葬儀関連事業を展開する事業者の種類まとめ|専門葬儀社について詳しく解説

専門葬儀社

葬儀・葬祭を取り扱う事業者と聞くと、いわゆる「葬儀屋さん」をイメージするかもしれませんが、実はさまざまな業種の事業者が関わっています。
主なものをあげるだけでも、以下の8種類に分類されます。

近年の葬儀業界は、葬儀の施行を取り扱う事業者だけで構成されているわけではありません。
上記のうち「葬儀ポータル」や「葬儀アフィリエイト」は、実際に葬儀を執り行うことはありませんが、葬儀業界に大きな影響を与えています。
こういった事情から、葬儀業界全体の構造も複雑化しているため、以前に比べ分かりづらくなっています。

そこで葬研では、葬儀事業者を構成する事業者8種類について、それぞれ詳しく解説いたします。
本記事では『専門葬儀社』を取り上げ、後半では中小葬儀社様の生き残り戦略についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

専門葬儀社とは

「専門葬儀社」は、文字通り葬儀の施行を専門に扱う企業で、日本で施行される葬儀の約30%を担っています。

葬儀占有率
出典:経済産業大臣認可 全日本葬祭業協同組合連合会 2017年4月28日 葬儀業界の現状

かつては地域密着型の中小企業がほとんどを占めましたが、近年では多店舗化を進める大企業も増加傾向にあるようです。

専門葬儀社の業務内容

「専門葬儀社」の主な業務は、葬儀の企画・運営・施行となります。

家族や親族が喪主となって故人を弔う葬儀では、さまざまな手続きや準備が必要で、その過程も複雑になりがちです。
「専門葬儀社」は、こういった喪主の負担を軽減すべく、葬儀を滞りなく執り行えるように家族をサポートし、故人様を偲ぶ場を整えます。

専門葬儀社がおこなう具体的な業務としては、以下のようなものがあります。

  • 故人様の意向や家族の要望に沿った葬儀プランの立案
  • 葬儀を執り行う場所の手配
  • 故人様のご遺体搬送し・安置
  • 遺影や棺、花や供物、飲食物など、葬儀に必要となる物品やサービスの手配
  • 葬儀を円滑に進めるための進行管理
  • 納骨や法要など葬儀後のアフターサービス提供

「専門葬儀社」は、家族や親族に代わって上記の業務を適切に実施することで、ご遺族が故人様との別れに専念できる環境を整えます。
また、宗教や地域によって異なる葬儀の慣習にも対応できるよう、多様なニーズに応えるサービスを提供しています。

専門葬儀社の特徴

寺院葬

「専門葬儀社」の中でも、特に地元で長く営業されている葬儀社様は、さまざまな宗教や地域の慣習に精通しているため、適切な葬儀プランを提案できます。
また地域密着型の「専門葬儀社」は、葬儀に関連する業者や地元寺院とのネットワークを持っているため、喪主様の希望に合わせた柔軟な対応も可能です。

一方、大手の「専門葬儀社」は、数多くの式場を所有しているケースが多いため、葬儀日程を調整しやすいのが特徴です。
ただし、多店舗展開している一部の大手「専門葬儀社」では、フランチャイズシステムを導入しており、同じ看板を掲げていても運営元は別会社というケースも少なくありません。

代表的な大手専門葬儀社

これまでの「専門葬儀社」は、地域密着型の中小企業が多くを占めましたが、近年では事業を全国展開するような大企業も誕生しています。
こうした企業の中には、葬儀業界で数少ない上場企業も含まれます。

葬儀会館 ティア

ティア

公式HP:https://www.tear.co.jp/

「葬儀会館 ティア」は、東海地方を中心に事業を展開している「専門葬儀社」で、2023年4月現在では関東地方や関西地方にも進出しています。
運営元である「株式会社 ティア」は、葬儀業界で7社しかない上場企業の1つで、140店舗(直営:83店舗・フランチャイズ:57店舗)を展開しています。(2022年9月期決算時点)

「葬儀会館 ティア」の特徴は、なんといっても全店舗数に占めるフランチャイズ店舗割合の高さでしょう。
「葬儀会館 ティア」では、フランチャイズ加盟の条件を「原則 異業種企業による新規事業参画」「複数店舗展開出来る企業」としており、一定の資金力をもつ企業に限定しているようです。
加盟店の中には、愛知県で大きなシェアを持つ「永田や仏壇店」を運営する「株式会社 永田屋」や、南海電鉄系列の「南海グリーフサポート株式会社」なども含まれています。

「株式会社 ティア」の2022年9月期決算資料を確認すると、フランチャイズ事業の売上高は4億2千6百万円、営業利益は6千6百万円となっていました。
「株式会社 ティア」では、今後も中長期計画で掲げた会館数260店舗体制を目指して、直営・フランチャイズ出店を継続する方針のようです。

■直近の決算数字(2021年10月1日~2022年9月30日)

  • 売上高:128億5千8百万円(前年同期比+8.9%)
  • 営業利益:10億5千7百万円(前年同期比+19.2%)
  • 経常利益:10億4千8百万円(前年同期比+19.5%)
  • 当期純利益:5億6千8百万円(前年同期比+4.8%)

家族葬のファミーユ

ファミーユ

公式HP:https://www.famille-kazokusou.com/

「家族葬のファミーユ」は、上場企業である「きずなホールディングス」の中核となるグループ会社「株式会社 家族葬のファミーユ」が運営する「専門葬儀社」です。
「家族葬のファミーユ」は、葬儀業界で初めて「家族葬」をブランド展開した企業とされています。

2000年の創業以来、直営店舗の出店、およびM&Aなどによって営業エリアの拡大を続けており、四国と沖縄県を除く日本国内全域に100店舗以上を展開しています。
2017年に中道 康彰氏が代表取締役社長に就任して以降は、さらに出店ペースを加速させているようで、2023年1月から3月の期間だけでも5店舗が開業しました。

また各地の葬儀社との業務提携にも積極的に取り組んだ結果、全国1000カ所以上の斎場ネットワークを構築しているようです。

■直近の決算数字(2021年6月1日~2022年5月31日)

  • 売上高:92億7千1百万円(前年同期比+15.4%)
  • 営業利益:10億7千2百万円(前年同期比+46.2%)
  • 経常利益:5億9千9百万円(前年同期比+66.6%)
  • 当期純利益:9千3百万円(黒字転換)

家族葬のらくおう

らくおう

公式HP:https://www.rakuou.info/

「家族葬のらくおう」は、「ライフアンドデザイン・グループ 株式会社」のグループ企業である「ライフアンドデザイン・グループ 西日本 株式会社」が運営する「専門葬儀社」です。
関西・北陸地方を中心に89ヵ所の直営斎場を展開しています。

なお親会社である「ライフアンドデザイン・グループ 株式会社」自体も、大手葬儀ポータルサイト「小さなお葬式」を運営する「ユニクエスト」の子会社となっています。
さらに「ユニクエスト」は、大手冠婚葬祭互助会の「アルファクラブ武蔵野 株式会社」の子会社となっているため、実質的にはアルファクラブグループの一員といえるでしょう。

そんな「家族葬のらくおう」ではフランチャイズ事業はおこなわず、積極的な直営店の出店によってシェアを拡大してきました。
その結果、130億円を超えるといわれている「ライフアンドデザイン・グループ 株式会社」の会社全体の売上高のうち、約7割を「家族葬のらくおう」が占めているようです。

3社の共通点

今回紹介した3社はいずれも多店舗化を軸に事業を展開していますが、店舗展開の手法はそれぞれ異なります。
しかし展開している各店舗の規模や出店戦略には共通点がみられます。

家族葬中心

家族葬

共通点の1つは、各社の展開している斎場の規模が、いずれも「家族葬」向けである点です。
中小規模の「家族葬」向け斎場であれば、1店舗当たりの建築コストを抑えられるため、多店舗化を進めるうえでも好材料となります。

かつては多くの方に参列いただく一般葬が主流だったため、100名以上を収容可能な大規模斎場が多く作られました。
しかし近年では、ご遺族や親族・親しい知人のみで見送る「家族葬」が主流となりつつあるため、大規模斎場の需要は減少傾向にあります。

こういった状況に対応すべく、最近では大手冠婚葬祭互助会でも小規模な「家族葬」向けホールの開業を急ピッチで進めています。
しかし地域によっては、すでに大手「専門葬儀社」が高い占有率を確保しており、参入に苦戦するという状況もみられるようです。

ドミナント戦略

集中出店

もう1つの共通点は、一定のエリア内に複数店舗を集中出店する「ドミナント戦略」です。
コンビニエンスストアなどの小売業や、コーヒーショップなどのチェーンストアが採用することの多い手法ですが、葬儀業界における出店方法でも効果を発揮しています。

「ドミナント戦略」のメリットとしては

  • 特定地域での認知度向上
  • 物流の効率化
  • 同業他社が入り込みにくくなる
  • 広告効率の向上

などがありますが、葬儀業界では人員配置の効率化というメリットもあります。
葬儀事業は、他のサービス業に比べて繁閑の差が激しいという特徴があるため、人員配置が難しい業種とされてきました。
しかし同一エリア内に複数店舗を配置することで、忙しい店舗に人員を移動させることも容易になるため、流動的な人員配置が可能となります。

また広報活動においても「ドミナント戦略」は有利に働きます。
ポスティングなどによるチラシの配布はもちろん、TVCMの放映についても有効です。
このあたりの事情については、以下の記事を参照ください。

地域密着型の中小葬儀社が生き残る方法は?

事業

これまでの日本では、長く地元で営業されている中小葬儀社と、冠婚葬祭互助会系列の葬儀社が、葬儀施行のほとんどを担ってきました。
しかし少子高齢化問題が取り沙汰されるようになって以降、葬儀業界では異業種からも新規参入が相次ぎ、一気に競争が激化しています。

こうした局面において、マーケティングに長けた企業が「専門葬儀社」として事業を立ち上げ、小規模斎場の多店舗展開により急激に勢力を伸ばしたのが現在の状況です。
近年の葬儀業界では、この大きな流れに飲み込まれてしまった中小葬儀社も、少なくありません。

競合ひしめく葬儀業界において、地域密着型の中小葬儀社様が取りやすい経営戦略の1つに「ランチェスター戦略」があります。
戦略といっても難しいことではなく、自社の強みを徹底的に磨き上げ「〇〇に関してはどこにも負けない」部分を作ることで、競合他社に対抗する方法です。

飲食業界などで取られることの多い手法で、小さなお店でも「ハンバーグを食べるなら〇〇」「チーズケーキだけは〇〇が一番」といった、非常に小さな市場を独占するイメージとなります。

人材の定着が難しいとされる葬儀業界では、「長く働いてくれているスタッフが多い」というだけでも強みになりますし、「地域の寺院と強い信頼関係が構築されている」「地元の葬送習慣に精通している」などは、地域密着型の中小葬儀社だけが持つ特徴といえるでしょう。
そういった長所を活かして、他社を圧倒するほど「〇〇分野の地域一番店」として広く認知されることで、同業他社に対抗するというのが「ランチェスター戦略」の仕組みとなります。

まとめ

今回は葬儀業界における「専門葬儀社」の業務内容や特徴、大手企業の経営戦略などについて解説しました。
また後半では、中小葬儀社様が勝ち抜くための手法も簡単に紹介しましたので、少しでも今後の参考にしていただけたなら幸いです。

本記事で紹介した「ランチェスター戦略」で肝心なのは、地域内で「広く認知される」という点となります。
地域内とはいっても、町内会レベルでは効果は限定的になってしまいますので、最低でも市町村単位では認知されたいところです。

そのためには、地域コミュニティ内の口コミだけでは不十分ですので、ポスティングや新聞折込などでのチラシ配布といった広報活動も必要となるでしょう。
また現在では、喪主世代となる50代~60代の世代でも、インターネットでの情報収集に慣れ親しんでいるため、効果を最大化するためにはWebを活用した広報戦略が求められます。

葬研では、今後も葬儀社様向けに幅広く情報を発信してまいりますので、ぜひ参考にしていただければと存じます。

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