平安レイサービス株式会社、上場廃止へ|創業家による株式併合で非公開化を決定一般公開

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神奈川県を中心に葬祭・冠婚事業を展開する平安レイサービス株式会社(東証スタンダード、コード番号:2344)は、2026年2月10日、株式併合により上場廃止することを発表しました。
同社は2026年4月15日に臨時株主総会を開催し、承認を得た上で、5月8日に上場廃止となる予定です。

上場廃止後は、創業家である相馬秀行氏(代表取締役会長)、山田朗弘氏(代表取締役社長)らの一族と、山田氏が代表を務める小余綾弘産株式会社のみが株主として残り、一般の投資家は保有する株式をすべて手放すことになります。

目次

平安レイサービス上場廃止の仕組み

上場廃止の仕組み

今回の上場廃止は「株式併合」という手法で実施されます。株式併合とは、複数の株式を1つにまとめる手続きで、平安レイサービスの場合は「658,353株を1株にする」という極端な比率が設定されています。

この結果、創業家以外の株主が保有する株式数は、すべて1株に満たない端数となります。この端数分については、会社が買い取り、1株あたり1,500円の現金を株主に支払う計画です。
この価格は、2026年2月9日の株価968円に対して約55%のプレミアム(上乗せ額)が付いた水準となっています。

平安レイサービスが上場廃止に至った背景

上場廃止の背景

平安レイサービスは、神奈川県と東京都に54拠点の葬祭ホール・葬儀式場、2拠点の婚礼施設を有し、冠婚葬祭互助会事業や介護事業も手がけています。
2002年に株式を店頭登録して以来、20年以上にわたり上場企業として事業を展開してきました。

しかし、葬儀業界を取り巻く環境は大きく変化しています。創業家が指摘する主な課題は以下の通りです。

葬祭事業の構造変化

  • 核家族化やコロナ禍を契機とした葬儀の小規模化・簡素化の進行
  • インターネット上での価格比較が容易になり、低価格化が加速
  • 他業種からの参入やネット仲介業者の台頭により競争が激化
  • 業界全体でM&Aによる再編が加速する可能性

冠婚事業の市場縮小

  • 少子高齢化による婚姻届出組数の減少と未婚率の上昇
  • 挙式をしない「ナシ婚」の増加
  • コロナ禍後も市場は完全には回復していない

平安レイサービスが非公開化で目指す施策

変革のテーマ

創業家は、これらの課題に対応するため、上場を維持したままでは実行困難な、以下のような大胆な施策を計画しています。

  1. 新商品の拡充と周辺領域への進出
    故人や遺族の多様なニーズに応える高付加価値な新商品・サービスの開発に積極投資。生花関連、セレモニー商品、食料品関連など、既存事業の周辺領域にも進出し、収益機会を拡大します。
  2. ドミナント戦略による新規出店と施設改修
    東京都・神奈川県近郊でシェアが低い地域への新規出店を強化。既存の大型施設については、小規模から大規模まで対応できる「マルチフロア」施設への改修・建替えを推進します。
  3. 内製化・業務効率化によるコスト削減
    AI技術の活用やDX推進により、葬祭部門や調理部門の電子管理統制システムを拡充。太陽光発電設備の導入、厨房業務の機械化、備品・儀式用品の自社内製化などを進めます。

なぜ上場廃止が必要だったのか

上場廃止の必要性

これらの施策を実行するには、相当な先行投資が必要となり、一時的に収益やキャッシュフローが悪化する可能性があります。
上場企業の場合、短期的な業績悪化は株価下落を招き、一般株主の利益を損なう恐れがあります。

また、上場を維持するためには、情報開示や株主総会運営、内部統制など、相当なコストと人的負担がかかります。
創業家は、これらのコストを削減し、中長期的な視点で迅速かつ機動的な経営戦略を実行するには、非公開化が最適と判断しました。

手続きの公正性確保

公正性の担保

今回の上場廃止は、経営陣である創業家が主導する取引であるため、一般株主の利益を守るため、複数の公正性担保措置が講じられています。

  • 社外取締役・社外監査役で構成される特別委員会を設置し、取引条件の妥当性を審議
  • 独立した第三者機関(マクサス・コーポレートアドバイザリー)による株式価値算定を実施
  • 特別委員会が創業家と価格交渉を実施し、当初提案の1,100円から1,500円へ引き上げ
  • 独立した法律事務所(TMI総合法律事務所)から法的助言を取得

特別委員会は、最終的に「本株式併合の実施は一般株主にとって公正である」との答申を取締役会に提出しています。

今後のスケジュール

  • 2026年2月25日:臨時株主総会の基準日
  • 2026年4月15日:臨時株主総会開催、整理銘柄指定
  • 2026年5月8日:上場廃止
  • 2026年5月12日:株式併合の効力発生
  • 2026年8月中旬~下旬:株主への現金交付(予定)

おわりに~業界に及ぼす影響は~

平安レイサービスは、葬儀業界では数少ない上場企業の一つでした。今回の上場廃止は、葬儀業界における市場環境の厳しさと、上場企業として事業を継続することの難しさを示す事例といえるでしょう。

一方で、創業家による非公開化後は、短期的な業績にとらわれない中長期的な視点での投資や事業改革が可能になります。葬儀の小規模化への対応、新サービス開発、積極的な出店など、今後の同社の動向は、業界全体の方向性を占う上でも注目に値するでしょう。

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