葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場企業であれば決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。
しかし非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社ごじょいるの現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社ごじょいるの概要
株式会社ごじょいる(シティホール)は1973年1月に東京都で設立されました。現在は東京都、埼玉県、山梨県、茨城県、長野県に葬儀場を60施設。
そして東京都、山梨県に結婚式場を2施設、東京都にフォトスタジオを2施設、茨城県にドレスサロンを1施設展開しております。
設立から2022年までは「株式会社互助センター友の会」という社名でしたが、2022年7月に「互助会」「JOY(喜び)」「要る(必要とされる)」を合わせて生まれた言葉「ごじょいる」という社名に変更されました。
ごじょいるの代表取締役社長である齋藤秀市氏は、株式会社セレマ(2023年7月期の売上高330億円超、冠婚葬祭互助会事業)の代表取締役も兼務しています。
【社名】株式会社ごじょいる
【所在地】東京都豊島区北大塚2-3-15
【設立】昭和48年1月25日
【代表者】齋藤 秀市
【営業エリア】東京都・埼玉県・茨城県・山梨県・長野県
【事業内容】冠婚葬祭互助会(経済産業大臣許可第3107号)
令和3年9月期 | 令和4年9月期 | 令和5年9月期 | |
前受金残高(保全対象額) | 59,003,269千円 | 57,930,609千円 | 56,768,369千円 |
会員口数 | 563,989口 | 558,647口 | 551,372口 |
挙式組数 | 464件 | 626件 | 693件 |
葬儀件数 | 4,728件 | 5,022件 | 5,387件 |
株式会社ごじょいるでは、エリアごとに異なる名称で葬儀会館を展開しています
- 東京都:39施設(あんしん祭典・家族葬ホール)
- 埼玉県:2施設(あんしん祭典)
- 山梨県:10施設(シティホール・あんしん祭典・家族葬ホール)
- 茨城県:6施設(ジャクセン)
- 長野県:3施設(シティホール)
ごじょいるの口コミや葬儀プランについては、以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告の簡単な概要については以上になります。
なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能です。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は、割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を、次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局への供託
- 経済産業省の指定する保証会社との供託委託契約締結
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約締結
以上の3つの方法のいずれかを選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
株式会社ごじょいるの貸借対照表
決算期 | 46期 | 47期 | 48期 | 49期 | 50期 | 51期 | |
利益剰余金 | 131億9千6百万円 | 150億6千3百万円 | 156億6千2百万円 | 160億8千4百万円 | 173億1千2百万円 | 182億9千0百万円 | |
会計年度 | 2018年9月期 | 2019年9月期 | 2020年9月期 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | |
資産 | 流動資産 | 192億2千2百万円 | 214億7千9百万円 | 170億5千5百万円 | 146億2千4百万円 | 144億3千7百万円 | 220億0千4百万円 |
固定資産 | 515億7千3百万円 | 523億0千7百万円 | 576億6千8百万円 | 606億0千6百万円 | 607億4千2百万円 | 525億8千6百万円 | |
有形固定資産 | 273億4千3百万円 | 282億8千3百万円 | 328億7千9百万円 | 332億6千3百万円 | 341億5千4百万円 | 358億2千5百万円 | |
無形固定資産 | 2億2千3百万円 | 1億9千0百万円 | 1億5千0百万円 | 1億1千7百万円 | 1億7千7百万円 | 1億6千1百万円 | |
投資その他の資産 | 240億0千6百万円 | 238億3千4百万円 | 246億3千8百万円 | 272億2千5百万円 | 264億1千1百万円 | 166億0千0百万円 | |
繰延資産 | |||||||
資産合計 | 707億9千4百万円 | 737億8千6百万円 | 747億2千3百万円 | 752億3千0百万円 | 751億7千9百万円 | 745億8千9百万円 | |
負債 | 流動負債 | 61億4千6百万円 | 61億5千9百万円 | 48億8千8百万円 | 47億0千3百万円 | 47億7千1百万円 | 46億8千4百万円 |
役員賞与引当金 | |||||||
賞与引当金 | |||||||
その他 | |||||||
固定負債 | 513億5千2百万円 | 524億6千3百万円 | 540億7千2百万円 | 543億4千3百万円 | 529億9千7百万円 | 515億1千5百万円 | |
退職給付引当金 | |||||||
雑収入復活引当金 | 12億3千2百万円 | 11億2千0百万円 | 10億5千6百万円 | 10億5千1百万円 | 10億8千7百万円 | 10億6千2百万円 | |
役員退職慰労引当金 | |||||||
その他 | |||||||
負債の部計 | 574億9千8百万円 | 586億2千3百万円 | 589億6千1百万円 | 590億4千6百万円 | 577億6千8百万円 | 561億9千9百万円 | |
純資産 | 株主資本 | 132億9千6百万円 | 151億6千3百万円 | 157億6千2百万円 | 161億8千4百万円 | 174億1千2百万円 | 183億9千0百万円 |
資本金 | 1億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | |
資本余剰金 | |||||||
資本準備金 | |||||||
その他資本余剰金 | |||||||
利益剰余金 | 131億9千6百万円 | 150億6千3百万円 | 156億6千2百万円 | 160億8千4百万円 | 173億1千2百万円 | 182億9千0百万円 | |
利益準備金 | |||||||
特別償却準備金 | |||||||
その他利益剰余金 | 131億9千6百万円 | 150億6千3百万円 | 156億6千2百万円 | 160億8千4百万円 | 173億1千2百万円 | 182億9千0百万円 | |
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
(うち当期純損失) | |||||||
新株予約権 | |||||||
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
純資産の部計 | 132億9千6百万円 | 151億6千3百万円 | 157億6千2百万円 | 161億8千4百万円 | 174億1千2百万円 | 183億9千0百万円 | |
負債・純資産合計 | 707億9千4百万円 | 737億8千6百万円 | 747億2千3百万円 | 752億3千0百万円 | 751億7千9百万円 | 745億8千9百万円 |
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である自己資本比率が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。
自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多い状況と考えられますので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適な自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
株式会社ごじょいるの自己資本比率は24.66%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産」の計算式で算出可能です。
株式会社ごじょいるの2022年9月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。
183億9千0百万円(純資産)÷ 745億8千9百万円(総資産)
上記の式から同社の自己資本比率は24.66%(前年比で1.5ポイント上昇)となりました。
ごじょいるの2023年9月期決算では、資産合計が前年同期にくらべて6億円ほど減少している一方、負債合計も16億円近く減少しており、自己資本比率の上昇につながったと考えられます。
株式会社ごじょいる 利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。
株式会社ごじょいるの場合は以下のように推移しております。
株式会社ごじょいるの過去3年間における利益剰余金は、以下のように推移しています。
- 2021年9月期:160億8千4百万円(前年同期比2.69%増)
- 2022年9月期:173億1千2百万円(前年同期比7.63%増)
- 2023年9月期:182億9千0百万円(前年同期比5.65%増)
同社の利益剰余金は新型コロナの影響下でも堅調に推移しており、現在のところ不安要素は見当たりません。
株式会社ごじょいるの損益計算書
損益計算書を確認することで、当該企業が「どれだけ売り上げ(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいの儲けが出たのか(=利益)」が一目で分かるものです。
特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益となります。
損益計算書
決算期 | 46期 | 47期 | 48期 | 49期 | 50期 | 51期 |
会計年度 | 2018年9月期 | 2019年9月期 | 2020年9月期 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 |
売上高 | 118億0千9百万円 | 131億5千1百万円 | 99億1千9百万円 | 94億5千6百万円 | 106億2千0百万円 | 124億2千0百万円 |
売上原価 | 38億2千2百万円 | 41億3千8百万円 | 31億8千2百万円 | 30億1千2百万円 | 31億0千4百万円 | 37億0千2百万円 |
売上総利益 | 79億8千7百万円 | 90億1千3百万円 | 67億3千7百万円 | 64億4千4百万円 | 75億1千6百万円 | 87億1千8百万円 |
販売費及び一般管理費 | 82億5千9百万円 | 76億3千9百万円 | 71億2千7百万円 | 67億2千6百万円 | 68億5千2百万円 | 74億7千3百万円 |
営業利益 | -2億7千2百万円 | 13億7千4百万円 | -3億8千9百万円 | -2億8千2百万円 | 6億6千4百万円 | 12億4千5百万円 |
営業外収益 | 12億6千5百万円 | 15億6千5百万円 | 12億3千1百万円 | 11億3千1百万円 | 12億0千2百万円 | 7億6千5百万円 |
営業外費用 | 6億6千3百万円 | 1億4千0百万円 | 5千7百万円 | 1億7千1百万円 | 1億2千7百万円 | 8千1百万円 |
経常利益 | 3億3千0百万円 | 27億9千9百万円 | 7億8千4百万円 | 6億7千8百万円 | 17億4千0百万円 | 19億2千8百万円 |
特別利益 | 1千2百万円 | 3千2百万円 | 1億1千1百万円 | 3千9百万円 | 4千9百万円 | 0百万円 |
特別損失 | 3億9千8百万円 | 1百万円 | 8千5百万円 | 2千1百万円 | 0百万円 | 4億7千4百万円 |
税引前当期純利益 | 5千5百万円 | 28億3千0百万円 | 8億1千0百万円 | 6億9千6百万円 | 17億8千9百万円 | 14億5千4百万円 |
法人税、住民税及び事業税 | 1億6千9百万円 | 10億1千8百万円 | 1億2千8百万円 | 2億9千6百万円 | 5億2千7百万円 | 4億5千6百万円 |
法人等調整額 | -1億9千4百万円 | -5千4百万円 | 8千2百万円 | -2千1百万円 | 3千4百万円 | 1千9百万円 |
当期純利益 | 3千1百万円 | 18億6千6百万円 | 6億0千0百万円 | 4億2千1百万円 | 12億2千8百万円 | 9億7千9百万円 |
ごじょいるの損益計算書を確認すると、重要ポイントである売上高・営業利益・経常利益・当期純利益のいずれについても、前年同期を大きく上回っています。
当期純利益は減少しましたが、これは営業外収益と特別利益が減少し、特別損失が増加したためと思われますので、中核事業は順調のようです。
売上金額の推移
株式会社ごじょいるの過去3年間の売上高は、以下のようになっています。
- 2021年9月期:94億5千6百万円(前年同期比4.67%減)
- 2022年9月期:106億2千万円(前年同期比12.31%増)
- 2023年9月期:124億2千0百万円(前年同期比16.95%像)
ごじょいるの売上高は、新型コロナの影響が最も大きかったとみられる、2020年9月期と2021年9月期に減少してしまいましたが、2022年9月期、2023年9月期と2期連続で大幅に増加しました。
新型コロナ発生前の2018年を上回り、過去6年間で2番目に高い数値となっています。
営業利益の推移
営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
ごじょいるでは、新型コロナの影響が最も大きかったと思われる2020年、2021年と営業損失が発生していましたが、2022年9月期では黒字に転じました。
2023年の営業利益は大きく伸び、2019年の水準近くまで回復しています。
事業活動による純粋な利益を表す営業利益率は「営業利益÷売上高」で求められますが、おおむね5%を超えると優良とされています
12億4千5百万円(営業利益) ÷124億2千万 円(売上高)
上記の式からごじょいるの営業利益率は10.02%となっています。
経常利益の推移
経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。
2023年の営業利益は大きく伸び、2019年の水準近くまで回復しています。
- 2021年9月期:6億7千8百万円(前年同期比13.52%減)
- 2022年9月期:17億4千万円(前年同期比156.64%増)
- 2023年9月期:9億2千8百万円(前年同期比10.80%増)
経常利益も営業利益同様に、2022年9月期には大きく回復し、2023年にはさらに増加していることがわかります。
ごじょいるでは、営業外でも毎年10億円ほど利益があることから、営業損失が発生した年も含め、過去6年間で一度も経常損失が発生していません。
株式会社ごじょいるまとめ
今回は株式会社ごじょいる(シティホール)の決算公告についてまとめました。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、ごじょいるも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
2023年9月期の決算では、コロナ禍前の水準近くまで戻りつつあります。
ごじょいるでは、消費者ニーズに合った家族葬ホールを次々とオープンさせており、今後の事業展開が注目されます。