株式会社 愛グループホールディングス~愛グループ~┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

愛グループ

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 愛グループホールディングスの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社愛グループホールディングスの概要

典礼会館名義で葬儀事業を営む愛グループは、1972年6月に設立された「下関市冠婚葬祭互助会」からスタートしました。
その後、積極的なM&Aにより営業エリアを拡大し、現在では以下の13社で構成されるグループ企業となっており、決算公告は各社で別々に出されています。

■愛グループ

  1. 株式会社 日本セレモニー(広島)
  2. 株式会社 日本セレモニー(長崎)
  3. 株式会社 日本セレモニー(山口県)
  4. 株式会社 へいあん秋田
  5. 株式会社 サンファミリー
  6. 株式会社 へいあんファミリー
  7. 株式会社 愛グループホールディングス←今回分析を行うのはココ
  8. 株式会社 メイプルシティ
  9. 株式会社 防長互助センター
  10. 株式会社 合掌堂
  11. 株式会社 トレーダー 愛
  12. 株式会社 せいぜん
  13. ムスベル株式会社

上記グループ会社のうち、株式会社 メイプルシティ(イタリアンレストラン事業)と、株式会社 トレーダー愛(料理や生花など冠婚葬祭事業の付帯業務に関わる仕入・製造及び商品開発)は、直接的に冠婚葬祭事業を行っていないようです。
結婚相談所・ブライダル事業については、2023年4月に株式取得でグループに迎え入れたムスベル株式会社が担っているようです。
愛グループの組織図は公開されていないため、グループ各社の営業エリアは明確ではありません。

「ホールディングス」とは

愛グループホールディングスの社名にある「ホールディングス」とは、一般的に「持株会社」を指す言葉です。
「持株会社」は、自ら事業運営を行う「事業持ち株会社」と、事業運営は行わず経営管理に専念する「純粋持株会社」の2種類に大別されます。

「持株会社」の子会社は、それぞれ独立した企業となるため、許認可事業を営むためには1社ごとに許認可を受ける必要があるというデメリットがあります。
冠婚葬祭互助会事業を開業するためには、経済産業大臣の許可を必要としますので、分社化による開業の場合はデメリットが大きくなります。

しかし愛グループの場合は、すでに開業許可を受けている各地の冠婚葬祭互助会を吸収合併するかたちで事業を拡大してきたため、承継の届出(割販法第35条の3の62において準用する同法第18条の6第2項)を提出すれば、改めて開業許可を受ける必要はありません。

こういった事情から、大手冠婚葬祭互助会は「持株会社」化するケースも多く、有名なところではアルファクラブグループなどが該当します。
ただしアルファクラブグループの中心的な存在である「アルファクラブ武蔵野」は、自らも事業を運営しているため「事業持株会社」に分類されると考えられます。

愛グループホールディングスは「純粋持株会社」の可能性大

愛グループホールディングスは愛グループの山口本社ビル内に所在しますが、同ビル内には冠婚葬祭互助会事業の「株式会社 日本セレモニー」や、仏壇販売事業を営む「株式会社合掌堂」、冠婚葬祭事業の付帯業務を取り扱う「株式会社 トレーダー愛」も同居しているようです。

冠婚葬祭互助会事業の実務を統括するのは「株式会社 日本セレモニー」と考えられるため、愛グループホールディングスは、グループ全体を管理する「純粋持株会社」の可能性が高いと思われます。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

愛グループホールディングスの貸借対照表 

決算期第8期第9期第10期第11期第12期第13期第14期
会計年度2018年1月期2019年1月期2020年1月期2021年1月期2022年1月期2023年1月期2024年1月期
利益剰余金20億7千7百万円24億9千1百万円37億0千5百万円40億6千9百万円44億4千1百万円47億7千2百万円51億7千7百万円



流動資産2億6千0百万円1億6千1百万円9億1千5百万円7億6千2百万円6億8千2百万円5億3千7百万円4億5千7百万円
固定資産81億9千2百万円88億3千8百万円87億2千9百万円86億7千0百万円85億5千9百万円84億7千4百万円84億0千7百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計84億5千2百万円89億9千9百万円96億4千4百万円94億3千2百万円92億4千1百万円90億1千1百万円88億6千4百万円



流動負債4億6千2百万円5億8千4百万円5億8千5百万円5億7千8百万円5億8千3百万円5億7千3百万円4億7千1百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債59億0千7百万円59億1千8百万円53億4千8百万円47億7千9百万円42億0千9百万円36億6千0百万円32億1千0百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計63億6千9百万円65億0千2百万円59億3千3百万円53億5千7百万円47億9千2百万円42億3千3百万円36億8千1百万円




株主資本20億8千3百万円24億9千7百万円37億1千1百万円40億7千5百万円44億4千7百万円47億7千8百万円51億8千3百万円
資本金5百万円5百万円5百万円5百万円5百万円5百万円5百万円
 資本余剰金
資本準備金
その他資本余剰金
 利益剰余金20億7千7百万円24億9千1百万円37億0千5百万円40億6千9百万円44億4千1百万円47億7千2百万円51億7千7百万円
利益準備金
特別償却準備金
その他利益剰余金20億7千7百万円24億9千1百万円37億0千5百万円40億6千9百万円44億4千1百万円47億7千2百万円51億7千7百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)4億2千7百万円4億1千3百万円12億1千4百万円3億6千3百万円3億7千2百万円3億3千0百万円4億0千4百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計20億8千2百万円24億9千6百万円37億1千0百万円40億7千4百万円44億4千6百万円47億7千7百万円51億8千2百万円
負債・純資産合計84億5千2百万円89億9千9百万円96億4千4百万円94億3千2百万円92億3千9百万円90億1千1百万円88億6千4百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

愛グループホールディングスの自己資本比率は58.46%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。

51億8千2百万円÷88億6千4百万円×100=58.46
愛グループホールディングスの2024年1月期における自己資本比率は、58.46%(前年同期比5.45%増)となっています。

愛グループホールディングスの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

愛グループホールディングスの資産合計の推移は以下のようになっています。

愛グループホールディングスの2024年1月期における資産合計は88億6千4百万円(前年同期比1.63%減)となっています。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

愛グループホールディングスの負債合計の推移は以下のようになっています。

愛グループホールディングスの2024年1月期における負債合計は36億8千1百万円(前年同期比13.04%減)となっています。

愛グループホールディングスの貸借対照表を確認すると、資産合計はほぼ横ばいの状態で推移していますが、負債合計は年を追うごとに減少しています。
これは愛グループホールディングスの資産において、他人資本である負債の占める割合が下がっていることを示しており、財務の健全性が向上しているようです。

また2018年1月期には56.28%だった流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2024年1月期の時点では97.03%となっています。

愛グループホールディングスの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

愛グループホールディングスの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

愛グループホールディングスの純資産合計は7期連続の増加となっており、2024年1月期では51億8千2百万円(前年同期比8.48%増)となっています。

負債合計と純資産合計から割り出される負債比率(負債合計÷純資産合計×100)は71.03%と100%を下回っており、負債を自己資本で全てカバー出来ている状況です。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

愛グループホールディングスにおける2024年1月期の当期純利益は4億0千4百万円(前年同期比22.42%増)となっています。
愛グループホールディングスの当期純利益は、2020年1月期のみ突出して多くなっていますが、過去7年間にわたり安定して利益を出し続けています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

愛グループホールディングスの場合は以下のように推移しております。

愛グループホールディングスの2024年1月期における利益剰余金は、51億7千7百万円(前年同期比8.49%増)となっています。
愛グループホールディングスの利益剰余金は、過去7年間において順調に増加を続けており、財務上健全な状況といえそうです。

愛グループホールディングスのまとめ

今回は株式会社 愛グループホールディングスの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
貸借対照表を分析した限りでは、愛グループホールディングスの経営状況に、特に不安な点は見当たりませんでした。

2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込みましたが、愛グループホールディングスは順調に成長を継続していたようです。
2023年に総社典礼会館や石巻典礼会館、2024年には、上津典礼会館や連島典礼会館、家族葬ホール高須典礼会館などを新規オープンしています。愛グループでは毎年のように出店を継続しており、今後も新規出店による事業拡大が予想されます。

葬研では、今後も愛グループホールディングスの動向を注視していきたいと思います。

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