2026年(令和8年)4月に施行される予定の労働基準法の大規模な改正が、葬儀業界に大きな波紋を呼んでいます。
人の「死」に携わるという業務の特殊性から、これまでの葬儀業界では「24時間365日対応」「不規則な勤務」が半ば当たり前の状況が続いていました。
しかし、今回の法改正では、連続勤務の上限規制、法定休日の明確化、勤務間インターバルの義務化、つながらない権利の整備など、「時間の使い方」へのルールが強化される見通しです。
葬儀業界は中小企業が多く、突発的な出動が多い業種であるため、これらのルール変更は業務運営に直結する大きな課題へとつながりかねません。
そこで本記事では、改正内容を葬儀社の現場に即してわかりやすく解説するとともに、経営陣の皆様が取るべき具体的な対策に焦点を当て、法改正が業務に与える影響と、今すぐ着手すべき準備について、分かりやすく解説します。
目次
- 労働基準法改正の全体像
- 2026年労働基準法改正の「7つの主要ポイント」
- 葬儀業界特有の労働環境と法改正の接点
- (1)24時間365日対応の必要性
- (2)突発的な出動体制
- (3)不規則な勤務形態
- なぜ葬儀業界は特に影響を受けるのか
- ①連続勤務の上限規制【重要度★★★】
- (1)現行制度と何がどう変わるのか
- (2)罰則の有無と労働基準監督署の対応
- (3)繁忙期のシフト編成への影響
- (4)小規模葬儀社(従業員10名以下)の課題
- (5)今から始める対策
- 対策1.シフト管理システムの見直し
- 対策2.代替要員の確保方法
- 対策3.業務の外部委託の検討
- (6)連続勤務の上限規制への対応手順
- ②法定休日の法定休日の明確な特定義務化【重要度★★★】
- (1)法定休日の事前特定義務化
- 法定休日特定の具体例
- 「週1日」または「4週4日」の選択
- (2)葬儀社が見落としがちな注意点
- 割増賃金計算への影響
- 就業規則の改定ポイント
- (3)就業規則の見直し箇所
- シフト表への明記方法
- 《サンプル》 改定後の就業規則記載例
- (1)法定休日の事前特定義務化
- ③勤務間インターバル制度(11時間)の義務化【重要度★★★】
- (1)原則11時間の継続休息時間
- (2)例外規定の有無
- (3)諸外国の事例
- (4)葬儀社業務においてインターバル制度への対応が困難な理由
- 深夜のご遺体搬送後の翌日業務
- 通夜・葬儀の連続対応
- (5)実務的な対応策
- 交代制勤務の導入パターン
- 外部協力会社とのネットワーク構築
- ④有給休暇の賃金算定方式の統一【重要度★★☆】
- (1)現在の3つの算定方式
- (2)原則「通常賃金方式」への統一
- (3)葬儀社の給与体系への影響
- 歩合給・インセンティブ制度への影響
- 変動の大きい残業代がある場合の対応
- ⑤「つながらない権利」ガイドラインの策定【重要度★★☆】
- (1)「つながらない権利」とは
- (2)葬儀業界での現実的な対応
- 「緊急連絡」の定義を明確化
- オンコール(待機)体制の見直し
- (3)トラブル回避のための社内ルール作り
- 連絡可能時間帯の設定
- 緊急時の連絡フロー
- ⑥副業・兼業者の割増賃金算定ルールの見直し【重要度★☆☆】
- (1)改正の概要
- 現行ルールでの該当事例
- 新ルールの方向性
- (2)葬儀社で想定されるケース
- 【ケース1|アルバイト・パート従業員の副業】
- 【ケース2|パート従業員の掛け持ち】
- (3)法改正に対応した労働時間管理
- (1)改正の概要
- ⑦週44時間特例の廃止【重要度☆☆☆】
- 総合的な対応戦略─葬儀社が生き残るための5つのステップ
- 【Step1】現状把握:自社の労働実態を可視化する
- 【Step2】優先順位付け|自社に最も影響が大きい項目を特定
- 【Step3】業務プロセスの見直し
- (1)ムリ・ムダ・ムラの排除
- (2)DX化で効率化できる業務
- (3)アウトソーシングの検討
- 【Step4】人材確保・育成戦略
- (1)多能工化の推進
- (2)採用戦略の転換
- (3)定着率の向上
- 【Step5】社内規程・システムの整備
- (1)勤怠管理システムの選定
- (2)従業員説明会の実施
- おわりに~法改正を「持続可能な葬儀社」へ変えるチャンスに~
