相続税基本のきVol.1 相続税ってどんな財産にかかるの?一般公開

相続 基本

葬儀業界に身を置く方々は、相続人となるご遺族様に一番最初に接することも多いことでしょう。そのため近年では、ご遺族様向けのアフターサービスとして、相続関連の相談に対応する葬儀社様も増えつつあるようです。

ご遺族様は、往々にして、ご葬儀後の相続手続きや税金について不安を抱えていらっしゃるものです。とりわけ相続税は、相続人共通の関心事です。

相続人の方々が抱える悩みに的確に対応するには、相続手続きや税金について基本的な知識を身に付けておく必要がありますが、日々の業務に追われて、ついつい後回しになっているという葬儀社様も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、葬儀社様が知っておきたい相続関連情報のうち、「相続すると相続税が課税される財産」について分かりやすく解説いたします。

皆様がよりよいサービスを提供するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

葬儀社なら知っておきたい相続税の基本解説

・Vol.1_相続税ってどんな財産にかかるの?(本記事)
Vol.2_相続税の相談は誰にすればよい?
Vol.3_相続税は誰が対象になるのか?
Vol.4_相続を放棄すれば相続税は支払わなくて良い?
Vol.5_相続税額をざっくり把握する方法は?
Vol.6_相続税を安くする方法はある?
Vol.7_遺産はどのように分割する?
Vol.8_相続税が払えない場合はどうする?
Vol.9_相続すると相続税以外の税金もかかる?
Vol.10_生活保護を受給していても相続できる?
Vol.11_単身者の相続はどうなる?
Vol.12_相続でよくあるトラブルとその対策は?
Vol.13_配偶者(夫・妻)が相続すると相続税がかからない?
Vol.14_相続が始まると銀行口座が凍結される?
Vol.15_相続手続きに必要な書類は?
Vol.16_相続と贈与の違いは?
Vol.17_相続税の税務調査とは?
Vol.18_相続税と葬儀費用・祭祀財産との関係は?
Vol.19_遺産は寄付できる?寄付先はどこ?
Vol.20_デジタル遺産の相続や管理は?

目次

相続税とは?0からわかる基本解説

お金と電卓

相続税(そうぞくぜい)は、誰かが亡くなったときに、その人が残した財産を家族や親族が受け継ぐ際に課される税金のことです。普段あまり意識することはないかもしれませんが、葬儀後の手続きや相続において重要なポイントとなります。また、相続税は支払うべき金額を相続人自身で計算して、支払わなければなりません。そのため、事業者の皆さまにおかれましては、 ご遺族様に適切なサポートを提供するためには、相続税の基本的な知識を持つことで、より良いサービスへ繋がっていくことでしょう。

1.そもそも相続って何? 法定相続人と相続人の違い、相続・遺贈・贈与の意味

相続とは、故人様が持っていた財産や権利を家族や親族が引き継ぐことです。財産には、次のようなものがあります。

  • 不動産:家や土地など
  • 金融資産:預金、株式、投資信託など
  • 動産:車や宝石などの価値ある物品
  • 負債:住宅ローンや借金など

財産といってもプラスのものだけでなく、借金などマイナスの財産も含まれます。

相続税はこれらの相続財産の価値(評価額)をもとに計算します。つまり、評価額が高い財産を相続するほど、相続税も高額になるイメージです。また、相続では一部のみ相続する・しない、といった選択はできないため、相続の際には財産の内容をしっかり確認するようアドバイスすると、信頼される良い関係性につながるでしょう。

続いて、用語の説明です。

法定相続人と相続人の違い

まず、「法定相続人」と「相続人」という言葉には微妙な違いがあります。

  • 法定相続人:民法で決められている相続をする権利を持つ人。主に配偶者や子ども、父母、兄弟姉妹などが該当します。
  • 相続人:実際に遺産を受け取る人。遺言書がある場合は法定相続人以外の人も相続人になり得ます。

例えば、親が亡くなり法定相続人が配偶者と2人の子どもだった場合、遺言書で「親友にも一部を渡す」と書いてあれば、その親友も相続人となります。


相続、遺贈(いぞう)、贈与の意味

次に、相続税に関わる「相続」「遺贈」「贈与」の違いを簡単に説明します。

相続
人が亡くなったときに、その人の財産を法定相続人が法律のルールに基づいて受け取ることです。遺言がなければ法律に沿って分けられます。
例:父親が亡くなり、自宅と預金を家族で分ける。

遺贈
遺言書に基づいて、法定相続人以外の人も含め、特定の人に財産を渡すことです。
例:おばあちゃんが遺言で「自宅を親戚のAさんに」と指定する。

贈与
亡くなる前に、生きている人から財産を受け取ることです。生前贈与として税金対策の一環として行われることもあります。
例:両親が生きているうちに土地を子どもに贈る。

違いのまとめ

項目説明財産を渡すタイミング
相続法律に基づいて財産を受け取る死亡後
遺贈遺言書に基づいて財産を受け取る死亡後
贈与生前に財産をもらう生前

次の章では、相続税が課税される財産の具体例や注意点について解説します。

相続税ってどんな財産にかかるの?分かりやすく解説!

相続

誰かが亡くなったとき、その人が持っていた財産を家族や親しい人が引き継ぎます。この引き継ぎのことを”相続”や”遺贈”と呼びます。そして、相続した財産がある一定額を超えると、”相続税”という税金を支払う必要が出てきます。

ここからは、具体的にどんな財産を受け取ると相続税がかかるのか、詳しく見ていきましょう。

相続税がかかる財産

1.現金や預金

まず、現金や預貯金は相続税の課税対象になります。

現金資産の相続の中でも、名義預金やタンス預金はご遺族様が迷いやすいポイントです。

名義預金とは、名義は故人様ではないものの、実質的に故人様のものと判断される預金のことです。例えば、親が子供名義の口座に長年貯金していた場合が該当します。

「口座の名義が故人様でなければ相続財産ではない」と考えてしまうかも知れませんが、税務署は誰が資産を管理し、誰が実質的に使用していたかで判断します。そのため、亡くなった夫の口座を専業主婦の妻が管理していたとしても同様に、相続税の課税対象になります。

タンス預金(自宅で保管されていた現金)は、銀行預金とは異なり把握しづらいため、申告を迷いやすい財産の一つです。

  • そもそもタンス預金があったことを知らないケースも多い
  • 亡くなる直前に口座から現金を引き出していた場合、相続財産とみなされる可能性がある

「タンス預金は相続税の対象外」と誤解している方もいるため、この部分の理解を深めておくと、ご遺族様からの質問や相談にも適切に対応できるでしょう。

2.不動産(家や土地)

故人様が住んでいた家や所有していた土地などの不動産も相続税の課税対象です。しかし不動産は現金や預金のように、評価額の計算が簡単ではありません。故人様が生前に購入したときの金額がそのまま評価額になるわけではないのです。不動産の評価額は、国税庁が定めた計算ルールにもとづいて算出する必要があります。

以下で、相続税の課税対象になる具体的な不動産の種類を解説していきます。

①持ち家(自宅)

故人様名義で故人様が生前住んでいた家は、相続税の課税対象です。

しかし、相続税が高額になることでご遺族様が自宅を手放さなければいけない状況になってしまうのは国にとっても本意ではありません。そのため、「小規模宅地等の特例」という、持ち家の価値を大幅に軽減できる制度が用意されています。

小規模宅地等の特例とは?
配偶者や同居していた親族が引き続き住む場合、土地の評価額を最大80%減額できる特例です。相続税の大幅な軽減につながります。ただし、生前の同居者がいない場合は制度の適用にいくつか条件があるため注意が必要です。

②貸家・アパート・マンション(賃貸物件)

故人様名義で、第三者に貸し出している不動産も、相続税の課税対象です。

賃貸に出していた不動産は、故人様が自ら利用していたものよりも評価額が低くなります。

よく「相続税対策にはアパートやマンションの購入が効果的だ」といわれるのはこれが理由です。ただし、空室が多いと評価減の効果が小さくなってしまうため、必ずしも相続税対策として有効に働くわけではなく、賃貸経営の状況が影響する点に注意が必要です。

③駐車場

駐車場の土地も相続税の課税対象です。

駐車場の場合、状態や使用用途、場所によって評価額が変わります。

  • 未舗装の駐車場:更地に近い評価となるので評価額が高くなる。
  • アスファルト舗装された駐車場:事業に使用していると判断され最大50%評価額が減額される。
  • 自宅の駐車場:自宅と隣接していれば、自宅の土地として扱われるため最大80%減額される。
④空き地・遊休地

使われていない土地も相続税の課税対象です。

「生活にも事業にも使っていないのだから、相続税はかからない」と勘違いしてしまいがちですが、使っていない土地はむしろ評価額が高くなりがちなのです。

使っていない土地の相続を検討しているご遺族様から相談を受けた場合には、相続税の課税対象になることをお話ししたり、自治体や専門家への相談を促したりすると親切でしょう。

田畑・山林

田畑・山林も相続税の課税対象です。

しかし、農地にそのまま課税してしまうと、相続税の負担が重くなって農地の相続が困難になり、結果として農業を続けることができなくなってしまいます。そこで設けられたのが「農地の納税猶予制度」です。この制度を利用すると、一定の条件を満たしている方が農地を相続する際に、相続税の支払いを猶予することができます。

3.有価証券(株式・投資信託など)

株式や債券、投資信託、暗号資産(仮想通貨)などの有価証券も相続税の課税対象です。

有価証券は故人様が購入した時の価値ではなく、亡くなった時の価値をもとに相続税が計算されます。そのため、亡くなった時に評価額が高い場合は、相続税の負担も大きくなることがあります。

近年、個人でも暗号資産の運用を行うケースが増えてきたため、ご遺族様の中には暗号資産の相続手続きについて不安を抱える方も多くいらっしゃいます。そのため、相続税の課税対象であることなどの基本情報をお伝えできると、ご遺族様の不安に寄り添い、信頼関係を築くことができるでしょう。

4.車や貴金属、宝石など

相続財産には車や貴金属、宝石などの動産も相続税の課税対象です。

車の評価額は相続時の「時価」で決まり、新車よりも中古車の評価額は低くなります。また、ローンが残っている場合はローンも相続の対象となり、ご遺族様がローンを引き継ぐことになります。金や宝石も同じく相続時の市場価格で決まりますが、宝石に鑑定書がある場合はその鑑定書が評価額の基準となります。

5.事業用資産

個人事業主が亡くなった際、後継者が引き継ぐ事業用資産も相続税の課税対象です。

しかし、2019年1月1日から2028年12月31日までの期間限定で適用される「個人版事業承継税制」を活用すると、事業用資産を全て引き継ぐ等の一定の条件を満たせば、相続税の納税が猶予され、最終的に免除される可能性があります。

この制度は、事業継続を支援する重要な制度です。事業用資産の相続税を猶予・免除できるメリットがありますが、事業を続けられなくなると猶予が打ち切られるリスクもあります。

6.負債(借金)も相続対象

意外かもしれませんが、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も相続の対象です。財産を相続するときには負債もセットで引き継ぐことになります。

ただし、実際は住宅ローンを利用する際に団体信用生命保険(団信)に加入することがほとんどです。

団信に加入していると契約者が死亡してローンを支払えなくなった場合に、生命保険会社がローンの全額を返済してくれるため、実際に住宅ローンを相続するケースは少ないといえます。

たとえば故人様に借金が多く、相続することでご遺族様に損失が発生してしまう場合には、すべての財産の相続をしないという選択(相続放棄)を行うこともできます。なお、「欲しい財産のみを相続して、不要な財産は相続しない」という選択はできません。

相続税がかからない財産

一方で、相続税がかからない財産もあります。

まず、墓地や墓石、仏壇、仏具など先祖供養に関するものは非課税です。ただし、相続税を減らす目的、投資目的などで仏壇・仏具を購入したと税務署に見なされると、相続税の課税対象になってしまいます。仏壇・仏具は日常的に礼拝する目的のもののみを購入すると、思いもよらぬ相続税の課税を避けられるでしょう。

また、相続した財産を公益法人へ寄付した場合も相続税の対象外となります。

相続税がかかる「みなし相続財産」って何?

悩むスーツの男性

相続税は基本的に故人様が生前に持っていた財産にかかる税金です。しかし、法律では「相続ではないように見えるけど、実質的には相続と同じだから相続税の対象にしましょう」というものもあります。これを「みなし相続財産」と呼びます。以下はその具体例です。

1.死亡退職金や生命保険の死亡保険金

死亡退職金や生命保険の死亡保険金は、故人様の死亡をきっかけに支給される金銭です。通常、これらは受取人がご遺族様であれば固有の財産として扱われ、遺産分割の対象にはなりませんが、相続税の課税対象となります。

死亡退職金:故人様が会社員であった場合、会社から死亡退職金が支給されることがあります。この金額は原則として相続税の対象です。例えば、勤続30年の社員が亡くなり、会社から1,000万円の死亡退職金が支給された場合、この金額は相続財産に含まれます。

生命保険の死亡保険金:生命保険契約に基づき、故人様が保険料を支払っていた場合は、保険金も相続税の対象です。

非課税枠:上記2つの金銭については、【500万円×法定相続人の数】という非課税枠が設けられており、それを超えた部分にのみ相続税が課税されます。たとえば法定相続人が2人の場合、非課税枠は1,000万円となり、受取額が1,500万円なら500万円が課税対象です。

2.特別なルールで贈与された財産

農地や会社の株式など、事前に特定の税制優遇措置を受けた財産も、相続時には再度見直され、相続税の課税対象になる場合があります。

具体例:例えば、生前に農地を相続税の納税猶予制度を利用して息子に引き継いだ場合、猶予が解除される条件に該当すると相続税が課されることがあります。また、中小企業の事業承継税制を利用して株式を贈与された場合も、一定条件を満たさなければ猶予された税金が課税対象になります。

3.教育資金の一括贈与

祖父母が孫に対して教育資金を一括で贈与する際、非課税特例を利用するケースがあります。しかし、祖父母が亡くなり相続が発生した時点で未使用残額がある場合、その部分に相続税が課されます。

具体例:祖父が孫のために500万円を教育資金として贈与し、孫がまだ200万円しか使っていない状態で祖父が亡くなった場合、未使用の300万円は相続税の課税対象となります。

4.結婚・子育て資金の一括贈与

結婚や子育て資金として贈与されたお金についても、特例が適用される場合があります。ただし、相続時点で残額がある場合は課税対象です。

具体例:祖母が結婚資金として孫に300万円を贈与したものの、孫がまだ結婚しておらず全額未使用のまま祖母が亡くなった場合、300万円が相続税の対象となります。

5.相続開始前3年以内に受けた贈与

故人様が亡くなる前3年以内に行った贈与も、相続税の課税対象となります※

具体例:亡くなる1年前に故人様が子どもに1,000万円を贈与していた場合、その1,000万円は相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

なお、令和5年の税制改正により、この加算対象期間が段階的に延長され、最終的に令和13年1月1日以降は「亡くなる前7年以内の贈与」まで相続税の対象となります。

6.相続時精算課税で贈与された財産

相続時精算課税制度を使って生前贈与を受けた財産も、相続税の課税対象です。

相続時精算課税制度とは、贈与時に一定額まで贈与税がかからなくなる代わりに、贈与した方が亡くなった時に、贈与を受けた方に相続税が発生する制度です。

具体例:故人様が生前に相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、その土地の評価額が相続財産に加算されます。

7.弔慰金

弔慰金(ちょういきん)とは、社員が亡くなった際に企業や団体がご遺族様に渡す金銭のことです。勤続年数などに基づき、企業独自で定めた金額が支給されます。基本的には非課税財産とされますが、一定の非課税枠を超えた分は死亡退職金とみなされ、相続税の課税対象となります。

8.定期金

定期金とは、個人年金などのように、一定期間または終身にわたって支払われる金銭です。故人様が掛け金を支払っていた場合、将来にわたって財産的価値のある年金受給権を、相続または遺贈により取得したものとみなされるため相続税が課されます。また、死亡時に年金の給付が決定していなくても相続税の課税対象となります。

9.債務の免除

故人様からお金を借りていた場合、故人様が亡くなり「もうお金を返さなくていい」と遺言に書いてあったら、それは「もらった」と同じ扱いになります。このようなケースでは相続税がかかることがあります。具体的には、借金の免除額が相続財産とみなされ、その分も含めて相続税を計算します。ただし故人様との特別な関係や契約がある場合など、税金がかからないケースもあるため、詳しい状況によって異なることがあります。

10.信託受益権

故人様が信託銀行に財産を預け、管理を任せていた場合、その財産を遺言でご遺族様が受け取ると相続税がかかります。

具体例:故人様が信託銀行に2,000万円を預けて運用していた場合、亡くなった後に子どもがそのお金を受け取ると相続税の対象です。

11.公益法人への遺贈により受ける利益

公益法人に遺贈を行う際には、運営が適切であり、遺贈者やその親族が不正に利益を得ないようにする必要があります。不当な利益を得たと見なされると、相続税や贈与税が課せられることがあるため、公益法人への遺贈には慎重な対応が求められます。

具体例:ご遺族様が法人のサービスを特別価格で利用できる、法人所有の車両をご遺族様が仕事外で自由に使用する、法人がご遺族様に対して、市場価格よりも大幅に低い利率で融資を行う、または無利子で融資を行う等。

これらの行為が発生すると、税務署はこれを「不当な利益」として認識し、法人や関係者に対して追加の税金を課すことがあります。

12.特別縁故者への分与財産

故人様の親族でなくても、長年にわたり身の回りの世話をしていた知人などが、家庭裁判所により特別縁故者として認められることがあります。特別縁故者が受け取った財産も相続税の課税対象となり、通常の相続人と同じように扱われます。

特別縁故者として認められるためには、長年の介護や援助の事実など、故人様との関係を示す具体的な証拠をもとに、家庭裁判所で認められる必要があります。

具体例:故人様を長年介護していた知人が遺産として500万円を受け取った場合、この金額に対して相続税が課されます。

13.低額の譲り受け

遺言により、相続人が故人様の財産を市場価格よりも大幅に低い価格で受け取った場合、その差額に相続税がかかることがあります。これは、ご遺族様が実際に支払った金額と、財産の市場価格との差額に対して税金がかかるためです。

税務署は、購入価格と市場価格の差を調べて、適正な取引が行われているかを確認します。相続財産の評価額が大幅に低い価格で譲渡されることによって、ご遺族様が得た利益に相当する額に課税されるため、注意が必要です。

相続税についてよくある疑問

相続税はなぜかかるの?

財産を持っている人が亡くなると、その財産が次の世代に渡ることになります。このとき、国は相続をひとつの「経済的な出来事」と考え、一定のルールに基づいて税金を徴収します。

相続税は、お金持ちの家族だけが払うイメージを持たれることもありますが、一定の条件を満たす場合には誰でも対象になります。そのため、相続財産の価値が高いかどうかがポイントになります。

誰が相続税を払うの?

相続税を払うのは、財産を相続する相続人です。多くの場合、亡くなった人の配偶者や子どもが相続人になります。具体的には以下の順序で相続人が決まります。

  1. 配偶者と子どもが最優先(配偶者は常に相続人になります)
  2. 子どもがいない場合は両親や祖父母
  3. それもいない場合は兄弟姉妹

相続人が複数いる場合は、それぞれの相続割合に応じて税金を支払います。相続税が課される相続人に関する解説は『相続税基本のきVol.3_相続税は誰が対象になるのか?』で詳しく行っています。

相続税がかかる基準は?

相続税が発生するかどうかは、財産の総額と「基礎控除(きそこうじょ)」というルールで決まります。基礎控除とは、税金がかからない財産の上限額です。相続人が一人の場合は3,600万円、相続人の人数が増えるごとにその人数×600万円が基礎控除額になります。

基礎控除額の計算方法
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。

この場合、亡くなった人が持っていた財産が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。逆にそれを超える場合は、超えた部分に対して相続税が課されます。

相続税を軽減する制度はあるの?

国は相続税が重すぎると生活が困る場合もあると考えて、いくつかの軽減措置を用意しています。

  • 配偶者の税額軽減:配偶者が相続する場合は、相続税が大幅に軽減されます。
  • 小規模宅地等の特例:故人様が住んでいた土地や、事業で使っていた土地の価値に対する税金を軽減する制度です。
  • 生命保険金の非課税枠:生命保険の一部は税金がかかりません。

これらの制度を予め知っておくことにより、事業者の皆さまはご遺族様に税負担軽減の可能性を示唆し、専門家を紹介する等のサービスを提案することで事業が更に展開するきっかけになるやも知れません。

まとめ

相続税は、遺産を受け継ぐご遺族様にとって避けて通れない重要な課題です。特に、現金・預貯金、不動産、有価証券、事業用資産など、課税対象となる財産の種類や評価方法を正しく理解することが、適切な税務対策や円滑な相続手続きにつながります。

事業者の皆さまにとっては、相続税に関する基礎知識を持つことで、ご遺族様へのサポートの質を向上させ、より信頼されるサービスの提供が可能になるでしょう。本記事を通じて、相続税の基本を押さえ、実務における適切な対応につなげていただければ幸いです。

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