新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、117グループは堅調に成長を続けているようです。
そこで今回は、117グループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
117グループの概要
117グループは、昭和41年(1966年)に創業され、冠婚葬祭互助会事業をはじめ介護事業や仏壇墓石販売事業を展開、さらに洋菓子の製造販売やレストラン運営も手掛けています。
2023年6月現在の会員数は約29万1千名で、年間葬儀件数は12,090件となっています。
社内には人材育成を目的として「規律」「研修」「教養」の3部門の委員会が設置されているほか、災害支援活動や文化・教育支援活動などの社会貢献活動も盛んです。
また社員や施設利用者に対して、様々なSDGsへの取り組みをおこない、姫路市SDGs宣言企業となっています。
【名称】117グループ
【設立】1966年(昭和41年)
【代表取締役】山下 裕史
【本社所在地】〒670-0936 兵庫県姫路市古二階町63番地
【資本金】1億5,000万円
【公式HP】https://www.117.co.jp/
117グループの構成
117グループは主に以下の5社で構成されています。
- 株式会社 117
- 株式会社 117メンバーズ
- 株式会社 大和生研
- 株式会社 あっぷる
- 株式外社 アメニティワールド
117グループの事業内容は以下の通りです。
- 結婚式事業
- 葬儀事業
- 冠婚葬祭互助会
- 介護事業
- ギフト商品・仏壇墓石販売
- 焼菓子、タルト・ケーキ、グラノーラの製造販売
- レストラン
出典:117グループ 会社概要
117グループの事業内容が多くの新聞、雑誌、ラジオ、テレビで取り上げられ、社会貢献活動が冠婚葬祭文化振興財団や兵庫県警から感謝状を授与されています。
117グループの沿革
1966年(昭和41年1月)
「姫路冠婚葬祭互助会」発会
1968年(昭和43年12月)
「全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)に公認され、加盟
1971年(昭和46年8月)
全互連共済制度ができると同時に加盟
1973年(昭和48年12月)
「株式会社姫路冠婚葬祭互助会」が、通産大臣許可
「互第5002号」を受ける 全国第1号(他5社)
1975年(昭和50年5月)
「株式会社姫路冠婚葬祭互助会」を「株式会社大和互助センター」に社名変更
1984年(昭和59年2月)
「仏壇・墓石部」の新店舗、姫路市安田にオープン
1986年(昭和61年12月)
「株式会社花嫁センター」を、「株式会社大和生研」に社名変更
1991年(平成3年8月)
介護用品ショップ「あっぷる姫路店」オープン
1993年(平成5年7月)
「株式会社大和殿大和互助センター」を「株式会社117」に社名変更
1998年(平成10年5月)
「株式会社和歌山冠婚葬祭互助会」をグループ会社として合併
2007年(平成19年2月)
「株式会社民間救急サービス」を「株式会社あっぷる」に社名変更
2015年(平成27年4月)
「ミュゼ・ド・ガトー」モンドセレクション金賞受賞
2016年(平成28年10月)
「株式会社あっぷる」が「ひょうご仕事とバランス企業」に認定される(介護事業において兵庫県初)
2017年(平成29年3月)
ワイン 「シャトータネスルージュ2014」が2016年パリ農産物コンクールにて銅賞を受賞
2017年(平成29年11月)
「株式会社大和互助センター」を「株式会社117メンバーズ」に社名変更
2018年(平成30年10月)
「株式会社あっぷる」が「ひょうご子育て応援賞」を表彰さ れる
2020年(令和2年8月)
「少人数のお葬式」運用開始
2022年(令和4年10月)
「和坂やわらぎホール」が「明石 和坂やわらぎホール」に名称変更
2022年(令和4年11月)
「株式会社大和生研」が姫路税務署より優良申告法人として表敬される
「明石やわらぎホール」が「朝霧やわらぎホール」に名称変更
出典:117グループ 沿革
117グループの葬祭会館
117グループの葬祭会館は、兵庫県、大阪府、和歌山県あわせて50会館を展開しています。
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。
なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
117グループの決算公告からみる利益や業績
ここからは、117グループの貸借対照表(4社合算)について詳しく分析します。
各項目を確認することで、117グループ全体のおおまかな財政状況が把握可能です。
117グループの貸借対照表
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある
117グループの自己資本比率は26.42%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
380億1千2百万円÷1438億8千6百万円×100=26.42%
117グループの2023年における自己資本比率は、26.42%(前年比5.72%減)となっています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
117グループの利益剰余金の推移は以下の通りです。
117グループの2023年6月期における利益剰余金は、377億6千3百万円(前年同期比1.77%増)となっています。
117グループの利益剰余金は過去5年間を見ると、少しずつではありますが毎年増え続けており、財務上健全な状況といえそうです。
大手冠婚葬祭互助会の業績は、葬儀業界全体の置かれている状況を推し量る指標ともなりますので、引き続き2024年の決算公告が待たれます。
117グループの損益計算書
損益計算書とは企業が「どれだけ売り上げが上がり(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいもうかったのか(=利益)」が一目で分かるものです。
損益計算書
新型コロナの影響が最も大きかった2020年と2021年には、営業利益が大きく減少していますが、2022年には2019年を上回る営業利益が発生しています。
同じく当期純利益も2020年と2021年に減少しましたが、2022年には増加に転じました。
しかしながら、2023年には再び減少しています。
売上金額の推移
117グループにおける過去5年間の売上高は、以下のように推移しています。
117グループにおける2023年6月期の売上高は、204億9千4百万円(前年同期比4.74%増)となりました。
新型コロナウイルスの影響を受けたためか、2020年と2021年に大きく減少しましたが、2022年の決算公告では195億6千7百万円(前年同期比5.69%増)と改善しており、2期連続の増加となっています
2023年に新型コロナも5類相当に移行し、2023年の決算では2019年と同レベルまで売上高が回復してきました。
営業利益の推移
営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
117グループにおける2023年6月期の営業利益は、9億5千2百万円(前年同期比12.98%減)となりました。
損益計算書を確認すると「販売費及び一般管理費」が大幅に増加していますが、これは円安による原材料費高騰も影響していると考えられます。
117グループでは、2020年から2021年にかけて新型コロナの影響が最大化したとみられ、営業利益も2期連続の減少となっていました。
しかし、2022年に2019年を超える営業利益が出ており、新型コロナの影響も少なくなってきたと思われます。
2023年は前年に比べ若干の減少となったものの、2019年の営業利益を上回っている状況です。
経常利益の推移
経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含め、会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。
117グループの2023年の経常利益は、15億8千0百万円(前年比16.62%減)となりました。
とはいえ、損益計算書を確認すると営業外収益の減少が大きく影響しているようですので、本業は順調に推移しているものと思われます。
2020年の状態を回復するまでには、もう少し時間を要するかもしれませんが、葬儀業界全体も回復傾向にあるといわれていますので、2024年の決算公告が待たれます。
117グループのまとめ
117グループの決算公告を参考に、業績や財務状況の分析をおこないました。
貸借対照表や損益計算書を分析した限りでは、117グループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、117グループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
ただ2023年の決算では、営業利益と経常利益がともに少し減少しているところなので、2024年の決算が待たれるところです。
117グループは近年の消費者需要を見込んで介護事業をおこなっているほか、洋菓子の製造販売やイタリアンレストランをオープンさせるなど、これからもますます事業拡大が予想されます。
今後も、117グループの動向に注目していきたいと思います。