葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社 東上セレモサービスの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 東上セレモサービスの概要
「株式会社 東上セレモサービス」は埼玉県新座市に本社を構え、埼玉県内を中心に冠婚葬祭サービス事業を展開しています。
1967年6月に「東上新生活互助会」として設立され、1997年4月の本社移転と共に現社名に変更されました。
婚礼・宴会事業は埼玉県新座市のウェディング&パーティースペース「ベルセゾン」を中心に行っているようです。
また葬祭事業では、東武東上線や西武線エリアの10カ所に、直営セレモニーホールを設けています。
- 東上セレモニーホール新座
- 東上セレモニーホール志木
- 東上セレモニーホールみずほ台
- 東上セレモニーホールふじみ野
- 東上セレモニーホール川越
- 東上セレモニーホール坂戸
- 東上セレモニーホール所沢
- 東上セレモニーホール入間
- 東上セレモニーホール狭山
- 東上プライベートホール朝霞
さらに埼玉県・東京都の公営斎場や提携斎場でも、葬祭サービスを提供しています。
YouTubeチャンネルも解説しており、終活情報を中心に情報発信しているようです。
葬儀社の決算公告とは
決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は冠婚葬祭互助会を運営するケースが多いです。
冠婚葬祭互助会とは冠婚葬祭などの行事に備えるために毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。互助会の会員になることで葬儀や婚礼で割引などの優遇があります。
冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた事業者となります。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
東上セレモサービスの貸借対照表
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。
東上セレモサービスの自己資本比率は20.21%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
35億0千9百万円÷173億6千5百万円×100=20.21
東上セレモサービスの2022年3月期における自己資本比率は、20.21%(前年同期比0.47%増)となっています。
東上セレモサービスの資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。
・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど
・繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など
東上セレモサービスの資産合計の推移は以下のようになっています。
東上セレモサービスの2022年3月期における資産合計は、173億6千5百万円(前年同期比1.90%減)となっています。
2018年3月期以降、緩やかな増加を続けていた東上セレモサービスの資産合計ですが、2022年3月期には3億3千6百万円減少しています。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
・流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
・固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
東上セレモサービスの負債合計の推移は以下のようになっています。
東上セレモサービスの2022年3月期における負債合計は138億5千5百万円(前年同期比1.46%減)となっています。
資産合計・負債合計ともに減少した結果、自己資本比率も20%を上回っている状況です。
財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2021年6月期の時点で561.75%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払い能力について不安は感じられません。
東上セレモサービスの純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
東上セレモサービスの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。
東上セレモサービスの2022年3月期における純資産合計は、35億0千9百万円(前年同期比0.40%増)となっています。
新型コロナが発生した2020年以降ペースは落ちているものの、東上セレモサービスの純資産合計は増加を継続している状況です。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
東上セレモサービスの2022年3月期における当期純利益は1億4千2百万円(前年同期比91.90%増)となっています。
東上セレモサービスの当期純利益は2021年3月期に1億円を割り込んだものの、2022年3月期には再び増加に転じており、1億円台を回復している状況です。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
東上セレモサービスの場合は以下のように推移しております。
東上セレモサービスの2022年3月期における利益剰余金は、34億8千9百万円(前年同期比0.40%増)となっています。
東上セレモサービスの利益剰余金は、過去5年間にわたって一度も減少することなく増加を継続している状況です。
これは即ち、この期間において営業利益を出し続けていることを意味しており、東上セレモサービスの安定した経営状況がうかがえます。
株式会社 東上セレモサービスのまとめ
今回は株式会社 東上セレモサービスの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
新型コロナの影響による売上高の減少は避けられなかったようですが、財務状況の大幅な悪化には至っていない印象です。
2022年3月期には当期純利益も増加に転じており、貸借対照表をみる限り東上セレモサービスの経営状態は安定を保っていると考えられます。
しかし2022年8月時点では新型コロナの感染が再拡大しており、まだまだ日本経済の先行きは不透明な状況ですので、今後の東上セレモサービスの決算公告にも引き続き注目していきたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。より詳しい情報を知りたい方はお気軽にお問合せ下さい。
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