相続に関する手続きは多岐にわたりますが、そのうち「相続税の納付」については、故人様が亡くなった日の翌日から原則10カ月以内という期限が設けられています。たとえば1月1日に亡くなった場合は11月1日いっぱいが申告期限です。
そのため、ご葬儀を無事に終えたご遺族様は、ゆっくりと休む間もなく手続きに着手することとなりますが、相続に関連する業務の中には、専門家(司法書士や税理士・弁護士、行政書士)だけが取り扱うことを許される「独占業務」も多いため、誰に相談すべきか分からないという方も多いようです。
葬儀業界や介護業界でも、こうしたご遺族様のお悩みに寄り添うべく、アフターサービスとして相続関連サービスを提供するケースが増えつつあります。相続の専門家ではない葬儀社様が提供できるサービスの範囲は限られますので、基本的には専門家の紹介や、専門機関の案内などが中心となるでしょう。とはいえ、お悩みの内容ごとに最適な相談先は異なるため、それぞれの専門家・専門機関が取り扱う業務の範囲は把握しておきたいところです。
そこで今回は、相続税の相談ができる専門機関や専門家について、困りごとのケース別に紹介します。
【お悩み別】適切な相続税の相談先

はじめに、想定される相続人様の相談内容やお困りごとを、お悩みの段階別にピックアップしました。
①将来的に相続が必要になるが、金額や手続き方法が全く分からず事前に調べたい方
| No | 相談内容・困りごと | 主な相談先 | どんな場合におすすめ | 相談できる内容 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | そもそもどこへ相談してよいかわからない | 自治体の相談窓口 | ・相続手続きの概要について知りたい場合・終活全般について漠然とした不安があり、何から始めれば良いかわからない場合 ・地域の高齢者向けサービスや制度について知りたい場合 ・まずは無料で気軽に相談してみたい場合 | ・相続手続きの概要(大まかな流れ、必要書類など) ・遺言書の作成やエンディングノートの書き方 ・成年後見制度について ・地域の高齢者向けサービスや制度 ・他の専門機関への紹介 |
| 2 | 電話か対面で手軽に相談したい場合 | 税務署の無料相談 | ・相続税の仕組みや申告手続きの概要について知りたい場合 ・申告書の基本的な記載方法について確認したい場合 ・必要書類や提出先など、手続きに関する一般的な情報を知りたい場合 ・土地の評価方法の概要について知りたい場合 | ・相続税の仕組みや申告手続きの流れ ・申告書の記載方法や添付書類 ・必要書類の取得方法 ・土地の評価方法(概要) ・特例や控除の適用要件(一般的な説明) ・申告書の提出先や提出期限 |
②相続税が発生する状況で調べている方
| No | 相談内容・困りごと | 主な相談先 | どんな場合におすすめ | 相談できる内容 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 相続税の申告方法・記載方法がわからない | 税務署の無料相談 | ・まずは無料で相談したい場合 ・相続税申告書の基本的な書き方や提出方法など、一般的な内容について知りたい場合 ・自分で申告書を作成しようとしていて、具体的な項目の意味や記入方法で困っている場合 | ・申告書の各項目の意味や記入方法の説明 ・申告に必要な書類の説明 ・申告手続きの流れの説明 |
| 国税局電話相談センター | ・税務署に行く前に、電話で簡単に相談したい場合 ・相続税に関する基本的な知識(申告義務の有無、基礎控除の計算方法、特例の要件など)を知りたい場合 | ・相続税の基本的な制度の説明 ・申告手続きの概要の説明 | ||
| 2 | 納税額が多く、少しでも節税する方法が知りたい | 税理士 | ・納税額が多く、具体的な節税方法を知りたい場合 ・特例や控除の適用を最大限に活用したい場合 ・複雑な相続財産がある場合(不動産や金融資産など) | ・配偶者控除や小規模宅地等の特例の活用方法 ・生前贈与や相続時精算課税制度の適用 ・不動産の評価額について ・保険商品を活用した非課税枠の活用 |
| 3 | 相続する不動産の名義変更の手続きが自分ではできない | 司法書士 | ・不動産の名義変更(相続登記)の手続きが複雑で自分では対応できない場合 ・必要書類の収集や手続きの流れが分からない場合 ・手続きを迅速かつ正確に進めたい場合 | ・相続登記(名義変更)の手続き代行 ・必要書類(戸籍謄本や遺産分割協議書)の収集サポート ・法定相続情報一覧図の作成・登記に必要な費用や税金の案内 |
③具体的な手続き方法を調べている方
| No | 相談内容・困りごと | 主な相談先 | どんな場合におすすめ | 相談できる内容 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 実際にかかる相続税を計算したい | 税理士 | ・相続財産の総額が基礎控除額を超える可能性がある場合 ・相続財産に不動産や非上場株式など、評価が難しい財産が含まれる場合 ・特例や控除の適用を検討したい場合 | ・相続税評価額の算定 ・実際にかかる相続税額の試算 ・特例、控除の適用可能性に関する提案 ※多くの税理士事務所では初回相談を無料で受け付けており、相続税額を概算してくれることが多い |
| 2 | 相続財産の分割で相続人間で揉めている | 弁護士 | ・相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合・法律に基づいた公平な分割方法を知りたい場合 ・調停や裁判に発展する可能性がある場合 | ・法律に基づく遺産分割のアドバイス ・遺産分割協議書の作成や交渉の代理 ・家庭裁判所での調停や審判手続きのサポート ・相続放棄や特別受益などの複雑な問題の解決 |
| 3 | 評価の難しい財産がある | 税理士 | ・不動産や非上場株式など、評価が難しい財産が含まれている場合 ・相続税申告のために適正な評価額を知りたい場合 ・財産の評価額に納得がいかず、再評価が必要な場合 | ・相続税法に基づく財産評価方法の提案(路線価評価や株式評価など) ・特例(小規模宅地等の特例)の適用条件の確認 ・評価額を基にした節税対策のアドバイス |
| 4 | 税額計算上、何を相続財産に算入すべきかがわからない | 税理士 | ・相続財産の範囲や評価方法が分からない場合 ・相続税の計算で何を含めるべきか迷っている場合 ・複雑な財産(不動産、株式、借金など)が含まれている場合 | ・相続財産に算入すべき資産と負債の確認(現金、不動産、株式、生命保険金など) ・相続税法に基づく評価方法の解説 ・非課税財産や控除対象の確認(生命保険の非課税枠など) |
| 5 | 相続人が誰かがわからない | 行政書士 | ・相続人となる人を知りたい場合 ・故人様が生前転籍を多くしており、戸籍謄本の収集が難しい場合 | ・戸籍謄本の代理取得 ・相続関係説明図の作成 |
| 司法書士 | ・故人様の戸籍謄本を調べても相続人が確定できない場合 ・故人様と長年連絡を取っていない親族がいる場合 | ・故人様の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍などの収集 ・法定相続人を確定するための追加調査 ・相続関係説明図の作成 | ||
| 弁護士 | ・故人様に認知した子供がいる可能性がある場合 ・相続人の間で争いが発生する可能性がある場合 | ・遺産分割協議のアドバイス ・遺産分割調停・審判の代理 ・認知請求の手続き | ||
| 6 | 実際にかかる相続税を計算したい | 税理士 | ・相続財産の総額が基礎控除額を超える可能性がある場合 ・相続財産に不動産や非上場株式など、評価が難しい財産が含まれる場合 ・特例や控除の適用を検討したい場合 | ・相続税評価額の算定 ・実際にかかる相続税額の試算 ・特例、控除の適用可能性に関する提案 |
| 7 | 節税対策について知りたい | 税理士 | ・相続税について節税したいと考えている場合 ・将来の相続に備えて、事前に相続税額を把握し、節税対策を講じたい場合 | ・節税効果を考慮した遺産分割方法 ・生前贈与、養子縁組、不動産の有効活用、生命保険の活用など、具体的な節税対策 |
| 8 | 自分で相続税の申告手続きをしたい | 税務署の無料相談 | ・相続財産が比較的単純で、評価が容易な場合(例:現金、預貯金、上場株式など) ・相続人の間で遺産分割について争いがない場合・過去に相続税申告の経験があり、手続きに慣れている場合 ・費用を抑えたい場合 | ・相続税の仕組みや申告手続きの流れ ・申告書の各項目の書き方や添付書類 ・申告に必要な書類の種類や取得方法について ・申告書の提出先となる税務署や提出期限 ・適用可能な特例や控除とその要件について |
| 税理士 | ・相続財産に不動産や非上場株式 ・美術品など、評価が難しい財産が含まれる場合 ・相続税の計算や申告手続きに不安がある場合 ・特例や控除の適用を検討したいが、要件が複雑で判断が難しい場合 | ・相続財産の評価 ・特例、控除の適用に関するアドバイス ・節税効果を考慮した遺産分割方法について | ||
| 9 | 申告書の記載内容や土地の評価方法について確認したい | 税務署の無料相談 | ・申告書の基本的な記載方法について確認したい場合 ・土地の評価方法の概要について知りたい場合(具体的な評価額の計算は納税者自身で行う必要があります) ・特例や控除の適用要件について一般的な説明を受けたい場合 ・費用を抑えたい場合 | ・申告書の記載方法 ・土地の評価方法(概要) ・特例や控除の適用要件(一般的な説明) |
| 税理士 | ・申告書の記載内容について、個別の状況に合わせた具体的なアドバイスが欲しい場合 ・土地の評価が複雑で、専門家の意見を聞きたい場合(広大地、不整形地、市街地山林など) ・特例や控除の適用を検討したいが、要件が複雑で判断が難しい場合 | ・個別の状況に合わせた申告書の記載内容 ・路線価方式、倍率方式、広大地評価、不整形地評価、市街地山林評価など、土地評価に関するアドバイス ・節税効果が期待できる特例や控除の適用について | ||
| 10 | 故人様の自動車の名義を変更したい | 行政書士 | ・故人様が所有していた自動車を相続して、名義変更したい場合 ・自動車の保管場所が変わる場合 | ・自動車の名義変更手続きについて ・保管場所が変わる場合の車庫証明の取得について |
| 11 | 故人様の事業を引き継ぎたい・廃業したい | 行政書士 | ・故人様が、建設業許可や食品営業許可、宅地建物取引業免許などの許認可を受けて個人事業を行っていた場合 | ・故人様が行っていた事業の廃業の届出 ・事業を引き継ぐ際の相続や変更の届出 |
各相談先の詳細は次項から解説します。
なお、以下に該当する場合はそもそも相続税の申告・納付が不要です。
- 相続する財産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)以下の場合
課税遺産総額の計算は大変難しいので、ご遺族様には国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」をご利用いただくとよいでしょう。「法定相続人の数の入力」「相続財産等の入力(土地等、建物、有価証券などの項目)」などを画面に従って入力していくだけですので、税金に詳しくない方でも納税の大まかな要否を容易に判定できます。
また、多くの税理士事務所は初回相談を無料で行っており、そこで相続税額の概算をしてもらうことが可能です。「税理士への相談は有料なので選択肢に入れていない」というご遺族様もいらっしゃるため、無料相談を行っている事務所もあることをお伝えできると親切でしょう。
無料で利用できる相続税の相談先

手続き手順や税金の事務的・基本的なことを知りたい方に関しては、最初から専門家へ相談するよりも、公共の無料相談を受け、相談内容を整理していただくことも一つの方法です。
| No | 相談先 | 相談方法 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 1 | 国税局電話相談センター | 電話相談 | ・相続税についての基本的内容の確認 ・節税や個別事情は相談できない |
| 2 | 税務署 | 電話面接相談 | ・面接相談なら具体的な書類や事実関係の確認も可能 ※申告に不備がないことを確証するものではない、節税の相談はできない |
| 3 | 税理士会 | 無料相談会 | 節税の相談が可能 |
| 4 | 税理士事務所 | 初回無料相談 | 節税や個別事情の相談が可能 |
| 5 | 銀行 | 窓口相談 | ・相続税についての基本的内容の確認 ・税理士や弁護士などの専門家の紹介 |
| 6 | 市役所(市区町村役場) | 窓口相談 | どの専門家に相談してよいかわからない場合 ※自治体により設置の有無・対応範囲が異なる |
①国税局(電話相談センター)
相続税の基本的なことを質問したい場合は、国税局の電話相談センターがおすすめです。
予約は必要なく、何回でも匿名で相談できます。電話相談センターでは相続税に詳しい職員が相談に乗ってくれるので、以下のような基本的な内容を確認できます。
- 相続税の基本的な内容
- 相続税の申告が必要なケース
- 基礎控除や特例について
ただし対面相談ではないため、手元の資料や申告書を見てもらうことはできません。そのため、具体的な税額算出方法を教えてもらいたい場合には不向きです。
国税局への相談は、国税相談専用ダイヤル「0570-00-5901」へダイヤルしてから音声案内に従って操作し、担当者へつないでもらいます。受付時間は8時30分~17時00分(土日祝日及び12月29日~1月3日を除く)です。なお国税庁では、上記の他「チャットボットふたば」で税金の質問ができるサービスも提供しているので、電話が通じない場合などに重宝するでしょう。
参照:国税庁「国税に関するご相談について」
②所轄の税務署
税務署では国税局電話相談センターと同様、税金や納税について気軽に相談できます。
対面で相談できるので、申告書の作成方法や計算方法なども教えてもらえます。以下のようなケースでは税務署への相談がおすすめです。
- 税金の基本的な情報を知りたい
- 特定の税務手続きについてガイダンスが欲しい
- 税金の計算方法や申告書の記入方法を知りたい
- どんな税制優遇措置や控除があるのか知りたい
税務署によっては、相談に電話予約が必要な場合もあります。相談時間はおよそ30分程度のため、事前に相談内容をまとめておくことがおすすめです。最寄りの税務署を調べる場合は、以下から検索できます。
国税庁「税についての相談窓口」
ただし税務署の無料相談では、税や申告に関する一般的な情報を提供するのみで、個別の事情には立ち入りません。そのため実際の税額計算などは、相談者自身で行う必要があります。なお、税務署のアドバイスをもとに作成した相続税の申告書に不備があった場合でも、税務署が責任を取るわけではないので注意しましょう。
③税理士会の無料相談会
節税の相談をしたい場合や税理士を紹介してもらいたい場合は、税理士会が開催する無料相談会などがおすすめです。
税理士会は税金についての無料相談会や税金セミナー、講演会などを定期的に実施しています。無料相談会は事前予約が必要な場合が多く、相続税や所得税など、分野ごとに開催されるケースがあるので、事前に内容や日程を確認するほうがよいでしょう。近隣の税理士会の相談会は以下で検索できます。
日本税理士会連合会「税理士会の相談会に行ってみる」
相談時間はおおむね30分程度です。ただし、無料相談では具体的な税額計算や節税相談、個別の事情を考慮したアドバイスは得にくいでしょう。ご遺族様の考えた計算方法や分割方法が正しいか、確認したい場合には活用できます。
④税理士事務所の初回相談
税理士への相談は基本的に有料ですが、初回相談を無料で受けられるケースも少なくありません。
税理士であれば個別の税問題の相談にも応じてもらえて、複雑な事情に対しても丁寧にサポートしてもらえます。もちろん個別事情を考慮した節税方法も聞くことが可能です。ご遺族様が「税額計算や相続税申告を税理士に依頼したいが、どの税理士がよいか迷っている」といった場合は、無料初回相談を行っている税理士を紹介するのも一つの方法です。
⑤銀行
ご遺族様の中には、普段から資産管理などでかかわりのある銀行に、相続に関する相談を行おうとする方も多いようです。
銀行では、相続に関する無料相談を行えるほか、銀行が提携している税理士や弁護士などの専門家の紹介を受けることもできます。銀行での相続相談は、以下のようなケースでおすすめです。
- 相続の全体的な流れを把握したい
- 相続に関わる専門家を紹介してほしい
- 信託などの財産管理・承継の方法について知りたい
ただし、いくつかの注意点があります。銀行での相談は情報提供が中心となるため、具体的な手続きについては、紹介された専門家への有料依頼が必要となります。また、戸籍謄本などの書類収集は、基本的に相続人自身で行う必要があります。銀行に相談すればすべて手続きを行ってくれるとお考えのご遺族様には、これらの情報をお伝えしましょう。
⑥市役所(市区町村役場)
そもそもどこへ相談してよいかわからない場合や、相談内容がまだまとまっていない場合は、市役所の相談窓口に相談する方法もあります。自治体によっては、市区町村役場に税金や相続の相談窓口を設けており、その市町村に居住、または通勤・通学などをしている方であれば、相談窓口を利用できます。
ただし、自治体によって「税相談」「相続相談」など名称や対応範囲が異なるため、事前に確認が必要です。また、基本的に役所の相談窓口では書類作成や個別事情の相談はできません。あくまで専門家に相談する前に相談内容を整理する場と捉えるべきでしょう。市役所の相談時間はおおむね20分〜30分程度で、一般的に予約が必要となります。
有料で税や相続について相談できる専門家
無料相談などで相続税の基本がわかり、やるべきことが整理されている場合は、必要に応じて専門家の有料個別相談を受けることをおすすめします。
- 税理士:税務全般、相続税の申告
- 司法書士:不動産の相続登記、相続人・相続財産の調査
- 弁護士:遺産分割や税額分担のトラブル解決
- 行政書士:相続人・相続財産の調査、事業の継承・廃業
①税理士
節税対策を含む税務を総合的に相談したい場合は、税理士に相談します。税理士が対応する税務関連業務は以下のとおりです。
- 相続税の計算・申告
- 相続税の訂正・更正
- 相続税対策・節税方法の提案
- 財産評価
- 税務調査への対応
税理士には相談だけでなく、申告手続きの代行も依頼できます。相続税申告に自信がない場合や、節税しながら手続き負担を軽減したい場合は、税理士に申告手続きを依頼するとよいでしょう。なお、税理士報酬の相場は「遺産総額の0.5~1%」ですが、税理士事務所ごとに報酬体系は異なり、業務の難易度に応じて報酬が加算されるケースもあるので、個別に確認が必要です。
補足ですが、万が一相続税の申告漏れで追徴課税を受けた場合、負担が数百万円にも及ぶ恐れがあります。税務調査の対象となった相続の85%前後で申告漏れが指摘され、追徴課税の対象となっていることを考慮すると、報酬を支払って税理士に申告を依頼するほうが安心でしょう。
②司法書士
相続財産に不動産が含まれる場合は、司法書士へ相談しましょう。
不動産の相続においては「相続登記」が必要です。士業でなくても相続登記は行えますが、必要な書類も多く手続きが大変複雑なため、手続きを司法書士へ依頼するケースがほとんどです。また司法書士は、そもそも相続人が誰なのか、何が・どこまでが相続財産なのかを知りたい場合にも役立ちます。司法書士が対応している業務は以下のとおりです。
- 相続人調査(戸籍謄本などの収集)
- 相続財産調査(評価証明書や残高証明書の取得、信用情報機関への債務照会など)必要な書類(遺産分割協議書、戸籍謄本、固定資産評価証明書など)の収集や作成の代行
- 法務局への相続登記申請
司法書士は相続税の申告や節税のアドバイスには対応していませんが、税額計算に必要な情報を収集するために活用できるでしょう。
なお、司法書士の報酬相場は以下のとおりです。
- 相続登記:4万~6.5万円
- 相続人調査:2万~3.5万円
- 預貯金の解約払い戻し:3万~5万円/1金融機関
相続手続きにおいて司法書士が行える業務は、『相続に関わる専門家|司法書士ができること・できないことや費用体系』でも詳しく解説しています。
③弁護士
遺産分割のトラブルが生じた場合や、高額な相続税の負担などで揉めている場合は、弁護士へ相談することも大切です。
遺産分割に決着が付かないと、財産の名義変更や登記ができないだけでなく、相続税の申告・納付期限の10カ月に間に合わなくなってしまうためです。ただし、弁護士の専門は相続手続き全般と相続トラブルの解決であって、税金ではないため、相続税申告と税額計算は別途税理士に依頼が必要です。
弁護士事務所によっても異なりますが、費用相場はおおむね以下のとおりです。
- 相談料:約5,500円(初回相談無料の事務所も多い)
- 着手金:20~30万円
- 報酬金:「経済的利益」に応じて決められている場合が多い
- 実費:数万円
- 日当:1日出張で約5万円
ただ一般の方にとって、弁護士は少々ハードルが高く感じられるかもしれません。無料や低額で法律相談ができる「法テラス」から案内するのも一つの方法です。
④行政書士
相続財産の調査や、相続人を把握するための戸籍謄本を代わりに収集してもらいたい場合は、行政書士への相談が効果的です。
相続について行政書士に相談・依頼できる範囲が限られている分、相談費用はほかの専門家に比べて定額であることが多いです。
- 相続財産の調査:5万~6万円
- 相続人の調査:5万~6万円
- 自動車の名義変更:2万~5万円
- 遺産分割協議書の作成:3万~5万円
行政書士への相談は、相続財産に不動産が含まれず、相続人間で争いがなく、相続税の申告も自分で対応できる(または申告不要な)ケースに適しています。
相続税の相談をする前に準備しておくポイント

最後に、専門家に相続税の相談をする際に用意すべき書類や、確認しておきたいポイントを解説します。
相続財産の概要とすべての相続人を調べておく
税金の相談をする前に、相続財産の概要とすべての相続人を把握しておくとスムーズです。
相続財産の全体像がわからなければ、遺産総額と相続税を算出できません。相続税の計算時にはプラスの財産だけでなく、負債などマイナスの財産も必要となるため、抜け漏れなくリストアップする必要があります。また、相続人の人数と続柄によっても、各相続人の相続税額が変わってきます。相談時までに相続人を調べて整理しておき、税理士に正確な情報を伝えられるようにしましょう。
もし限定承認や相続放棄をしたい場合には、相続を知った日から3ヶ月以内に手続きが必要となるので、早めに情報を整理しておくのに越したことはありません。
固定資産税・預貯金・有価証券・保険金の金額がわかるものを用意する
遺産総額を計算する際には、資産ごとの評価額を把握する材料が必要となるため、金額のわかる書類を集めておくとよいでしょう。
遺産に不動産がある場合は、毎年5月から6月に届く固定資産税の「課税明細書」を探しておきましょう。固定資産税の課税明細書には、相続税額の計算時に使う「固定資産税評価額」が書かれているためです。
また、預貯金や有価証券、保険などの金融資産の金額がわかる書類も探し出しておきましょう。具体的には預金通帳、有価証券の残高報告書、保険証券などです。どの財産が相続税の課税対象になるか詳しく知りたい方は『相続税基本のきVol.1_相続税ってどんな財産にかかるの?』をお読みください。
ただ、これらの書類がなくても相談自体はできます。申告時までに他の動産などと合算できればよいので、税理士と相談しながら必要な書類を整えていけば問題はありません。
まとめ

相続税の相談先は、税金や手続きの基本的な内容については国税局の電話相談や税務署の無料相談がおすすめです。ただし個別の内容や節税相談、相続税の申告は税理士に依頼する必要があります。
また、遺産に不動産がある場合は司法書士、遺産分割や税額分担で話し合いがつかない場合は弁護士に、別途相談が必要となる場合があります。
ご遺族様に相続税の相談先を尋ねられたときは、相談したい内容やお困りごとに応じて相談先を提案できると信頼関係の構築につながるでしょう。



