碑文谷創の葬送基礎講座

碑文谷創の葬送基礎講座15 「葬祭業」か「葬儀業」か?

投稿日:2019年11月1日 更新日:

「葬祭業」と「葬儀業」は意味に違いがある?

本講座でも「葬祭業」「葬儀業」が混在している。
同義語だからだ。

Wikipediaでは「葬祭業」を
葬祭業(そうさいぎょう)は、葬儀や祭事の執行を請け負う事業である。葬儀のみを行う場合は葬儀業ともいうが、石材店や生花店・造花店など葬儀にかかわる業種が兼業することも多く、近年では他業種から参入するケースもある。
と書いているが、はっきり言ってこの記述は誤っている。

「葬祭業」と「葬儀業」には実体として意味的相違がない。
強いて違いをいえば、葬祭業者が自らの仕事を表現するときは「葬祭業」が多く、経産省等の行政が仕事を分類するときは「葬儀業」を用いる。
葬祭業者が「葬祭業」と呼称するのは、「冠婚葬祭」の「葬祭」(死者を弔い、祀ること)に係わる業務という意味である。
行政が「葬儀業」と呼称するのは葬祭が宗教的行為を示唆するので、それを排し、中立的であろうとしたため、と推察される。

したがって行政の統計では「葬儀業」だが、業界団体がつくり厚労省が認定した資格名は「葬祭ディレクター」となっているし、専門事業者の全国団体名は「全日本葬祭業協同組合連合会」となっている。
また近年は葬祭業(葬儀業)の事業分野が拡張し境界が極めて曖昧になっている。
葬祭関連事業者が墓石・霊園、生花、料理事業に進出(墓石・霊園事業者が葬儀業に参入するなど相互であるが)することはもとより、介護関係や死後事務関係にも事業分野を拡張しようとしている。

■日本標準産業分類における「葬儀業」の変遷

経済センサス等の統計は日本標準産業分類に基づき行われている。
昭和29年改訂から平成25年改訂(最新版)までの変遷を分析しよう。行政の事業所の見方の変化、葬送関連事業の戦後の変化が見て取れるからである。

●葬儀業及び火葬業-昭和29年改訂

昭和29年改訂(1954年)
大分類 K サービス業
中分類 81 対個人サービス業
小分類 818 葬儀業及び火葬業
細分類 8181葬儀業
主として死体埋葬準備、葬儀執行を業務とする事業所をいう。葬儀用自動車を賃貸する事業所は細分類8399に分類される。〇葬儀屋;斎場
細分類 8182火葬業
主として死体の火葬を業務とする事業所をいう。〇火葬場;隠亡業

これを見て直観するのは戦後の初めは「葬儀業」は死体の公衆衛生に係わる業務として厚生省(当時)管轄でとらえられていた、ということである。事実この頃の葬祭業組合の集まりには厚生省の担当者が招かれていた。

《参考》
霊柩自動車運送事業については、
中分類83-対事業所サービス業
細分類8399他に分類されない対事業所サービス業
他に分類されない対事業所サービスに従事する事業所、たとえば商品の検査、看板書、業務用物品の賃貸等に従事する事業所をいう。
〇看板屋;商品検査業;生糸検査業…貸し自動車業(業務用のもの);鉄屑破砕請負業;オーバーホール請負業;船舶解体鉄屑回収請負業;葬儀用自動車賃貸業;繭検定所
※昭和29年改訂では「墓地管理業」は規定されていない。昭和32年改訂で初めて「墓地管理業」が登場する。
なお葬儀業、火葬業、葬儀用自動車賃貸業は最初の昭和24年、その後の昭和32年改訂でも扱いは同じになっている。

●墓地管理業の登場―昭和32年改訂

昭和32年改訂(1957年)では都市化に伴う民営霊園ブームが始まるのを見越すように「墓地管理業」が登場。
小分類 818 墓地、火葬業
細分類
    8181葬儀業
    8182火葬業
    8183墓地管理業

8183墓地管理業
墓地の管理をおこなう事業所をいう。〇墓地管理業;霊園管理事務所;墓守

※「霊園」という用語も登場。

●犬猫霊園管理事務所(ペット埋葬)が登場

昭和47年改訂では以下の変化がある。
①葬儀用自動車賃貸業⇛霊きゅう自動車業
②火葬業から「隠亡業」が除外(推定するに
用いることがなくなったと共に差別用語にあたる、という判断からだろう)。
③墓地管理業から「墓守」が除外され、新たに「納骨堂」が加わる。
④7899「他に分類されないその他の個人サービス業」に「犬猫霊園管理事務所」(いま話題のペット霊園)が新規に加わる。

●冠婚葬祭互助会の登場―昭和51年改訂

昭和51年(1976年)改訂では、墓地管理業から注釈として「×犬猫霊園管理事務所(7899)」が加わる。
ペットの遺骨の埋蔵と人間の遺骨の埋蔵を峻別するという当時の墓地行政の考えがわかる。

また「7899他に分類されないその他の個人サービス業」に「冠婚葬祭互助会」が入った(7899にはすでに結婚相談所、結婚式場が入っている)。冠婚葬祭互助会が社会的に認知されたことを示す。
冠婚葬祭互助会の最初は1948(昭和23)年に神奈川県横須賀で西村葬儀社が横須賀市冠婚葬祭互助会を開始したこと。
1953(昭和28)年に名古屋市冠婚葬祭互助会が誕生したことがきっかけとなり全国的に互助会が続々と誕生。
1972(昭和47)年に互助会は割賦販売法の規制下となり、翌1973年に全国冠婚葬祭互助協会(全互協)が発足。これを受けて日本標準産業分類に新しく「冠婚葬祭互助会」が追加された。

●厚生、通産の管轄別に再編-平成5年改訂

平成5年改訂(1993)では、葬儀・火葬業にその他であった結婚式場業、冠婚葬祭業が加わり再編された。
大分類L サービス業
中分類74 その他の生活関連サービス業
 小分類746 火葬・墓地管理業
  細分類7461火葬業
  細分類7462墓地管理業
 小分類747 冠婚葬祭業
  細分類7471葬儀業
  細分類7472結婚式場業
  細分類7473冠婚葬祭互助会

この再編は極めて省庁管轄に則したものであった。
つまり、小分類746火葬・墓地管理業は厚生省(現・厚労省)管轄のものをまとめ、小分類747冠婚葬祭業は通産省(現・経産省)管轄のものをまとめたものとなったからだ。

平成14年改訂、平成19年改訂、最新の平成25年改訂でも変更はない。

●最新版(平成25年改訂)での分類と説明

最新版が平成25年改訂版(2013年)となる。
説明文章が多少変化しているので、最新版で説明を含めて新たに示す。

大分類N 生活関連サービス業、娯楽業
中分類79 その他の生活関連サービス業
 小分類795 火葬・墓地管理業
  細分類7951火葬業
  細分類7952墓地管理業
 小分類796 冠婚葬祭業
  細分類7961葬儀業
  細分類7962結婚式場業
  細分類7963冠婚葬祭互助会

《説明》

大分類N生活関連サービス業、娯楽業

この大分類には、主として個人に対して日常生活と関連して技能・技術を提供し、又は施設を提供するサービス及び娯楽あるいは余暇利用に係る施設又は技術・技能を提供するサービスを行う事業所が分類される。

細分類7951火葬業

主として死体の火葬を業務とする事業所をいう。〇火葬業;火葬場 ×葬儀屋[7961];斎場[7961]

細分類7952墓地管理業

墓地の管理を行う事業所をいう。〇墓地管理業;墓地管理事務所;納骨堂 ×犬猫霊園管理事務所[7999]

細分類7961葬儀業

主として死体埋葬準備、葬儀執行を業務とする事業所をいう。 〇葬儀屋;斎場;葬儀会館 ×霊きゅう自動車業[4411];冠婚葬祭互助会[7963];火葬業[7951];火葬場[7951]

細分類7962結婚式場業

主として挙式、披露宴の挙行など婚礼のための施設・サービスを提供する事業所をいう。 〇結婚式場業 ×冠婚葬祭互助会[7963]

細分類7963冠婚葬祭互助会

婚礼のための施設・サービスの提供及び葬儀執行の業務を一体として行い、これらの便益を受けるものから、当該便益等の提供に先立って、対価の一部又は全部を二カ月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領する事業所をいう。 ×葬儀業[7961];結婚式場業[7962];結婚式場紹介業[7992]

※分類の説明に対する若干の注釈

①「火葬場」≠「斎場」
火葬業で「×斎場」とあるのは、一般的認識では「斎場=火葬場」なので不思議に思う人がいるかもしれないが、これで正しい。「斎場」とは「葬儀を行う場」のことで、戦後に火葬場に式場が付設されたことにより火葬場を「斎場」と呼称するようになった。
90年代以降に葬祭事業者が斎場建設競争に入り、今や葬儀の7割以上が葬儀会館、葬儀式場で行われるようになった。
近年は「斎場」よりも「葬儀会館」がポピュラーになったことから葬儀業の例示で「葬儀会館」が加わっている。
なお近年の葬儀会館は葬儀の小型化を受けて小規模化、住居近接型が増加傾向にある。90年代に多かった大規模会館は需要を減らしている。大は小を兼ねない。

②冠婚葬祭互助会
冠婚葬祭互助会が細分類では独立しているが、実際の分類は容易ではない。
1つは冠婚葬祭互助会が企業グループで構成されることが多く、婚礼施行企業は結婚式場業に、葬儀施行会社は葬儀業に分類されること。
2つめは近年の傾向だが、婚礼部門を切り、葬儀部門に純化する互助会が増加していること。
3つめ、冠婚葬祭互助会はトータルでは前受金が3兆円弱と巨額であるが、婚礼では会員の前受金を利用しての挙行が激減しており、葬儀も会員以外からの受注が増加して、費用の支払いが割賦販売法に基づく分割・前受領以外が増加していること。
事実、互助会は葬儀では約半分の市場を押さえているはずが、経済センサス等の統計では「冠婚葬祭互助会」の葬儀売上は極めて低い。

以上、日本標準産業分類の変化と併せて葬送分野の事業の変化を分析した。

 

葬祭業者が「葬祭業」の呼称を用いたのも おそらく戦後の1950年代以降のことである。
米国訪問した業界人が、米国ではフューネラルディレクターfuneral directorと資格公認されていた。
どちらかといえば差別、偏見に晒されることが多かった日本の業者には社会的地位が相対的に高い北米の業者がまぶしく映ったようだ。
北米での「葬儀」をフューネラル・サービスfuneral serviceというが、本来は「葬儀礼拝」的意味であるが、これを「葬祭サービス」と訳して日本にもちかえった。

日本では葬祭業者は古くは(といっても明治以降だが)「葬具業」(ハナヤ=造花店、ガンヤ=龕屋、カンヤ=棺屋、オケヤ=桶屋、カゴヤ=籠屋等)であり、その後に次第に自らを「葬儀屋」と呼ぶようになり、戦後に法人化するところが多くなることで「葬儀社」ということが多くなった。

中小の専門店があえて自らの仕事に誇りをもって「葬儀屋」を自認する例は今でもあるが、多くは「葬儀社」を名乗る。
それはしばしば「葬儀屋」が人の死、死体を取り扱うことから忌避され、侮蔑された歴史をもつことから避けられ、言い換えられたことからきている。
いま、火葬場が「カソウバ」が忌避された過去から「カソウジョウ」と言い換えされることと同じ感情である。
分類が相変わらず例として「葬儀屋」を挙げているのは一考を要するのではないか。

葬祭専門事業者のみならず冠婚葬祭互助会やJA(農協)の葬儀施行部門も自らを「葬儀社」と呼ぶことが多い。また消費者も「葬儀社」という場合に事業者が専門事業者、JA、互助会等の区別をしていないことが多い。
サービスの品質も事業者の属性より個々の事業者、個々の担当者によって変わることが多い。

  • この記事を書いた人
碑文谷創(ひもんやはじめ)

碑文谷創(ひもんやはじめ)

葬送ジャーナリスト。評論(死、葬送、宗教)

1946年生まれ。東北出身(岩手・一関市、宮城・仙台市)。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社に勤務し、44歳で独立、葬送文化専門雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)。

葬祭ディレクター技能審査企画委員(1995~2016))、経産省「ライフエンディング・ステージ」研究会委員(2010~2011)、IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)顧問(1993~)等を歴任。

現在、死、葬送、宗教に関する評論・講演活動を展開。著書:『葬儀概論』(現在4訂)『死に方を忘れた日本人』『「お葬式」はなぜするの ?』、『Q&Aでわかる葬儀・お墓で困らない本』ほか多数。

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