【葬儀社さんが知っておきたい】仏衣メーカー8社まとめ|業界の成り立ちや商品の特徴を解説

仏衣メーカーまとめ アイキャッチ

仏衣は故人様を納棺する際に必ず必要なものですが、取り扱うメーカーさんはどのような企業があるのかご存じでしょうか。

かつては白が主体であった仏衣ですが、最近では色物や柄が入ったものなどもあります。
大切な方の最後の衣装は、特別なものにしたいと考えるご遺族様の気持ちをふまえて、各メーカーさんも様々な商品を打ち出しているようです。

この記事では、仏衣メーカー8社が取り扱っている商品の特徴をご紹介します。
さらに、仏衣メーカーが福井県に多い理由についても解説しますので、最後までご覧ください。

目次

仏衣とは

仏衣メーカーまとめ 仏衣

仏衣とは、亡くなった方に着せる衣装のことで「死装束(しにしょうぞく)」ともいわれます。
宗教によって名称が違い、色や着せ方などが宗派、地域の慣習により異なります。
いずれにしても大切な方が亡くなったときに、美しい衣装を着せてお見送りをしたいという思いは変わらないのでしょう。
亡くなった方のことを思い感謝を込めて仏衣を選ぶことは、ご遺族様にとっても意義のあることではないでしょうか。

宗教ごとの仏衣の種類

仏衣メーカーまとめ

仏衣は宗教ごとに名称や様式、付属品などが異なります。
こちらでは宗教ごとの仏衣についてご紹介します。

仏教

仏教の仏衣はおもに次のようなものを組み合わせて用いられます。
故人が仏になるために極楽浄土への旅に出るという意味があるようで、修行僧が旅に出るときの服装をイメージしています。

  • 経帷子(きょうかたびら)
  • 手甲(てっこう)
  • 脚絆(きゃはん)
  • 頭陀袋(ずだぶくろ)

このほかにも頭につける天冠(てんかん)、編笠(あみがさ)、杖、数珠、足袋、草履などが使用されることもあります。

経帷子(きょうかたびら)

帷子(かたびら)は白が基本の裏地がない単衣(ひとえ)の着物のことで、綿や麻の生地を使用した夏用のものです。
帷子の背の部分に梵字や経文が書かれたものを経帷子といいます。
縫製の縫い目の糸をとめずに仕立てる慣習があるようです。

また着せるときの注意点としては通常、着物を着るときの衿の打ち合わせは右前ですが、逆の左前に着せます。
仏教の教えが、現世とあの世とは逆であるということからの慣習です。

仏教の中でも浄土真宗は亡くなってからすぐに仏になるとの教えから、ほかの宗派にあるような仏になるために49日の旅に出るという考えがないので、経帷子ではなく故人様が生前に来ていた着物や洋服を着せることも多いようです。
経帷子を着せる場合でも、衿の合わせ方は左前ではなく通常どおり右前に着せます。

手甲(てっこう)

故人の手首から手の甲を覆うように装着します。
もとは武具だったもので、手の甲や手首を刀でけがをしないように使用されたものです。

脚絆(きゃはん)

故人の足につけるもので、古来より旅に出て歩く時に足をサポートするために用いられました。
あの世への旅に出るという意味から使用されています。

頭陀袋(ずだぶくろ)

布でできた袋のことで、あの世へ旅立つときのかばんであるといえるでしょう。
三途の川を渡る際の「渡し賃」といわれる六文銭などを入れ、故人の首にかけます。
六文銭は従来は本物のお金を使っていたようですが、金属は火葬できないため現在は紙に印刷したものを使用します。
頭陀袋に入れるものは地方により異なり、おにぎりやたばこなどを入れることもあるようです。

神道

神衣(しんい、かむい)という白い衣装を使用し、男性と女性で異なります。
男性は神主さんの衣装と似た「狩衣(かりぎぬ)」を着て烏帽子(えぼし)をかぶり、笏(しゃく)を持たせます。
女性は十二単(じゅうにひとえ)を簡略化した「小袿(こうちき)」という衣装を着て、扇子を持たせます。

キリスト教

仏衣や神衣のような衣装がないので、故人様が生前に愛用していた着物や洋服を用いることが多いようです。
仏教で数珠を持たせることもあるように、キリスト教では十字架を手元に納めることもあるようです。

無宗教

無宗教の場合、当然ながら特に決まりはないため、キリスト教と同じく故人様が着ていたものを使用します。

仏衣の近年の傾向

仏衣メーカーまとめ

近年では宗教にかかわらず、仏衣ではなく故人様が生前に着ていた、あるいは気に入っていた着物や洋服を着せることも増えています。
また白の仏衣では寂しい雰囲気を感じられることから、故人様らしい華やかな色柄のエンディングドレスを選ばれる方もおられるようです。

仏衣を着用しない場合でも、洋服やエンディングドレスを着せて、その上に仏衣を掛ける場合や、棺に納めることもあるようです。

仏衣メーカーが福井県に多い理由

仏衣メーカーまとめ 絹糸

仏衣を製造・販売するメーカーは、もともと繊維工業や織物を地場産業にしている地域で創業しているケースが多くみられますが、福井県もその一つです。
今回ご紹介する仏衣メーカー8社のうち、3社は福井県にありますが、その背景として福井県は古来より繊維産業、特に絹織物の生産が盛んであったことがあげられます。

福井県は羽二重(はぶたえ)の産地

絹織物の生産には湿度が重要で、絹糸を紡ぐ際に湿度が低いと切れたり、静電気が起きたりするという特徴があります。
福井地方の気候は降水量が多く昼夜の湿度の差が少ないのが特徴で、絹織物の生産に適していたことから、国内有数の生産地となったようです。

絹織物のなかでも羽二重(白色で光沢がある平織絹織物)の生産が盛んにおこなわれ、明治時代には日本最大規模の羽二重産地となりました。
大正時代には織機(しょっき・おりき)の高度化が進み、昭和初期には天然繊維である正絹(しょうけん)から人造繊維である人絹(じんけん)繊維(レーヨン)へと移り、生産企業も増加。

1932年(昭和7年)には「福井人絹取引所」が設立され、人絹織物の輸出も盛んで、福井県産の人絹織物は「福井県織物同業組合」が検査を実施することが認められています。
昭和後期になると合成繊維である、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどが多く生産されるようになり、しだいに合成繊維へシフトしていきました。

現在ではスポーツ用品やアウトドア用品、車のシートなどの自動車関連、農業用シート、医療機器関連の繊維などの産業資材へと幅広く展開しています。
福井県の絹織物は、2007年に経済産業省が認定を公表した近代化産業遺産群 33の22番にも掲載されています。

高品質生地の大量生産が可能

葬儀社にとって仏衣は消耗品のため、メーカー側では大量生産する必要がありますが、そのためには高品質の生地を多く確保しなければなりません。
古くから絹織物などの繊維産業が盛んな福井県では、高品質の織物を大量に生産できるため、仏衣や葬儀用品の製造、販売をおこなう企業が数多く誕生したようです。

仏衣メーカー8社の特徴

ここからは仏衣メーカー8社を、商品の特徴や事業内容を含めてご紹介します。
仏衣専門のメーカーさんと、葬祭用品も扱っている、あるいはほかの事業も手掛けているメーカーさんがあります。

1.大栄 株式会社

仏衣メーカーまとめ 大栄株式会社

大栄 株式会社は1953年(昭和28年)に大栄繊維 株式会社として創業し、5年後の1958年(昭和35年)には葬祭用品製造販売会社の営業を始めました。

仏衣のプロとしてデザイン、素材、仕立てにこだわりを持った仏衣創りを心がけています。
デザインは京都の友禅作家が創作したもの、素材は日本に2台しかない貴重な織機で折った生地を使用、縫製は優れた技術を持った縫製者が仕立てるなど、多くのこだわりを持って仕上げています。

こだわり其の一 ~他にはないオリジナルのデザインを追求~
こだわり其の一 ~他にはないオリジナルのデザインを追求~
こだわり其の二 ~専門家による素材の見立て~
こだわり其の二 ~専門家による素材の見立て~
こだわり其の三 ~熟練の手仕事、仕立て~
こだわり其の三 ~熟練の手仕事、仕立て~

亡くなった方が最後に身に着ける衣装が、その方に似合う最高のものであってほしいという願いからの取り組みです。
また生花事業や、ケア事業などもおこなっています。

出典:大栄株式会社 仏衣コレクション

【社名】大栄 株式会社
【設立】1953年(昭和28年)11月2日
【所在地】〒918-8231 福井市問屋町1-27
【代表者】中村 典充
【従業員数】91名(グループ全体)
【事業内容】・仏衣製造販売事業
      ・生花事業
      ・ケア事業
      ・セレモニースタッフサービス、メモリアル事業
      ・ヒューマンサポート事業、ビジネスサポート事業
【公式HP】https://www.butsui.com/

出典:大栄 株式会社 会社概要

2.株式会社 キタジマ

仏衣メーカーまとめ キタジマ

株式会社 キタジマは1945年に設立され、仏衣のほか祭壇や焼香台、棺や骨壺などの葬祭用品を取り扱っています。
「企画力」「想像力」「創作力」「商品力」の4つを掲げ、儀礼を大切にしつつも新しい商品を作り出す努力をしています。
オリジナル商品をもとにカスタマイズすることや、オーダーメイド商品を作ることも可能で、「エレガント」「モダン」「トラディショナル」の3つのイメージの中から、故人様に合うものを選べるようになっています。

出典:株式会社 キタジマ オリジナル

【社名】株式会社 キタジマ
【設立】1975年(昭和50年)2月1日
【所在地】〒910-8517 福井県福井市高木中央2丁目3214番地
【代表者】北嶋 さおり
【従業員数】55名
【事業内容】・ホールデザイン・空間演出・企画・設計
      ・セレモニー商品・ブライダル商品・企画開発
【公式HP】https://www.kitajima-co.com

出典:株式会社 キタジマ 会社案内

3.株式会社 ジャパン唐和

仏衣メーカーまとめ ジャパン唐和

株式会社 ジャパン唐和は、平成27年創業の比較的新しい会社です。
仏衣のほかにも棺や骨箱、後飾りや位牌など葬祭用具を取り扱っています。
仏衣は全部で18種類の商品があり、和服だけではなくドレスも7種類展開しています。

また2,500点の商品を展示した国内最大級の葬具、仏具ショールームを備えており、実物を見ることができるようです。

出典:株式会社 ジャパン唐和 仏衣

【社名】株式会社 ジャパン唐和
【設立】平成27年6月1日
【所在地】〒575-0034 大阪府四條畷市江瀬美町14-8
【代表者】谷口 秀和
【従業員数】39名
【事業内容】・葬祭用具の製造販売業務
      ・葬祭ホールの備品製造販売及びトータルコーディネイト・
      ・粗供養品及び返礼品,ギフトの販売業務
【公式HP】https://japan-touwa.co.jp/

出典:株式会社 ジャパン唐和 会社概要

4.株式会社 ヤマト

仏衣メーカーまとめ 株式会社ヤマト

株式会社 ヤマトは1994年に設立され、葬祭用品の製造卸事業のほか湯灌サービスもおこなっています。
株式会社 ヤマトの仏衣の特徴は、羽織付きのものがあることや神式の衣装も取り扱っていることです。
また意匠登録されているワンタッチで装着できる帯もあり、男性用と女性用の両方をそろえています。

出典:株式会社 ヤマト 仏衣一覧

【社名】株式会社 ヤマト
【設立】1994年8月12日
【所在地】〒615-0051 京都市右京区西院安塚町24番地
【代表者】臼井 由和
【資本金】2,000万円
【事業内容】・葬祭用品製造卸
      ・宗教用品卸
      ・湯灌サービス関連
【公式HP】https://yamatocf.com/

出典:株式会社 ヤマト 会社概要

5.株式会社 ヨシカワ商事

仏衣メーカーまとめ 株式会社 ヨシカワ商事

株式会社 ヨシカワ商事は2001年に設立され、仏衣をはじめとする葬祭用品全般を扱っています。
冷蔵棺システムの「静」は、毎年東京でおこなわれる、フューネラルビジネスフェアにも出展しています。

仏衣の特徴としては、裏地がついた袷(あわせ)仕立てになっているものや、仏衣と帯がセットになっている商品などがあります。
帯は金襴飾り帯「結衣(ゆい)」と名付けられ、金糸を使用した華やかな帯でマジックテープで止められるようになっており、帯締め付きで裏面が木綿なのでメッセージを書くこともできるようになっています。

浄衣一覧

出典:株式会社 ヨシカワ商事 カタログ「仏衣」

【社名】株式会社 ヨシカワ商事
【設立】2001年6月
【所在地】福井県福井市和田東2丁目1515番地
【代表者】吉川 泰士郎
【資本金】1,000万円
【事業内容】・セレモニーホール装飾幕全般
      ・葬祭用消耗品・備品全般
      ・仏具全般
      ・冷蔵棺システム「静」
      ・取付工事・施工一式
【公式HP】http://www.sosai-yoshikawa.jp/index.html

出典:株式会社 ヨシカワ商事 会社概要

6.京都法繊 株式会社

仏衣メーカーまとめ 京都法繊株式会社

京都法繊は仏衣、袈裟(けさ)、棺掛け、初七日収納供などを専門に扱う業者です。
仏衣のほかに刺繍を施した羽織や、故人様の衿元に添える輪袈裟、裏面に感謝の言葉などを書いて棺に掛ける棺掛けが特徴です。
この棺掛けは、実用新案登録と意匠登録がされています。

仏衣メーカーまとめ 京都法繊株式会社 商品
出典:京都法繊 株式会社 仏衣
仏衣メーカーまとめ 京都法繊株式会社 商品
出典:京都法繊 株式会社 棺掛け

【社名】京都法繊 株式会社
【設立】2005年10月5日
【所在地】〒6110025 京都府宇治市神明石塚73番地の17】
【事業内容】・正絹高級佛衣(仏衣)
      ・葬儀用品(袈裟・棺掛け・死に装束・羽織・初七日御供)
【公式HP】https://www.kyotohosen.com/

出典:京都法繊 株式会社

7.株式会社 川勝

仏衣メーカーまとめ 株式会社 川勝

株式会社 川勝は仏衣の製造開発と販売をおこなう専門業者です。
故人様が天上に旅立つ衣裳という意味で天上衣裳として、正絹からポリエステルまで様々な生地をそろえています。
和服の色無地のように全体がパープルやグリーンの色のものや、縫い目で柄どうしが合い、ひとつの絵のようになっている絵羽(えば)仕立ての商品が特徴です。

出典:株式会社 川勝

【社名】株式会社 川勝
【所在地】〒604-8277 京都市中京区西洞院通姉小路上る三坊西洞院町572番地7F
【事業内容】高級仏衣製造開発・販売
【公式HP】https://kawakatsu.jp/index.php#goaisatsu

出典:株式会社 川勝

8.さくらさくら(株式会社 ルーナ)

仏衣メーカーまとめ ルーナ株式会社

さくらさくら(株式会社 ルーナ)は1958年(昭和33年)編み物教室として始まり、洋裁店、縫製工場を経てアパレルメーカーに発展しました。
デザイナーでもある代表者の中野 雅子氏は、父親が亡くなったときに白の死装束を寂しく感じて、もっと華やかなものを作りたいと尽力し、エンディングドレスを手掛けるようになったようです。

仏衣は和服からドレス、帽子やアクセサリーまで取り扱っています。
おみおくりの正装「さくらさくら」は商標登録と意匠登録がされています。

出典:株式会社 ルーナ 商品一覧

【社名】株式会社 ルーナ
【設立】平成6年1月
【所在地】〒812-0018 福岡市博多区住吉3-1-18 福岡芸術センター501号室
【代表者】中野 雅子
【資本金】1,500万円
【事業内容】衣装・服飾品の製造卸販売
【公式HP】https://www.sakura-luna.jp/

出典:株式会社ルーナ 会社案内

まとめ

仏衣メーカーまとめ 蓮の花

今回は仏衣メーカー8社について、商品の特徴を中心にご紹介しました。
仏衣専門メーカーもありますが、葬祭用品全般を扱う総合商社が多いようです。
仏衣の色は白のほかに、華やかな色や柄を取り入れたものも多く見られ、素材も最高品質の正絹から合成繊維まで取り揃えており、ドレスや小物も扱う企業もあり、多様化するニーズに対応しています。

葬儀の小規模化・簡素化が進む現在でも、故人様の最後の衣装である仏衣にこだわりたいと思われるご遺族様も多いと推察されます。
ご遺族様のご希望に添える仏衣をご提案できれば、ご遺族様の満足を得られることと思います。
仏衣に関する知識を、葬儀社様の業務にお役立ていただければ幸いです。

カテゴリー最新記事

目次