株式会社 公益社 |冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

公益社

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 公益社の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 公益社の概要

株式会社 公益社は、1932年(昭和7年)に大阪・北浜で創業し、1971年には葬祭センターの先駆けといわれる「千里会館」が完成しました。
1994年に大阪証券取引所市場新二部に株式上場し、2000年9月に東京・大阪証券取引所市場第一部に指定替えしています。

2004年に、「燦ホールディングス株式会社」に商号を変更して持株会社となり、会社分割することにより株式会社 公益社が設立され、葬祭事業の運営を引き継ぎました。
現在、東証プライム上場企業である、燦ホールディングス 株式会社 の中核葬儀社として、年間10,000件以上の葬儀実績があり、関東地方と近畿地方で自社会館を運営しています。
グループにはほかに、鳥取・島根を営業エリアとする葬儀社「株式会社 葬仙」兵庫県が営業エリアの「株式会社 タルイ」が所属しています。

出典:株式会社 公益社 沿革

公益社の事業展開

公益社は、2023年3月に家族葬に特化した新ブランドである「ENDING HAUS.(エンディング ハウス)」を立ち上げ、1日1葬儀で貸し切りの家族葬がおこなえると、好評のようです。

また2024年5月には、おひとりさまやおふたりさまのライフエンディングをサポートする「喪主のいらないお葬式」を発売しました。
行政書士法人や司法書士法人と連携して、契約者の葬儀や死後の手続き、納骨・法事などをサポートするものです。

公益社の自社会館は、2024年7月現在、2024年オープン予定の会館も含めると、以下のとおりです。

  • 東京都:17会館
  • 神奈川県:5会館
  • 千葉県:2会館
  • 大阪府:34会館
  • 奈良県:4会館
  • 兵庫県:8会館

【名称】株式会社 公益社
【代表取締役】会長:野呂 裕一
       社長:播島 聡 
【設立】2004年10月1日
【所在地】東京本社:東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館14階
     大阪本社:大阪府大阪市北区天神橋4-6-39
【公式サイト】https://www.koekisha.co.jp/
【事業内容】・葬祭事業
      ・生花販売事業
      ・一般貨物(霊柩)自動車運送事業
      ・保険代理業
      ・仏壇・仏具販売事業
      ・葬祭用贈答品販売事業

出典:株式会社 公益社 会社概要

燦ホールディングスときずなホールディングスの経営統合

2024年7月12日には、公益社の持株会社である燦ホールディングスが「家族葬のファミーユ」を中核とする、同業上場企業の「株式会社 きずなホールディングス」株式公開買付け(TBO)を開始すると発表し、注目を集めました。

そして7月18日には、投資ファンド運営会社「株式会社アドバンテッジパートナーズ」とともに、両社の経営統合戦略発表会が開催されました。
燦ホールディングスときずなホールディングスの経営理念には親和性があり、会社経営の考え方も似ているとの認識があったようです。

統合により、近年の消費者ニーズに応じた高品質の家族葬サービスの提供と、全国内に出店エリアを拡大させることができるとしています。

燦ホールディングスときずなホールディングスの経営統合については、以下の記事をご覧ください。

葬儀社の決算公告とは

決算公告は、その会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。
以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。
互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみおこなえる事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は、割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を、次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき、互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は、以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

公益社の貸借対照表

決算期第14期第15期第16期第17期第18期第19期第20期
会計年度2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期
利益剰余金10億5千6百万円13億6千9百万円13億4千9百万円17億5千6百万円16億9千5百万円20億1千9百万円18億8千1百万円


流動資産37億9千9百万円39億1千5百万円38億8千8百万円38億7千7百万円43億1千9百万円45億7千1百万円44億8千8百万円
固定資産13億5千5百万円13億6千3百万円13億9千3百万円12億4千0百万円12億3千0百万円11億7千1百万円11億1千4百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計51億5千4百万円52億7千8百万円52億8千1百万円51億1千7百万円55億4千9百万円57億4千2百万円56億0千2百万円


流動負債22億2千9百万円22億9千5百万円23億4千6百万円19億2千6百万円25億6千5百万円25億7千7百万円26億4千7百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債10億5千6百万円8億0千1百万円7億7千2百万円6億2千2百万円4億7千6百万円3億3千2百万円2億5千9百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計32億8千5百万円30億9千6百万円31億1千8百万円25億4千8百万円30億4千1百万円29億0千9百万円29億0千6百万円



株主資本18億6千9百万円21億8千2百万円21億6千3百万円25億6千9百万円25億0千8百万円28億3千2百万円26億9千5百万円
資本金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
 資本余剰金7億1千3百万円7億1千3百万円7億1千3百万円7億1千3百万円7億1千3百万円7億1千3百万円7億1千3百万円
資本準備金3億4千8百万円3億4千8百万円3億4千8百万円3億4千8百万円3億4千8百万円3億4千8百万円3億4千8百万円
その他資本余剰金3億6千5百万円3億6千5百万円3億6千5百万円3億6千5百万円3億6千5百万円3億6千5百万円3億6千5百万円
 利益剰余金10億5千6百万円13億6千9百万円13億4千9百万円17億5千6百万円16億9千5百万円20億1千9百万円18億8千1百万円
利益準備金
特別償却準備金
その他利益剰余金10億5千6百万円13億6千9百万円13億4千9百万円17億5千6百万円16億9千5百万円20億1千9百万円18億8千1百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)9億0千4百万円12億1千4百万円11億8千0百万円10億0千7百万円15億3千9百万円18億6千2百万円17億2千5百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計18億6千9百万円21億8千2百万円21億6千3百万円25億6千9百万円25億0千8百万円28億3千2百万円26億9千4百万円
負債・純資産合計51億5千4百万円52億7千8百万円52億8千1百万円51億1千7百万円55億4千9百万円57億4千1百万円56億0千1百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。
総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。
自己資本比率が10%を下回っている場合は、経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は、最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

公益社の自己資本比率は48.10%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。

公益社の2024年3月期の自己資本比率を求める式は、下記のようになります。

26億9千4百万円 ÷ 56億0千1百万円= 48.10% 

上記の式から同社の自己資本比率は、48.10%(前年比1.23%減)となりました。

公益社の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つで構成されています。

流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや、1年を超えて現金もしくは費用となる資産で、有形固定資産や無形固定資産がある
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や、社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに、資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など

公益社の資産合計の推移は、以下のようになっています。

公益社の2024年3月期の資産合計は、56億0千2百万円(前年同期比2.44%減)となりました。
2021年4月期に新型コロナの影響を受けたとみられ減少し、その後は2年連続で増加していましたが、2024年3月期はわずかに減少しました。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となる
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となるので、流動負債以外の負債は固定負債になる
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

公益社の場合は、以下のようになっています。

公益社の2024年3月期の負債合計は、29億0千6百万円(前年同期比0.10%減)となっています。
過去6年間の状況を見てみると、増減を繰り返していますが、2024年3月期はわずかですが減少しました。

財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2024年3月期の時点で169.55%(安全ラインは100%以上)となっており、支払い能力についての不安は感じられません。

公益社の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することで、その会社の純資産を確認できます。

公益社の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から、負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ、財務健全性が高いと考えます。

一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

公益社の2024年3月期の純資産合計は、26億9千4百万円(前年同期比4.87%減)となりました。
2020年3月期はコロナの影響があったのか、わずかに減少しましたが、翌年には回復しその後わずかな幅で、減少と増加を繰り返しています。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税、そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

公益社の2024年3月期の当期純利益は、17億2千5百万円(前年同期比8.34%減)となっています。
2020年から2021年にかけてコロナの影響を受けたとみられ、2021年3月期に大きく減少しましたが2022年には回復し、2023年も増加したものの、2024年3月期には前年より1億円以上減少しました。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずに、コツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保とも言います。

内部留保は、おそらく聞き馴染みのある単語だと思います。
利益剰余金は、貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

公益社の場合は、以下のように推移しております。

2024年3月期の公益社の利益剰余金は、18億8千1百万円(前年同期比6.84%減)となりました。
コロナの影響を受けたとみられる2020年3月期は減少しましたが、その後は増減を繰り返しています。
2024年3月期は前年より減少しましたが、過去6年間で2番目に多い数値となっています。

株式会社 公益社のまとめ

今回は株式会社 公益社の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。

2020年から2021年にかけて、新型コロナの影響を受けて収益が下がった葬儀社も多いなか、公益社も同様だったようですが、影響は最小限にとどめられたようです。
2024年3月期決算は、全般的に前年よりわずかに減少しましたが、新ブランドや新商品の立ち上げに注力したためかもしれません。

公益社の持株会社である、燦ホールディングスときずなホールディングスの経営統合は、家族葬などの小規模葬儀を成長・充実させることを目的のひとつとしています。
燦ホールディングスは、中期経営計画を2022年に発表し、2032年3月期までにグループ全体の葬儀会館を、全国210会館へ展開するとしています。
「ENDINGHAUS.(エンディングハウス)」も新会館を次々とオープンさせる予定です。

公益社の次期決算では、さらに収益を伸ばしている可能性も考えられます。
2025年3月期の決算公告に注目したいと思います。

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