株式会社セレモジャパン〜メモワールホール〜┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

セレモジャパン社メモワールホールの業績と利益

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社セレモジャパンの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社セレモジャパンの概要

株式会社セレモジャパンは、東京都・神奈川県・静岡県・山梨県で冠婚葬祭互助会事業を展開するメモワールグループのグループ企業です。
横浜市・川崎市・横須賀市を中心に、冠婚葬祭サービスを提供しており、グループ全体の葬儀施行件数は7,000件を超えています。

メモワールグループ内で株式会社セレモジャパン以外に、神奈川県で葬祭事業を展開しているグループ企業は以下の通りです。

1987年に誕生したセレモジャパンは、互助センター友の会より川崎事業部の営業譲渡を受け、1989年には株式会社メモワールから「川崎葬祭センター」も傘下に移管されています。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

冠婚葬祭互助会の仕組み

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

セレモジャパンの貸借対照表 

決算期31期32期33期34期35期36期
会計年度2018年4月期2019年4月期2020年4月期2021年4月期2022年4月期2023年4月期
利益剰余金23億6千8百万円26億5千8百万円30億0千0百万円32億7千1百万円35億6千0百万円37億7千8百万円



流動資産547千5百万円570千5百万円60億2千4百万円60億6千4百万円60億8千9百万円59億0千2百万円
固定資産86億1千1百万円84億3千5百万円83億0千6百万円83億2千9百万円84億3千5百万円85億6千1百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産0.3百万円0.3百万円
資産合計140億8千6百万円141億4千0百万円143億3千0百万円143億9千3百万円145億2千4百万円144億6千3百万円



流動負債116億1千5百万円9億5千1百万円9億3千2百万円8億6千6百万円9億3千6百万円9億5千9百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債5千4百万円104億8千1百万円103億4千8百万円102億0千7百万円99億7千7百万円96億7千6百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計116億6千9百万円114億3千1百万円112億8千0百万円110億7千2百万円109億1千4百万円106億3千5百万円




株主資本24億1千8百万円27億0千8百万円30億5千0百万円33億2千1百万円36億1千0百万円38億2千8百万円
資本金5千0百万円5千0百万円5千0百万円5千0百万円5千0百万円5千0百万円
資本余剰金
資本準備金
その他資本余剰金
利益剰余金23億6千8百万円26億5千8百万円30億0千0百万円32億7千1百万円35億6千0百万円37億7千8百万円
利益準備金5百万円5百万円5百万円5百万円5百万円5百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金23億6千3百万円26億5千3百万円29億9千5百万円32億6千6百万円35億5千5百万円37億7千3百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)3億0千1百万円2億9千1百万円3億4千1百万円2億7千1百万円2億8千9百万円2億1千8百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計24億1千8百万円27億0千8百万円30億5千0百万円33億2千1百万円36億1千0百万円38億2千8百万円
負債・純資産合計140億8千6百万円141億4千0百万円143億3千0百万円143億9千3百万円145億2千4百万円144億6千3百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

セレモジャパンの自己資本比率は26.47

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
セレモジャパンの2022年4月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

38億2千8百万円÷144億6千3百万円×100=26.47%
セレモジャパンの自己資本比率は26.47%となっており、前年同期に比べ1.61%増加しています。

セレモジャパンの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

セレモジャパンの資産合計の推移は以下のようになっています。

セレモジャパンの2023年4月期における資産合計は144億6千3百万円(前年同期比0.42%減)となっており、2022年からの過去5年間とは状況が変わり減少しています。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

セレモジャパンの負債合計の推移は以下のようになっています。

セレモジャパンの負債合計は過去5年間にわたり継続的に減少していますが、注目すべき点は2018年4月期から2019年4月期にかけて流動負債が大幅に減少し、固定負債が同規模で増加している点です。
これは短期借入から長期借入への変更、もしくは借り換えを行った結果と考えられます。

長期借入は短期借入にくらべ審査が厳しく、融資を受けられるのは継続的に利益を出す見込みのある企業に限られます。
そういった観点に立つと、セレモジャパンは借入先から高い評価を受けたと考えられます。

その結果2018年4月期には47.14%と苦しい状況だった流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2023年4月期には615%を超え、短期的な不安は払拭されました。

セレモジャパンの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

セレモジャパンの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。

純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

セレモジャパンの純資産合計は、過去6年間にわたり毎年3億円前後の増加を続けており、2023年4月期には38億2千8百万円(前年同期比6.04%増)となっています。
これは、少なくとも過去5年間に安定した利益を上げ続けていることを表しており、経営安定性を証明したかたちです。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

2023年4月期の当期純利益は2億1千8百万円と、2022年4月期に比べ24.57%減少しています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

セレモジャパンの場合は以下のように推移しております。

セレモジャパンの利益剰余金は安定して増加しており、2023年4月期には37億7千8百万円(前年同期比6.12%増)となっています。

利益剰余金は当期純利益の発生にともない増加するものですので、セレモジャパンが過去5年間にわたって当期純利益を出し続けている証拠です。

株式会社セレモジャパンのまとめ

今回は株式会社セレモジャパンの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
外部からでは見えない企業の内部状況も、貸借対照表を分析することで、ある程度まで把握可能であることがお判りいただけたかと思います。

2020年から2021年にかけて猛威を振るった新型コロナは、葬儀業界にも大きな打撃を与えました。
こういった事情から、収益を悪化させる葬儀社も多い中、セレモジャパンは安定経営を維持していたようです。

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