葬儀の在り方が大きく変化しつつある今、業界の“次の一手”を模索する場として、国内最大規模の専門展示会「フューネラルビジネスフェア2025」が2025年6月4日・5日の2日間にわたり、パシフィコ横浜で開催されました。
コロナ禍を経て、小規模化・多様化が進む葬儀の現場では、これまでの常識や慣習を見直す動きが加速しています。施設の設計やサービス内容、施行プラン、さらには顧客との関係構築まで、業界全体が“儀礼文化の継承とイノベーション”という課題と向き合っています。
こうした転換期にあって、本展示会は、最新の商材・設備の紹介や、実務に役立つ情報交換の場として高い注目を集めています。
そこで本記事では、当日の会場の様子や注目ブースの紹介、出展企業へのインタビュー内容を中心に、過去6年間の出展社数・来場者数の推移データも交えて、フェアの全容をお届けします。次代の葬祭ビジネスを展望する一助となれば幸いです。
フューネラルビジネスフェア2025|イベント概要
| 名 称 | フューネラルビジネスフェア2025 |
|---|---|
| 会 期 | 2025年6月4日(水)10:00〜17:00 2025年6月5日(木・友引)10:00〜16:30 |
| 会 場 | パシフィコ横浜 展示ホールC・D |
| 入場形式 | 限定招待制(入場無料・招待券配布) ※事業者を対象とした展示会です |
| 主 催 | 綜合ユニコム株式会社月刊フューネラルビジネス |
〇フューネラルビジネスフェア2025会場マップ

〇パシフィコ横浜 展示ホールC・Dまでのアクセス

フューネラルビジネスフェア2025|当日の様子
























フューネラルビジネスフェア2025|過去8年間の来場者数・出展社数の推移
直近8年間(2020年はコロナにより中止)における、フューネラルビジネスフェアの来場者数、および出展企業数・ブースコマ数の推移をまとめました。
第28回となったフューネラルビジネスフェア2025の来場者数は、1日目・2日目ともに前回を大きく上回る結果となりました。
新型コロナ発生前となる2018年・2019年の水準を大きく超え、過去8年間で最多の来場者数を記録していることからも、フューネラルビジネスフェアに対する注目度の高さがうかがえます。

2025年来場者数
- 6/4(水)晴れ:7,450人(対前年比107.0%)
- 6/5(木)晴れ:5,447人(対前年比107.5%)
- 総来場者数:12,897人(対前年比107.2%)

フューネラルビジネスフェア2025|出展企業インタビュー
フューネラルビジネスフェア2025の会場では、業界をリードする各企業が新たな製品や取り組みを発表し、来場者の注目を集めていました。
葬研では、変化する葬儀業界のニーズを捉え、革新的な商品やサービスを提供する複数の企業に焦点を当て、直接お話を伺いました。そこから見えてきたのは、故人やご遺族へのきめ細やかな配慮、業務効率化への追求、そして持続可能な葬儀のあり方を模索する、各社の熱い想いと具体的な取り組みです。
各社の取り組みからは、これからの葬送文化をかたちづくるヒントが見えてきそうです。
株式会社萩原|多様なニーズに応える葬祭用品とサービスの数々

株式会社萩原様は、今回のフューネラルビジネスフェアにおいて、多彩な商品を展示。そのなかでも特に注力しているのが、“個性あるお見送り”を実現するための各種アイテムです。以下、注目商品を中心にご紹介します。

和の心を宿す、エンディングドレス風仏衣「和華(わか)」
「和華(わか)」は、エンディングドレスのような華やかさの中に「和」の趣を取り入れた旅立ちの装い。エンディングドレスを希望される方が増えるなかで、価格の高さがネックになるケースも多く、和華はその点を考慮して、比較的リーズナブルに設定されています。
装飾用ストールが付属し、変化が表れやすい首元のカバーにも配慮されているほか、袖も含め全体的にゆったりとしたデザインで、体型を選ばず着付けも容易とのこと。ユニセックス仕様で、男性でも着用可能です。
仏衣と棺のコーディネート提案
より統一感のあるお見送りの演出として、仏衣と棺を同柄でコーディネートする提案も進めています。現在は、ピンクベースの「月見桜」と、緑ベースの「扇富士」の2パターンを展開。葬儀全体に調和をもたらす工夫が随所に込められています。


印象的なデザインの「睡蓮(すいれん)」シリーズ
フランス印象派の画家・クロード・モネの「睡蓮」に着想を得た棺も登場。多色のジャガード織りで、優雅かつ繊細な世界観を表現しています。カラーはブルー・ピンク・グリーンの3色展開。故人様のイメージや季節感に合わせて選べる点も魅力です。
会葬者が参加できるセレモニー用「フロートランプ」
水盤などに浮かべて使用する「フロートランプ」は、同社のレインボーオイルを注いで着火するタイプ。会葬者が手を添えて灯すことで、参列者参加型の演出ができると好評です。

シンプルかつ高級感ある「白の調べ」シリーズ



「やはり白を選びたい」という声に応えるのが、白を基調とした「白の調べ」シリーズ。棺だけでなく、骨箱・骨覆い・守り刀・写真額まで同シリーズで揃えることができます。棺にはシャーリング仕様の布団を付属し、見た目の温かさと軽量化を両立。骨箱の蓋も厚めに作られており、骨壺の出し入れがしやすいように設計されています。
葬儀情報を簡単に共有「おくやみ便」
新たなサービスとして注目されていたのが、葬儀情報シェアサービス「おくやみ便」。導入しやすい価格設定で、喪主様がスマートフォンひとつで葬儀情報を簡単に関係者へ共有できます。受け取った方は、そのまま供花や供物、弔電などを注文可能。販売機能が組み込まれているため、葬儀社様にとっても収益向上が期待できるサービスです。
株式会社萩原様では、今後も時代やニーズに合わせた多様な商品開発を進め、「お見送りの場にふさわしい装いと演出」を提案し続けていくとのことです。
大栄株式会社|仏衣から広がるトータルコーディネートを提案

仏衣の製造・販売で広く知られる大栄株式会社様は、今回のフューネラルビジネスフェアにおいて「今年の大栄は仏衣だけじゃない!」をテーマに、仏衣と同柄の棺掛けや骨壷覆いを組み合わせたトータルコーディネートを提案されていました。

従来、仏衣は故人様の旅立ちの装いとして選ばれるものでしたが、同社では、故人様らしさをより深く表現できるよう、仏衣の柄に合わせた棺掛け・骨壷覆いをセットにして展開。
仏衣に合わせて同柄の布を使った棺掛けを、ご安置中の布団にかけることで、通夜までの時間にも統一感を演出。さらに納棺後はそのまま棺掛けとして使用することで、ご安置から通夜・葬儀・告別式に至るまで、故人様の個性やお人柄を感じながら、最後の時間を過ごしていただける工夫がなされています。
また骨壷覆いを仏衣と揃えることで、納骨までの期間も故人様を身近に感じられることでしょう。
今回の展示では、四季の美しさを表現した「四季シリーズ」を中心に紹介されていましたが、同社ではスタンダードラインの「縁(えにし)」や、正絹に金糸で鶴の柄を織り込んだ高級仏衣「八千代鶴」においても、同様のコーディネート展開を進めており、今後は仏衣にとどまらず、関連商品のラインナップをさらに充実させていく方針とのことでした。



仏衣の老舗メーカーとしての信頼を軸に、「見送る空間」そのものを美しく整える提案へと展開を広げる大栄株式会社。その新たな取り組みには、多くの来場者が関心を寄せていました。
たつみ工業株式会社|災害時から日常利用まで「おくりこコンテナ」

たつみ工業株式会社様のブースでは、大規模災害時だけでなく、日常の葬儀業務においてもその有用性が期待されるコンテナタイプ遺体安置冷蔵庫「おくりこコンテナ」が展示されていました。今回出展されていた3.6mサイズのほか、6m、12mといった大型タイプも用意されており、いずれもトレーラーにそのまま積載して運搬可能な規格である点が大きな特徴です。



「おくりこコンテナ」は、200V電源に接続するだけで即座に利用開始でき、内部には断熱材が施されているため、真夏の屋外設置でも庫内は5℃以下に保たれるとのこと。これにより、悪条件の中でもご遺体の適切な管理が可能です。
各自治体が事前に所有しておくことで、万が一の災害発生時にも迅速に遺体安置所を開設できるため、防災対策としての貢献も期待されます。
主に大規模災害時の仮設遺体安置所として考案された「おくりこコンテナ」ですが、火葬待機期間の長期化など、葬儀業者やご遺体搬送業者の一時的な遺体安置ニーズにも有効であると説明がありました。
さらに、葬祭ホール内に安置することが難しい傷みの進んだご遺体(孤独死など)の安置や、寺院からの問い合わせもあるなど、その用途は多岐にわたるとのことでした。
今回の展示では災害時の利用を想定した濃い緑色(オリーブ・ドラブ)に塗装されていましたが、用途に応じて色の選択もできるため、様々な環境に合わせたカスタマイズが可能です。
株式会社ハマネツ|赤ちゃん連れの参列も安心「mamaro solana」

株式会社ハマネツ様が出展していた「mamaro solana(ママロ ソラナ)」は、屋外に簡単に設置できる個室型のベビーケアルームです。キャスター付きで移動も容易なうえ、一般的な100V電源につなぐだけで即日利用が可能な手軽さが魅力です。
室内には、鍵付きで安心して利用できるプライバシー性の高い空間が用意されており、エアコンや換気扇、センサー付き照明を完備。ゆったりとしたソファとおむつ交換台も設置されており、授乳やおむつ替えなどのベビーケアが快適に行えます。一般的なサイズのベビーカーもそのまま持ち込むことができ、上のお子様と一緒に入室することも可能です。



近年では、小さなお子様連れで葬儀に参列されるご家族も増えてきましたが、建物内や控室に授乳スペースを確保するのが難しい葬祭ホールも少なくありません。こうした課題を解消する設備として、「mamaro solana」は大きな可能性を秘めています。
ご葬儀という非日常の空間では、赤ちゃんが敏感に反応し泣き出してしまう場面もありますが、そんな時でもお母さんがほっと一息つける場所として活躍が期待されます。参列者への配慮とサービス向上を図るツールとして、今後の導入が注目される製品です。
アルファクラブグループ|葬祭用品の内製化と新たな販路開拓で業界に貢献

アルファクラブグループ様のブースでは、同社が推進する葬祭用品(棺・仏衣・祭壇セットなど)の内製化、さらに社外への販売開始という、業界における新たな動きについてお話を伺いました。
これまで、葬祭用品の調達は各葬儀社様がメーカーや問屋に発注するのが一般的でしたが、アルファクラブグループ様では、ここに大きな変革をもたらそうとしています。
年間約7万件もの葬儀を施行する同グループでは、その圧倒的なスケールメリットを活かし、葬儀に不可欠な葬祭用品の内製化を進めることで、コスト削減を実現しているとのことです。


今後は、内製化した商品をグループ外の葬祭関連事業者にも販売することで、さらなるコストダウンを図るとともに、提携企業のコスト削減にも貢献するとのことです。
担当者様のお話によると、これらの内製化された商品は、もともとの販売価格が市場平均よりも安価に設定されている上、注文数が多ければ多いほど一点あたりの価格がさらに値下げされるという、非常に魅力的な価格体系を採用しているとのこと。
現在も、より多くの葬祭用品を内製化し、安価で提供できるよう、多種多様なアイテムの開発が進行中であり、今後のラインナップ拡充にも期待が高まります。
イワタ株式会社|新たなニーズに応える「軽寝台車」

今回、イワタ株式会社様のブースでは、今後のニーズ増加が期待される「軽寝台車(ご遺体搬送用)」に注目しました。
担当者様によると、この軽寝台車は、棺やストレッチャーを積載できるのはもちろん、運転者を含め2名が乗車可能な設計とのことです。
ご遺族様の同乗も可能ですが、主に葬儀社の従業員2名での搬送業務を想定しており、例えばご遺体の安置施設と葬儀式場が離れている場合など、葬儀社スタッフのみで迅速に搬送を行うケースに特に有効とのことでした。


軽自動車であることの最大の利点は、その取り回しの良さにあります。細い道での走行が容易で、女性ドライバーでも運転しやすい点は大きなメリットといえるでしょう。葬儀業界では女性の活躍が増えており、この点は現場のニーズにも合致しています。
また、病院の地下駐車場など、狭いご遺体搬出場所からの作業もスムーズに行えるため、作業効率の向上にも貢献します。
さらに、導入のハードルが低い点も大きな魅力です。一般的なワンボックスタイプの寝台車に必要な「緑ナンバー」が取得に3~5ヶ月かかることが多いのに対し、軽寝台車に必要な「黒ナンバー」は短期間での取得が可能で、取得条件も少ないとのこと。
加えて、購入費用は一般的な寝台車の半分ほどに抑えられ、税金も安くなるため、初期投資やランニングコストの面でも大きなメリットがあると説明いただきました。
まとめ~変化する葬儀業界を支えるイノベーションと温かい心遣い~
フューネラルビジネスフェア2025は、アフターコロナの新しい時代を迎えた葬儀業界の「今」と「これから」を鮮やかに描き出すイベントとなりました。小規模葬儀の定着や多様化するニーズに応えるため、それぞれの出展企業がどのような革新的な商品やサービスを開発し、提供しようとしているのか、その最前線を肌で感じることができました。
フューネラルビジネスフェア2025で得られた知見は、単なるビジネスの枠を超え、変化する社会の中で「儀礼文化の継承」と「新たな価値創造」をいかに両立していくかという、葬儀業界全体の問いに対する答えを示唆しています。
葬研では、今後も葬儀業界をはじめとしたライフエンディング市場の動きを注視し、皆様に有益な情報をお届けしてまいります。


