LIFULL介護「介護施設における新型コロナ感染予防対策」実態調査、約7割の施設が外出制限・面会の自粛および禁止を要請、マスク・消毒液の在庫不足を不安視、入居者のマスク着用率50%に留まる
① 新型コロナウイルス感染症の対策は、ほぼすべての施設が実施
② 入居者が取り組んでいる対策、「手指の消毒」、「検温」、「手洗い・うがい」 施設におけるマスクの在庫不足が一因に、マスクの着用率は50.5%に留まる、 7割以上の施設が居住者の外出を制限、約6割の施設が施設内でのレクリエーションを中止 ③ 職員が取り組んでいる対策、「マスク、手洗い・うがい、手指等の消毒、検温」97%以上実施 ④ 面会における取り組み、 約7割「面会は中止」、面会場所や時間の制限で対応する施設も ➄新型コロナウイルスの対策で困っていることは「マスク・消毒液の不足および価格の高騰」 |
アンケート結果より、各施設が新型コロナウイルス感染症への対応を強化し、面会自粛やオンライン面会で対応するなど、ほぼすべての施設で対策を実施していることがわかりました。一方で、「困っていること」を自由記述で聞いたところ、マスクや消毒液の不足を挙げる施設が最も多く、物資の不足に不安を頂いている様子が見受けられました。LIFULL seniorでは施設側からの他施設の感染予防対策に対する情報を求める声を受け、アンケートを実施し、結果を公開することで、介護施設全体の感染予防対策につなげ、各施設のサポートに取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症に関しまして、医療従事者、介護従事者の皆さまをはじめ、最前線で日夜奮闘されている方の努力に、心から敬意と感謝を表します。また、新型コロナウイルス感染症に罹患された皆さま、およびその関係者の皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。
LIFULL seniorは今後もシニアに関わる全ての人を笑顔にできるよう、サービスの拡充に努めてまいります。
①新型コロナウイルス感染症に対する対策状況
新型コロナウイルス感染症に対する対策を行っていますか?と老人ホームをはじめとする介護施設に聞いたところ、99.0%の施設が「実施済」と答えました。また残りの1%も「対策を検討中」であり、ほぼすべての施設で対策を検討していることがわかりました。
図1.Q.新型コロナウイルス感染症に対する対策を行っていますか?
➁入居者が取り組んでいる対策「手指の消毒」、「検温」、「手洗い・うがい」
入居者に対し取り組んでいる対策を聞いたところ、最も実施している対策は「手指の消毒」が90.1%、次いで「検温」(83.6%)、「手洗い・うがい」(82.9%)という回答となりました。入居者のマスク着用率は50.5%と他の項目に比べて低くなっています。⑤の「困っていること」に対する自由記述の記載として、「マスクおよび消毒液などの不足」との回答が最も多かったことから、入居者のマスク着用率には物資の不足も影響していると考えられます。
3密(密集、密閉、密接)を避ける工夫として、レクリエーションを中止するケースが多く見られ、居室で過ごすことを推奨している施設・会社が約半数となり、施設入居者のQOL(Quality of Life)をどのように維持・向上させていくかという課題が浮き彫りになりました。また、食事の時間や場所を工夫している施設も見られました。
図2.Q.入居者に対して取り組んでいる対策は何ですか?
具体的な取り組み内容
▼外部の人と接触しない
・家族との会話は、自室で携帯電話などを使うようにしている
・宅配業者と接触しないようにする(フロントで預かるなどして対応)
・外部の介護サービスの利用を控えている
・訪問理美容、訪問マッサージを中止している
▼外に出かけない
・病院を利用する場合は、電話で診断してもらう
・買い物を代行サービスやネットスーパーを活用する提案をしている
▼感染の恐れのある人と接触しない
・熱のある方、咳をしている方は他の人と距離をとる
・退院・通院の場合には、7日間自室にて経過観察をしている
③ 職員が取り組んでいる対策「マスク、手洗い・うがい、手指等の消毒、検温」97%以上実施
職員が取り組んでいる対策について聞いたところ、「マスクの着用」が99.3%、「手洗い・うがい」が98.6%、「手指等の消毒」が98.3%、「検温」が97.3%という結果になりました。また、外部取引先等への営業・訪問はおよそ3/4以上(76.8%)の施設が中止していることがわかりました。
図3.Q.職員が取り組んでいる対策は何ですか?
具体的な取り組み内容(自由回答)
▼感染を防ぐ工夫
・マスクを外す際は他の職員と距離を取る
・フロント窓口に透明のフィルムの設置
・出勤人数の調整、時差出勤
・web会議の導入
・1日数回の換気、共用部や共通で使うものの消毒(アルコール、次亜塩素酸など)
・サーモセンサーの導入で発熱を検知
・外部業者などの入館を制限し、対応できる箇所は極力職員で対応
・従業員の家族に対する消毒液・マスク等の配布
・プライベートの外出自粛
▼継続してサービスを提供できるような工夫
・職員を2グループに分け就業
・発症した際のヘルプ要員を自宅待機させる
・新型コロナウイルス感染症対策の研修
・緊急時の対応について、他の施設と共有を行う
④ 面会における取り組みは約7割が「面会は中止」、面会場所や時間の制限で対応する施設も
「面会は中止している」と回答した施設は約7割(68.3%)となりました。手指の消毒、マスク着用、検温、手洗い・うがいは、半数以上の施設が実施していました。その他、入れる場所の限定、面会時間や人数を制限していると回答した施設もありました。
図4.Q.面会において取り組んでいる対策は何ですか?
具体的な取り組み内容
▼来館の際の工夫
・玄関口に外部者と面会できるスペースを確保している
・換気の良い場所や中庭などで、距離をあけて短時間の面会を行っている
・検温と消毒、直近で37.5度以上の熱があったかを確認している
・日用品などの持ち込みに対しては消毒を行っている
・来館時にスリッパに履き替え、外の汚れを持ち込まないようにしている
▼直接会わないようにする
・テレビ電話でオンライン面会をしている
・電話で最近の様子を連絡し、近況を写真や文章で送っている
➄新型コロナウイルスの対策で困っていることは「マスク・消毒液の不足および価格の高騰」
現在困っていることについて、自由記述にて聞いたところ、「マスク・消毒液の不足および価格の高騰」を挙げる方が最も多く、次に「経営に関する不安」などの意見が見られました。
▼自由記述に寄せられたコメントの一部
・マスク、消毒液等、ペーパータオルが不足している
・マスク、消毒液など衛生用品を高値で購入しているため経費が膨大になっている
・見学・新規入居受付の停止による収入減
・長期化することで入居者やスタッフの心理的な不安
・外出制限、家族面会制限のむずかしさ(入退院、危篤の場合の家族訪問、病院受診)
・緊急事態宣言が解除された後の施設での面会制限解除のタイミング
■今回の調査にあたり 株式会社LIFULL senior 代表取締役 泉 雅人
「介護崩壊」という言葉を聞く機会が増えています。この言葉を聞いて、多くの人はどんな「介護の形」を思い浮かべるでしょうか?また介護サービスには、在宅サービスやデイサービス、入居施設など、多くの種類があります。しかし、いまの日本でそれらの介護サービスの違いを理解し、かつ、何が問題になっているかを正確に把握して「介護崩壊」という言葉を使っている人は、一体何人いるでしょうか?ただ一括りに「介護崩壊」という言葉でいたずらに恐怖心を煽るのではなく、現場の声や現状を正しく知っていただきたいと思い、今回のアンケートを実施しました。
このアンケートは主に「民間の老人ホーム・介護施設」が回答者です。民業であるため、他の業種と同様、いま彼らも厳しい状況に置かれています。調査結果からは、この状況でも入居者だけでなく施設職員双方の安全を守りながら、施設を運用されている姿勢がよくわかり、改めて頭が下がる思いです。医療現場同様、「介護」も止めることができない社会を支える仕事であることをどうか多くの人たちにご理解いただきたいと強く思います。
■今回の調査を受けて「LIFULL介護」編集長 小菅秀樹の所感
老人ホームなど介護施設の入居者は、加齢に伴う免疫力の低下により感染症にかかりやすく、また感染すると重篤な状態になりやすい方も多くいらっしゃいます。そして、入居者、ご家族、職員、関連業者など不特定の人が出入りする建物で共同生活を送るため、ここだけを見ると一般家庭よりも感染リスクが高い空間といえるかもしれません。
そんな状況をしっかりと施設は受け止めており、職員は平時から感染症の予防とその拡大防止について高い危機意識を持っています。過去何度も改定された厚生労働省の感染症マニュアルを遵守し、入居者はもちろん職員の健康管理も徹底している施設が多数を占めています。いま諸外国に比べて日本の介護施設における集団感染(クラスター)発生数が低いのは、危機意識と日頃の努力の結果だと考えます。今回のアンケートの新型コロナウイルス対策を実施している施設が実質100%という結果もまた、日頃の努力の延長と言って良く、もっと評価されるべきではないでしょうか。
家族の面会など入居者と外部の方との面会を自粛している施設が多いという事実も今回のアンケートで明らかになりました。感染リスク軽減のため当然の対応ではあるものの、ご家族の来訪を楽しみにしている入居者も多く、またご家族も、昨今の報道や会えない事実を受けて不安な気持ちの方が多いはずです。その対策として施設と入居者の連絡手段にSNSを活用し、オンライン面会の実施を行う運営事業者も増えてきています。終息の兆しが見えないなか、入居者のQOL(Quality of Life)をどのように維持・向上させていくか。そして物資の円滑な供給。さらに最前線で働く職員の心身のケアが今後ポイントになると思っています。
■調査概要
調査期間:2020年4月20日~4月23日
調査方法:介護施設検索サイト『LIFULL介護』を利用している介護施設(サービス付き高齢者向け住宅、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、高齢者向け賃貸住宅、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、その他高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンション、ケアハウス)へのアンケート
回答件数:296件
アンケート回答施設数 種別内訳
■ 「LIFULL介護」について
有料老人ホームや介護施設、高齢者向け賃貸など、さまざまな高齢者向けの住まいを探すことができるサービスです。全国38,000件数以上を掲載し、掲載件数は業界 No.1を誇っています。
ウェブサイト:https://kaigo.homes.co.jp/
■株式会社LIFULL senior について
「シニアの暮らしに関わる 全ての人々が笑顔あふれる社会の仕組みを創る」をビジョンに掲げ、ヒトとテクノロジーの力で、シニアの暮らしに関わる人のあらゆる不の解消を実現し、「シニアの暮らしに関わる人のあらゆるLIFEをFULLに」する。そんな世界の実現を目指し、介護準備段階から遺品整理まで広くサービスを展開しています。
<概要>
所在地:東京都千代田区麹町2-1 PMO半蔵門9F
代表取締役:泉 雅人
設立:2015年7月1日
事業内容:日本最大級の老人ホーム・介護施設の検索サイト『LIFULL介護』の運営
遺品整理業者検索サイト『みんなの遺品整理』の運営介護当事者一歩手前の世代に向け、介護の最新情報や体験談を発信する、介護情報メディア『tayorini』(たよりに)の運営