葬儀ポータルサイトの景品表示法違反まとめ|葬儀社のWeb制作・広告クリエイティブにおける注意点

景品表示法違反

葬儀ポータルサイトが葬儀業界で勢力を伸ばす一方、過度な価格競争が発生した結果、消費者庁から景品表示法違反と判断されるケースが頻発しています。
そうした状況の中で、大手葬儀ポータルサイト「イオンのお葬式(イオンライフ株式会社)」「小さなお葬式(株式会社ユニクエスト)」「よりそうお葬式(株式会社よりそう)」の3社の広告に対して、消費者庁から「措置命令」「課徴金納付命令」といった厳しい処分が下されました。

消費者意識が高まりつつある現在では、こうした処分を受けた企業に対して厳しい目が向けられるため、イメージダウンは避けられません。
地域に根ざして営業している中小葬儀社様にとって、企業イメージの低下は致命傷にもなりかねないため、広告についても細心の注意をはらう必要があります。

そこで本記事では、消費者庁の措置命令の内容から、葬儀サービスの表示に関する広告制作における注意点を考察します。

目次

葬儀ポータル3社が景品表示法違反により受けた行政処分の概要

今回の葬儀ポータル3社に対する処分は、いずれも景品表示法5条第2号(有利誤認)に関する違反行為によるものです。

有利誤認とは、商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当します。

出典:消費者庁「有利誤認とは」
サービス名公表年月日対象媒体対象期間命令種別命令内容
イオンのお葬式平成29年(2017年)12月22日新聞広告平成29年3月14日~5月6日措置命令再発防止策の徹底など
イオンのお葬式平成31年(2019年)4月12日新聞広告平成29年3月14日~5月6日課徴金納付命令課徴金179万円
小さなお葬式平成30年(2018年)12月21日自社ウェブサイト平成28年4月1日~平成29年12月27日措置命令再発防止策の徹底など
小さなお葬式令和3年(2022年)7月2日自社ウェブサイト平成28年4月1日~平成29年12月27日課徴金納付命令課徴金1億180万円
よりそうお葬式令和元年(2020年)6月14日自社ウェブサイト平成29年8月15日~平成30年3月7日
平成30年6月20日~令和元年6月11日
措置命令再発防止策の徹底など
よりそうお葬式令和2年(2021年)3月27日自社ウェブサイト平成29年8月15日~平成30年3月7日
平成30年6月20日~令和元年6月11日
課徴金納付命令課徴金417万円

出典:消費者庁「イオンライフ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」
   消費者庁「イオンライフ株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」
   消費者庁「株式会社ユニクエストに対する景品表示法に基づく措置命令について」
   消費者庁「株式会社ユニクエストに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」
   消費者庁「株式会社よりそうに対する景品表示法に基づく措置命令について」
   消費者庁「株式会社よりそうに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」

措置命令の内容と対象期間

措置命令の具体的な内容は3社とも同様で

  • 自社の広告が有利誤認に該当し、景品表示法の違反行為であったことの周知徹底
  • 再発防止策の策定と、自社従業員・役員への周知徹底
  • 今後、同様の表示をおこなわない

といった内容になっています。

また上の表をご覧いただくと「対象期間」「公表年月日」のあいだに、時間的なズレがあるのがお分かりいただけるかと思います。
このことから、景品表示法違反の対象は直近のものだけでなく、過去数年にさかのぼって処分されることもあるということです。

さらに「対象期間」と「公表年月日」を詳しく確認すると、一度の違反に対して「措置命令」「課徴金納付命令」が時間をおいて出されています。
消費者保護の観点から不当な表示の差し止めを優先し、その後に処分を決定する流れになっているようです。

課徴金の算定方法

算出

上記の表を確認いただくと、3社に対する課徴金納付命令の金額に、差異がある点に気付かれるかと思います。
課徴金の算定方法は「対象商品・役務の売上額に3%を乗じる」とされており、対象期間は「3年を上限とする」とされているようです。

具体的には以下のように規定されています。

  1. 「課徴金対象期間」に取引をした
  2. 「課徴金対象行為に係る商品又は役務」の
  3. 「政令で定める方法により算定した売上額」

に、3%を乗じて得た額である

出典:消費者庁「景品表示法を取り巻く現状について」
   消費者庁「景品表示法への課徴金制度導入について」

各社の課徴金額を比較すると

  • イオンのお葬式…179万円
  • 小さなお葬式…課徴金1億180万円
  • よりそうお葬式…417万円

と「小さなお葬式」に対する課徴金が極端に高額になっていることから、一般消費者に対する影響力の大きさが浮き彫りとなる結果になっています。

「イオンのお葬式」が措置命令を受けた表示内容について

イオンのお葬式平成29年3月14日配布(別紙1)

※消費者庁 平成29年12月22日 イオンライフ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について 別紙1より

新聞広告において「追加料金不要」と表示

新聞広告において矢印部分のように「追加料金不要」と記載した上で、「火葬式19,800円(税込)」「1日葬348,000円(税込)」「家族葬498,000円(税込)」と記載することにより、追加料金が発生しないように表示していました。

実際は下記に該当する場合は追加料金が発生した

  • 寝台車又は霊柩車の移動距離が50kmを超える場合
  • 式場等における安置日数が各設定日数を超える場合
  • 自宅等における安置日数が各設定日を超え、ドライアイス等を追加する場合
  • 「1日葬」の式場利用料が25,000円(税込)を超える場合
  • 「家族葬」の式場利用料が50,000円(税込)を超える場合
  • 火葬場利用料が15,000円を超える場合

※「火葬式」「1日葬」は3日、「家族葬」は4日

そのため、一般消費者に実際より有利であると誤認される表示であることが、認められたとされています。

「小さなお葬式」が措置命令を受けた表示内容について

消費者庁の指摘する表示内容に関する指摘は、別紙1~別紙11あり、そのうち代表的な別紙1と別紙11を確認しました。

パソコン向け自社ウェブサイトで「追加料金一切不要」等と表示

小さなお葬式自社HP平成28年4月1日から10月2日まで別紙1

※消費者庁 平成30年12月21日 株式会社ユニクエストに対する景品表示法に基づく措置命令について 別紙1より作成(パソコン向け自社ウェブサイト 遅くとも平成28年4月1日から同年10月2日までの間) 

別紙1によるとパソコン向け自社ウェブサイトにおいて矢印のように「追加料金一切不要」記載されています。 別紙1の指摘箇所は下記の8カ所。消費者庁は記載された価格以外に追加料金が発生しないかのように表示されていることについて指摘しています。

  1. 「追加料金一切不要のお葬式 総額188,000円(税込) 資料請求割引価格」
  2. 「追加料金一切不要の安心価格プラン金額がお葬式にかかるすべての費用です。」
  3. 「式を行わず火葬のみ 小さな火葬式」
  4. 「無料資料請求で 総額188,000円(税込) 追加料金一切不要」
  5. 「通夜式を行いません 小さな一日葬」
  6. 「無料資料請求で 総額338,000円(税込) 追加料金一切不要」
  7. 「通夜式・告別式を行います 小さな家族葬」
  8. 「無料資料請求で 総額488,000円(税込) 追加料金一切不要」

スマートフォン向け自社ウェブサイトで「追加料金不要」「追加料金が本当にかからないお葬式」と表示

小さなお葬式自社HP平成29年10月23日から12月27日まで別紙11

※消費者庁 平成30年12月21日 株式会社ユニクエストに対する景品表示法に基づく措置命令について 別紙11より作成(スマートフォン向け自社ウェブサイト 平成29年10月23日から同年12月27日までの間) 

別紙11によるとスマートフォン向け自社ウェブサイトで矢印のように記載されています。 別紙11の指摘箇所は7カ所。

  1. 「葬儀から納骨、法要までご相談は追加料金一切不要の葬儀社【小さなお葬式】」
  2. 「追加料金が本当にかからないお葬式」
  3. 「小さなお葬式が選ばれる理由 その2 追加料金一切不要 3つの家族葬プラン」
  4. 「その2 3つの家族葬プラン 葬儀に必要な物品やサービスがすべて揃った、追加料金一切不要の定額プランです。」
  5. 「式を行わず火葬のみ 小さな火葬式 無料資料請求で、通常193,000円が 総額188,000円(税込) 追加料金一切不要」
  6. 「通夜式を行いません 小さな一日葬 無料資料請求で、通常343,000円が 総額338,000円(税込) 追加料金一切不要」
  7. 「通夜式・告別式を行います 小さな家族葬 無料資料請求で、通常493,000円が 総額488,000円(税込) 追加料金一切不要」

実際は下記に該当する場合は例外的に追加料金が発生していた

  • 寝台車又は霊柩車の移動距離が50kmを超える場合
  • 葬儀社等における安置日数が各設定日数※を超える場合 
  • 自宅等における安置日数が各設定日※を超え、ドライアイス等を追加する場合
  • 火葬場利用料が市民料金を超える場合
  • 「小さな一日葬」の外部式場利用料が50,000円を超える場合
  • 「小さな家族葬」または「100名までのお葬式」の外部の式場利用料が100,000円を超える場合


※「小さな火葬式」「小さな一日葬」「小さなお別れ葬」は3日、「小さな家族葬」「100名までのお葬式」は4日

打ち消し表示の有効性は認められなかった

「小さなお葬式」の自社ウェブサイトでは、「追加料金一切不要」と記載されているウェブページ以外の「よくある質問」で、例外的に追加料金が発生する場合があることを記載していました。

しかし、下記の観点により消費者に追加料金が掛かるケースがあり、追加料金一切不要という認識を打ち消すことはできないと判断されています。

  • 追加料金一切不要と記載のあるウェブページとは別のウェブページに表示されていた。
  •  リンク先に追加料金に係わる重要な情報が存在するとはわからない表示だった。
  •  「よくある質問」等のリンク先の文字列をクリックしなければ表示されなかった。

「よりそうお葬式」が措置命令を受けた表示内容について

よりそう①
よりそう②

自社ウェブサイトにて「全てセットの定額」などと表記

自社ウェブサイト内に「この金額で葬儀ができます」「全てセットの定額」「全て揃った定額額 必要なもの全てセット」など、あたかも表示された価格以外に追加料金が発生しないかのように表示していました。

実際は下記に該当する場合は追加料金が発生した

  • 寝台車又は霊 柩きゅう車の搬送距離が1回最大50kmを超える場合
  • 葬儀社等における安置日数が4日を超えてドライアイスの追加が必要となる場合
  • 火葬場利用料が1万5000円を超える場合
  • 式場利用料が5万円を超える場合

打消し表示の有効性は認められなかった

「よりそうお葬式(旧シンプルなお葬式)」では、自社ウェブサイト内に「追加料金が例外的に発生する場合がある」と表示していました。
しかし、下記の観点により消費者に追加料金が掛かるケースがあり、追加料金一切不要という認識を打ち消すことはできないと判断されています。

  • 「全てセットの定額」などと表示されたページとは別のウェブページに表示されていた。
  • リンク先に追加料金に係わる重要な情報が存在するとは表示されていない。
  • 「よくある質問」等のリンク先の文字列をクリックしなければ表示されなかった。

葬儀ポータル3社の処分対象行為からみた広告制作における表現の注意点

「イオンのお葬式」「小さなお葬式」「よりそうお葬式」の行政処分対象となった行為は、一般消費者に「有利誤認」させるような広告表現です。
しかも問題となった各社の表現には、多少の違いはあるものの内容に共通点がみられます。

「追加料金一切不要」「追加料金が本当にかからない」という表現は要注意

消費者にとって価格についてはそのサービスを利用するかどうかの重要な判断基準となるため、「追加料金一切不要」「追加料金が本当にかからない」という表現はとても魅力的で、一般消費者にとって有利に感じられる表現です。
どのようなケースであっても追加料金が一切かからない場合は問題ありませんが、例外的に追加料金がかかる場合は措置命令の対象となるため表示しないことを推奨します。

同じウェブページ内で例外的に追加料金がかかるケースがある表示を明確にする

プラン内容の金額を表示するウェブページに、例外的に追加料金がかかる場合、その旨を消費者がわかる表示を行う必要性があります。

小さなお葬式2019年4月16日現在の表示

※2019年4月16日現在の「小さなお葬式」のサイトより

平成31年(2019年)4月16日現在の「小さなお葬式」のサイトを参考にすると、プラン料金が表示されているページ内に「※プラン料金以外に費用がかかる場合▼」という表示(赤の丸で囲った部分)があります。
そこをクリックすると例外的に費用がかかるケースを紹介しており、さらに詳細を確認することもできる表示へと変更されています。

このように、プラン料金以外に費用が掛かるケースについて、わかりやすく表示することが必要です。

まとめ

今回は大手葬儀ポータルサイト「イオンのお葬式」「小さなお葬式」「よりそうお葬式」の景品表示法違反事例に関する情報を紹介しつつ、自社ホームページや広告の掲載内容に関する注意点について詳しく解説しました。

葬儀社様も営利企業ですので、競合に対して少しでも優位に立ちたいのは当然ですが、一般消費者に向けて情報発信する際には、細心の注意をはらう必要があります。
その対策として、まずは「景品表示法」について、しっかりと知っておくべきでしょう。

消費者庁の「事例で分かる景品表示法ガイドブック」では、具体的な事例をあげて「景品表示法」を分かりやすく解説しています。
可能であれば社内で共有し、参考資料として一読いただくことをおすすめします。

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