株式会社アスピカ┃冠婚葬祭互助会の売上・利益・業績をまとめて分析

アスピカ

葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場しているなら決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。

ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社株式会社アスピカの現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社アスピカの概要

株式会社アスピカは1969年2月、「福井県新生活互助会」として創業。その年に「全国冠婚葬祭互助連盟」の公認を受け、冠婚葬祭互助会企業として、互助会員獲得・結婚式・葬儀をメインに展開中です。
同社は、介護福祉事業、料亭、ペット葬祭事業も運営しています。

葬儀会館は福井県と岐阜県にあり、アスピカホール、はくれん、アスピカ邸宅葬という名で運営しています。

葬儀関連施設は、2024年7月末現在以下のとおりです。

  • 福井県29施設
  • 岐阜県12施設

【名称】株式会社 アスピカ
【設立】1969年(昭和44年)2月
【代表取締役】渡辺 恒治
【所在地】本社 福井県福井市二宮4丁目6-16
【公式サイト】https://www.aspica.co.jp/index.html
【事業内容】・冠婚葬祭互助会
      ・総合貸衣装
      ・総合結婚式場
      ・葬儀全般
      ・介護福祉
      ・料亭
      ・商品流通
      ・ペット葬祭

出典:株式会社 アスピカ会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。

次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は貸借対照表の負債の部に計上されている負債合計額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告の簡単な概要については以上になります。

なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能です。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は冠婚葬祭互助会を運営するケースが多いです。

冠婚葬祭互助会とは冠婚葬祭などの行事に備えるために毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。互助会の会員になることで葬儀や婚礼で割引などの優遇があります。
冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた事業者となります。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

以上の3つの方法のいずれかを選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

株式会社アスピカの貸借対照表 

決算期50期51期52期53期54期55期
利益剰余金56億9千8百万円59億8千3百万円60億7千2百万円67億4千1百万円73億2千0百万円82億0千2百万円
会計年度2018年6月期2019年6月期2020年6月期2021年6月期2022年6月期2023年6月期
資産流動資産34億7千8百万円29億2千0百万円29億6千2百万円37億6千6百万円37億4千4百万円46億6千1百万円
固定資産268億5千2百万円275億9千1百万円275億9千8百万円283億4千8百万円290億4千7百万円294億1千6百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計303億3千0百万円305億1千1百万円305億6千0百万円321億1千4百万円327億9千1百万円340億7千7百万円
負債流動負債25億4千3百万円19億5千6百万円15億7千4百万円21億6千5百万円18億3千2百万円21億2千4百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債220億0千5百万円224億8千9百万円228億4千0百万円231億3千3百万円235億6千4百万円236億7千7百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計245億4千8百万円244億4千5百万円244億1千4百万円252億9千8百万円253億9千6百万円258億0千1百万円
純資産株主資本57億8千2百万円60億6千7百万円61億4千6百万円68億1千6百万円73億9千4百万円82億7千6百万円
資本金8千1百万円5千0百万円5千0百万円5千0百万円5千0百万円5千0百万円
 資本余剰金千3百万円3千4百万円3千4百万円3千4百万円3千4百万円3千4百万円
資本準備金千3百万円3千4百万円3千4百万円3千4百万円3千4百万円3千4百万円
その他資本余剰金
 利益剰余金56億9千8百万円59億8千3百万円60億7千2百万円67億4千1百万円73億2千0百万円82億0千2百万円
利益準備金1千5百万円1千5百万円1千5百万円1千5百万円1千5百万円1千5百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金56億8千3百万円59億6千8百万円60億5千7百万円67億2千7百万円73億0千5百万円81億8千7百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純損失)
自己株式-1千0百万円-1千0百万円-1千0百万円-1千0百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計57億8千2百万円60億6千7百万円61億4千6百万円68億1千5百万円73億9千4百万円82億7千6百万円
負債・純資産合計303億3千0百万円305億1千2百万円305億6千0百万円321億1千4百万円327億9千0百万円340億7千7百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。

例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。


例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

※のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

株式会社アスピカの自己資本比率は24.29%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
株式会社アスピカの2023年6月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

82億7千6百万円(純資産)÷ 340億7千7百万円(総資産)× 100

上記の式から同社の自己資本比率は24.29%(前年比で1.74ポイント増)となりました。

株式会社アスピカの利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

株式会社アスピカの場合は以下のように推移しております。

過去3年間の利益剰余金の成長率の推移は2021年6月期は67億4千1百万円(前年比成長率11.02%)2022年6月期は73億2千0百万円(前年比成長率は8.59%)2023年6月期は82億0千2百万円(前年比成長率は12.05%)となっています。
利益剰余金の成長率は確実に積みあがっていることが分かります。

株式会社アスピカの損益計算書

損益計算書とは企業が「どれだけ売り上げが上がり(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいもうかったのか(=利益)」が一目で分かるものです。今回は損益の実態評価を示す「経常利益」ではなく、下の損益計算書を基に同規模程度の同業他社との売上高営業利益率を比較します。

決算期50期51期52期53期54期55期
会計年度2018年6月期2019年6月期2020年6月期2021年6月期2022年6月期2023年6月期
1売上高78億3千1百万円75億8千8百万円68億9千8百万円66億6千1百万円70億9千0百万円74億7千0百万円
2売上原価24億0千5百万円22億5千1百万円19億2千9百万円17億4千1百万円18億3千0百万円19億9千2百万円
3売上総利益54億2千6百万円53億3千7百万円49億6千8百万円49億2千0百万円52億6千0百万円54億7千8百万円
4販売費及び一般管理費46億0千7百万円44億1千1百万円41億3千6百万円38億5千4百万円40億0千3百万円41億0千8百万円
5営業利益8億1千9百万円9億2千6百万円8億3千2百万円10億6千6百万円12億5千7百万円13億7千0百万円
6営業外収益2億5千6百万円1億9千9百万円87億3千6百万円1億5千2百万円1億6千9百万円1億5千6百万円
7営業外費用7百万円9百万円1千0百万円5百万円5百万円7百万円
8経常利益10億6千8百万円11億1千6百万円9億6千5百万円12億1千4百万円14億2千1百万円15億1千9百万円
9特別利益0百万円0百万円3億0千0百万円0百万円3千1百万円1百万円
10特別損失7億9千4百万円8億5千9百万円11億2千6百万円1億9千1百万円5億8千4百万円1億9千5百万円
11税引前当期純利益2億7千4百万円2億5千7百万円1億3千9百万円10億2千3百万円8億6千9百万円13億2千5百万円
12法人税、住民税及び事業税1億8千5百万円7千7百万円-3千8百万円3億6千7百万円3億4千7百万円4億5千2百万円
13法人等調整額-1億0千5百万円8千8百万円-1千4百万円-5千6百万円-9百万円
14当期純利益8千9百万円2億8千5百万円8千9百万円6億7千0百万円5億7千8百万円8億8千2百万円

営業利益率の計算は下記の式で求められます。
(営業利益÷売上高)×100

13億7千0百万円(営業利益) ÷ 74億7千0百万円(売上高)x 100
上記の式から株式会社アスピカの営業利益率は 18.34%となります。

売上金額の推移

過去1年間の売上高の成長率の推移は2023年6月期は74億7千0百万円(前年比成長率は5.36%)となっています。
上記のグラフから、一時期は新型コロナの影響を受けたものの、売上高は安定していることが確認できます。

営業利益の推移

営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。

過去1年間の営業利益の成長率の推移は2023年6月期は13億7千0百万円(前年比成長率は8.99%)となっています。成長率は若干減少しているものの、営業利益は着実に増加しています。

経常利益の推移

経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。

過去1年間の経常利益の成長率の推移は2023年6月期は15億1千9百万円(前年比成長率は6.90%)となっており、コロナの影響から順調に回復し、過去6年間で最高額となっています。

株式会社アスピカのまとめ

今回は株式会社アスピカの決算公告を参考に、現状分析をおこないました。貸借対照表からみる限り、アスピカの財務状況に不安は見受けられません。
2020年から2021年にかけて、新型コロナの影響を受け、葬儀業界も大きな打撃を被りました。しかし、2023年5月からはコロナも5類に移行し、葬儀業界も回復の兆しが見え、アスピカも順調に回復しています。

「葬儀をサービスレベル日本一に」という改革に取り組んでいる、株式会社アスピカの今後の動向に注目していきたいと思います。

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