【上場企業】株式会社 ティア┃葬儀社の売上・業績・利益をまとめて分析

ティア

葬祭サービスを提供する企業は日本全国に7,000社以上存在するといわれていますが、株式を公開している上場企業は7社(2024年7月29日現在)のみです。
潤沢な資金を保有する大手冠婚葬祭互助会や、全国的に事業を展開するような大手葬儀社であっても、そのほとんどは「非上場企業」のため、詳しい内部事情についての情報は開示されていません。

しかし上場企業では、株主や投資家に対して投資判断に資する情報を提供するために、業績や財務状況に関する詳細な情報を開示する義務を負っています。
インターネットが普及した現在では、上場企業の情報開示も自社ホームページ上でおこなわれているため、基本的には誰でも閲覧可能です。

上場葬儀社の決算資料には、葬儀業界に身を置く方にとって有益な情報が多数掲載されているため、できればすべて目を通しておきたいところです。
とはいえ葬儀の現場に立たれている方の多くは、日々の業務に邁進されているため、なかなか時間を取るのが難しいのが現状でしょう。

そこで本記事では、葬儀業界における上場企業のうちの1社「株式会社 ティア」の業績や財務状況について、決算資料を参考に詳しく解説いたします。

目次

上場企業の決算とは

株式の上場には、資金調達が容易になる、社会的信頼性や知名度が向上するなどのメリットがある反面、業績や財務状況などの内部情報について詳細に開示する義務が生じるなど、デメリットも少なくありません。

上場企業と非上場企業の決算に関する主な違いについて、以下にまとめました。

項目上場企業非上場企業
情報開示厳格な情報開示義務あり比較的緩やかな情報開示
決算発表四半期ごとに決算発表年1回または年2回の決算発表
監査会計監査人(公認会計士・監査法人)による監査が義務付けられている会計監査人の監査が不要なケースも多い
会社法上の大会社(資本額が5億円以上または期末の負債額が200億円以上の株式会社)は、会計監査人による監査が義務付けられている

非上場企業の場合、決算資料として貸借対照表(資本額が5億円以上または期末の負債額が200億円以上の大会社は、貸借対照表および損益計算書)を、定時株主総会(毎事業年度の終了後)の終結後遅滞なく公告するよう会社法で定められています。

しかし上場企業では毎事業年度の終了後だけでなく、四半期(3か月)ごとに決算をおこない、その結果を発表する必要があるため、主に以下の決算資料を開示します。

  • 有価証券報告書(年1回:事業年度終了後3カ月以内)
  • 半期報告書(年1回:半期経過後45 日以内)
  • 決算短信(年4回:四半期決算後45日以内)

以前は上記のほかに「四半期報告書(年4回:四半期決算後45日以内)」の提出も義務付けられていましたが、2024年4月から廃止となりました。

有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは

有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)は、上場企業が投資家や株主に対して、企業の経営状況や財務情報を詳しく報告するための書類で、すべての上場企業に提出が義務付けられています。
有価証券報告書は、投資家に対して企業の現状と将来の見通しを、透明かつ正確に伝えることを目的に開示されます。

有価証券報告書には、主に以下のような情報が記載されます。

情報の種類具体的な内容
企業情報企業の概要、沿革、事業内容、主要な製品やサービスについての説明
経営方針・戦略経営陣のビジョンや中長期的な経営戦略、事業計画など
財務情報損益計算・貸借対照表・キャッシュフロー計算書などの財務諸表など
経営成績直近の業績や過去数年間の業績推移、セグメント別の業績など
リスク情報経営に影響を与える可能性のあるリスク要因についての説明、および対応策
役員報酬取締役や監査役の報酬に関する情報

決算短信(けっさんたんしん)とは

決算短信(けっさんたんしん)は、上場企業が四半期ごとに業績を迅速に報告するための書類です。
決算短信は、株主や投資家などに対して企業の最新の業績情報をタイムリーに提供し、適切な投資判断を支援することを目的に開示されます。

決算短信は速報性が重視されるため、通常は有価証券報告書にくらべ、簡潔かつ要約された形式で提供されます。

決算短信には、主に以下のような情報が記載されます。

  1. 経営成績の概要:売上高、営業利益、経常利益、当期純利益などの主要な財務指標が記載されます。これにより、企業の業績の概要を迅速に把握することができます。
  2. セグメント情報:企業の主要な事業部門ごとの業績が報告されます。これにより、どの部門が収益を上げているか、または損失を出しているかを確認できます。
  3. 財務状況の概要:貸借対照表の主要な項目(資産、負債、純資産)やキャッシュフローの状況が簡潔に示されます。
  4. 業績予想:企業が将来の業績見通しを示す場合もあります。これは、投資家が企業の将来性を評価する際の重要な参考情報となります。

四半期報告書の廃止について

2023年11月20日に成立した金融商品取引法等の一部を改正する法律により、これまで上場企業に提出が義務付けられていた「四半期報告書」が廃止されました。
この改正は、企業の報告負担の軽減と経営の柔軟性向上を目的としています。

四半期報告書は、上場企業が3か月ごとに業績を報告するための書類ですが、四半期決算短信(以下「決算短信」)と内容も類似していることにくわえ、作成時期も重なっていることから、企業における業務負担の大きさが課題となっていました。
また、短期的な業績に焦点が当たりすぎることで、長期的な経営戦略の妨げになるという批判もありました。

そこで今回の法改正では、3か月ごとの情報開示を決算短信に1本化するとともに、これまでの四半期報告書にくらべて閲覧期間が長く(3年から5年に延長)設定された「半期報告書」の提出が新たに義務付けることで、上記のような課題の解消が図られています。

株式会社 ティアの概要

tear-kessan

株式会社 ティアは、愛知県名古屋市に本社を置き、中部、関東、関西を中心に、葬祭事業とフランチャイズ事業を展開しています。

1997年に「株式会社 ティア」が設立され、2004年にはフランチャイズ事業を開始し、2006年に名古屋証券取引所へ上場しました。

近年では、2023年11月に「株式会社 八光殿」(大阪府八尾市)および「株式会社 東海典礼」(愛知県豊川市)および関連会社をグループ化し、2024年8月現在では、グループ合計の葬儀会館数は200会館を超えているようです。
2024年には、宅地建物取引業の事業認可を受けて不動産事業を開始するなど、事業拡大を図っています。

株式会社 ティアは「葬儀会館 ティア」名義で葬儀会館を展開しているほか「葬儀相談サロン」事業もおこなっており、葬儀施行だけではなく葬儀後のアフターフォローや忌明け法要などにも対応しています。
同社独自の会員制度である「ティアの会」は、葬儀に関して多くの特典が受けられる制度です。

また同社は、直営葬儀会館「葬儀会館 ティア」を全国展開するため、異業種の企業とフランチャイズ契約を結んで、経営指導や葬儀付帯品の販売など、FC事業をおこなっています。
フランチャイズ加盟企業からは、加盟金とロイヤルティーがティアに支払われているようです。

ティアの各葬儀会館には、以下のような特徴があります。

近年は高まる家族葬ニーズに対応し、最も要望が多い20名~30名収容可能な広さの会館を次々とオープンしています。

2024年7月、岐阜県関市にFCホール「ティア 関」がオープンし、2024年8月には、埼玉県吉川市に直営ホール「ティア 吉川」をオープンさせる予定です。

商号株式会社 ティア
所在地愛知県名古屋市北区黒川本通三丁目35番地1
設立年月日1997年7月
代表者代表取締役社長 冨安 徳久
資本金18億9千2百万円(2024年3月末現在)
社員数850人(2024年3月末現在)
事業内容・葬儀施行全般や各種法要の請負
・葬儀施行後の遺族の相談内容に応じたアフターフォロー
・中部、関東、関西に直営、FCで葬儀会館を運営
・フランチャイズによる葬儀ビジネス参入提案とノウハウ提供
上場区分東京証券取引所 スタンダード市場
名古屋証券取引所 プレミア市場
公式ホームページhttps://www.tear.co.jp/

出典:株式会社 ティア 会社概要

ティアの貸借対照表

決算期22期23期24期25期26期27期
会計年度2018年9月期2019年9月期2020年9月期2021年9月期2022年9月期2023年9月期
利益剰余金49億8千3百万円55億6千1百万円55億4千8百万円56億4千3百万円41億2千1百万円44億6千1百万円



流動資産28億5千8百万円36億2千9百万円36億5千3百万円35億7千6百万円38億3千9百万円38億8千7百万円
固定資産91億0千0百万円96億7千1百万円98億1千4百万円99億6千3百万円103億2千7百万円114億8千9百万円
有形固定資産77億2千8百万円82億0千9百万円84億1千6百万円84億9千1百万円87億8千5百万円97億7千3百万円
無形固定資産1億1千4百万円9千5百万円5千0百万円5千9百万円6千3百万円1億5千7百万円
投資その他の資産
繰延資産1億5千8百万円2億8千1百万円3億1千4百万円3億8千5百万円4億9千8百万円5億0千1百万円
資産合計119億5千8百万円133億0千0百万円134億6千7百万円135億3千9百万円141億6千6百万円153億7千6百万円



流動負債24億3千2百万円21億0千7百万円26億5千6百万円24億8千6百万円42億5千0百万円47億4千0百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債25億4千0百万円22億5千3百万円18億8千4百万円20億2千9百万円24億1千5百万円27億5千6百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
(うち雑収入復活引当金)
負債の部計49億7千2百万円43億6千0百万円45億4千0百万円45億1千5百万円66億6千5百万円74億9千6百万円




株主資本69億8千4百万円89億4千0百万円89億2千8百万円90億2千2百万円75億0千0百万円78億7千9百万円
資本金11億8千4百万円18億7千2百万円18億7千3百万円18億7千3百万円18億7千3百万円18億9千2百万円
資本余剰金8億1千7百万円15億0千6百万円15億0千6百万円15億0千6百万円15億0千6百万円15億2千5百万円
資本準備金
その他資本余剰金
利益剰余金49億8千3百万円55億6千1百万円55億4千8百万円56億4千3百万円41億2千1百万円44億6千1百万円
利益準備金
特別償却準備金
その他利益剰余金
自己株式
その他有価証券評価差額金
(うち当期純損失)
新株予約権
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計69億8千4百万円89億3千9百万円89億2千7百万円90億2千2百万円75億0千0百万円78億7千8百万円
負債・純資産合計119億5千6百万円133億0千0百万円134億6千8百万円135億3千7百万円141億6千5百万円153億7千5百万円

貸借対照表は、企業の財政状態をスナップ写真のように捉えたもの。いわば、企業の「健康診断書」です。この診断書を読み解くことで、企業の安定性や成長性、さらにはリスクなどを評価することができます。

貸借対照表は資産・負債・純資産の3つの主要部分に分かれています。

資産は企業が所有するすべての価値あるものを示し、流動資産と固定資産に分類されます。流動資産には現金や売掛金、在庫などが含まれ、短期間で現金化できるものです。
一方、固定資産には土地や建物、機械設備など長期間使用されるものが含まれます。

次に、負債は企業が返済義務を負う全ての債務を示し、流動負債固定負債に分類されます。

  • 流動負債:1年以内に返済義務のある借入金や買掛金
  • 固定負債:1年以上の返済期間がある長期借入金など

最後に資本金・資本剰余金・利益剰余金などで構成される純資産は、資産から負債を差し引いたもので、企業の自己資本と考えられます。

■貸借対照表で重視すべきポイント

自己資本比率企業が自己資金でどれだけ経営しているかを示す指標です。この比率が高いほど、外部からの借入に頼らず、安定した経営を行っていると評価されます。
流動比率短期的な支払能力を示す指標です。手持ちの現金やすぐに現金化できる資産が、短期の借入金をどれだけカバーできるかを示します。流動比率は以下の計算式で算出できます。
「流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100​(単位%)」
利益剰余金過去に生み出した利益のうち、配当やその他の用途に回されずに残っているお金です。企業の内部留保を示し、将来の投資や債務返済に利用できる資金源となります。

ティアの自己資本比率は51.24

自己資本比率は、一般的に30%以上:安定企業・50%以上:優良企業・70%以上:超優良企業といわれているものの、企業規模や事業内容によって目安となる数値は異なります。
ちなみに、葬儀業界における自己資本比率の中央値は10.5%、黒字かつ自己資本プラス企業の平均は27.7%とされています。(参照:日本政策金融公庫『業種別経営指標』

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産(資産合計)×100」の計算式で算出可能です。
株式会社 ティアにおける2023年9月期の自己資本比率は、以下のように算出されました。

78億7千8百万円(純資産の部計)÷ 153億7千5百万円(資産合計)×100=51.24%

上記の式から同社の自己資本比率は51.24%(前年比で1.71ポイント減少)となりました。

ティアの利益剰余金

利益剰余金は、企業が過去の利益を蓄積したもので、企業の内部留保として再投資や事業拡大、設備投資、借入金の返済などに使われます。
利益剰余金は、企業が持続的な成長を図り、財務の安定性を高めるうえで、重要な役割を果たします。

ティアの2023年9月期における利益剰余金は、44億6千1百万円(前年同期比8.25%増加)となりました。
過去6年間におけるティアの利益剰余金の推移は、2021年までは順調に積み上げられており、2022年9月期に減少したものの、2023年9月期には増加に転じています。

ティアの損益計算書

会計年度2018年9月期2019年9月期2020年9月期2021年9月期2022年9月期2023年9月期
売上高123億1千1百万円127億7千9百万円119億1千9百万円122億0千3百万円132億8千3百万円140億6千8百万円
売上原価74億7千1百万円77億1千8百万円73億6千3百万円74億5千1百万円80億2千7百万円82億9千8百万円
売上総利益48億3千9百万円50億6千1百万円45億5千6百万円47億5千2百万円52億5千6百万円57億6千9百万円
販売費及び一般管理費35億1千6百万円39億0千5百万円39億6千0百万円38億6千4百万円41億9千8百万円46億3千4百万円
営業利益13億2千3百万円11億5千6百万円5億9千5百万円8億8千7百万円10億5千7百万円11億3千5百万円
営業外収益2千9百万円5千0百万円2千9百万円3千6百万円3千7百万円3千4百万円
営業外費用5千2百万円5千5百万円3千7百万円4千6百万円4千7百万円3千6百万円
経常利益13億0千0百万円11億5千1百万円5億8千7百万円8億7千7百万円10億4千8百万円11億3千2百万円
特別利益
特別損失
税引前当期純利益13億0千0百万円11億5千1百万円5億3千0百万円8億2千1百万円9億0千2百万円11億3千2百万円
法人税、住民税及び事業税4億5千2百万円3億7千7百万円2億1千8百万円3億4千9百万円4億1千4百万円3億4千6百万円
法人税等調整額-4千7百万円-1千7百万円-3千3百万円-7千0百万円-8千0百万円-3百万円
当期純利益8億9千6百万円7億9千1百万円3億4千5百万円5億4千2百万円5億6千8百万円7億8千9百万円

損益計算書は、企業の一定期間における収益と費用を対比し、最終的な利益または損失を明らかにする財務諸表です。いわば企業の「成績表」のようなものとなりますが、中でも特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益となります。

売上金額の推移

ティアの2023年9月期における売上高は、140億6千8百万円(前年同期比5.91%増加)となりました。
ティアの売上高は、新型コロナの影響を受けたとみられる2020年9月期に減少したものの、翌2021年以降は順調に回復しているようです。
2023年9月期には、新型コロナ発生前となる2019年9月期を上回り、過去6年間で最高額となっています。

なお、ティアにおける葬祭セグメントの売上高は、以下のように推移しています。

ティアの2023年9月期における葬祭セグメント業績は以下の通りです。

セグメント売上高:135億5千4百万円(前年同期比5.41%増加
セグメント利益 :23億3千1百万円(前年同期比12.47%増加

営業利益の推移

営業利益は、企業の本業から得られる利益を示す数値で、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。
企業の主たる事業の収益力を評価するうえで、重要な指標となる数値です。

ティアの2023年9月期における営業利益は11億3千5百万円(前年同期比7.38%増加)となりました。
ティアの営業利益は、2020年9月期に大幅に減少しましたが、翌2021年以降は順調に回復し、2023年9月期はコロナ禍前の、2019年9月期と同水準まで回復しています。

経常利益の推移

経常利益とは、企業の本業だけでなく、本業以外の活動からも得られた利益を合計したものです。
営業利益に、受取利息や配当金などの営業外収益を加え、支払利息や有価証券の売却損などの営業外費用を差し引いて計算されます。

本業だけでなく、投資活動や財務活動からも得られる利益を考慮することで、企業の安定的な収益力を評価することができます。

ティアの2023年9月期における経常利益は、11億3千2百万円(前年同期比8.02%増加)となりました。
ティアの経常利益もやはり営業利益と同様に、2020年9月期に大幅に減少したものの、2021年には一気に回復し、以降も順調に増加し続けています。

まとめ

本記事では、株式会社 ティアの決算資料(有価証券報告書決算短信決算説明)などを参考に、同社の業績や財務状況について解説いたしました。
上場企業である同社でも、新型コロナの影響は大きかったとみられますが、2021年以降は順調に回復しているようです。

ティアでは、同社が掲げる中長期ビジョンの一つである「会館数260店舗体制」の実現に向け、2023年に「東海典礼」と「八光殿」を子会社化し、事業規模拡大を図っています。
また「ティアの会」の会員数の拡大に向けて、会館でのイベントや営業活動をおこなってきました。

今期は新たにオープンした会館の葬儀件数や、祭壇売上、葬儀付帯品売上の単価が上昇し、売上高・営業利益ともに増加しました。
前年同期に比べてフランチャイズ会館が7店舗増加し、ロイヤリティ売上や物品販売が増加しています。
これらの結果から、前期より業績が向上したとしています。

株式を上場している葬祭関連企業の動向は、葬儀業界全体の今後にも、大きな影響を与える可能性が高いでしょう。
葬研では、今後もティアをはじめ上場企業の決算情報を注視したいと思います。


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