葬儀業界において株式を上場している企業は想像以上に少なく、現在のところ7社のみです。
葬儀業界では中小規模の企業が多くを占めますので、上場のために必要な条件を満たすのが困難というのも、上場企業が少ない理由の1つといえるでしょう。
しかし葬儀業界では、株式上場に必要な条件を満たしているにもかかわらず、未上場の企業が少なくありません。
企業の株式上場に対して、一般の方が抱くイメージはポジティブなものが多いかもしれませんが、実際には求められる情報開示のレベルが非常に高いというデメリットもあります。
未上場の企業であれば、開示が義務付けられている決算資料は「貸借対照表」と「損益計算書」の2点ほどですが、上場企業に対してはより詳細な内部情報の開示が求められます。
上場企業では大きく分けて以下3種類の定期的な発表・公表が義務づけられています。
- 決算説明資料(1年に1回)
- 有価証券報告書(1年に1回)
- 決算短信(3ヶ月に1回) ※第●四半期など
上記のような資料は、普段はうかがい知ることの出来ない企業の内部事情が克明に記されているため、同業他社にとって参考になる情報も数多く掲載されています。
基本的には、株主への情報開示として公開を義務付けられているものですが、Web上にも公開されているものですので、実際には誰でも閲覧可能です。
そこで本記事では、2022年に出された決算期の公開資料より『葬儀・葬祭事業』のカテゴリ情報を抽出し、葬儀・葬祭事業運営の現状や今後について詳しく解説します。
上場葬儀社における直近の決算数字の推移
株式上場を果たしている葬祭事業7社の、売上・営業利益・経常利益の推移をグラフにまとめてみました。
今回紹介する7社の決算資料は、以下の通りです。
屋号 | 葬祭事業における屋号 | 発表日 | 回次 | 種類 |
平安レイサービス㈱ | 湘和会堂 | 2022年6月27日 | 53期 | 決算期 |
㈱サン・ライフHD | ファミリーホール | 2022年6月27日 | 4期 | 決算期 |
㈱ティア | ティア | 2022年11月11日 | 26期 | 決算期 |
燦HD㈱ | 公益社・葬仙・タルイ | 2022年6月27日 | 93期 | 決算期 |
㈱ニチリョク | ラステル | 2022年6月27日 | 56期 | 決算期 |
㈱きずなHD | ファミーユ | 2022年8月29日 | 5期 | 決算期 |
こころネット㈱ | たまのや | 2022年6月28日 | 56期 | 決算期 |
上場7社の売上
まず各社の売り上げですが、伸び率には差があるものの、軒並み前年同期を上回っている状況です。
2020年以降繰り返し発出された新型コロナ関連の行動制限が、2022年に入って徐々に緩和されていることも、各社の売り上げが伸長した要因の1つと考えられます。
とはいえ、異業種からの新規参入が相次いでいる状況下での売上増加ですので、さすがは上場企業といったところでしょうか。
上場7社の営業利益
つづいて営業利益についてですが、伸び率には差があるものの、こちらも全体的には増加傾向にあるようです。
2020年・2021年と、新型コロナの影響で収益状況が悪化した企業も多かった葬儀業界ですが、全体的に回復傾向にあると考えられます。
上場7社の経常利益
最後に経常利益ですが、売り上げ・営業利益の回復に伴い、全社とも増加しています。
規制緩和が進んだとはいえ、新型コロナの影響が残る状況下ですので、各社の経営努力がうかがえる結果といえるでしょう。
ここからは各社の詳細な事業内容について、決算資料をもとに紹介します。
平安レイ様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年4月1日~2022年3月31日)
- 売上高:76億9百万円(前年同期比+8.0%)
- 営業利益:10億7千万円(前年同期比+33.1%)
- 経常利益:12億9千8百万円(前年同期比+26.1%)
- 当期純利益:9億3千2百万円(前年同期比+32.1%)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 2021年11月:「湘和会堂片瀬鵠沼」を中小規模にも対応可能な葬祭施設に建て替え
- 2021年6月:貸切型小規模葬祭施設「湘和会館 田村」開業
- 2021年9月:「湘和礼殯館 真土」において貸切型の安置室「貴殯室」を新設
- 2021年12月:貸切型小規模葬祭施設「湘和会館 南湖」開業
ご遺族の想いを形にするべく、以下の各種オリジナル商品を提案
- 故人を生花で囲んで送る「花園」
- 想い出の品々で人柄を表現する「追悼壇」
- オブジェや装飾と生花を融合させた「追悼生花祭壇」
- あらゆる音楽ソースを忠実に再現する「オリジナル大型スピーカー」
今後について
2023年3月期の見通し
- 売上高:94億3千万円(前年同期比+5.1%)
- 営業利益:12億9千4百万円(前年同期比+5.0%)
- 経常利益:14億4千1百万円(前年同期比+5.5%)
- 当期純利益:9億4千2百万円(前年同期比+1.2%)
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- フランチャイズ(FC):1
- 直営:46
- 総数:47
- 葬儀施行(概算)
- 件数:6,773件
- 増減率:+2.2%
- 単価:112万3,431円
- 単価増減率:+0.3%
出典:2022年3月期 決算期決算短信
第53期 有価証券報告書
2022年3月期 決算資料
直近の動向
平安レイサービス様が2023年2月14日に発表した「2023年3月期 第3四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 葬祭事業の売上高:59億6千5百万円(前年同期比+8.3%)
- セグメント利益:15億2千2百万円(前年同期比+9.6%)
また役員人事については、発行済み株式の2.91%を所有する山田 朗弘氏が、2023年4月1日付で代表取締役専務取締役に就任しています。
サン・ライフHD様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年4月1日~2022年3月31日)
- 売上高:79億8千3百万円(前年同期比+5.3%)
- 営業利益:16億5千8百万円(前年同期比+10.6%)
- 経常利益:4億5千4百万円(前年同期比+85.3%)
- 当期純利益:4億6百万円(前年同期比+300.7%)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 2021年4月:一般葬、家族葬対応施設「サン・ライフ 小田急相模原駅前ファミリーホール」開設
- 2021年12月:は家族葬対応施設「ファミリーホール日野」開設
- 相談機会増加に向けた人材教育と相談体制の強化
- 認知度向上に向けイベントや広告を活用
今後に向けた動き
- 今後も戦略的・機動的な新規出店を継続
- オンラインとオフラインを融合させた広告・宣伝の実施
- 多様化するニーズに対応すべくブランド戦略を再構築
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- 直営:33
- 葬儀施行
- 件数:具体的な件数は記載されていませんが、前年同期より増加となっているようです。
直近の動向
サン・ライフHD様が2023年2月14日に発表した「2023年3月期 第3四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 葬祭事業の売上高:65億7千4百万円(前年同期比+12.8%)
- セグメント利益:13億7千1百万円(前年同期比+15.6%)
サン・ライフHD様では採用活動に力を入れているようで、InstagramやLINE公式アカウントを活用して、積極的な情報発信を開始しています。
ティア様 2022年9月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年10月1日~2022年9月30日)
- 売上高:128億5千8百万円(前年同期比+8.9%)
- 営業利益:10億5千7百万円(前年同期比+19.2%)
- 経常利益:10億4千8百万円(前年同期比+19.5%)
- 当期純利益:5億6千8百万円(前年同期比+4.8%)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 新規出店は直営 7店(FCから直営への切替 1店を含む)、FC3店の合計10店(リロケーションにより1店閉鎖)
- 期末会館数は140店(直営83・FC57)で前期末に比べ8店の純増
- ティアブランドによる葬儀件数は前期⽐ 11.8%増の 20,262件
- 「ティアの会」会員数は前期末⽐28,553⼈増加の 47万⼈
- ティアの会と同等のサービスが受けられる提携団体は、前期末⽐ 139団体増加の 1,269団体
今後について
- 直営・FC会館の計画的な出店と既存会館の持続的な成長
- 中核エリアのシェア向上にこだわった営業促進の実施とマーケティング力の向上
- 葬儀付帯業務の内製化拡大
- 行動力と分析能力を高めたM&A
- 計画に則した人材確保・育成と次世代基幹システムの構築
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- フランチャイズ(FC):57
- 直営:83
- 総数:140
- 葬儀施行
- 件数:14,189件
- 増減率:+12.6%
- 単価:81万3,000円
- 単価増減率:-2.9%
出典:2022年9⽉期 決算説明会配布資料
2022年9月期 決算参考資料
2022年9月期 決算短信
直近の動向
ティア様が2023年2月10日に発表した「2023年9月期 第1四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 葬祭事業の売上高:34億9千8百万円(前年同期比+8.1%)
- セグメント利益:6億4千2百万円(前年同期比+8.8%)
ティア様では、取締役・執行役員・監査役に対するインセンティブとして「譲渡制限付株式報酬制度」の導入と、それに伴う新株発行を決議しています。
譲渡制限付株式報酬制度は、優秀な人材の確保に有効とされている制度で、経済産業省でも中長期の企業価値向上に対応する役員報酬プランの1つとして、導入を促しているようです。
■譲渡制限付株式(RS)とは
出典:SMBC日興証券『譲渡制限付株式(RS)』
譲渡制限付株式(Restricted Stock、RS)とは、一定期間の譲渡(売却)が制限された株式のことで、欧米では、株式報酬スキームの一つとして普及しています。割当対象者にとって、株価低迷時にも株式の価値がゼロとなることはないため、インセンティブ効果が確保され、配当請求権・議決権も行使できるというメリットがあります。一方、発行会社にとっては一定期間の譲渡制限があることによって、割当対象者に対するリテンション効果(優秀な人材のつなぎ止め)が得られます。2016年度税制改正により、日本においてもRSの導入が増加し、現在は日本の株式報酬の主流となっています。
出典:ティア『譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行に関するお知らせ』
参照:経済産業省『「攻めの経営」を促す役員報酬』
燦HD様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年4月1日~2022年3月31日)
- 売上高:196億1千6百万円(前年同期比+6.1%)
- 公益社:166億1百万円(前年同期比+7.3%)
- 葬仙 : 13億6千7百万円(前年同期比+8.0%)
- タルイ: 16億4千8百万円(前年同期比ー5.8%)
- 営業利益:23億3千5百万円(前年同期比+72.8%)
- 経常利益:33億8千6百万円(前年同期比+33.5%)
- 当期純利益:20億4千0百万円(前年同期比+30.6%)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 公益社グループ
- 全葬儀施行件数は前期比9.1%増加
- コロナ関連葬儀・小規模葬儀の増加にともない葬儀施行単価は低下
- 大規模葬儀(金額5百万円超の葬儀)は、コロナ前の前々期比75%超の水準
- セグメント利益は19億6千3百万円(前年同期比99.1%増)
- 葬仙グループ
- 葬儀施行件数は前年同期比10.6%増加
- 葬儀施行収入は前年同期比9.0%の増収
- セグメント利益は7千5百万円(前年同期比97.4%増)
- タルイグループ
- 葬儀施行件数が前期比3.6%増加
- 葬儀施行単価が低下した結果、葬儀施行収入は前年同期比5.1%の減収
- セグメント利益は2億99百万円(前年同期比8.8%減)
今後について
- 葬儀会館の全国展開…M&Aなどを活用しながら3年間で31店舗の出店を目指す
- ライフエンディングサポート事業の拡大…2031年度には売上100億円を目指す
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- 直営:76
- 葬儀施行
- 件数:1万5,994件
- 増減率:+8.5%
- 単価:102万383円
- 単価増減率:ー2.0%
出典:2022年3月期 決算短信
第93期 有価証券報告書
93期 事業報告書
直近の動向
燦HD様が2023年2月14日に発表した「2023年3月期 第3四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 葬祭事業の売上高:154億2千3百万円(前年同期比+7.2%)
- セグメント利益:21億8千7百万円(前年同期比+27.0%)
燦HD様では、都内で6か所の火葬場を運営する東京博善の親会社である広済堂HDとの合弁事業「株式会社 グランセレモ東京」を、2022年4月に設立しています。
ニチリョク様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年6月1日~2022年5月31日)
- 売上高:14億6千7百万円(前年同期比+9.2%)
- 営業利益:5億1千7百万円(前年同期比+46.9%)
- 経常利益:1億8千4百万円(黒字転換)
- 当期純利益:1億2千9百万円(黒字転換)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 有料会員サービス「愛彩花倶楽部」の名称を「さくら倶楽部」に変更
- 有料会員サービスの内容を、葬儀だけでなく終活領域全般に拡大
- 顧客との接点拡大に向けて無料会員サービス「あおい倶楽部」を新設
- 受注件数は過去最高を記録
今後について
2023年3月期の業績見通し
- 売上高:35億円(前年同期比+17.5%)
- 営業利益:3億円(前年同期比+3.0%)
- 経常利益:2億円(前年同期比+8.6%)
- 当期純利益:2億6千万円(前年同期比+101.2%)
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- 直営:4
- ラステル新横浜:6式場
- ラステル久保山:2式場
- ラステル久保山別館:法要ホール
- セレハウス久保山:1式場
- 直営:4
- 葬儀施行
- 件数:具体的な葬儀施行件数は明記されていませんが、当期は過去最高を記録しているようです。
直近の動向
燦HD様が2023年2月10日に発表した「2023年3月期 第3四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 葬祭事業の売上高:12億3千4百万円(前年同期比+10.8%)
- セグメント利益:3億6千9百万円(前年同期比ー3.3%)
ニチリョク様では、2021年9月にインターネット関連事業を幅広く展開するサイブリッジグループ株式会社との業務提携契約を締結して以降、事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組んでいるようです。
出典:サイブリッジグループ株式会社『株式会社ニチリョクとの業務提携に関するお知らせ』
また2022年12月1日より「横浜市孤立予防対策事業」に参加し、横浜市内在住の単身高齢者を定期的に訪問するサービスも開始しています。
きずなHD様 2022年5月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年6月1日~2022年5月31日)
- 売上高:92億7千1百万円(前年同期比+15.4%)
- 営業利益:10億7千2百万円(前年同期比+46.2%)
- 経常利益:5億9千9百万円(前年同期比+66.6%)
- 当期純利益:9千3百万円(黒字転換)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 不特定多数との接触を最小限にとどめる「一日一組」の「家族葬」を提供
- 10ホールの新規出店
- オーダーメイド型葬儀の件数増加に注力
- オリジナルプラン件数は2,361件(前年同期比+17.5%)
- 施行葬儀全体においてオリジナルプランが占める割合22.0%
今後について
2023年5月期の計画数値
- 葬儀単価…80万7千円(前年同期比+0.8%)
- 売上高…102億円(前年同期比+10.0%)
- 営業利益…12億2千万円(前年同期比+13.8%)
- 20ホールの新規出店を計画
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- 直営:109
- 葬儀施行
- 件数:10,752件
- 増減率:+18.1%
- 単価:80万1千円
- 単価増減率:-2.1%
直近の動向
きずなHD様が2023年1月13日に発表した「2023年5月期 第2四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 売上高:47億7千5百万円(前年同期比+12.5%)
- 営業利益:4億5千6百万円(前年同期比+1.2%)
きずなHD様では、2022年6月1日~2022年11月30日の期間に9ホールを新規出店し、直営店舗は118となっています。
上記の新規出店には大阪府への初出店も含まれており、直営ホール展開エリアも10道府県に拡大したようです。
また、取締役3名に対するインセンティブとして「譲渡制限付株式報酬制度」の導入と、それに伴う新株発行を2022年9月15日に決議しています。
出典:2023年5月期 第2四半期決算短信
譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行に関するお知らせ
こころネットグループ様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容
決算数字(2021年4月1日~2022年3月31日)
- 売上高:50億3千4百万円(前年同期比+2.6%)
- 営業利益:2億9千8百万円(前年同期比+242.6.3%)
- 経常利益:3億41百万円(前年同期比+121.6%)
- 当期純利益:1億5千万円(黒字転換)
葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後
当期の振り返り
- 2021年10月「とわノイエ 会津」開業
- 2022年3月「とわノイエ 越戸」開業
- 新型コロナの影響による参列や会食の自粛が継続し、葬儀の小規模化及び低価格化が継続
- 祭壇生花やオプション品など、葬儀付帯商材の販売促進に注力
- 法事や仏壇・仏具の販売などアフターフォローを強化
今後について
2023年3月期中の、新型コロナの影響からの完全な脱却、および急激な業績回復は困難と予想しながらも、緩やかな回復基調を見込んでいるようです。
2023年3月期の業績予想
- 売上高:92億円(前年同期比+6.0%)
- 営業利益:4億6千5百万円(前年同期比+56.1%)
- 経常利益:5億3千万円(前年同期比+55.6%)
- 当期純利益:3億9千万円(前年同期比+197.7%)
現状の葬儀事業における数字
- 葬儀会館数
- 直営:30
- 葬儀施行
- 件数:5,204件
- 増減率:+3.7%
- 単価:96万7,525円
- 単価増減率:-1.1%
直近の動向
こころネットグループ様が2023年2月10日に発表した「2023年3月期 第3四半期決算短信」では、葬祭事業の売上高・利益ともに前年同期に比べ増加となっています。
- 葬祭事業の売上高:40億4千7百万円(前年同期比+10.7%)
- セグメント利益:4億5千万円(前年同期比+34.7%)
こころネットグループ様では、2022年7月に安置施設「とわノイエ黒岩」を、2022年12月に葬祭会館「こころ斎苑 飯坂 家族葬ホール」を新設しています。
さらに2022年10月には葬祭会館「こころ斎苑 きずな」を改装し、小規模葬儀ニーズへの対応を充実させているようです。
また、取締役4名・子会社取締役5名に対するインセンティブとして「譲渡制限付株式報酬制度」の導入と、それに伴う自己株式処分を2022年5月12日の取締役会にて決議しています。
出典:2023年3月期 第3四半期決算短信
譲渡制限付株式報酬制度の導入に関するお知らせ
まとめ
今回は上場葬儀社様が公開されている決算資料をもとに、葬儀施行状況や収益について紹介しました。
新型コロナの影響が残る状況下においても、全社が売上高・営業利益・経常利益の全てにおいて前年同期を上回っているあたりは、さすが上場企業といったところでしょうか。
直近の動向において目を引くのは、2022年に入ってから7社中3社が導入している「譲渡制限付株式報酬制度」です。
「譲渡制限付株式報酬制度」は、有能な人材の流出防止に効果的とされていますので、導入企業は今後も増加が予想されます。
上場企業ですら、優秀な人材確保に向けた取り組みを積極的におこなっている点を考えると、中小葬儀社様が人員確保に苦戦するのも無理はないでしょう。
葬儀の小規模化や葬儀ポータルサイトの台頭などの影響で、葬儀の現場で働く方の労働環境が悪化しているという声も聞かれますが、人材確保のためには早急な改善が求められます。
また2022年の決算期以降についても、今回紹介した7社では売上高・収益ともに上昇傾向にあるようで、次回の決算期でも増収増益が予想されます。
新型コロナは葬儀業界にも大きな影響を及ぼしましたが、上場企業ではコスト意識が向上するなど、一部に良い影響も与えたようです。
上場葬儀社様の決算報告資料や説明会資料には、実際に取り組んでいる施策や今後に向けた計画など、各社の動向が想像以上の詳細さで記載されています。
上場葬儀社様の決算報告資料や説明会資料は、業績改善のヒントとなる可能性もありますので、参考にしていただければ幸いです。