碑文谷創の葬送基礎講座

碑文谷創の葬送基礎講座4 葬儀業市場の規模は?

投稿日:2019年5月15日 更新日:

葬祭業は「成長産業」か?

「葬祭業は成長産業」という神話が一時、一部の経済雑誌で囃し立てられたことがある。
高齢化が進み、死亡数が増加していることを根拠にしたものである。

戦後長く年間死亡数は60~70万人台であった。しかし、高齢化が進むことにより、

1990(平成2)年に80万人台に突入、
1995(平成7)年には90万人台に、
2003(平成15)年には100万人台に、
2007(平成19)年に110万人台に、
2011(平成23)年に120万人台に、
2016(平成28)年には130万人台となった。

2018(平成30)年は確定数ではなく推計値だが136万9千人となっている。

社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」(平成29)によれば2030年には160万人を超えると推計されている。

ただ死亡数の増加をもってだけで葬儀業を成長産業とする見方は少ない。

1995(平成7)年に始まり、2008(平成20)年のリーマン・ショックによって加速された葬儀の個人化、低価格化の大波が、他の産業同様に、葬儀の世界を襲ったからである。

 

経産省「特定サービス産業動態統計調査」

葬儀業のマーケット規模は1兆5千億円前後から2兆5千億円という大きな幅をもって推定されているが、それを検証する。
推定根拠として必ず登場するのが、経産省「特定サービス産業動態統計調査」。

 

15.葬儀業(Funeral Services)

15表 葬儀業の売上高、取扱件数、事業所数及び従業員数(売上高は百万円、その他は数)

売上高(百万円)取扱件数事業所数
2016(平28)年599,610420,5852,291
2017(平29)年611,248435,0012,361
2018(平30)年604,400439,8662,417

※従業者数は省略

 

注意すべきは調査事業所数が年によって変わっていること(厳密には月で異なる)。
そのため年合計値で年と年の比較はできない。

ここから導き出される有効な数字は売上高を取扱件数で割り1件当りの売上高を推計すること。この結果が以下。

売上高(百万円)取扱件数1件当り
2016(平28)年599,610420,5851,425,657円
2017(平29)年611,248435,0011,405,165円
2018(平30)年604,400439,8661,374,055円

 

ここから出る有意な数字は16年から18年にかけて葬儀料の1件当りの売上高が毎年低下している傾向にあること。

調査企業は全数調査ではなく、業界内で比較的に大規模なところを中心に抽出していることに注意する必要がある。つまりこの1件当りの売上高は高めになっている。

よく見る誤りが、ここで導き出された1件当りの売上高にその年の死亡数を乗じて総売上高を推計するもの。仮にこの方式で推計するとこうなる。

1件当り死亡数総売上高
2016(平28)年1,425,657円1,307,7481兆8644億円
2017(平29)年1,405,165円1,340,3971兆8835億円
2018(平30)年1,374,055円1,369,0001兆8811億円

※死亡数は人口動態総覧より、2018年は推計。

 

これが「1兆8千億円市場」という大方の推計根拠である。

※葬儀単価は企業規模が大きいほど高く、小さいほど低い傾向にある。大手では1件当りの売上高が160万円程度となるところもあるが、小さい企業ではやっと80万円という例も少なくない。

 

経済センサス

経済センサスは、それまでの「事業所・企業統計調査」・「サービス業基本調査」等を統一して2009(平成21)年から基礎調査を、2012(平成24)年から活動調査が実施されるようになった統計で基幹統計である。全事業所を対象に行われる。

回答率が公表されている2012(平成24)年調査では、86~92%といった高回収率であるが、葬儀業が含まれる「サービス関連産業B」の有効回答状況は70%となっていた。

 

葬送関連の小分類・細分類は次のようになっている。

サービス関連産業B

795火葬・墓地管理業
・7951火葬業
・7952墓地管理業

796冠婚葬祭業
・79A葬儀業
・・7961葬儀業
・79B結婚式場業
・・7962結婚式場業
・79C冠婚葬祭互助会
・・7963冠婚葬祭互助会

 

2016(平成28)年の活動調査結果は以下。

冠婚葬祭業

・事業所数 8,575

・従業員数 117,550人

・売上金額 1,961,111百万円

・結婚式・披露宴の年間取扱件数 174,165件

・葬儀の年間取扱件数 1,200,090件

葬儀業

・事業所数 6,907

・従業員数 67,064人

・売上金額 1,260,161百万円

・結婚式・披露宴の年間取扱件数 1,359件

・葬儀の年間取扱件数1,050,798件

 

2016(平28)年の死亡数は1,307,748人であるから葬儀業の葬儀取扱件数は80.4%、冠婚葬祭業の葬儀取扱件数は91.8%を占める。
有効回答数が80%程度だと仮定したら、回答しなかった事業所には弱小零細が多いことと推測される。

冠婚葬祭業での葬儀取扱件数1,200,090件の内訳は、葬儀業1,050,798件、結婚式場業610件、冠婚葬祭互助会148,682件となっている。
これは冠婚葬祭互助会が年間148,682件しか葬儀を取り扱っていないことを意味しない。冠婚葬祭互助会でも葬儀を主として扱う事業所は葬儀業に分類されているからだ。

JA(農協)でも、JAの事業所で取り扱う葬儀はここに含まれないが、JAでも主として葬儀を扱う事業所は葬儀業に分類されている。
生花店や石材店その他等で葬儀を取り扱うのも同様である。

 

葬儀業でも1,359件の結婚式・披露宴の取扱件数があるので、これを控除する等をして再計算すると、

葬儀業の1件当りの売上高は、約115万円程度 となり

2018(平成30)年の葬儀業の年間総売上高は、約1兆5千億円程度

と推計される。

 

  • この記事を書いた人
碑文谷創(ひもんやはじめ)

碑文谷創(ひもんやはじめ)

葬送ジャーナリスト。評論(死、葬送、宗教)

1946年生まれ。東北出身(岩手・一関市、宮城・仙台市)。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社に勤務し、44歳で独立、葬送文化専門雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)。

葬祭ディレクター技能審査企画委員(1995~2016))、経産省「ライフエンディング・ステージ」研究会委員(2010~2011)、IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)顧問(1993~)等を歴任。

現在、死、葬送、宗教に関する評論・講演活動を展開。著書:『葬儀概論』(現在4訂)『死に方を忘れた日本人』『「お葬式」はなぜするの ?』、『Q&Aでわかる葬儀・お墓で困らない本』ほか多数。

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