葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場しているなら決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社 京阪互助センターの現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社 京阪互助センターの概要
株式会社 京阪互助センターは、1971年(昭和46年)に設立された冠婚葬祭互助会事業者で、1982年(昭和57年)に和歌山支店を開設し、大阪府と和歌山県を営業エリアとしています。
設立当時は互助会制度が一般的に知られていなかったため、営業活動が難しかったようです。
2004年(平成16年)には、枚方市、交野市で訪問介護サービス「ひよどり介護サービス」を開始しました。
現在は全互協と全冠協にも加盟しており、結婚式場と葬祭ホールの運営をおこなっています。
京阪互助センターの葬祭ホールは、和歌山市内で唯一、湯灌室を完備しており、同社独自の演出で構成された湯灌の儀式をおこない、故人様とのお別れができるようです。
2024年7月現在「玉泉院」「メイプルホール」「シティホール」名義で大阪府と和歌山県で運営している葬祭ホールは、以下のとおりです。
- 大阪府:23施設
- 大阪市:5施設
- 和歌山市:5施設
【名称】株式会社 京阪互助センター
【設立】1971年(昭和46年)6月2日
【代表取締役】齋藤 強
【所在地】大阪府大阪市北区長柄西1-6-14
【公式サイト】https://www.keihango.co.jp/
【事業内容】・冠婚葬祭互助会事業全般(前払式特定取引業)
・婚礼関連業務全般及び結婚式場の運営
・葬祭関連業務全般及び葬儀式場の運営
・共済保険及び損保保険代理店
葬儀社の決算公告とは
決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は貸借対照表の負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
決算公告の簡単な概要については以上になります。
なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能です。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
大手葬儀社あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは冠婚葬祭などの行事に備えるために毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
京阪互助センターの貸借対照表
決算期 | 47期 | 48期 | 49期 | 50期 | 51期 | 52期 | |
利益剰余金 | -6億3千4百万円 | -4億7千7百万円 | -5億0千5百万円 | -5億2千3百万円 | -1億9千5百万円 | -1億8千0百万円 | |
会計年度 | 2018年4月期 | 2019年4月期 | 2020年4月期 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | |
資産 | 流動資産 | 95億4千7百万円 | 82億9千7百万円 | 68億3千7百万円 | 47億8千0百万円 | 44億9千0百万円 | 47億0千7百万円 |
固定資産 | 331億4千9百万円 | 343億4千3百万円 | 350億8千1百万円 | 365億1千2百万円 | 364億3千2百万円 | 349億3千2百万円 | |
有形固定資産 | |||||||
無形固定資産 | |||||||
投資その他の資産 | |||||||
繰延資産 | |||||||
資産合計 | 426億9千6百万円 | 426億4千0百万円 | 419億1千8百万円 | 412億9千2百万円 | 409億2千2百万円 | 396億3千9百万円 | |
負債 | 流動負債 | 412億4千7百万円 | 39億4千2百万円 | 37億6千2百万円 | 35億1千3百万円 | 36億6千2百万円 | 35億9千3百万円 |
役員賞与引当金 | |||||||
賞与引当金 | |||||||
その他 | |||||||
固定負債 | 9億8千0百万円 | 380億7千6百万円 | 375億7千2百万円 | 372億1千0百万円 | 363億6千1百万円 | 351億2千4百万円 | |
退職給付引当金 | |||||||
雑収入復活引当金 | 7千0百万円 | 1億0千1百万円 | 1億1千6百万円 | 9千2百万円 | |||
役員退職慰労引当金 | |||||||
その他 | |||||||
負債の部計 | 422億2千7百万円 | 420億1千8百万円 | 413億3千4百万円 | 407億2千3百万円 | 400億2千3百万円 | 387億1千7百万円 | |
純資産 | 株主資本 | 4億6千6百万円 | 6億2千2百万円 | 5億9千5百万円 | 5億7千6百万円 | 9億0千4百万円 | 9億2千0百万円 |
資本金 | 6億0千0百万円 | 6億0千0百万円 | 6億0千0百万円 | 6億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | 1億0千0百万円 | |
資本剰余金 | 5億0千0百万円 | 5億0千0百万円 | 5億0千0百万円 | 5億0千0百万円 | 10億0千0百万円 | 10億0千0百万円 | |
資本準備金 | 5億0千0百万円 | 5億0千0百万円 | 5億0千0百万円 | 5億0千0百万円 | 10億0千0百万円 | 10億0千0百万円 | |
その他資本余剰金 | |||||||
利益剰余金 | -6億3千4百万円 | -4億7千7百万円 | -5億0千5百万円 | -5億2千3百万円 | -1億9千5百万円 | -1億8千0百万円 | |
利益準備金 | |||||||
特別償却準備金 | |||||||
その他利益剰余金 | -6億3千4百万円 | -4億7千7百万円 | -5億0千5百万円 | -5億2千3百万円 | -1億9千5百万円 | -1億8千0百万円 | |
自己株式 | |||||||
評価・換算差額等 | 3百万円 | -1百万円 | -1千2百万円 | -6百万円 | -5百万円 | 1百万円 | |
その他有価証券評価差額金 | 3百万円 | -1百万円 | -1千2百万円 | -6百万円 | 1百万円 | ||
(うち当期純損失) | 2億7千3百万円 | 1億5千6百万円 | -2千7百万円 | -1千9百万円 | 3億2千8百万円 | 1千5百万円 | |
新株予約権 | |||||||
評価・換算差額等 | |||||||
その他有価証券評価差額金 | |||||||
純資産の部計 | 4億6千9百万円 | 6億2千2百万円 | 5億8千3百万円 | 5億7千1百万円 | 9億0千0百万円 | 9億2千1百万円 | |
負債・純資産合計 | 426億9千6百万円 | 426億3千9百万円 | 419億1千7百万円 | 412億9千3百万円 | 409億2千2百万円 | 396億3千8百万円 |
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。
総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとはいえません。
自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多い状況と考えられますので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。
株式会社 京阪互助センターの自己資本率は2.32%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
京阪互助センターの2023年4月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。
9億2千1百万円 ÷ 396億3千8百万円= 2.32%
上記の式から同社の自己資本比率は2.32%(前年比0.12%増)となりました。
株式会社 京阪互助センターの利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。
利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
株式会社 京阪互助センターの場合は以下のように推移しております。
京阪互助センターの利益剰余金は、過去5年間マイナスが続いています。
しかし、2022年4月期よりマイナス分が大幅に圧縮され、2023年4月期はさらに改善しました。
株式会社 京阪互助センターの損益計算書
損益計算書とは、企業が1年間の経営状況を把握するために作成される資料で、P/L(profit and loss statement)とも呼ばれます。
損益計算書を確認することで、当該企業が「どれだけ売り上げ(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいの儲けが出たのか(=利益)」が一目で分かるものです。
特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益となります。
決算期 | 47期 | 48期 | 49期 | 50期 | 51期 | 52期 |
会計年度 | 2018年4月期 | 2019年4月期 | 2020年4月期 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 |
売上高 | 72億2千8百万円 | 69億1千4百万円 | 65億8千0百万円 | 55億1千1百万円 | 57億5千6百万円 | 59億9千3百万円 |
売上原価 | 29億8千5百万円 | 28億5千1百万円 | 27億2千8百万円 | 21億6千1百万円 | 23億5千8百万円 | 24億8千5百万円 |
売上総利益 | 42億4千4百万円 | 40億6千3百万円 | 38億5千2百万円 | 33億5千0百万円 | 33億9千8百万円 | 35億0千8百万円 |
販売費及び一般管理費 | 37億7千0百万円 | 37億5千8百万円 | 37億8千2百万円 | 36億4千6百万円 | 34億2千0百万円 | 34億8千2百万円 |
営業利益 | 4億7千3百万円 | 3億0千5百万円 | 7千0百万円 | -2億9千6百万円 | -2千1百万円 | 2千6百万円 |
営業外収益 | 5億8千6百万円 | 6億6千4百万円 | 6億6千6百万円 | 7億0千5百万円 | 8億1千1百万円 | 6億3千0百万円 |
営業外費用 | 6億1千3百万円 | 6億5千4百万円 | 6億0千1百万円 | 4億9千2百万円 | 4億9千7百万円 | 5億7千3百万円 |
経常利益 | 4億4千6百万円 | 3億1千5百万円 | 1億3千5百万円 | -8千3百万円 | 2億9千3百万円 | 8千3百万円 |
特別利益 | 0百万円 | 0百万円 | 0百万円 | 0百万円 | 1百万円 | 0百万円 |
特別損失 | 0百万円 | 1千3百万円 | 1千6百万円 | 4千5百万円 | 2千9百万円 | 9百万円 |
税引前当期純利益 | 4億4千6百万円 | 3億0千2百万円 | 1億1千9百万円 | 1億2千8百万円 | 2億6千4百万円 | 7千4百万円 |
法人税、住民税及び事業税 | 1億4千7百万円 | 4千9百万円 | 2千0百万円 | 1千2百万円 | 1千2百万円 | 1千2百万円 |
法人等調整額 | 2千6百万円 | 9千7百万円 | 1億2千6百万円 | -1億2千1百万円 | -7千5百万円 | 4千7百万円 |
当期純利益 | 2億7千3百万円 | 1億5千6百万円 | -2千7百万円 | -1千9百万円 | 3億2千8百万円 | 1千5百万円 |
京阪互助センターの損益計算書を確認すると、営業利益が黒字転換し、売上高も前年同期より増加していることから、コロナの影響から回復しているものと思われます。
売上金額の推移
京阪互助センターの2023年4月期の売上金額は、59億9千3百万円(前年同期比4.12%増)となりました。
2018年4月期から緩やかに減少していましたが、新型コロナの影響を受けたためか2021年4月期には大きく減少しました。
しかし2022年には増加に転じ、2023年も増加を続けています。
営業利益の推移
営業利益とは、おもな営業活動で得られた「売上総利益」から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いたもので、1年間の本業における利益を表す数字です。
つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
葬儀業界でいえば、葬儀施行や葬儀付帯業務(会食・返礼品など)による利益が、営業利益にあたります。
京阪互助センターの場合は以下のように推移しております。
京阪互助センターの2023年4月期の営業利益は、2022年から黒字転換し2千6百万円となりました。
2020年4月期からコロナの影響を受けたとみられ、大幅に減少し2021年4月期には営業損失となっています。
2022年にはマイナス分が改善され、2023年には黒字転換しました。
経常利益の推移
経常利益は、企業が1年間で得たすべての利益を表す数字で、「営業利益」+「営業外収益」-「営業外費用」で算出されます。
本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。
京阪互助センターの場合は以下のように推移しております。
京阪互助センターの2023年4月期の経常利益は、8千3百万円(前年同期比71.7%減)となりました。
やはりコロナの影響が大きかったとみられ、2020年4月期には大きく減少し、2021年4月期には経常損失となりました。
しかし2022年には大幅に回復し、2023年も減少はしましたが黒字となっています。
2022年と比べて減少したのは、営業外収益が減少し営業外費用が増加したのが原因かもしれません。
株式会社 京阪互助センターのまとめ
今回は株式会社 京阪互助センターの決算公告を参考に、同社の財務状況や業績の推移を分析しました。
2020年から2021年にかけて葬儀業界もコロナの影響が大きく、業績不振となった企業もあったようですが、京阪互助センターも例外ではなかったようです。
しかし2022年からは業績も改善しており、コロナの影響から回復傾向にあるとみられます。
京阪互助センターは、葬祭ホールの見学会や事前相談会を頻繁におこなっており、地域住民への認知度向上に努めているようです。
また近年では法要会館や、2024年3月には大阪府吹田市に「メイプルホール 千里山」をオープンさせており、今後の事業拡大も予想されます。
京阪互助センターの2024年4月度の決算公告にも注目したいと思います。