葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社 玉姫グループ 青森の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 玉姫グループ 青森の概要
株式会社 玉姫グループ 青森は、株式会社 江陽閣グループに所属し、青森県を営業エリアとする冠婚葬祭互助会事業者です。
玉姫グループ 青森は、青森市内で結婚式場2か所を運営し、同じ江陽閣グループの「株式会社 眞照堂」が青森県内(八戸市、青森市、弘前市、十和田市)で葬儀ホール14か所を運営しています。
玉姫グループ 青森は江陽閣グループ内で、おもに互助会事業を担っているようです。
玉姫グループ 青森の互助会営業部は、以下のとおりです。
- 青森営業部
- 弘前営業部
- 十和田営業部
- 五所川原営業部
- 三沢営業部
【名称】株式会社 玉姫グループ 青森
【代表取締役】中村 彰
【所在地】青森県青森市第二問屋町1丁目2-10
【公式サイト】https://tamahime-aomori.co.jp/
【事業内容】・結婚式場運営
・冠婚葬祭互助会事業
出典:株式会社 玉姫グループ 青森
葬儀社の決算公告とは
決算公告は、その会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。
以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。
互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみおこなえる事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は、割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を、次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき、互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は、以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
玉姫グループ 青森の貸借対照表
決算期 | 第38期 | 第39期 | 第40期 | 第41期 | 第42期 | 第43期 | |
会計年度 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
利益剰余金 | 4億9千4百万円 | 6億0千9百万円 | 7億2千3百万円 | 7億9千2百万円 | 8億2千2百万円 | 8億6千7百万円 | |
資 産 | 流動資産 | 63億4千0百万円 | 23億1千1百万円 | 26億8千4百万円 | 20億0千9百万円 | 19億1千2百万円 | 24億5千5百万円 |
固定資産 | 4億9千0百万円 | 47億2千0百万円 | 45億2千9百万円 | 52億8千4百万円 | 54億4千2百万円 | 49億6千6百万円 | |
有形固定資産 | |||||||
無形固定資産 | |||||||
投資その他の資産 | |||||||
繰延資産 | |||||||
資産合計 | 68億3千0百万円 | 70億3千1百万円 | 72億1千4百万円 | 72億9千2百万円 | 73億5千4百万円 | 74億2千0百万円 | |
負 債 | 流動負債 | 63億1千6百万円 | 5億3千1百万円 | 5億6千2百万円 | 4億9千3百万円 | 5億0千4百万円 | 5億4千6百万円 |
役員賞与引当金 | |||||||
賞与引当金 | |||||||
その他 | |||||||
固定負債 | 1百万円 | 58億7千1百万円 | 59億0千9百万円 | 59億8千7百万円 | 60億0千8百万円 | 59億8千8百万円 | |
退職給付引当金 | |||||||
雑収入復活引当金 | |||||||
役員退職慰労引当金 | |||||||
その他 | |||||||
負債の部計 | 63億1千7百万円 | 64億0千2百万円 | 64億7千0百万円 | 64億8千0百万円 | 65億1千2百万円 | 65億3千4百万円 | |
純 資 産 | 株主資本 | 5億1千4百万円 | 6億2千9百万円 | 7億4千3百万円 | 8億1千2百万円 | 8億4千2百万円 | 8億8千7百万円 |
資本金 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | 2千0百万円 | |
資本余剰金 | |||||||
資本準備金 | |||||||
その他資本余剰金 | |||||||
利益剰余金 | 4億9千4百万円 | 6億0千9百万円 | 7億2千3百万円 | 7億9千2百万円 | 8億2千2百万円 | 8億6千7百万円 | |
利益準備金 | |||||||
特別償却準備金 | |||||||
その他利益剰余金 | 4億9千4百万円 | 6億0千9百万円 | 7億2千3百万円 | 7億9千2百万円 | 8億2千2百万円 | 8億6千7百万円 | |
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
(うち当期純利益) | 6百万円 | 1億1千5百万円 | 1億1千5百万円 | 6千9百万円 | 3千0百万円 | 4千4百万円 | |
新株予約権 | |||||||
自己資本 | |||||||
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
純資産の部計 | 5億1千4百万円 | 6億2千9百万円 | 7億4千3百万円 | 8億1千2百万円 | 8億4千2百万円 | 8億8千7百万円 | |
負債・純資産合計 | 68億3千0百万円 | 70億3千1百万円 | 72億1千4百万円 | 72億9千2百万円 | 73億5千4百万円 | 74億2千0百万円 |
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は、経営状態は良いとは言えません。
自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は、最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある
玉姫グループ 青森の自己資本比率は11.95%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
玉姫グループ 青森の2023年3月期の自己資本比率を求める式は、下記のようになります。
8億8千7百万円 ÷ 74億2千0百万円=11.95 %
上記の式から同社の自己資本比率は、11.95%(前年比0.5%増)となりました。
玉姫グループ 青森の資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つで構成されています。
流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや、1年を超えて現金もしくは費用となる資産で、有形固定資産や無形固定資産がある
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど
繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や、社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに、資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など
玉姫グループ 青森の資産合計の推移は、以下のようになっています。
玉姫グループ 青森の2023年3月期の資産合計は、74億2千0百万円(前年同期比0.90%増)となりました。
2019年3月期からわずかずつですが増加し、2020年から2021年のコロナ禍の時期も減少することなく推移しています。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となる
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となるので、流動負債以外の負債は固定負債になる
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
玉姫グループ 青森の場合は、以下のようになっています。
玉姫グループ 青森の2023年3月期の負債合計は、65億3千4百万円(前年同期比0.34%増)となっています。
過去5年間の状況を見てみると、ほぼ横ばいで推移するなかで、わずかずつですが増加しています。
財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2023年3月期の時点で449.6%(安全ラインは100%以上)となっており、支払い能力についての不安は感じられません。
玉姫グループ 青森の純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することで、その会社の純資産を確認できます。
玉姫グループ 青森の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。
一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。
玉姫グループ 青森の2023年3月期の純資産合計は、8億8千7百万円(前年同期比5.34%増)となりました。
2018年から毎年増加し続けて、2023年3月期は前年より4千万円以上増加し、過去5年間で最高額となっています。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税、そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
玉姫グループ 青森の2023年3月期の当期純利益は、4千4百万円(前年同期比47.14%増)となっています。
2021年から新型コロナの影響を受けたとみられ、2021年3月期に大きく減少しましたが2022年には回復して、2023年3月期には前年より1千万円以上増加しました。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は、おそらく聞き馴染みのある単語だと思います。
利益剰余金は、貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。
玉姫グループ 青森の場合は、以下のように推移しております。
2023年3月期の玉姫グループ 青森の利益剰余金は、8億6千7百万円(前年同期比5.47%増)となりました。
コロナの影響を受けたとみられる2021年3月期からも、順調に利益を上げ続けて積み上げられ、2023年3月期には過去5年間で最高額となっています。
株式会社 玉姫グループ 青森のまとめ
今回は株式会社 玉姫グループ 青森の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
2020年から2021年にかけて、新型コロナの影響を受けて収益が下がった葬儀社も多いようですが、玉姫グループ 青森も例外ではなかったようです。
しかし影響は最小限にとどめられたようで、コロナ禍前より大きく減少はしましたが収益を上げていました。
地元青森で、江陽閣グループとして「人と人との和を大切に、地域に根付いた文化を守る」をモットーに、地道に冠婚葬祭互助会事業に取り組んできたためだと思われます。
玉姫グループ 青森の次期決算である、2024年3月期の決算公告にも注目したいと思います。