用費は別途必要となります。
「家族葬の小さな家」では、以下の7プランが用意されています。
- お別れプラン:198,000円(税込)
- ファミリー40:396,000円(税込)
- ファミリー60:594,000円(税込)
- ファミリー80:792,000円(税込)
- プレミアム100:990,000円(税込)
- プレミアム120:1,188,000円(税込)
- プレミアム150:1,485,000円(税込)
*すべて会員価格
アステップ信州
「松本家族葬相談センター」を運営するアステップ信州は、松本市をはじめとした長野県中部を中心に冠婚葬祭事業を展開する企業です。
同社では「法祥苑」名義の葬儀式場を10か所に設置していますが、松本家族葬相談センターでは法祥苑の葬儀式場が利用できる点をアピールしています。
- 松本市:4施設
- 安曇野市:2施設
- 塩尻市:2施設
- 大町市:1施設
- 北安曇野郡松川村:1施設
松本家族葬相談センターでは、以下の2プランが用意されています。
安心火葬プランの価格は、比較的低額に設定されていますが、資料請求や会員登録といった条件は課されていないようです。
直葬ではオプション扱いになることも多い「枕飾り」が含まれているほか、出棺には寝台車ではなく霊柩車が使用されます。
またプランに含まれる搬送の距離も30kmまでと余裕を持った設定となっているため、自宅や火葬場が式場から多少離れていても安心です。
その他葬祭各社のセカンドブランド一覧
現在の葬儀業界では、規模の大小を問わず、さまざまな冠婚葬祭互助会や葬儀社がセカンドブランドを展開しており、そのすべてを把握するのは難しい状況です。
これまでに葬研の調査で確認できたセカンドブランドの中から、特徴的な家族葬ブランドを一覧にまとめました。
■メモリード関東「お葬式のひなた」 「お葬式のひなた」では「どんなお葬式でも出来る」という対応力の高さを、自社の強みとしてあげており、シンプルな直葬から100名規模の一般葬まで対応しているほか、大規模な社葬への対応も準備しているようです。 | |
■サン・ライフホールディング「わが家の家族葬」 「わが家の家族葬」を運営する株式会社SECは、上場企業であるサン・ライフホールディングのグループ企業であり、同社の葬儀・式典事業でも、エンバーミングを担当しています。 | |
■燦ホールディングス「ENDING HAUS」 ENDING HAUS.(エンディング ハウス)は、上場企業である燦ホールディングス株式会社の中核子会社である株式会社 公益社が新たに展開する葬儀ブランドです。専門斎場を4か所(東京都2施設・大阪府2施設)に新設し、公益社とは異なる独自の葬儀プランで葬祭サービスを提供しています。 | |
■SOUセレモニー(旧:博全社)「家族葬のファミリード」 「家族葬のファミリード」は、千葉県内のみで営業している地域密着型の家族葬ブランドで、その施行実績はすでに2000件以上となっているようです。低価格な葬儀プランが用意されている一方、オリジナルの「デザイン花祭壇」にも対応しています。 | |
■川上葬祭「大阪直葬センター」 「大阪直葬センター」を運営しているのは、明治10年(1877年)の創業以来、大阪市を中心に3万件以上の葬儀を施行してきた「かわかみ葬祭」です。ここ数年以内に開設された「直葬センター」も多い中、「大阪直葬センター」は平成24年(2012年)の開業から10年以上にわたって営業を続けています。 | |
■ラック(福岡直葬センター」 「福岡直葬センター」は、福岡県・大分県で冠婚葬祭互助会事業を展開する「ラック」が運営している施設です。永代供養や遺品整理・海洋散骨など、アフターサービスも充実しているのが特徴といえるでしょう。 |
まとめ
本記事では、大手冠婚葬祭互助会や上場葬儀社の事例を参考に、葬儀業界におけるセカンドブランドの立ち上げ手法や各サービスの特徴について解説いたしました。
各社とも明確な意図をもってセカンドブランドを立ち上げ、試行錯誤しながら運営を進めているのがご理解いただけたかと存じます。
ティアやファミーユ(きづなホールディングス)・らくおうセレモニー・金宝堂といった家族葬専門葬儀社が勢力を拡大する中、大手冠婚葬祭互助会も対応を迫られています。
セカンドブランド立ち上げも、そうした施策の1つと考えられますが、大きな成功を納められるかどうかは、今のところまだ未知数です。
未開の領域に最初の一歩を踏み出すファーストペンギンは、成功した場合の先行者利益が大きいものの、常にリスクが付きまといます。
現在の葬儀業界は、すでに一定の成功を収めた大手企業ですら、リスクを承知で新しいことに挑戦しなければならないほど、競争が激化している状況といえるでしょう。
将来的にセカンドペンギンが現れるほど、葬儀業界のセカンドブランドが成功を収めるかどうか、今後の動きにも注目したいところです。