新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、セルモグループは堅調に成長を続けているようです。
そこで今回は、セルモグループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
セルモグループの概要
セルモグループは、昭和43年(1968年)に株式会社 熊本婚礼センターとして創業され、1989年に株式会社 セルモに社名変更しました。
その後事業を拡大し、2004年にセルモ東京支社、2005年にセルモ千葉支社を株式会社 サンセルモとして展開しました。
冠婚葬祭互助会事業をはじめ「玉泉院」として総合斎場を運営しているほか「エルセルモ」として総合結婚式場も運営しています。
また生花や霊柩車事業、ホテル経営も手掛けています。
2022年12月現在の会員数は約40万2千名で、年間葬儀件数は6,471件となっています。一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会、全日本冠婚互助協同組合に加入しています。
【名称】セルモグループ
【設立】1968年(昭和43年)5月
【代表取締役】岩上 梨可
【本社所在地】熊本県熊本市中央区世安1丁目4-1
【資本金】1億円
【従業員数】2,500名(セルモグループ全体 平成29年4月現在)
【公式HP】https://celmo.co.jp/
セルモグループの構成
セルモグループのグループ企業15社は以下のとおりです。
- 株式会社 YSトレーディング
- アート企画
- 有限会社 セルモ花一
- 株式会社 大分花いち
- 株式会社 シグナル交通
- 有限会社 キャリアサービス
- 株式会社 ジェイイーシー
- 有限会社 イーエスアイ
- 株式会社 TSTワールド
- 株式会社 TSTジャパン
- クローバー 少額短期保険
- 熊本くすのき 生活協同組合
- ホテル夢しずく
- ホテル夢しずく 別邸蘇庵
- STUDIO PRIMA
セルモグループの事業内容は以下のとおりです。
- 総合結婚式場(エルセルモ)各種パーティ並びに宴会、貸衣裳、結婚式に付随するもの
- 葬儀一式、総合斎場(玉泉院)、葬祭造園、霊柩車、生花、造花
- ホテル経営
出典:セルモグループ 会社概要
セルモグループは、地域の防犯パトロール隊などのボランティア活動をおこなっているほか、葬祭業者間で大規模災害時の支援協定を結んでおり、社会貢献活動にも力を入れています。
また全支社に電気自動車を導入するなど、SDGsにも取り組んでいます。
セルモグループの沿革
1968年(昭和43年)
株式会社熊本婚礼センター設立
1969年(昭和44年)
株式会社南九州互助センターに社名変更
1973年(昭和48年)
冠婚葬祭互助会事業が割賦販売法の適用業種となる
1981年(昭和56年)
株式会社全日本互助センターに社名変更
1982年(昭和57年)
本社を熊本市水道町1番19号より熊本市世安町155番地に移転
1984年(昭和59年)
一般区域貨物(霊柩)自動車運送業の許可を取得
1989年(平成1年)
株式会社 全日本互助センターから現在の株式会社 セルモに社名変更
総合結婚式場「玉姫殿」を「エルセルモ玉姫」に名称変更
1994年(平成6年)
大分ウェディングホールを大改装後エルセルモ玉姫に名称変更(のちに『エルセルモ大分』へ変更)
1995年(平成7年)
セルモ東京本部開設 株式会社サンレー東京より継承
セルモ上総支社新設 株式会社サンレー千葉より継承
1999年(平成11年)
セルモ千葉支社新設 株式会社千葉互助会から継承
2003年(平成15年)
株式会社サン企画より株式会社サンセルモに社名変更
2004年(平成16年)
セルモ東京支社をサンセルモとして展開
2005年(平成17年)
セルモ千葉支社をサンセルモとして展開
出典:セルモグループ 沿革
セルモグループの葬祭会館
セルモグループの葬祭会館は、東京都、千葉県、広島県、大分県、熊本県、鹿児島県あわせて78会館を展開しています。
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。
なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
セルモグループの決算公告からみる利益や業績
ここからは、セルモグループの貸借対照表(2社合算)について詳しく分析します。
各項目を確認することで、セルモグループ全体のおおまかな財政状況が把握可能です。
セルモグループの貸借対照表
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある
セルモグループの自己資本比率は20.07%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
191億3千4百万円÷953億5千2百万円×100=20.07%
セルモグループの2022年における自己資本比率は、20.07%(前年比0.93%増)となっています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
セルモグループの利益剰余金の推移は以下の通りです。
セルモグループの2022年における利益剰余金は、189億3千4百万円(前年同期比8.25%増)となっています。
セルモグループの利益剰余金は、コロナ禍の影響を受けたとみられる2020年と2021年に連続して減少しましたが、2022年は増加に転じ2019年を上回って過去5年間で最も高い値となっており、財務上健全な状況といえそうです。
大手冠婚葬祭互助会の業績は、葬儀業界全体の置かれている状況を推し量る指標ともなりますので、引き続き2023年の決算公告が待たれます。
セルモグループの損益計算書
損益計算書とは企業が「どれだけ売り上げが上がり(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいもうかったのか(=利益)」が一目で分かるものです。
損益計算書
新型コロナの影響が最も大きかった2020年と2021年には、営業利益が大きく減少しマイナスとなってしまいましたが、2022年には回復しています。
同じく当期純利益も2020年と2021年に減少しマイナスとなりましたが、2022年には増加に転じ2019年を上回りました。
売上金額の推移
セルモグループにおける過去5年間の売上高は、以下のように推移しています。
セルモグループにおける2022年の売上高は、169億1千0百万円(前年同期比21.1%増)となりました。
新型コロナウイルスの影響を受けたためか、2020年と2021年に大きく減少しましたが、2022年には改善しています。
新型コロナ関連の行動制限が緩和された2022年の決算では、2019年と同レベルまで売上高が回復してきました。
営業利益の推移
営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
セルモグループにおける2022年の営業利益は、8億9千9百万円(前年同期比+10億7千9百万円)となりました。
セルモグループでは、2020年から2021年にかけて新型コロナの影響が最大化したとみられ、営業利益も2期連続減少しマイナスとなっていました。
しかし2022年に大幅に増加しており、新型コロナの影響も少なくなってきたと思われます。
経常利益の推移
経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含め、会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。
セルモグループの2022年の経常利益は、15億2千2百万円(前年比325.1%増)となりました。
2020年と2021年は大きく減少しましたが、2022年には2019年と同レベルまで増加しました。
新型コロナ発生前の状態を完全に回復するまでには、もう少し時間を要するかもしれませんが、葬儀業界全体も回復傾向にあるといわれていますので、2023年の決算公告が待たれます。
セルモグループのまとめ
セルモグループの決算公告を参考に、業績や財務状況の分析をおこないました。
貸借対照表や損益計算書を分析した限りでは、セルモグループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、セルモグループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
2022年の回復がめざましいところを見ると、2023年もさらに業績を伸ばしているかもしれません。
セルモグループは葬儀会館や結婚式場を毎年のようにオープンさせ、15のグループ会社で様々な事業展開をしており、これからもますます事業拡大が予想されます。
今後も、セルモグループの動向に注目していきたいと思います。