死亡者数推移と死亡場所推移、関東・東海・関西における上場企業の葬儀会館数の推移と傾向

平成29年人口動態調査死亡数推移と予測

厚生労働省の人口動態総覧等より、死亡者数の推移や予測、都道府県別の死亡者数推移、死亡場所別死亡者数の推移を調査した。

また、数葬儀の取引件数が見込まれる死亡者数が多いエリアで葬儀会館を展開する上場葬儀企業の燦ホールディングス、平安レイサービス、ティア、ニチリョク、ライフアンド・デザイングループ(旧エルアンドイーホールディングス)の会館数と売上の相関、傾向等を調査した。

目次

死亡者数推移と予測

平成29年人口動態調査死亡数推移と予測

※2017年までは平成29年(2017)人口動態統計 人口動態総覧 死亡者数・出生者数推移より、2018年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)中位推計」より作成

平成29年(2017年)の死亡者数は約134万人となり、前年の平成28年(2016年)より7万人増加。今後、2040年には約167万人のピークを迎えると予測されている。

平成27年(2015)~平成29年(2017) 関東・東海・関西の死亡者数推移

東名阪死亡者数推移

※平成27年(2015年)~平成29年(2017年)人口動態総覧 第3表-1 都道府県(21大都市再掲)別より抜粋して作成

平成27年(2015年)~平成29年(2017年)の関東・東海・関西の各都道府県の死亡者数も増加している。

平成29年(2017年)は東京都が最も多く11万6451名、大阪府が8万7082名、神奈川県8万352名、愛知県が6万7177名、埼玉県6万5764名、千葉5万9009名、兵庫県が5万6584名と続いている。

死亡場所別 死亡数の推移

平成29年人口動態調査死亡場所推移

注:1)平成2年までは、老人ホームでの死亡は自宅又はその他に含まれている。
※平成29年(2017年)人口動態統計(確定)第5表 死亡の場所別にみた死亡数・構成割合の年次推移より作成

死亡場所は病院が最も多く、平成29年(2017年)は97万8260名。次いで老人ホームが9万9910名、介護老人保健施設が3万3105名となっている。

上場企業の会館分布エリア、新規会館数と売上推移の相関

関東・東海・関西エリアに展開する5社の会館分布エリアと会館数

上場5社会館分布と会館数

※平安レイサービス、燦ホールディングス、ニチリョクは2018年3月期の有価証券報告書、ティアは2018年9月期の有価証券報告書、ライフアンド・デザイングループは2019年3月25日時点のHPより作成

死亡者数が多い東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県へ新規会館を出店していたのは、燦ホールディングス、ティア、平安レイサービスの3社。それぞれ売上推移を伸ばしている。

燦ホールディングス 関西を地盤に関東への進出も進める公益社が2016年度3月期から3期で新規6会館(大阪2、東京2、兵庫2)開設、売上高約11億円増。

5社の中で63会館と最も多く会館を有する燦ホールディングスは、2016年度3月期~2018年度3月期の3期において、葬祭事業のセグメント売上高合計は、2016年度3月期の181億81百万円から2018年度3月期は約197億7万円へと約11億円売上を伸ばしている。

そのうち、公益社の売上が2018年度3月期は166億7百万円を占めており、この3期で新規6会館を開設。大阪府に2会館、東京都に2会館、兵庫県に2会館展開している。

東海で自社直営57会館を展開するティア。2016年度3月期から3期で新規10会館(愛知6、東京4)出店、売上高約17億円増。

2016年度9月期~2018年度9月期で、愛知県に新規6会館、東京に新規4会館を開設。地盤の愛知県と東京都への新規出店に力を入れている。2016年度9月期の葬祭事業のセグメント売上高102億17百万円から2018年度9月期は119億27百万円へと売上を17億円伸ばしている。

神奈川県を中心に33会館展開する平安レイサービス。2016年度3月期から3期で新規4会館(神奈川4)開設、売上高約4億円増。

2016年度3月期の葬祭事業のセグメント売上高80億円55百万円から2018年度3月期は84億69百万円と約4億円伸ばしている。

 

ニチリョクは新規会館の開設は行っていなかったが、東京都と神奈川県に5会館を運営。直葬を併設した独自ブランドのラステルがメディアに取り上げられ、2018年度3月期は葬祭事業のセグメント売上高を16億77百万円と前年度より約1億75百万円伸ばしている。

ライフアンド・デザイングループ(旧エルアンドイーホールディングス)は葬儀事業とコンサルティング事業の各セグメント売上高が不明のため、葬儀事業の売上高は不明。

介護事業を展開する関東・東海・関西の上場葬儀会社

死亡場所別 死亡数の推移では、老人ホームや老人保険施設が増えていたため、各5社のうち介護事業を展開するのは平安レイサービスとライフアンド・デザイングループの2社であった。

平安レイサービスの子会社であるへいあんは、互助会事業と介護事業を運営している。

へいあんは、昭和62年(1987年)に互助会加入者向けに開始した家事援助事業を基盤に、介護事業を進めてきた。現在、神奈川県平塚市・藤沢市・茅ヶ崎市・小田原市に在宅介護サービスの営業所を4拠点、グループホーム6拠点、デイサービス3拠点、高齢者賃貸マンション2拠点を展開している。 介護事業の利用者や被介護者等の親族に葬祭施行のニーズが発生した場合は葬祭事業へ斡旋を行うなど、事業間で連携している。

ライフアンド・デザイングループ(旧エルアンドイーホールディングスが平成31年(2019年)1月31日に葬儀事業と訪問看護事業を運営するセレサの子会社化を発表。

ライフアンド・デザイングループは、京都府・滋賀県を中心に自社葬儀会館を31会館体制で運営する洛王セレモニー、神奈川県川崎市・横浜市で11会館を運営する神奈川こすもす、兵庫県丹波市・神戸市・三田市で8会館を運営するルミーナを子会社におき、各社の経営指導等を行っている。 セレサは大阪府八尾市・枚方市・堺市で自社葬儀会館を3会館体制で運営。1日1組で貸切可能な家族葬など、小規模葬儀を中心とした葬儀事業を運営している。平野区の社屋で訪問看護事業も運営している。

平成31年(2019年)4月1日より、ライフアンド・デザイングループ(旧エルアンドイーホールディングス)は、セレサの葬儀事業を洛王セレモニーへ吸収分割により継承する。

グループ内での葬儀事業の事業統合を行い、ノウハウや技術の共有、販売力やサービス提供力の強化、オペレーションの効率化、管理コストの低減、ドミナント効果によるブランド力の向上など、グループ間のシナジー拡大による事業効率化・高収益化を目的としている。 セレサは訪問看護・訪問介護業に専門特化して運営を行うことになる。 ライフアンド・デザイングループは、セレサの子会社化、事業継承により、これまでの葬儀サービス提供と葬儀社向け経営コンサルティング、事業支援事業に加え、訪問看護・訪問介護事業も合わせて行うことで、企業価値の向上を図る。

まとめ

■死亡者数の多い東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、兵庫県に新規葬儀会館を開設する上場葬儀会社が増加し、売上を伸ばしている。

■死亡場所にみた死亡数推移は病院のほかは、老人ホームや介護老人保健施設が増加している。 

■介護事業に力を入れる上場葬儀会社やM&Aで訪問看護・介護事業も運営する葬儀会社を子会社化する動きがある。

出典:燦ホールディングス、平安レイサービス、ティア、ニチリョク、ライフアンド・デザイングループ(旧エルアンドイーホールディングス)のIR情報より

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