株式会社 出雲殿互助会 ~ イズモ葬祭~|冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

出雲殿互助会

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 出雲殿互助会の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
決算公告は、上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 出雲殿互助会の概要

株式会社 出雲殿互助会は、愛知県と静岡県を営業エリアとする冠婚葬祭互助会事業者で、2024年8月に創業100周年を迎えます。

1924年(大正13年)8月に大阪市南区で「浅井商店」として開業し、紳士服の製造販売をおこなっていました。
1953年4月には「羽衣商事株式会社」を設立し、1960年1月に株式会社 出雲殿(和歌山)を設立します。
1966年2月に、結婚式場と葬祭センターを同時にオープンさせ、1967年1月に「浜松市出雲殿冠婚葬祭互助会」を設立して営業を開始しました。

1975年7月「株式会社 平安閣」「株式会社 出雲殿平安閣互助会」「株式会社 出雲殿冠婚葬祭互助会」を経て、1993年7月に現在の社名に変更しています。

出雲殿グループの主要企業は、以下のとおりです。

株式会社 出雲殿 豊田法人 愛知県豊田市 小坂本町2-43-1
株式会社 出雲殿 名古屋法人 愛知県名古屋市 中村区名駅南3-3-27
株式会社 出雲殿互助会  愛知法人 愛知県名古屋市 瑞穂区堀田通3-11
株式会社 出雲流通センター 静岡県浜松市 中央区飯田町246-1
株式会社 出雲事務管理センター 静岡県浜松市 中央区連尺町307-14 出雲殿互助会連尺ビル

* 株式会社 出雲殿 浜松法人は、2021年10月に「イズモ株式会社」へ社名変更し、2022年11月に「パルモグループ」が発足しました。
2023年6月には「イズモ葬祭」から「パルモ葬祭」へと屋号変更し、静岡県西部と愛知県の一部を営業エリアとしています。

2024年7月現在「イズモ葬祭」名義で、愛知県内に27会館、浜松市に「出雲殿互助会の家族葬」名義で5会館を運営しています。
2024年7月にはそのうちのひとつ、家族葬ホール「出雲殿互助会の家族葬 三組」を浜松市中央区三組町にオープンしました。
1日1組の貸切で、家族で故人様とゆっくりとお別れができる施設です。

【名称】株式会社 出雲殿互助会
【代表取締役】代表取締役 会長:浅井 秀明
       代表取締役 社長:岸本 裕一郎
【設立】1970年(昭和45年) 4月24日
【所在地】静岡県浜松市中央区連尺町307-14
     出雲殿互助会連尺ビル
【公式サイト】https://izumoden-gojyo.jp/
【事業内容】互助会の会員募集業務
      および冠婚葬祭に伴う各種サービスの提供      

出典:株式会社 出雲殿互助会 会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告は、その会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。
以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

株式会社は、定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという、重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで、積み立てるサービスとなっております。
互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみおこなえる事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は、割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を、次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき、互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は、以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

株式会社 出雲殿互助会の貸借対照表

決算期50期51期52期53期54期55期
利益剰余金17億7千7百万円18億1千8百万円18億2千9百万円18億7千9百万円19億4千7百万円14億2千3百万円
会計年度2018年8月期2019年8月期2020年8月期2021年8月期2022年8月期2023年8月期
資産流動資産66億5千1百万円70億7千6百万円142億8千1百万円75億9千0百万円61億2千8百万円66億1千4百万円
固定資産228億2千9百万円222億1千8百万円150億3千7百万円229億0千9百万円288億9千8百万円316億2千0百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計294億8千0百万円292億9千4百万円293億1千8百万円304億9千9百万円350億2千6百万円382億3千4百万円
負債流動負債15億9千9百万円14億1千9百万円13億9千3百万円14億2千9百万円17億2千2百万円19億5千0百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債260億2千2百万円259億7千6百万円259億4千0百万円262億9千6百万円298億5千9百万円319億2千0百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計276億2千1百万円273億9千5百万円273億3千3百万円277億2千5百万円315億8千1百万円338億7千0百万円
純資産株主資本18億5千8百万円18億9千9百万円19億1千0百万円19億6千0百万円20億2千8百万円15億0千4百万円
資本金8千1百万円8千1百万円8千1百万円8千1百万円8千1百万円8千1百万円
 資本剰余金
資本準備金
その他資本余剰金
 利益剰余金17億7千7百万円18億1千8百万円18億2千9百万円18億7千9百万円19億4千7百万円14億2千3百万円
利益準備金2千0百万円2千0百万円2千0百万円2千0百万円2千0百万円2千0百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金17億5千7百万円17億9千8百万円18億0千8百万円18億5千9百万円19億2千7百万円14億0千3百万円
自己株式
評価・換算差額等7千4百万円8億1千4百万円14億1千7百万円28億6千0百万円
その他有価証券評価差額金7千4百万円8億1千4百万円14億1千7百万円28億6千0百万円
(うち当期純損失)7千8百万円5千4百万円2千3百万円6千3百万円8千0百万円1億0千0百万円
新株予約権
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計18億5千8百万円18億9千9百万円19億8千4百万円27億7千4百万円34億4千5百万円43億6千4百万円
負債・純資産合計294億7千9百万円292億9千4百万円293億1千7百万円304億9千9百万円350億2千6百万円382億3千4百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は、純資産の部です。
総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。

自己資本比率が10%を下回っている場合は、経営状態は良いとは言えません。
自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多いので、資金繰りが厳しいと予測ができます。

一方で、自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は、最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は、最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

出雲殿互助会の自己資本比率は11.41%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。

出雲殿互助会の、2023年8月期の自己資本比率を求める式は、下記のようになります。

43億6千4百万円 ÷ 382億3千4百万円=11.41 % 

上記の式から同社の自己資本比率は、11.41%(前年比1.57%増)となりました。

株式会社 出雲殿互助会の利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずに、コツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保とも言います。

内部留保は、恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。
利益剰余金は、貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

株式会社 出雲殿互助会の場合は以下のように推移しております。

出雲殿互助会の2023年8月期の利益剰余金は、14億2千3百万円(前年同期比26.91%減)となっています。
2018年から毎年増加を続けていましたが、2023年には減少に転じました。

株式会社 出雲殿互助会の損益計算書

損益計算書とは、企業が1年間の経営状況を把握するために作成される資料で、P/L(profit and loss statement)とも呼ばれます。

損益計算書を確認することで、当該企業が「どれだけ売り上げ(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいの儲けが出たのか(=利益)」が一目で分かるものです。特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益となります。

決算期50期51期52期53期54期55期
会計年度2018年8月期2019年8月期2020年8月期2021年8月期2022年8月期2023年8月期
売上高9億9千9百万円9億9千2百万円9億1千7百万円10億1千5百万円16億0千5百万円18億8千3百万円
売上原価5億1千6百万円5億1千6百万円4億5千6百万円5億9千5百万円7億3千6百万円7億6千9百万円
売上総利益4億8千3百万円4億7千6百万円4億6千1百万円4億2千0百万円8億6千9百万円11億1千4百万円
販売費及び一般管理費5億3千2百万円5億4千9百万円6億4千7百万円7億0千5百万円10億7千6百万円13億9千7百万円
営業利益-4千9百万円-7千3百万円-1億8千6百万円-2億8千5百万円-2億0千7百万円-2億8千3百万円
営業外収益1億3千3百万円1億4千5百万円1億9千4百万円4億4千1百万円4億3千6百万円4億9千3百万円
営業外費用5百万円3百万円1百万円1千1百万円2千7百万円2千5百万円
経常利益7千8百万円6千8百万円7百万円1億4千5百万円2億0千2百万円1億8千7百万円
特別利益0百万円0百万円2千2百万円0百万円0百万円0百万円
特別損失0百万円0百万円1百万円9千7百万円7千9百万円5千4百万円
税引前当期純利益7千8百万円6千8百万円2千8百万円4千8百万円1億2千3百万円1億3千3百万円
法人税、住民税及び事業税0百万円1千3百万円5百万円0百万円0百万円3千3百万円
法人等調整額0百万円0百万円0百万円1千5百万円4千3百万円0百万円
当期純利益7千8百万円5千4百万円2千3百万円6千3百万円8千0百万円1億0千0百万円

出雲殿互助会の損益計算書を確認すると、売上高が増加し経常利益も出ていますが、営業損失が発生しています。

売上金額の推移

出雲殿互助会の2023年8月期の売上金額は、18億8千3百万円(前年同期比17.32%増)となりました。

新型コロナの影響を受けたとみられる、2020年8月期には減少しましたが、翌年には回復して2022年・2023年と2期連続して大幅に増加しています。

営業利益の推移 

営業利益とは、おもな営業活動で得られた「売上総利益」から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いたもので、1年間の本業における利益を表す数字です。

つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
葬儀業界でいえば、葬儀施行や葬儀付帯業務(会食・返礼品など)による利益が、営業利益にあたります。

出雲殿互助会の場合は、以下のように推移しております。

出雲殿互助会の2023年8月期は、2022年8月期より営業損失が拡大し-2億8千3百万円となりました。
2018年8月期から営業損失が発生していましたが、コロナの影響を受け、2020年から2021年にかけて拡大しています。
2022年には営業損失が圧縮されましたが、2023年には再び拡大しました。

営業に関する経費である販売費および、人件費や通信費などの一般管理費が増加しているのも、原因の1つと思われます。

経常利益の推移

経常利益は、企業が1年間で得たすべての利益を表す数字で、「営業利益」+「営業外収益」-「営業外費用」で算出されます。
本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含め、その会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。

出雲殿互助会の場合は、以下のように推移しております。

出雲殿互助会の2023年8月期の経常利益は、1億8千7百万円(前年同期比7.43%減)となりました。

やはりコロナの影響が大きかったとみられ、2020年8月期には出雲殿互助会の経常利益は大きく減少したものの、翌2021年にはV字回復しています。2022年も継続して増加していましたが、2023年は若干の減少となりました。
2022年にくらべ営業外収益が増加し営業外費用も減少したものの、やはり営業損失が拡大した影響により、前年を下回る結果となっています。

株式会社 出雲殿互助会のまとめ

今回は株式会社 出雲殿互助会の決算公告を参考に、同社の財務状況や業績の推移を分析しました。
2020年から2021年にかけて、葬儀業界も新型コロナの影響を大きく受けましたが、出雲殿互助会も例外ではなかったようです。
しかし業績は改善してきており、コロナの影響から回復傾向にあるとみられます。

出雲殿互助会は近年、家族葬ホールを多くオープンするなど、時代に合わせた葬儀スタイルを提案しています。
2024年に創業100周年を迎え、オープンした「出雲殿互助会の家族葬 三組」もそのうちのひとつです。
今後も事業拡大が予測される、 出雲殿互助会の2024年8月度の決算公告にも注目したいと思います。

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