近年、インターネットを利用して葬儀社を選ぶ人が増えているようです。
インターネットでは、葬儀ポータルサイトや大手の葬儀社など、集客力のあるサイトが上位を占めていることが多く、葬儀社を探しているお客様も上位表示されるサイトを利用することが多いのではないでしょうか。
そんな中、大手比較サイト「mybest」が葬儀社を取り上げるなど、葬儀に特化したポータルサイト以外で新たな動きがみられます。
こうした比較サイトが本格的に参入した場合、葬儀業界にも大きな影響があると思われます。
そこで本記事では、葬儀社を選択する際の新たな一手になるかもしれない「比較サイト」の可能性について考えていきます。
比較サイトの概要
比較サイトとは、幅広いジャンルの商品やサービスの情報を集めているインターネットサイトのことで、特徴や価格などを手軽に比較することができるサービスです。
多くの競合商品の情報を効率よく知ることができるため、利用者側にとっては非常に便利なサイトになっています。
そんな比較サイトは、高い集客力を持っていることが少なくありません。掲載されることで自社の商品やサービスを見てもらえる可能性が高まります。
商品の長所やメリットなど、お客様から公平な目で見てもらえるため、マーケティングに費用をかけられない企業にとっては、メリットが大きいと言えるでしょう。
なお、比較サイトに掲載される基準は、それぞれのサイトによって異なります。商品やサービスを持つ企業側からの依頼により掲載される場合もあれば、サイトの運営者側の選択により掲載される商品やサービスが決まるサイトもあります
葬儀社サービスの取り扱いを開始した大手比較サイト「mybest」
出典:mybest
これまで、葬祭関連で比較サイトが取り扱ってきたのは、数珠や香典返しなどの「もの」がほとんどでしたが、mybestでは「葬儀社のサービス」を取り上げています。
mybestは、株式会社マイベストが運営する比較・情報サイトで、月間ユーザー数は3,500万人以上、月間セッションは5,000万を超えています。(2022年現在)
マイベストは、ソフトバンクグループの連結子会社・Zホールディングス株式会社のグループ会社でもあります。
設立されたのは、2016年(平成28年)で、それと同時に商品を紹介するコンテンツを開始しました。設立した代表取締役の吉川徹氏は、WEBサイト「価格com(価格コム・カカクコム)」を運営する株式会社カカクコム出身とのことです。
現在は、日本国内だけでなく、アメリカをはじめ、イギリスやインドネシア、台湾、タイ、ベトナム、ブラジル、フィリピンなど海外にも広く展開しています。
mybestでは、生活雑貨や家電、パソコン、コスメ、ファッション、本、アプリ、保険など多くのカテゴリーについて専門家による監修を受け、スタッフが調査、比較、検証しランキング化する相対評価を行っています。
また、Amazonをはじめ、楽天やYahoo!ショッピングなどのECサイトと接続しているため、それぞれのサイトの価格の比較も可能です。
mybestは、ユーザーよりも自社やクライアントの都合が優先されることなく、「ユーザーの生活を豊かにする」というビジョンを掲げています。
他社の比較サイトの葬儀・葬祭関連情報の取り扱い
現在のところ、国内の比較サイトとしては「mybest」が最大手となっているようですが、多くの利用者を抱える比較サイトは他にも存在します。
その中で代表的なものとしては「SAKIDORI」「Best One」があげられますが、両社の葬祭カテゴリーはどういった状況なのでしょうか。
SAKIDORI
SAKIDORIは、株式会社WILBYが運営するインターネットサイトで、「ほしいが見つかるモノメディア」をコンセプトとしています。
葬儀・葬祭関連では、フォーマルバック、神棚、袱紗、フォーマルウエアなどが紹介されています。
Best One
株式会社オールアバウトが運営している比較サイトがBest Oneです。「もっと、いいモノ」をコンセプトに、家電や生活雑貨などのモノ、話題のサービスなどを紹介しています。
Best Oneは、商品やサービスの比較だけでなく、選ぶときのポイントやメリット・デメリットなども紹介しています。
葬儀・葬祭関連では、香典返しや袱紗、香典袋、エンディングノートなど、多数の商品が紹介されているようです。
数珠は、商品の比較や選び方だけでなく、持ち方などのマナーにも言及しているほか、生活総合情報サイト「All About」の関連記事にもリンクしてるため、情報を集めやすくなっています。
葬祭サービスへの大手比較サイト参入が与える影響
これまでの葬儀業界において、ネット集客に関しては葬儀ポータルサイトに依存するケースが多くみられました。
しかし大手比較サイトが葬祭サービスに本格参入した場合、この流れを大きく変える可能性があります。
葬儀ポータルサイトは「条件」を紹介
インターネットで葬儀社を探す際に、まずお客様の目を引くのが葬儀ポータルサイトではないでしょうか。
特に大切な人を亡くされたばかりで、葬儀社探しが差し迫っている人にとっては、非常に助かる存在になっています。
そんな葬儀ポータルサイトは、インターネットを通じて葬儀関連の情報提供や集客を行い、提携する葬儀社様にご遺族を送客するサービスです。
葬儀社様とご遺族を結ぶ役割から、『マッチングサービス』や『仲介サービス』とも呼ばれています。
葬儀ポータルサイトの種類
葬儀ポータルサイトには、主に2種類あります。
- 定額型=ネット葬儀業者側が葬儀プランや料金などを設定している。提携している葬儀社は、その条件で葬儀を施行する。
- 紹介型=提携している葬儀社のプランや料金を提示。それによりお客様側が希望に合った葬儀社を紹介する。
つまり、いずれのタイプの葬儀ポータルサイトもお客様側が選んでいるのは、「条件」であり、「葬儀社」を選んでいるわけではありません。
その結果、実際にご遺族と接する葬儀社のサービスや追加費用など、葬儀ポータルサイトの条件から離れた部分で不満を感じることもあるようです。
葬儀社が比較サイトで紹介されるメリット
すでに葬儀社の人気ランキングが作成されている地域でおすすめの葬儀社を検索すると、mybestの記事がトップで表示されることが多いようです。mybestの圧倒的なユーザー数や信頼度、影響力の高さが伺われます。
葬儀ポータルサイトとの大きな違いは、比較サイトという第三者から評価を得た「葬儀社」そのものを選べることでしょう。
特にmybestのような信頼度が高いサイトであれば、今後、その影響が大きくなっていくことが考えられます。
また、mybestでは、ランキングされている各葬儀社ホームページのリンクが設定されています。条件に適った葬儀社の詳細を手間なく知り、コンタクトをとることができるため、利用者にとっても利便性が高いサイトになっているようです
さらに葬儀社側にとっては、比較サイトに掲載されることで直接問い合わせが増加する可能性も高いため、集客面における葬儀ポータルサイトへの依存抑制につながると思われます。
特に地域密着型の葬儀社様の中には、葬儀ポータルサイトへの紹介手数料が収益を圧迫しているケースも散見されるため、直接問い合わせの増加は財務状況の改善に大きく寄与するかもしれません。
mybestの「葬儀・葬式のおすすめ人気ランキング」
mybestでは、2023年8月現在、ペット葬儀社を含め、20の項目で葬儀社などのランキングが行われています。
- 浦和の葬儀社
- 奈良の葬儀社
- 川越の葬儀社
- 川崎の葬儀社
- 柏の葬儀社
- 札幌の葬儀社
- 東京都内ペットの葬儀社
- 神奈川の葬儀社
- 熊本の葬儀社
- 八王子の葬儀社
- 鹿児島の葬儀社
- 大阪の葬儀社
- さいたま市の葬儀社
- 大田区の葬儀社
- 横浜の葬儀社
- 静岡の葬儀社
- 沖縄の葬儀社
- 千葉市の葬儀社
- 川口市の葬儀社
- 東京都内でおすすめの葬儀社
人気の葬儀社の要件
現在mybestで公開されている葬儀社比較コンテンツのひとつ「【2023年】東京都内でおすすめの葬儀社のおすすめ人気ランキング35選」を見てみましょう。
監修者として、株式会社佛英堂 専務取締役・野呂英旦氏が明記されています。佛英堂は三重県松坂市にある仏壇・仏具専門店のようです。
監修者である野呂氏は、mybestにおいて、東京都内の葬儀社のほか、仏壇や仏具、遺品整理業社などの記事制作にも協力しています。
なお、監修者は、「選び方」についての監修であり、選定は行っていないようです。
日常的に葬儀と無縁の生活を送っている人にとっては、「そもそも葬儀社をどうやって選べばいいのかわからない」と思っている人も多いかもしれません。
mybestでは、「東京」という地域の特徴を踏まえ、簡潔、明瞭に葬儀社を選ぶポイントが紹介されています。
mybestで取り上げている「東京都内でおすすめの葬儀社の選び方」は次の5つです。
- 葬儀の希望にあわせてタイプを選ぼう
- 葬儀に対応できるエリアを確認しよう
- 理想の葬儀をイメージしてプランを厳選しよう
- 契約前に見積もりを提示してくれる葬儀社がベスト
- 葬儀場・火葬場のアクセスや設備をチェックしておこう
それぞれについて詳しく解説します。
葬儀の希望にあわせてタイプを選ぼう
ここでは、専門葬儀社、互助会、協同組合、インターネット仲介・紹介業者の4種類が紹介されています。
料金体系のほか、メリット、デメリットにも触れているので、自分の要望に合った葬儀社のタイプが分かりやすいかもしれません。
葬儀に対応できるエリアを確認しよう
ネットで葬儀社を探す方も少なくないでしょう。その際に気を付けたいのが葬儀社には対応エリアがあるということです。
また、参列者の都合に配慮して、葬儀会場を選択することも提案しています。
理想の葬儀をイメージしてプランを厳選しよう
葬儀のスタイルは多様化しています。その中でどんなスタイルで行うか、抑えるべきポイントを紹介しています。
特に気を付けたいのが宗教・宗派です。菩提寺がない場合やキリスト教葬式、神道葬などの場合は、申込時に確認が必要になるそうです。
東京都では、一般葬、家族葬、一日葬、直葬(火葬式)などがありますが、家族葬が多い傾向があるそうです。
契約前に見積もりを提示してくれる葬儀社がベスト
大切な人を亡くして、精神的に動揺していたり、時間がないときに葬儀社を探さなければいけないという場面もあるかもしれません。
mybestでは、契約前に見積もりをとることを進めています。火葬費用に首都圏料金が加算されるなど、東京ならではの事情にも言及しています。
葬儀場・火葬場のアクセスや設備をチェックしておこう
なかなかそこまで気が回らないということもあるかもしれません。しかし、葬儀場のアクセスや必要な設備が整っていることは、故人様のご家族や参列者の負担を軽減することにもつながります。
出典:mybest
東京都内でおすすめの葬儀社
「【2023年】東京都内でおすすめの葬儀社のおすすめ人気ランキング35選」では、以下の情報が明示されています。
商品名、公式サイト(リンク)、ポイント、対応エリア、対応可能葬儀、宗教、連絡方法、支払方法、支払期日、料金目安、24時間対応、アフターサポートなどが明記されています。
支払方法や支払期日などは、なかなか気が回らない部分であるがゆえに利用する側にとっては非常に大切な情報だと言えるでしょう。
なお、この人気ランキングは、複数のサイトや口コミをもとにmybestが独自に順位つけをしているそうです。
ここでは、取り上げられている葬儀社をいくつか紹介します。
コムウェルセレモニー
出典:コムウェルセレモニー
おすすめのポイントとなっているのが、取捨選択式の見積もりです。葬儀プランを組み立てる際に不要なものを省くことができます。また、必要な費用は1円単位で提示されるとのことです。
【社名】株式会社コムウェル
【設立】昭和47年6月16日
【所在地】東京都杉並区阿佐谷南3-6-1
【従業員】363名(グループ計)2018年4月現在
【事業内容】
- セレモニー事業:葬祭の施行に関する事業
- トランスポート事業:葬儀に関する搬送、旅客輸送に関する事業
- ブライダル事業:婚礼衣装のレンタル、七五三・成人式・卒業式等の衣装のレンタル、スタジオ運営、ブライダルプロデュース・結婚式場紹介・物流部門運営
【公式サイト】https://www.comwellceremony.co.jp/
葬儀のえにし
出典:株式会社えにし
えにしでは、葬儀総額費用で見積もりを行うとのことです。料理や返礼品、施設使用料などのすべてを含んでいるため、追加費用はかからないことがおすすめのポイントになっています。
【社名】株式会社えにし
【設立】平成16年(平成25年に板橋区徳丸に移転)
【所在地】〒175-0083 東京都板橋区徳丸1-20-18
【事業内容】 1.葬儀葬祭業 2.仏壇・仏具の販売 3.墓所墓石の販売
【公式サイト】https://www.enisi.co.jp/
はじめてのお葬式
出典:はじめてのお葬式
初めてのお葬式を行う人にとっては、不安がつきものです。まなかは、費用や式場など葬儀に関することをトータルサポートしてくれる葬儀社になっているようです。
【社名】株式会社まなか
【設立】2000年1月31日
【所在地】東京都中央区銀座1-15-4 銀座一丁目ビル 9F
【事業内容】一都三県を中心に「ご葬儀」「お墓」「お仏壇」の3事業を展開する総合エンディングメーカーです。
現代の「偲び方」を常に見つめながら、よりよい商品・サービスをお客様に提供し続けています。
【公式サイト】https://hajioso.jp/
お葬式のむすびす
出典:お葬式のむすびす
「ハイ・サービス日本300選」を葬儀業界で初めて受賞した葬儀社(旧・株式会社アーバンフューネスコーポレーション)です。
24時間対応で、葬祭費の支給手続きなどにも対応しているようです。
※ハイ・サービス日本300選
2010年までサービス産業生産性協議会により行われていた、サービス産業のイノベーションや生産性向上に資する先進的な取り組み(ベストプラクティス)を表彰・公表することにより、企業の一層の取り組みを喚起する賞。
【社名】むすびす株式会社
【設立】2002年10月
【従業員】101名(2022年1月1日現在)
【公式サイト】https://www.urban-funes.com/
千代田セレモニー
出典:千代田セレモニー
直営ホールを備える千代田セレモニーは、火葬式や一日葬、家族葬などの小規模な葬儀のほか、社葬のような大型葬にも対応可能のようです。
互助会に入会することで、会員割引サービスなどの特典があります。
【社名】千代田セレモニーグループ
【設立】昭和40年4月
【事業内容】
- 冠婚葬祭に関する全ての事業
- ホテル・レストラン事業
- 各種宴会用料理の出張サービス
- 霊園墓石事業・贈答品の販売
- 介護用品の販売・レンタル、高齢・身障者向け住宅リフォーム
【公式サイト】https://www.chiyoda-ceremony.com/
おわりに
本記事では、葬儀社カテゴリーを展開している比較サイトについて紹介しました。
葬儀ポータルのような集客サイトに対し、葬儀とは利害関係のない第三者が運営している比較サイトは、お客様にとっては客観的な情報を得られるという安心感があるのではないでしょうか。
また、葬儀社様側にとっても、マーケティング力とは無関係にサービスや料金の比較をしてもらえるため、自社のサービスを求めるお客様とつながりやすくなるというメリットがあるといえるでしょう。
比較サイトは、ライフエンディング業界に大きな影響を与える可能性を秘めています。今後の動向に注目していきたいと思います。