葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
今回は株式会社ベルモニー(愛媛)の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 ベルモニー(愛媛)の概要
株式会社ベルモニー( 愛媛)は愛媛県松山市にあり、もともとは現在の株式会社ウェルズベルモニーグループに属していたようですが、2013年8月に離脱し、現在は別会社になっています。
代表取締役は武智 正晴氏が務め、葬祭事業のほか、冠婚事業や互助会事業、仏壇・墓石販売事業などもおこなっています。
【名称】 株式会社 ベルモニー(愛媛)
【設立】平成3年6月
【代表取締役】武智 正晴
【所在地】愛媛県松山市姫原3丁目4-13
【資本金】2,000万円
【公式HP】https://bellmony-west.jp/corporate/
【事業内容】・互助会事業(会員募集・会員管理)
・冠婚事業(結婚式・披露宴・パーティー・貸衣裳・仕出し・結婚式場運営)
・葬祭事業(葬祭・法要・生花・仏壇・墓石等販売・セレモニー会館運営)
・関連事業(輸入業務・一般貨物運送業)
・株式会社タイムレスプロパティーズ(愛媛県松山市)
株式会社ベルモニー(愛媛)は、おもに愛媛県、高知県を中心に事業展開をしており、葬儀会館は以下のとおりです。
・愛媛県/松山・中予エリア
葬儀会館:15会館
貸切ホール ベルモニー結:2会館
プライベートホール縁(ゆかり):3会館
法要会館:1会館
・愛媛県/東予エリア
葬儀会館:14会館
貸切ホール ベルモニー結:2会館
プライベートホール縁(ゆかり):3会館
法要会館:1会館
・高知県/高知エリア
葬儀会館:14会館
貸切ホール ベルモニー結:2会館
プライベートホール縁(ゆかり):2会館
法要会館:1会館
・高知県/幡多エリア
葬儀会館:5会館
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。
なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
ベルモニー(愛媛)の貸借対照表
ここからは、ベルモニー(愛媛)の貸借対照表について詳しく分析します。
各項目を確認することで、ベルモニー(愛媛)のおおまかな財政状況が把握可能です。
決算期 | 28期 | 29期 | 30期 | 31期 | 32期 | 33期 | |
会計年度 | 2018年7月期 | 2019年7月期 | 2020年7月期 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | |
利益剰余金 | 49億8千4百万円 | 58億3千1百万円 | 63億2千9百万円 | 68億9千4百万円 | 82億5千7百万円 | 95億2千0百万円 | |
資 産 の 部 | 流動資産 | 78億4千0百万円 | 85億9千5百万円 | 87億9千8百万円 | 98億9千2百万円 | 113億6千7百万円 | 123億5千2百万円 |
固定資産 | 157億0千2百万円 | 160億3千1百万円 | 163億5千0百万円 | 161億6千9百万円 | 161億1千3百万円 | 167億1千7百万円 | |
有形固定資産 | |||||||
無形固定資産 | |||||||
投資その他の資産 | |||||||
繰延資産 | |||||||
資産合計 | 235億4千2百万円 | 246億2千6百万円 | 251億4千8百万円 | 260億6千1百万円 | 274億8千0百万円 | 290億6千9百万円 | |
負 債 の 部 | 流動負債 | 24億7千7百万円 | 23億0千8百万円 | 20億1千9百万円 | 22億8千9百万円 | 23億9千1百万円 | 27億1千6百万円 |
役員賞与引当金 | |||||||
賞与引当金 | |||||||
その他 | |||||||
固定負債 | 160億6千0百万円 | 164億6千7百万円 | 167億7千9百万円 | 168億5千8百万円 | 168億1千2百万円 | 168億1千3百万円 | |
退職給付引当金 | |||||||
雑収入復活引当金 | 6千5百万円 | 5千1百万円 | 5千1百万円 | 28百万円 | 2千8百万円 | 4千0百万円 | |
役員退職慰労引当金 | |||||||
その他 | |||||||
負債の部計 | 185億3千7百万円 | 187億7千5百万円 | 187億9千9百万円 | 191億4千7百万円 | 192億0千3百万円 | 195億2千9百万円 | |
純 資 産 の 部 | 株主資本 | 50億0千4百万円 | 58億5千1百万円 | 63億4千9百万円 | 69億1千4百万円 | 82億7千7百万円 | 95億4千0百万円 |
資本金 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | |
資本余剰金 | |||||||
資本準備金 | |||||||
その他資本余剰金 | |||||||
利益剰余金 | 49億8千4百万円 | 58億3千1百万円 | 63億2千9百万円 | 68億9千4百万円 | 82億5千7百万円 | 95億2千0百万円 | |
利益準備金 | |||||||
特別償却準備金 | |||||||
その他利益剰余金 | 49億8千4百万円 | 58億3千1百万円 | 63億2千9百万円 | 68億9千4百万円 | 82億5千7百万円 | 95億2千0百万円 | |
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
(うち当期純利益) | 9億1千1百万円 | 8億4千7百万円 | 4億9千9百万円 | 5億6千5百万円 | 13億6千3百万円 | 12億6千3百万円 | |
新株予約権 | |||||||
自己資本 | |||||||
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
純資産の部計 | 50億0千4百万円 | 58億5千1百万円 | 63億4千9百万円 | 691千4百万円 | 82億7千7百万円 | 95億4千0百万円 | |
負債・純資産合計 | 235億4千2百万円 | 246億2千6百万円 | 251億4千8百万円 | 260億6千1百万円 | 274億8千0百万円 | 290億6千9百万円 |
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある
ベルモニー(愛媛)の自己資本比率は32.82%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
95億4千0百万円÷290億6千9百万円×100=32.82%
ベルモニー(愛媛)の2023年における自己資本比率は、32.82%(前年同期比2.77%増)となっています。
ベルモニー(愛媛)の資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借入額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。
・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど
・繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など
ベルモニー(愛媛)の資産合計の推移は以下のようになっています。
ベルモニー(愛媛)の2023年における資産合計は、290億6千9百万円(前年同期比は5.78%増)となっています。
2018年から見ても毎年少しずつ増え、2020年から2022年のコロナ禍のなかでも増加しており、2023年には過去5年間で最も多くなっています。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
・流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
・固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
ベルモニー(愛媛)の負債合計の推移は以下のようになっています。
ベルモニー(愛媛)の2023年における負債合計は、195億2千9百万円(前年同期1.70%増)となっており、2018年以降小幅な増加が続いていました。
また2018年の流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、316.5%(安全ラインは100%以上)で短期的な支払いに不安は感じられませんでしたが、2023年の時点では454.8%となって流動資産も大幅に増加しており、順調に推移しているといえるでしょう。
ベルモニー(愛媛)の純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
メモワールグループの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、上場企業であれば東証上場の廃止基準に抵触することもある重要な数値となります。
ベルモニー(愛媛)の純資産合計は5期連続の増加となっており、2023年では95億4千0百万円(前年同期比15.26%増)となっています。
負債合計と純資産合計から割り出される2023年の負債比率(負債合計÷純資産合計×100)は204.7%で、負債比適正とされる300%以下となっています。
2018年と2019年は300%以上でしたが、2020年以降の負債比率は年々下がっており堅調に推移しているようです。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
ベルモニー(愛媛)の当期純利益の推移は以下のとおりです。
ベルモニー(愛媛)における2023年の当期純利益12億6千3百万円(前年同期比7.34%減)となっています。
ベルモニー(愛媛)の当期純利益は、新型コロナウイルスの影響を受けたためか2020年に大幅な減少となりましたが、2022年には大きく増加に転じています。
2023年は若干の減少となりましたが、新型コロナ発生前の水準を上回る数値となっています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。
ベルモニー(愛媛)の利益剰余金の推移は以下のとおりです。
ベルモニー(愛媛)の2023年における利益剰余金は、95億2千0百万円(前年同期比15.3%増)となっています。
過去5年間において順調に増加を続けており、財務上健全な状況といえそうです。
株式会社 ベルモニー(愛媛)のまとめ
本記事ではベルモニー(愛媛)の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
貸借対照表を分析した限りでは、ベルモニー(愛媛)の経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、ベルモニー(愛媛)も影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
ベルモニー(愛媛)では消費者ニーズに合わせて、毎年のように新しい葬祭会館や完全貸切家族葬会館をオープンさせています。
一部会館に省エネルギー設備を導入するなどSDGsに取り組んでいるほか、小学生の通学路確保のために会館敷地の一部を提供するなど、社会貢献活動にも注力しているようです。
また関連会社の株式会社タイムレスプロパティーズでは、不動産代理業・仲介業もおこなうなど、今後も事業拡大が予想されます。