株式会社レクスト岐阜〜ルネス・愛昇殿〜┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

レクスト岐阜社岐阜愛昇殿の業績と利益-min

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社レクスト岐阜の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

レクスト岐阜の概要

株式会社レクスト岐阜は、岐阜県内で葬祭ホール10ヵ所とウエディングホール1か所を運営する冠葬祭互助会事業者で、アルファクラブグループに属する企業です。
2019年から2020年の期間に、社名が「株式会社岐裳会」から「株式会社レクスト岐阜」に変更されています。

さらに代表取締役も橘 永俊氏から、アルファクラブ東北 株式会社の代表取締役社長 神田 貢典氏と、株式会社レクスト代表取締役社長 金森 茂明の二人代表取締役に変わっているようです。

上記の点を念頭に入れておくと、貸借対照表を分析する上でのヒントになるかと思います。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

冠婚葬祭互助会の仕組み

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

レクスト岐阜の貸借対照表 

レクスト岐阜の貸借対照表-min

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

レクスト岐阜の自己資本比率

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
しかしレクスト岐阜の場合は、少なくとも過去5年間にわたって純資産がマイナスになっており、債務超過の状態が継続しています。

2020年以降、猛威をふるい続けている新型コロナウイルスは、日本経済に大きな爪痕を残しました。
中でも葬儀業界はもっとも影響が大きい業界の1つとされ、市場規模も15%前後縮小したといわれていますので、レクスト岐阜においても、新型コロナの影響は非常に大きかったと考えられます。

レクスト岐阜の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

レクスト岐阜の資産合計の推移は以下のようになっています。

レクスト岐阜_資産合計

レクスト岐阜の2022年7月期における資産合計は19億7千5百万円(前年同期比0.30%減)となっています。

レクスト岐阜の資産合計の推移をみると、2020年7月期に約12億円増加していますが、社名および代表取締役が変更された時期と重なっています。
株式会社 岐裳会が、アルファクラブグループ傘下に入った時期や経緯は情報が確認できないため不明ですが、2019年7月期から2020年7月期の期間にグループ入りしたと考えても不自然ではありません。

アルファクラブグループという後ろ盾を得たことで、新規の借り入れが可能になったと仮定すれば、債務超過の状態で12億円もの資金調達に成功したのも腑に落ちます。
もし2020年7月期における資産合計変動が新規借り入れによるものであれば、同時期に同規模の負債が発生しているはずですので、負債合計の推移を見てみましょう。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。

負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

レクスト岐阜の負債合計の推移は以下のようになっています。

レクスト岐阜_負債合計

レクスト岐阜の2022年7月期における負債合計は、25億6千8百万円(前年同期比5.20%増)となっています。

負債合計の推移をグラフで確認すると、レクスト岐阜の負債合計は2020年7月期に12億8千2百万円増加しています。
同時期に資産合計が約12億円増加していることから、2020年7月期に12億円前後の新規借り入れを行った可能性が高いでしょう。

レクスト岐阜の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
レクスト岐阜の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。

純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

レクスト岐阜_純資産合計

レクスト岐阜の純資産は2018年から債務超過の状態が継続しており、2021年7月期から2022年7月期にかけては、マイナス分が28.70%増加しています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

レクスト岐阜の場合は以下のように推移しております。

レクスト岐阜_利益剰余金

レクスト岐阜の利益剰余金は、少なくとも2018年7月期時点でマイナスとなっており、2022年7月期までマイナス分の金額も増え続けています。
とはいえ、貸借対照表を確認すると、当期純損失の額は前年同期にくらべて大幅に圧縮されています。

2023年5月には新型コロナも5類相当に移行し、葬儀業界も全般的に回復傾向にあるといわれていますので、レクスト岐阜の業績も2023年7月期には黒字転換している可能性もあります。

株式会社レクスト岐阜のまとめ

今回は株式会社レクスト岐阜の決算公告を参考に、現状分析を行いました。
貸借対照表とWeb上に公開された情報を組み合わせて分析することで、外部から見えない企業の内部状況を、ある程度まで把握できることがお判りいただけたかと存じます。

レクスト岐阜も、新型コロナ関連の行動規制による影響を受けたことは間違いありませんが、今回の決算公告分析からは回復の兆しも感じられました。

レクスト岐阜では、小規模斎場の一部を「小さなお葬式」名義の家族葬専門ホールとして運営を始めるなど、アルファクラブグループのネームバリューを活用した動きを活発化させています。
葬研では、今後もレクスト岐阜の動向に注目していきたいと思います。

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